「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日⑤

愛してる、そばにいて0256

 ←ずっと君だけを見ていた2 →ずっと君だけを見ていた3
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 楓との不毛な会談を終え、司は咥えタバコで廊下を歩いた。
 たまに吸うこともあったが、かつてのつくしがそれを嫌い、滅多に喫煙することなどなかったというのに、ここのところこれが手放せない。
 一種の精神安定剤の変わりであることは、自分でも自覚している。
 …マジで、ざまぁねぇな。
 そう思う。
 これが人も羨む天下の道明寺司の実態。
 けれど、一時の絶望感が過ぎてみれば、お馴染みの虚無感があるのみで、それもいずれ消え失せてしまう感情の一つであることはわかっていた。
 つくしの存在が、彼の心に色を作っていた。
 彼女が司に笑うことを教え、愛を教え、幸せを教えてくれたのだから、彼女の喪失とともに、それらが消えてしまうのもまた必然だったのだろう。
 どのみち彼のものではなかった。
 略奪と束縛の末に、彼女を騙して掠め取ったものでしかなかったのだ。
 見るともなく窓の外、広大な中庭を見る。
 幼い頃から過ごした屋敷の庭だったが、特に感慨もなく、そこに愛する妻や息子の姿がなければ、単なる景色でしかないというのに、なぜか今そこに二人の姿が見える気がした。
 『かぁ~い、ダメだよぉ、迷子になるよぉ~』
 つくしの声が聞こえる。
 『平気、へいきぃ。お父さん、今日はお仕事早く終わって、一緒に遊んでくれるかなぁ』
 『ん~、どうかなぁ』
 そんな二人の笑い声までもが聞こえて、司はタバコを咥えたまま、一人わずかに微笑む。
 「………副社長」



*****



 時計を気にし出したつくしの様子に、桜子も一つ頷き、手に持っていた紅茶のカップをテーブルに戻す。
 「あたし、ソロソロ行くね」
 「ええ、一度お屋敷に寄られるんでしたよね?」
 「まあ、多少は持って行きたい荷物もあるし」
 帰る…ではなく、行く。
 桜子と知り合って以来、道明寺邸に『帰る』と言い続けていたつくしが、『行く』というその意味。
 「戒くんとは?」
 「……先週、一応、ロスのお義姉さん…椿さんのお屋敷で会ってきたかな」
 「そうですか」
 なにを話し、どう別れを交わしてきたのか。
つくしは語らないし、桜子も聞くことはしない。
 ただ、俯き加減の泣き笑いの無理をした顔が、すべてを物語っていた。
 人はすべてを手に入れることはできない。
 何かを得ることは、何かを失うこと。
 けれど、失ってしまったとしても、消えてしまわないものもある。
 「お住まいは決まってらっしゃるんでしたか?」
 「…うん、まあね」
 複雑な顔。
 「正当な理由で得たものです。そんな顔される必要もないというのに、いつまでも先輩だけが拘っても仕方がないでしょ?」
 「……そうなのかな」
 それでもつくし的には、そう簡単に割り切れるものでもなかった。
 「潔癖さは時に子供の戯言です。現実を知らない故の愚かさだと言わざる得ないでしょう」
 「桜子、あんた、キツイね。やっぱり」
 「あら、ありがとうございます」
 にっこり笑う桜子の顔はまったく悪びれない。
 「お屋敷までお送りしますよ」
 「え~、いやぁ」
 つくしの顔に浮かんでいた困惑は遠慮ではなかっただろう。
 そして、桜子もそれがわからないほど鈍感ではない。
 「もちろん、私はこちらでお別れします、車と運転手だけお貸ししますから。なにも…永遠の別れというわけでもないですしね」
 「桜子」
 「先輩とは、道明寺若夫人ではなくなった後も、一個人としてお付き合いしていただくつもりですからね。それにその方が、戒くんの今後の様子もわかりやすいと思いますし」
 「……ありがと、桜子」
 「さあさあ、さっさと行っちゃってください。湿っぽいのは嫌いですよ」
 桜子の物言いがおかしい。
 むしろ泣きそうなのは桜子の方だ。
 サバサバとして意地悪で、それでいて情の厚い彼女という人を、つくしもいつの間にか好きになっていたことに気が付く。
 …そうだよね。
 情が厚いからこそ、それだけ他人を愛して、…憎んでしまうのだろう。
 言われたとおり、見送る桜子に会釈をして、つくしは部屋の出口へと向かう。
 しかし、ドアの手前で立ち止まった。
 「…ねぇ」
 「なんですか?」
 「あたしにとってのこの10年間っていったいなんだったんだろうね」
 そして、司にとっての10年間とは、本当に現実にあったものなのだろうか。
 誰かの夢だったのではないかと、そんなことをさえ思う事がある。
 「さあ、どうでしょうか。先輩ではない私にはわかりません。今の先輩がわからないように、ね。でも、もしかしたら、いつかわかる日がくるのかもしれません」
 「………」 
 「先輩の中にいる先輩が、いつの日かその日々の意味を教えてくれる、そんな気がするんですよ」
 「……そう、かな」
 無意味なものだったとは、司を憎んで裏切ったつくしにしても、なぜかそう思いたくなかった。




web拍手 by FC2

関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【ずっと君だけを見ていた2】へ
  • 【ずっと君だけを見ていた3】へ

~ Comment ~

NoTitle

原作でも桜子が好きでしたが、このストーリーでもやはり好きですね。なんだかんだいって、つくしの味方になってくれて、未熟なつくしの代わりに色々と考えてくれる。つくしも16歳になってから辛いことばかりでしたが、桜子という友達ができたことは救いだったと思います。

それにしても、皆さん頭いいですね!私、なんの疑いもなく神崎さんが妊娠しているものばかりと思っていましたが、確かに怪しいですよね。何回も司を騙して性行為をさせるという作戦が失敗したからの苦肉の策に思えなくもないですね。いずれにしても神崎さん…可愛い顔してなかなかの悪よのう 笑

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

戒君とは離れて暮らすことになったのですね…
まだわかりませんが、今現在お腹の中に跡継ぎがいる上で、戒君まで道明寺家にいることは…
戒君が不幸にならないことを願うばかりです。
神崎さん、どうかこれ以上嫌いにさせないで、と思いますが、こういう情の激しい人って、やっぱり自分と愛する人の子が一番!他の者は排除してでも…と思いそうで怖いです。
つくしと面会することはあるのかな…
いずれ父親に似て?!荒れることがあっても、つくしの存在を忘れないでいて欲しいです。

過ぎ去った10年の意味は…難しいですね。
嘘で塗り固められた上に成り立ったものが、果たして意味があるのか、他人からは評価できないですもんね。
いつかつくしが意味を見出だせるのか見届けたいと思います。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

NoTitle

つくしは戒くんを手放すことになったんですね・・・
でも楓は戒くんがいるのに神崎さんのお腹の子をもう跡継ぎとか言ってたし
戒くんはこのまま椿さんとこで暮らすことになるのかなぁ?
それともそれでも司達と暮らすのか?
どちらにしても楓はつくしの産んだ子だからということで
最初から戒くんのことを跡継ぎと認めてなかったし微妙な立場で可哀想・・・
司や神崎さんが苦しむのはある意味因果応報ですが
戒くんは可哀想です。
そういう意味で二人の離婚に直接関わって
楓とつくしの密談の場を用意したり薬を渡した桜子も司の親友美作さんと上手くいくのかな?
つくしも息子は結局手放すことになりましたしどうなんだろう。
まあでもよく考えたら戒くんは今後グレる予定ということなので
つくしが引き取っててグレてる息子ほったらかしで
花沢類や他の男性と恋愛なんてしてたらつくしが叩かれそうですよね。(笑)
司や戒くんの生活がどうなってくのか
つくしがどんな生活をしてどうやって「昏い夜」みたいな屈折ぎみな花沢類と再会して親しくなっていくのか楽しみです。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【ずっと君だけを見ていた2】へ
  • 【ずっと君だけを見ていた3】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘
女性に大人気!ビジネスから恋愛相談まで全部500円~!  
価格満足度97%、日本最大級のココナラに今すぐ登録!!

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