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愛妻生活…7話完

愛妻生活6

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 …えっと。
 『通じてるか?』
 たぶんそんな感じだと思う。
 英語は学生時代あきらや類にかなりガッツリ教えてもらっていたから、日常会話程度ならそれなりに聞き取れるので間違ってはいないはず。
 『まさか、中学生か?』
 『高校生にはなってるだろ』
 眉根を寄せた警察官二人が、顔を見合わせ相談しているのに、慌てて言葉を返した。
 『あ、あの、すみませんっ、大丈夫です。通じてます。中学生でも、高校生でもありません。成人です』
 ジロジロとあたしの頭のてっぺんから足の先まで見回し、警察官の一人がフンと鼻を鳴らした。
 …な、なに?
 部屋を出る前にざっとシャワーを浴びて、あきらが用意しておいてくれていた洋服に着替えてきたから、特におかしな格好をしてはいないはずなのに…?
 『中国人か?』
 『に、日本人です』
 『なんの為に、ロンドンに?』
 矢継ぎ早に質問される。
 『きょ、今日からこちらに住むために。海外赴任でロンドンに在住している夫のもとに、今朝の便でやってきました』
 あたしの英語通じてるよね?
 それなのに、警察官二人の眼光の鋭さは和らぐどころか、ますます不穏になってる気がするのは気のせいなの?
 『とぼけるなっ!』
 『ヒッ』
 いきなり一人に怒鳴りつられて、ビクッと首を竦めた。
 それまで、なんだなんだと、何人かの観光客っぽい人たちがこちらを注視していたのに、怒鳴った警察官ではないもう一人がジロッと見回しただけで視線を伏せて、足早に立ち去ってゆく。
 『今さっき、売人に何か渡しただろ?』
 …は?売人?
 『大道芸人を装った売人だ。ヤクの受け渡し場所を記したメモを渡したのか?それともズバリ現物のサンプルを渡したのか?』
 Street performer、Dealers、drug、とかいう単語が飛び交っているのからして、あたしの脳内変換は間違っていないはずなのに、それを脳が理解することを拒んでる。
 い、今、ド、ドラッグって言った?
 ええ?
 も、もしかして、あたし、とんでもないことに巻き込まれてる?
 しかも、二人の警察官の様子は、最初に声をかけてきた時の丁寧さが嘘のように高圧的になっていて、いつの間にか何かの犯罪の容疑者のような扱いになっていている気がした。
 もちろん、単なる職務質問程度の話じゃなくって、何か…たぶん麻薬の密売とかそういう犯罪に関わってると思われてるなら、それもあたりまえのことだったのかもしれないけど。
 ど、どうしよう。
 つい目だけで周囲を伺ってしまう。
 でも、二人の警察官がいつの間にかあたしの超至近距離まで迫っていて、壁よろしく前を塞いであたしに睨みをきかせているから、とても有益な助け手の姿を発見することなんてできなかった。
 『そうやってセレブっぽい格好で人目を誤魔化して、海外から持ち込んだヤクを売人に受け渡す手口が最近流行ってるんだ』
 『ち、違いますっ!あたしはただ、さっきの人の芸を見ていてチップを渡しただけで。そんな、さっきの人がそういう人だったなんて、全然知りませんでしたっ!』
 まるで悪夢を見ているような現実味のない恐怖がジワジワと背筋を這い登ってくる。
 もう本当に怖くて、どうしていいかわからなくて、半ば頭の中はパニック状態だ。
 ふるふると小刻みに体が震えてくる。
 あたし、どうなっちゃうの?
 『パスポートか何か身分証明になるもの、それに財布とバッグを見せろっ。荷物の中に薬がないか確認する』
 命じられて、慌ててハンドバックを肩から下ろし、あたしはバックの留め金に手をかけた。
 …は、早く、誤解をとかなきゃ。
 荷物を見せればきっと、誤解は解ける。
 あたしには何も疚しいことはないんだから。
 何かの間違いで疑われただけなんだと、あたしは必死に冷静になろうと努めていたけど、…やっぱり冷静じゃなかったんだよね。
