FC2ブログ

「夢で逢えたら…全207話完+α」
第四章 夢の続き①

夢で逢えたら131

 ←夢で逢えたら130 →夢で逢えたら132
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 類に連れてこられたイタリアン・レストランは、とても美味しくオシャレで、それでいて肩も凝らないカジュアルなお店。
 ドレスコードも厳しくなく、さすがにTシャツ・ジーンズといった客はそれほどいなかったが、たとえそういった格好で入店したとしても咎められることはなかっただろうし、むしろそのお店のオシャレな雰囲気に自然と自分自身も普段とは違う自分を装いたくなる素敵さだった。
 一目で気に入ってしまったつくし同様、レンも気に入ったようだったけれど、一通りコース料理を堪能したのち、悪戯っぽく類とつくしを見て、揶揄するように微笑んだ。
 「…イイ感じのお店だけど、カップル向きだよね。俺、何気に、二人のお邪魔虫?」
 「何言ってるのよ、レンたら」
 焦っていうつくしとは対照的に、類の方は余裕ある笑みを返した。
 「ん~、そう?家族のお祝い事や、ちょっとした外食にもよく使われている店だよ。気に入らなかった?」
 「ふふ、家族ね。さすがに、キャシーと長い付き合いだけあって、類さん、抑えどころがわかってるんだ」
 「なによ、それ?」
 怪訝そうなつくしに、レンは肩を竦めて、椅子から立った。
 「今度、俺も彼女と来るよ。トイレ…と、ちょっと電話したいとこあるから少し席を外すけど、ごめん」
 「あ、うん。て、あんた、この間、彼女と別れてなかったっけ?」
 怪訝に思い問い掛けると、それには特に答えず、レンはウィンクして踵を返す。
 …はや、もう次の彼女できたのか。
 プレイボーイなわけではなかったけれど、社交的で優しく、美貌なレンはいつもモテて、常に彼女がいなかったことがない。
 つくしにとって幸いだったのは、レンが総二郎やロバートのようなタイプではなく、二股をかけるようなマネはせず、わりとじっくり付き合う性格だったことである。
 「レストルームは右奥の、フラワーアレンジメントの影だよ」
 「了解」
 見るともなしに、レンを見送っていたつくしに、類がデザートのお代りを聞く。
 「ここ、デザートも美味しいでしょ?今食べてるグラニータ(シャーベット)も美味しいけど、ジェラードはお勧め。追加で頼む?」
 「うーん、すっごい惹かれるけど、もうお腹いっぱい。今日はやめとくわ」
 「あんたらしくないんじゃない?デザートは別腹でしょ?それほど、腹にもたれるものでもないし」
 「まあねぇ。でも、ここのところ胃腸の調子が良くなかったから、あんまり甘い物は胃に嬉しくないのよね」
 類が首を傾げる。
 「体調悪いの?」
 「だいぶ、いいんだけどね。…類こそ、デザート食べないの?あんた、何気に小食よね」
 司もそうだったが、類もあまり食に対してこだわりがないように思える。
 こだわり…というより、関心自体がないのか、体格の良い男のわりには小食だし、類の方は好き嫌いも多い。
 肉はダメ、魚も苦手、ほとんどベジタリアンに近い。
 別にアレルギーがあるわけでもなく、料理法によっては食べれるものもあるようだが。
 「ホント、お坊ちゃまは、食べ物のありがたみがわからないんだから。道明寺もそうだけど、いつでも美味しい食事が食べられるせいか、食べ物に対する興味が薄いっていうか。あんたも、もう少しいろいろなものを食べるようにした方がいいわよ?」
 「じゃあ、Dr.が何か食べさせてよ?しばらく、暇なんでしょ?」
 「…まあ、失業中ですから」
 暇なのは事実だったが、その暇な原因が失業なので、お軽く言われるのもちょっとクルものがある。
 一々突っかかってもしょうがないので、つくしはサラリと流したのだが…。
 「俺に永久就職して、生活管理してくれれば、もっと食べれるもの増えるんじゃない?」
 「何言ってんだか、子供じゃないんだから…へ?」
 グラニータの最後の人匙を口にいれかけ、つくしが目を瞬かせて類を見返した。
 類の顔はどこまでも、平常どおりだ。
 相変わらず、王子様の美しい笑みでつくしを見ている。
 つくしにしてみても、聞き間違いか、別にいつもどおり深い意味がなかったのだろうと、改めてグラニータの最後の人匙を口に含んだ。
 んん~、美味しい。冷たくて、このシャリシャリ感が堪んないのよね。
 つくしのご満悦をよそに、類が懐からだした掌大のベルベッドの箱をテーブルの上に差し出す。
 「…?なに??」
 「ん、俺からのプレゼント」
 このシチュエーションは、いったい何度目だ。
 ここのところ、やたらと男性からこういった小箱を受け取る機会が増えたが、類から自体二度目。
 前回は、あわやプロポーズかと誤解してしまったが、二度目ともなればさすがにそんなに恥ずかしい勘違いはしない。
 そういえば、司に捨てられてしまった誕生日プレゼントのピアスのかわりをくれると言っていたので、またもピアスなのだろうか。
 「えー、いいよ。前にいただいたピアスだって、高価なもので恐縮しちゃったんだし。気持ちだけいただくよ」
 「そんなこと言わないで受け取ってよ、俺の気持ち。とりあえず、開けてみて?」
 期待のこもった眼差しで言われて、仕方なく手に取り、パカッと箱を開ける。
 中に入っていたのは…。
 「結婚して?Dr.。俺の気持ちは、14年前とまったく変わってない。これからは、俺があんたのことも、レン君のことも全力で守るし、支える」
 人工灯に燦然と輝く、繊細なデザインのダイヤのエンゲージリング(婚約指輪)を手に、つくしは思考が停止した。


