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ずっと君だけを見ていた…7話完

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 「じゃ、また明日ね」
 『うん、おやすみなさい。ちゃんと朝、寝坊しないで起きてね』
 子供にするみたいな注意をして、切れた電話に苦笑する。
 牧野の方がよほど子供みたなくせにって。
 いくつになってもうっかりで、自分が‘非力な女’なんだという自覚がない。
 たしかに普通の女なんかより、よほど逞しくて修羅場に慣れてるかもしれないけど、男の力に勝てるわけがない。
 それにたとえ雑草だって枯れることがあるんだよ?
 「SP。やっぱり、牧野につけるかな」
 内緒でつけてうっかりバレたりすると、それはそれで凄い怒られるよなぁ、って思わなくもないけど。
 まずは牧野の安全が第一なのは言うまでもない。
 これまでは本人も言うとおり、たとえ俺と付き合っているにしても、ごく平凡なOLとして生活しているのだからと、心配は心配でもある程度は目を瞑ってた。
 牧野に嫌われたくないから…ってわけじゃない。
 もし強引につけて、牧野にバレて怒らせることになってしまったって、俺には彼女を言いくるめる自信がある。
 でも、そういうことじゃないんだ。
 彼女は雑草。
 牧野が自分をそう称する時のように、温室育ちではないからとかそういう意味ではなく、これまでの牧野は野に生きて、人に縛られることなく、自由に生きてきた女だから。
 今はまだ、実感はないかもしれないけど、俺たちの世界は華やかなだけでなく、まるで籠の鳥のように自由を制限された世界で、牧野が生きてきた世界とはまるで違う。
 たぶん、俺は怖いんだ。
 牧野の生活をまるで変えてしまうことで、自分がいったいこれからどんな窮屈な世界に飛び込もうとしているのか、牧野が知ってしまうことを。
 もしそれで…牧野が俺に愛想をつかせてしまったら?
 以前の俺とは違う。
 ただ牧野を見守って、彼女の笑顔を見られればいいという俺じゃない。
 一度、彼女を手に入れてしまったら、俺にはもうとても彼女を無くすことはできなかった。
 手に持っていた携帯電話をコーヒーテーブルの上にカランと転がして、
 「もう、寝よ」 
 面倒臭いこと…牧野をどう言いくるめるかとかは、明日考えることにする。
 ふわわとあくびをして、俺は寝室へと向かった。



*****



 ハァハァハァハァハァッ。
 息が切れて、バクバクと鳴る心臓の鼓動がひどく早い。
 真夜中の病院の廊下を走る俺を見る人々の白い目を無視して、ひたすら前へと進み、見えた閉じかけていたエレベーターの‘開’ボタンに飛びつき、連打して息を吐く。
 ドアがまだ開ききらないうちに、無理やり体をねじ込んで、中へと飛び込むと、エレベーターに先に乗っていた数人の人たちが、俺の剣幕に驚いて、大きく目を見開き後退った。
 …くそっ。
 遅い。
 スローモーションで動いてるんじゃないかと思うほどに遅いエレベーターに、焦燥と苛立ちが煽られ、階段を使えば良かったと、無意味な検討をする。
 冷静な頭で考えれば、どれだけ時間がかかったって、15階もの階層を走って昇るよりもエレベーターを使ったほうが早いのはあたりまえのこと。
 でも、それだけこの時の俺の頭は沸騰していて、冷静じゃなかったってことなんだろう。 
 チンッという甲高い音を立てて、目的の階に到着したエレベーターから飛び出して、ナースセンターのカウンターへと駆け寄る。
 「す、すみませんっ」 
 ギョッと俺を仰ぎ見て、頬を染める看護師がポカンとしているのを無視して、聞きたいことを尋ねた。
 「牧野っ」
 「えっ?」
 「牧野つくしは。牧野はどこにっ!?」 
 「……あれ?類?」 
 意気込んで焦る俺の背後、振り返ったそこに、俺が探していた牧野がキョトンと立っていた。



*****



 「そっかぁ、類のところに連絡行っちゃったんだぁ」
 病院のパジャマを着た牧野が、頭をかきかき、盛んに照れている。
 あった出来事のわりに、牧野の様子はごく普通だった…異常なくらいに。
 さっきまでここにいた婦人警察官の忠告が蘇った。
 『今はまだ、動転していて普通の精神状態ではないので、返って普通そうに見えると思いますが、あとでドッときますから、気をつけてあげてください』
 牧野の怪我の具合は心配に反して、大したことはなかった。
 外傷的なものは―――。
 それでも包帯の巻かれた頭や、殴られた痕跡の色濃い頬の湿布、それに手足の包帯を何度も眺め回さずにはいられなかった。
 …なんて、馬鹿なんだ。俺は。
 牧野に怖気付かれたくないからとか、世界のギャップを再確認させたくないからなんて、そんな卑小な理由で、牧野にSPをつけていなかったなんて。
 たとえ、もしそれで俺と結婚するってことに嫌気が差したとしても、少なくてもこの事態は避けられた…また笑顔を見守ることはできたはずなんだ。
 それなのに…。
 もそもそとベッドに戻って、なんやかやと直している牧野をボンヤリと眺めている俺を、牧野もいつの間にかジッと見返していた。
 「……類」
 「ん?」
 「疲れてるのに、こんな真夜中に呼び出すことになっちゃってごめんね」
 「ハァ~何言ってるんだよ」
 壁際にあった椅子をベッドのすぐ傍まで引っ張ってきて、腰を下ろす。
 とりあえず、今日のところは大事をとって一晩入院することになってるけど、検査結果を聞いて、明日には退院することになっている。
 そのあとには、警察とのあれこれ、その他もろもろ、俺が牧野をサポートしてやらなくっちゃならない。
 牧野に悟られないように顔には出さずに、頭の中で明日からのスケジュールの組み立て直しをシュミレーションする。
 …どちらにせよ、秘書に調整させるしかないな。
 俺一人でどうこうできるものじゃない。
 「俺は牧野の婚約者なんだから、こういう時こそ呼び出されて当然だろ?」
 むしろ、連絡もないなんてことだったら、それこそ地の底まで落ち込むハメになるよ。
 困った顔で、顔を伏せたりあげたりして何か言いたげな牧野の髪を、できるだけの優しさで撫でる。
 ビクリと震えるのは、数時間前にあったことの後遺症なんだろうか。
 「今日は俺も、ここに泊まるから。いろいろ考えなくちゃならないことは、明日にして、とりあえず今夜のところは、もう寝ちゃ…」
 「…類」 
 寝るように促していた俺の言葉を、牧野の静かな声が遮った。
 軽口を叩くのさえためらうような、真剣な顔。
 「類、あたしたち、今日限り、これっきりにしよう?」



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えっ!えっ!えぇぇぇーっ!!
何が起こったの?!
そしてどうして類と別れることに繋がるのー??!
頭の中に?がいっぱいで、続きが気になります!

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