 バッグの中身を開けて見せようとして、顔を上げた先、二人の警察官があたしではなく、あたしの後ろへと視線を向けているのに気がついた。
 その途端、優しく肩を抱き寄せられて、ふんわりと香ったコロンの香りに涙が出そうになってしまった。
 「妻に何か?」
 「あ、あきら…」
 あきらの登場に、それだけでもう、どわっと感情が高ぶって、安堵感に涙が滲み出てしまった。
 警察官に向けた険しい顔を崩さす、視線を彼らから外さないまま、ただ腕にこもった彼の手の力と温もりが、あたしの萎縮して怖じけていた心を慰め守ってくれる。
 『これはなんです?どちらの警察署の方ですか?』
 『…いや、我々は』
 いかにも只者ではないあきらの堂々とした様子に動揺しているのか、ロクに受け答えできていない警察官たちを、逆にあきらが理路整然と追求してゆく。
 『ただの職務質問ですか?それとも妻に某かの疑いがあっての取り調べですか?もしそうなら、私だけではなく弁護士の立会も望みますので、署まで同行しますから詳しい取り調べ等はそちらでお願いします』 
 警察官の二人がたじろいで、わずかに動揺した気がした。
 さっきまで眼光鋭くあたしを威圧していたのに、彼らの方がむしろあきらに威圧されて、あたふたしてしまっているように見える。
 『なんでしたら、これから向かいましょうか?』
 相棒と目配せを交わしあっていた警察官の一人が、なぜか何度か背後を振り返ると、人込みの合間から、特に特徴のなさそうな男の人が飛び出してきて、警察官のうちの一人に耳打ちをした。
 『どうしますか?』
 『い、いや、そ、それには及ばない。どうやらこちらの勘違いだったようだ。呼び止めてしまって申し訳なかったね』
 さっきまでの執拗でいかにもあたしを犯罪者と決めつけたかのような高圧的な態度が嘘のように、おざなり程度に謝罪した警察官たちがあっさりと踵を返した。
 そんな彼らのそそくさと去ってゆく後ろ姿を見送って、その姿が人ごみの中に見えなくなって、やっとあたしの緊張も解け心からの安堵にホッと息をつく。
 「…はぁ」
 ため息をつく気配に、肩を抱いているあきらを振り仰いで、顔色を伺った。
 「あきら?」
 「……もう、まったく」
 片手で顔を覆って、ボヤくあきらの顔は怒ってる感じではなかったけど、もしかして呆れるのかもしれない。
 そうだよね。
 さっき、トラブルを起こすな、的なことを注意されたばかりだ。
 しかも、子供じゃないとか、突っぱねたのはあたし。
 相手の勘違いなんだからあたしのせいではなかったと思うんだけど、それでも疑われるような不審な言動を知らず知らずのうちにしてしまった不注意のせいで、あきらにも迷惑をかけてしまったのは事実だもの。
 「あきら、ごめんね」
 …怒ってる?それともやっぱり呆れてるの?
 肩に触れている手に手を重ねて、真摯な気持ちで謝罪する。
 「……いや、俺があらかじめ注意しておかなかったし、不慣れなお前を一人にしちゃったのも失敗だった。まさか、ロンドンに来た初日からトラブルに巻き込まれるとは」
 「…………ごめんなさい」
 ホント、言い訳する言葉も出ないよ。
 申し訳なくて…居た堪れなくて、あたしは項垂れて小さく縮こまった。
 そんなあたしに気がついて、覆っていた手を顔から離したあきらが、困ったようにそれでも小さく微笑んでくれる。
 「だから、怒ってないし、呆れてもないよ」
 「……でも」
 「たださ、マジでこういう、オレ、オレ詐欺ならぬデカ、デカ詐欺にまともにひっかるヤツっているんだなって、驚いただけ」
 「…………………は?」



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~ Comment ~

デカデカ詐欺…笑
って、ホントにあったりします?
無知なもので…
いやー、警官にそんなこと言われたら、出すかも…?
危ない危ない

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