 類にマンションのエントランスまで送られ、つくしの戸惑いをどう思ったのか二人の微妙な空気には特には触れず、レンが類に部屋でお茶を飲まないか、と誘った。
 しかしさしもの類も、さすがにさっきの今で、何事もなかったかのようにつくしと顔を突き合わせるのも難だと思ったのか(そんな繊細な神経はなさそうだけれど)、まだ仕事が残っているからと会社に戻っていった。
 部屋に入り、壁にかけてある時計を見ると時刻はもう20時。
 夕刻に早すぎる夕食をとったわりにこんな時間になってしまったのは、今日初めて会ったとは思えないほどホンのわずかな間にうちとけてしまった類とレン、その気の置けない大切な人たちとの優しく楽しい時間があっという間に過ぎていってしまったせいだろう。
 つくしは渡された指輪ケースの重みを手に持ったハンドバックの中に感じて、我知らず溜息をつく。
 「キャシー、お茶飲む?」
 「ううん、今日はもういいや。けっこうワイン飲んだし」
 「だねぇ~。さすがはキャシーの王子様。選ぶレストランもセンスいいよ。料理は美味かったし、ワインも最高!オシャレだったけど、それほど気を張るところじゃなかったよね。キャシーや俺に合わせて、あまり堅苦しいところじゃないようにセレクトしてくれたんでしょ?」
 「…うん、たぶんね」
 類と行く店はいつも居心地がよかった。
 司に負けず劣らずセレブなお坊ちゃまなくせに、昔からつくしに合わせることを厭わなかった。
 思い起こせば、つくしとファミレスやファーストフードにも入ったことがある。
 もっとも、あまり食が進んだわけではなかったが。
 「俺さ、反対しないから」
 「え?何?」
 「わかってると思うけど、俺、いつでもキャシーの味方だから。会ってみた感じ、彼は中々いいと思う。でも、だからと言って、キャシーが誰を選んでも俺は支持するし、祝福する。…まあ、それがボブ・ハーマンだったりするとかなり辛いけどね」
 「何言ってんのよ、ロバートとはとっくに終わってるって。て、いうか何の話?類とだって、そんな話してないわよ」
 少しの疚しさを感じながら、言い切る。
 少なくても、少し前までだったら本当のことだ。
 「そう?俺の勘違いかな?」
 レンの目が見透かすように、つくしのハンドバックを透かし見る。
 それに焦って、つくしが話題を変えた。
 「て、いうかさ。そんなことより、あんたの進路はどうなったの?家に帰ったらゆっくり話すなんて言って、まだ、私はあんたがどこの大学を希望するのかさえも聞いてないんだけど?それによっては、私の就職先も変わってくるわけだし」
 レンの透明な眼差しがジッとつくしに注がれた。
 何とも言えない光を宿した眼差し。
 それにつくしは首を傾げる。
 「何よ?」
 「…キャシー、俺の大学の場所に合わせて、再就職先を決める気?」
 「そりゃそうよ、あんたと別れて暮らすつもりなんてこれっぽっちもないんですからね。…迷惑なの?」
 レンが大きく嘆息する。
 「迷惑…って、何言ってんだか。でも、俺、ボストンじゃないよ、志望校」
 「え?ハーバード大学じゃないの?」
 つくしが目をパチクリさせる。
 なんだかんだ言って、アメリカ最大の名門校であり、つくしの母校でもあるハーバード大学を志望するものとてっきり思っていた。
 どうやら、方向転換しなければならないようだ。
 「…まだ、ハッキリとは決まってないんだけど、たぶん、NYに留まることになると思う」
