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ずっと君だけを見ていた…7話完

ずっと君だけを見ていた2

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 「まったく、長く付き合っていて、30才近くまで牧野さんを待たせるとは」
 困った奴だというように、類に面差しの似た彼のお義父様が、軽く類を睨めつけた。
 「不甲斐ない息子ですまないね」
 「あ…いえ、そんな」
 優しい眼差しでそんなことを言ってくださるけど、実際には待たせたのはあたしの方で、類はウダウダといつまでも煮え切らないあたしを気長に待っててくれた。
 けっして急かさず、あたしのペースでゆっくりと道明寺を思いきれるまで。
 道明寺があたしのことだけを忘れてしまって10年。
 ホント、いろいろなことがあったと思う。
 道明寺が記憶を失ったままNYに連れていかれてしまって、あたしの心はポッカリと穴が空いたようになってしまった。
 だって、あの強烈な恋愛をした片割れが、突然、そんなものはあたしの妄想に過ぎなかったとでもいうように、あたしの存在そのものすべてを消し去ってしまったんだよ?
 フラれたとか、嫌いになったとか、そんな別れだったらきっと傷にはなっても、きっともっと早く自分の心にケリをつけられたと思う。
 それなのに、割り切れない想いを抱えたまま、あたしは一人取り残されてしまった。 
 そんなあたしを支えて、見守り続けてくれたのが類。
 そして、2年前、道明寺が定められた結婚とやらを果たして、ほどなくして子供が誕生した頃、類にプロポーズされた。
 付き合ってもいないのに、いきなりプロポーズ。
 最初はなんの冗談かと思った。
 あたしたちは、長年友達だったでしょ?って。
 なのに、道明寺とのことを思いきれるのを、ゆっくりと待っていてくれたのと同じように、類への気持ちが友情からまた再び恋愛に変わるのを待っててくれた。
 きっと辛い想いをさせてしまったこともあると思う。
 あたしのことなんて、忘れて幸せになってくれれば、そんなことを思った日もあったけど、たぶんいざそうなっていたら、道明寺の時同様、あたしの心には大きな穴が空いただろう。
 そして、今日この良き日を選んで、結婚の許しをもらいに、花沢家に来てる。
 何かと多忙なご両親だから、これまでも滅多にお会いすることはなかったんだけど、不思議にあたしはこの花沢家では歓迎されることはあっても、息子に相応しくないと拒絶されたことはなかった…一度も。
 「本当に、牧野さんにはいつも感謝していたのよ」
 「…お義母様」
 「類が…この子が、ここまで立派に自分の務めを果たせるようになったのは、あなたのおかげ」 
 「いえ、そんな」
 どうしてそんなふうに買いかぶられてらっしゃるのかわからないけど、事あるごとに、たまにお会いするお義母様からは、そんなふうに涙ながらにお礼を言われて恐縮してしまう。 
 「いや、家内の言うとおりだ。これは体が弱くてね。静養の為に海外に出がちだったし、私も仕事にかまけて、類に厳しくするばかりで…。牧野さんも知ってるとは思うが、子供の頃の息子は、ひどく内向的でね」
 「…ええ」
 それは高校時代F3からも聞いていたし、長い付き合いの中で類本人から聞くこともあった。
 第一、今だって別に外向的とは言えない性質だし、かなりマイペースな人だ。
 「一時期は会社を継がせることは私たちも諦めていた」
 「ええ、本当に」
 繊細なレースのハンカチで涙を拭くお母様は、類にそっくりな線の細い綺麗な人だ。
 たしかどこかの旧華族のお嬢様で、企業家の家系である花沢家に嫁いだ当初はさまざまな苦労があったらしい。 
 「あとは一日も早く、孫を見せてくれたらありがたいよ」
 …ま、孫。
 いや、言いたいことはわかるけど、今日はまだ婚約の報告というか許しをもらいに来ただけで、まだ結婚もしていないのに、凄い飛躍だ。
 「お義父さん、そういう話はまだまだ先ですよ」
 「何を言ってる、お前たちももう30才も間際で、それほど早い結婚とは言えないんだぞ?花沢の後継の問題もある」
 「…あなた」
 意気込むお義父様の腕をそっと抑え、首を振るお義母様の制止に、お義父様も小さく息をついて引き下がってくれた。
 「主人はこう言っているけれどね。私はのんびりでいいと思っているの」
 「…お前」
 「お母さん」
 「お義母様」
 「私の時は時代ってこともあったと思うけど、中々結婚してからも子宝に恵まれなくてね」
 …ああ、聞いたことあるな。
 たしか、類のお祖母様、先の花沢夫人との確執や、跡継ぎが生まれないことで親族からの冷たい態度にかなり苦しめられて、そのせいもあって、一時期精神的に参って海外に引きこもってしまっていたらしい…類をおいて。
 「いろいろ気苦労もあったわ。もちろん、私自身の至らなさもあったと思う。だからこそ、息子のお嫁さんには無理を強いたり、気遣いのないことはしたくないの。夢だったのよ。娘が欲しかったの。牧野さん、どうかこれから本当の母娘だと思って、仲良くしてちょうだいね」
 「……はい」
 本当にあたしは幸せだ。
 好きな人の家族に認められない辛さは十分に思い知っているからこそ、類のご両親の気持ちが嬉しい。
 あたしたちはきっと、もっともっと幸せになれる。
 この時のあたしは、それを信じて疑っていなかった。



*****



 『ホント、ごめんね。来週は一緒に行けるはずだったのに』
 いつものラブコール(て、照れる)で、開口一番に、類に謝られてしまった。
 もともと一人で行くつもりだったし、あたしのことで類にはいろいろ迷惑をかけてしまっていて、申し訳なく思うのはこちらの方だったから、そんなふうに謝られてしまうと困ってしまう。
 「大丈夫だよ。パパの新しい治療法についての説明って言ったって、ある程度は前回の治療の継続なんだからさ」
 それでも、月に一度は顔を見に行きたかった。
 もしかしたら、それほどもう長くは生きられないのかもしれないからこそ、よけいに。
 よく知らない土地で、一人、死病を患っているパパを見続けるママを労ってあげたいってこともある。
 …あたしが仕事を辞めて、あっちに行ければ良かったんだけど。
 類との結婚が決まった今となっては、なおさらそうもいかなかったけれど。
 「…それより、そのぉ」
 類には話しておかなければならないことがあった。
 言い出しにくいことではあるけど、うやむやにしていいことじゃない。
 「えっとね、新しい治療法を試みるにあたってね」
 『治療費のことでしょ?』



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幸せいっぱいの中で、どうして冒頭のようなことに…
怨恨路線?
わざわざつくしの父親を病気にさせたのも気になるし…
また続き読んできますっ!
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

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