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愛人~2016年夏

Without You~哀情~ 【司×つくし】

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※写真:by ulyankina
愛人

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 司がつくしのことだけを忘れ、NYへと去って…気が付けば16年。
 つくしが彼と出逢った年齢を遠く過ぎるくらいの年月だ。
 彼を待っていたわけじゃない。
 いつか司が自分を思い出して迎えに来てくれる…そんな夢想を抱いたことがないとは言わないけれど、それでもそのまま数年の時が経ち、彼が生まれながらにして負った宿命のままに家に釣り合う女性を妻に迎えた時には、すべての夢と願いは潰えていた…はずだった。
 「……ひな、ちゃんとおばあちゃんに迷惑かけないで、頑張れてるかなぁ」
 今年の夏休みは東京のおばあちゃんの家で過ごすと、張り切って一人出かけて行った愛娘を思い浮かべる。
 ちょうど来年東京で受ける高校受験の下見を兼ねていたが、最後まで彼女一人を東京に出すのは心配だった。
 しかし、こうしてみれば運命の皮肉を思う。
 つくしがひなに伴って東京に出ていたら、もしかしたら司とは再会することは叶わなかっただろうし、そうであれば、最悪彼は死んでいたかもしれない。
 …それだけでも、良かったのかも。
 もう彼の幸せに携わる資格も、権利もない自分だけれど、それでも司には元気でいて欲しい。
 できれば、幸せでいてくれればとも思う。
 シャワーの熱い湯に火照った体を、窓辺に座って冷ましていたつくしだったが、ここ東北の夜は東京とは違って昼間との寒暖差が激しい。
 「くしゅん」
 開けていた窓から入ってきた風が存外に冷たく、ピシャリと窓を締めて立ち上がった。
 「…っ」
 とたん、ズクリと体の奥が甘怠く痛んで、先程までの激しい情事が脳裏に蘇りカッと顔に血が上って、一人身悶える。
 誰も見ていないというのに、無性に恥ずかしくて仕方がなかった。
 …やだやだ、あたしったら。
 いくら昔の男だとはいえ、今は既婚者で自分のことを旅先の遊び女くらいにしか思っていない男相手に何を恥じらっているのだろう。
 まるで恋を知ったばかりの少女のように胸をドキつかせ、舞い上がっているのを自覚する。
 「ハァ~、しょうがないよね」
 それでも、忘れられない男だった。
 もちろん、いまさら、司とどうこうなりたいとか思っているわけじゃない。
 体を求められてつい許してしまったのだって、たぶん成り行きと懐かしさ、そして…寂しさからで、昔と同じ想いで彼を好きだとか、ましてや愛しているとかそういうわけではいのだ。
 なによりも…。
 「まさか、いまさら、あたしの前にあの男が現れることがあるなんてね」
 切なく呟く。
 ふと虚ろに視線を流して、それに気がついた。
 「……あ」
 どうやら彼女が風呂に入っている間に着信があったようで、スマホの画面をくってみれば、案の定、数日前に家から出かけて行った弟の進からの連絡だった。
 トゥルルルルル、トゥルルルルルル、トゥルルルルルル…、
 …もう寝たかな?
 あと、二回コールして出なかったら電話を切ろうと思い決めたところで、通話が繋がった。
 『…はい、俺』
 「進?いま、ホテルなの?」
 『いや、実家』
 現在、東北の片田舎につくしは弟の進と一人娘のひなたと三人で暮らしていた。
 もともと、看護師のつくしが母・千恵子の実家のある東北で近所の診療所に勤め、娘のひなたと母子二人暮らしの生計を立てていたのだが、その診療所の医師が辞めることになった。
 片道1時間の距離を車で移動しなかければ医療施設が他にない過疎の村。
 当然、人道主義を標榜する医師にしても、中々そんな村に来てくれるような奇特な人間がいてくれるはずもない。
 そこへ、たまたま医師団の一員として海外派遣から帰国していた弟の進が事情を聞いて、自ら志願してこっちの診療所に勤めることとなったのだ。
 そこにはもちろん、一人で子供を育てるシングルマザーの姉への心配もあったに違いない。
 ひなたが幼い頃は母の実家の周辺の地に住まっていたつくしも、良くしてくれた曾祖母と伯父嫁が亡くなって以来、その地を離れ、今の住まいへ越してきた。
 そのため、長年の海外暮らしですっかり逞しい?姿となった進を、つくしの夫もしくは内縁の夫だと勘違いしている診療所の患者も少なくはない。
 最初のうちは訂正していた姉弟も、老人たちの耳には馬耳東風、馬の耳に念仏だと、ある意味達観してしまっていた。
 …今の進を見て、あたしの弟だとかあたしでさえ信じられないものね。 