 「え?コロンビア大学っにするってこと?」
 「医大は受けない。…というか、今は受けられない。将来的にも臨床を手掛ける医師ではなくて、医学者を目指すことになると思う」
 つくしの目が大きく見開かれた。
 「…なによ、急に。あんた、だって、医者をやるって、私と同じ、病を抱える患者を診る医者になりたいっていってたじゃないの?」
 レンが困った様に、どこか自嘲を含んだ笑みを浮かべる。
 「今はまだ、いろいろと調整中なんだ。だから、ちょっと詳しくは言えない」
 「なによ、それっ!?自分のことなのに、思うとか他人事みたいに不確かなことばかり言って。あげくに、今は言えないってどういうことなの?親に何言ってんのよっ。それもこんなにギリギリになって。そんなこと許せるはずがないでしょ?」
 激昂するつくしに比べて、レンはあくまでも冷静だ。
 声が大きくなってゆくつくしの背を宥めるように撫で、ソファに座るように促すが、つくしがその手を振り払い襟首を掴み上げる。
 「苦しいって、放してよ。そんなに興奮しないで」
 「あんたが興奮させてるんでしょ?研究者になるなら、今の専攻でも十分だったはずなのに。研究室は性にあわないってあんた言ってたじゃないのよっ!?それなのに、なんでっ。納得できないわよ」
 「それは…そうだとは思う。ごめん、でも、どうしても必要なことなんだ。それに、医師になることを諦めるわけではなくて、今は時期じゃないってことかな」
 あくまもあやふやなレンの態度がわからなくて、つくしはさらに問い詰めようと詰め寄った。
 「レンッ!」
 ピンポーン。
 「…」
 「……」
 「…レン、この話、中途半端じゃあ、終わらせられないわ」
 ピンポーン。
 「じっくりと、詳しく話してもらうわよ」
 「…困ったな」
 ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。
 何気に、大事な話の途中。
 インタフォーンの呼び出しを、無言の同意で無視していた母子だったが、しつこくならされ続ける呼び出しに、壁掛けの時計を確認する。
 なんだかんだと、20時に帰宅から1時間以上の時間が過ぎていた。
 放置しているうちに、ますますインターフォンの呼び出し音はせっかちに、暴力的に?鳴らされ続ける。
 ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。ピンポー、ピポッ、ピッピッピッピコッ。
 「…出たほうがいいんじゃない?」
 「誰よ、こんな時間にまったく」
 ボヤきつつ、
 「はい、どなたですか?」
 インターフォンの液晶画面を覗き、応答する。
 『おいっ!てめぇ、いつまで待たせるんだ!?さっさと、下のロックあけろっ』
 こめかみに青筋を浮かばせ、鬼の形相でわめきたてる司の美貌が、画面一杯に広がっていた。




web拍手 by FC2

 
関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【夢で逢えたら130】へ
  • 【夢で逢えたら132】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【夢で逢えたら130】へ
  • 【夢で逢えたら132】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク