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ずっと君だけを見ていた…7話完

ずっと君だけを見ていた7~完

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 …やっちゃった。
 類のショックを受けたような顔をみた時、最初に思ったのはそんなことだった。
 あたしって、なんでいつもこうなんだろう。
 大切な人を守りたい。
 傷つけたくない。
 そう思っているはずなのに、いつもどうしてか、その大切な人こそ悲しませて、苦しませてしまう。
 知らない男に、ナイフを突きつけられた時にも思った。
 やっちゃった、って。
 類があれほど心配してくれてたのに、まるで自分から危険に飛び込むように、気が付けばこんな目に遭ってしまっている。
 彼の言うとおり、夜道を一人歩きなんかしなければ、あるいは、好意を素直に受け入れてSPをつけてもらっていれば、こんなことにはなっていなかったのに。 
 そして、懲りないあたしは、そんな目に遭っていてもまだ、バカみたいに無茶をしてしまった。
 あたしより少し大きいだけで、F4みたいに大柄な男じゃないんだからと、甘く見て自分を過信してしまったんだ。
 隙を見て逃げ出すつもりだった。
 それなのに上手く逃げ出すことができなくて、揉み合ううちに気が付けば、相手の持っていたナイフがその当の持ち主の脇腹に吸い込まれていた。
 柄の方にはあたしの手があって、それであたしが相手を刺したんだってやっと気がついたの。
 その時思ったのが、また、…やっちゃった。
 人を殺してしまったかもしれないことより、これでもう類とは一緒にいれないんだって、そんなことが無性に悲しくてたまらなかった。
 『…姉ちゃんが悪いんじゃないんだから』
 …だからなに?
 『花沢さんも、幸いああ言ってくれてるんだし、何も別れることなんてないんじゃないの?』
 進の言葉に思わずふふふって笑ってしまった。
 類は…そうだよね。
 そういう人だ。
 たとえあたしが本当に殺人犯になったとしても、きっと受け入れてくれる。
 あたしのせいで、世間の人全員に後ろ指指されたって、あの飄々とした笑顔で、きっとこう言うんだよ。
 『他人のことなんて気にしたことないし、返って遠巻きでいてくれた方が、煩わされなくていいんじゃない?』
なんて。
 でも、世の中はそんな単純なものじゃなくって、類とあたしだけが幸せならそれでいいってものじゃないってことを、あたしはよく知っている。
 つい数日前、類のお父さんからもらった電話を思い出す。
 多忙のために、直接会いにいくことができない非礼をまず謝られ、そして、情よりも会社を優先する自分の酷薄を許してくれと前置きをされた。
 そして、丁寧な口調であたしを気遣いながら、類と別れてくれるように頼まれた。
 もちろん、頼まれなくてもわかっていたし、十分予測していた言葉でもある。
 たとえ正当防衛だったとはいえ、あたしのしたことは、世間に奇異な目で見られてしまうことなんだよね。
 人は同情という名の好奇心で、容易に他人を傷つけ、排斥する生き物だから。
 ましてや、類は立場のある人。
 メンツや世間体を特に気にしなければならない大企業の御曹司。
 『失礼だとは思うが、あなたのお父さんの治療費に関しては、今度も継続させていただこうと思っています』
 『……いえ、そんな』
 遠慮の言葉が口をついて出てしまったけれど、でも正直、たしかに類のお父さんからの申し出は、あたしにとってとてもありがたいことだった。
 それでも、もし打ち切ると言われてしまったとしても、類とは別れなければならないことは重々承知していた。
 『あなたに対しても、相応の慰謝料を』
 『いえ、それは勘弁してください』
 パパのことだけでも心苦しいのに、そこまでお世話になる気も、謂れもない。
 慰謝料もなにも、類とのことはあくまでも二人のことで、あたしはお義父さんに別れさせられるとは思っていなかった。
 あたしの意志で、あたしの勝手で類との別離を選択したのだから。
 『…父の治療費に関しても、いつか必ず少しづつでもお返ししますので、今はどうか甘えさせてください』
 そうお願いしたあたしに、
 『牧野さん。私は本当に残念に思っているんですよ。家内と同様、あなたを我が家の娘に迎えることを心から待っていた』 
 もうそれだけで十分だった。
 家族にはなることはできなかったけれど、一時でもこの人たちに娘として受け入れられたことが本当に嬉しくて…幸せだった。
 ぴ~んぽ~ん。