 年齢よりも若く見られがちのつくしに対して、進も素顔はかなり童顔な方にも関わらず、中近東での医師団を歴任した後遺症?なのか、いまや彼はすっかり顔中髭むくじゃらのクマ男だ。
 体格にしても小柄だった中学生時代が嘘のように、どこの遺伝子が原因なのかずいぶん大柄な男になっていた。
 もちろん、司に比べれば中肉中背の範囲だが、逆に司を見てクマだと称する人間などいないだろう。
 『…なんか、姉さん、楽しそうだね』
 「えっ!?」
 『どうなるかと思ってたけど、…道明寺さんとそれなりに上手くやってるんだ?』
 「何を言ってるのやら」
 いま現在のつくしと司の状況など進にわかるはずもないし、いい大人のこと。
 それなのに、なぜか胸の奥がドキンと疚しさに鳴った。
 『道明寺さん…』
 「名無しの権兵衛さんでしょ?…今度は完全記憶喪失だとかで、自分の名前さえも憶えてないとかのたまわってるんだから」
 憶えていない男が、頻繁に携帯電話で誰かに連絡を取ることなどありえないだろう。
 もちろん、最初は司も怪我の影響で混乱していて、本当に一時的とはいえ記憶喪失的なものになったのかもしれない。
 だが、つくしを忘れた時のように永続的なものなどではなく、すぐに自分を取り戻したのが、彼女にもわかった。
 目つきが違う、口調や態度だけでなく、すべてが‘俺は道明寺司だ’と語っていたから。
 『こっちは、けっこう大騒ぎになってるみたいだよ?』
 「報道規制とかしてないんだ?」
 『……NYの奥さんが東京に来るとか来ないとか。もともと、道明寺さんのところもいろいろあったみたいではあるしね』
 「奥さんに殺されかけたって?」
 巷での噂だ。
 そして、つくしと進が海岸線で濡れ鼠で倒れていた司を偶然助けた時に、彼の口から出たのがそんな言葉だった。
 ‘…あの女、俺を殺すつもりだ。警察にもどこにも俺のことは言うな’
 そんな戯言を他の誰が信じて、言いつけを守るというのだろう。
 もちろん、つくしにしても進にしても、そんな司の言葉は半信半疑だった。
 それでも―――、
 …あたしたちは、道明寺を知っていたから。
 『そっちでも多少なりニュースやってるだろ?』
 「あたし、テレビ見ない人」
 『はは…、そうだったね。まあ、もう体調もほぼ完全だろうし…どちらにせよ、ほとぼりが冷めたら道明寺さんも、いつまでも田舎に燻ってるつもりじゃないはずだ。もうそれなりにアクションもとってるんじゃないかと思う』
 …そうでしょうね。
 その暇潰しの傍ら、人妻だと思っている女を布団に引きずり込む余裕があるのだ。
 妻子ある身で…。
 …たしかあいつの子供って、まだ小さかったよね?
 テレビや雑誌類を見ていない割に、男の近況を知っている自分が密かにイヤだ。
 「そんなことより、あんたの方はどうなの?」
 『……それがさ』
 進の説明はこうだった。
 どうやら難病を患っているらしい老齢の患者に付き添って、母校の大学病院を訪れた進だったが、そこで地方に医院を構えた先輩が自身の急疾病で難儀しているという話を聞いたのだ。
 付き添った患者自体は幸い命に関わるような病状ではなかったが…。
 もともと学生時代に世話になった先輩を訪ねるついでの帰京が、思わぬ事態となり、
 「2週間――」
 『うん、一応、そっちの方は市民病院には連絡して、週一で診療所に医師を派遣してくれるようには頼んだけど』
 年寄りばかりだとはいえ、つくしが対応しきれないような急病の患者はそうそうでない。
 むしろ老人たちの人生相談的役割が主な診療所勤めを厭って、医師たちが居着かないのだろう。
 「…まあ、あんたもいつまでもこっちで燻ってるわけにもいかないしね」
 『いや、そんな』
 弟の気遣いは嬉しいが、いつまでもつくしたち母子を心配するあまり日本に留まっていては、本来医師を目指した志の意味がなくなってしまうに違いない。
 「たぶん…道明寺もさ、その頃までには自分の世界に戻ってるよ」
 『姉さん…?』
 なんの気まぐれか、あるいは本当に命を狙われたのだとしても、一時再び彼女の人生と交差したというだけの偶然で、さすがに3度目に再び会うことはないだろうことが確信できるくらいに、互いの世界は隔たっているのだ。
 だから…。
 「ひなたに言っておいて。ママの目がないからってハメを外しすぎないようにってね。誰に似たのかあの子たら、妙に自分を過信しすぎるところがあって無鉄砲だから心配よ。…これだけは血のせいか、教育じゃあどうにもならなかったかな」
 ボヤくつくしの呟きは進には届かなかったようで、とりあえず2週間の間の診療所と家の留守を頼まれ、つくしは通話を切った。
 …さあ、そろそろ寝ないと。
 貧乏食だなんだと文句を言いながら、それでも唯々諾々と彼女に世話を焼かれる司の顔を思い浮かべ、つくしは小さく…そして切なく微笑んだ。




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