*****



 インターフォンに出ると、訪ねてきたのは案の定、類だった。 
 言うべきことは言った。
 もう何も言うべきことはない。
 でも、今あたしがお世話になっているのは、類のマンションで、そうである以上、彼を無下に追い返すことなどできるはずもなかった。
 「……ご飯、食べた?」
 「うん、軽く。類は?」 
 「牧野がまだだったら、一緒に外にでも食べに行こうかなって思ってたんだけど」
 「…………そう」
 いつもの会話のようでいて、まるでいつもとは違う会話。
 いつもだったら、お互いの間にあるのはこんな空々しい空気じゃなくって、気安くて柔らかくて、温かな空気だろうにって、それだけで、もう胸が潰れるほどの悲しみが押し寄せてきてしまう。
 「俺、牧野とは別れないよ」 
 「……っ」
 「そう言ったら、きっとお前を困らせてしまうんだろうね」
 「……類」
 「おいで」と、手を差し伸べられて、躊躇するあたしを類はいつまでも待ってくれる。
 これまでのように。
 けっして急かさず、強いたりはせずに、ただあたしの決断を待っていてくれた手。
 おそるおそるその手に手を乗せると、類に引き寄せられ、強く抱き締められた。
 …あたしの大好きな場所。
 この場所を失わないためなら、なんでもできると、いつの間にかそう思っていた自分の心を、いまさらながらに思い知るなんて。
 でも、やっぱり臆病なあたしには、そんなことはできない。
 パパの命や、類のお義母さんの願い、そのお義母さんを想うお義父さんの心を無視して、自分だけ幸せになることを選べないの。
 「いいよ、わかったよ」
 「…っ、類」
 「別れてあげる」
 自分が望んだことなのに、滂沱の涙が目から溢れて大好きな彼の顔が滲んでしまう。
 類の声も震えを帯びて、わずかに湿っていたけれど、彼の横顔は決意に満ちて、強く逞しく…決して、泣いてなどいなかった。
 そうだよね。
 類は強い人なんだもん。
 「俺だけのことだったら、あるいはお前だけのことだったら、俺は絶対に承諾なんかしなかった。それだけはわかってくれるよね?」
 「類」
 「牧野が好きだ。牧野だけを愛してる。これからもずっと、お前だけを見てる、想っているから」



*****



 「社長、本日は、14時から美作商事の美作社長とお会いすることになっていますが」
 腕時計を確認する。 
 時計の針は既に大きく12時を回っていて、ランチというには少し遅くらいだ。
 でも、別にそれはそれでいい。
 今日の俺はのんきにランチを取る気にはなれなかったし、たぶんこれから会う予定の人物もそうだろう。
 …そうだよね?
 この10年間…いや、片恋時代も含めれば20年間、そしてこれからも、ずっと俺の胸の中に住み続けていくだろう人へと尋ねかける。
 …いやいや。
 彼女のことだから花より団子、何よりも人間の基本は三度の食事だからと、10年ぶりに再会する俺よりも、平気でランチの方を優先しそうだ。
 クスッ。
 「わかった。まあ、あきらの方はたぶん事情が事情だから、多少遅れたところで多めに見てくれると思うから大丈夫」
 「社長!類さま」
 「…じゃ、行ってくるね」
 この壁のドアを開けて、俺を見つけたら、きっとあの大きな目を見開いて…満面の笑顔で微笑んでくれる。
 …泣いちゃうだろうけどね。
 あんがい涙脆いから。 
 あとは、どうやってあの頑固な女を口説き落とそうか。
 ぴ~んぽ~ん。
 「は~いっ!どちらさまですか?」



~FIN~



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タイトルの、ずっと、の部分を深く知りたかったのが本音です~!
ずっと、別れてから10年間どう見ていたのか、何を思っていたのか、互いにどう変化したのか、、、
10年の時を経て、つくしが飛び込んでいける用意ができたのか…
妄想することがたくさんです!
中編だからか、そんなにシリアスではなかったかな?
これが長編だと激シリアスになりそうですね。
それにしても、本当に三時間更新、無理されないで下さいね!
果てしなく底抜けに応援はしておりますが笑

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