「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日⑤

愛してる、そばにいて0248

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 シャ―――ッ。
 酔でわずかに濁っていた思考能力が、シャワーの冷たい水に覚まされるのを期待していたというのに、先ほどからポッポッと火照る熱が司の体内を苛んでいた。
 ボワッと滲む視界に顔を顰めて、フラついた体をシャワー室の壁に付いた両手で支える。
 体調変化は、急激に訪れた。
 つくしと話している時には全く感じていなかったというのに、時間の経過と共に疼く体の芯の熱は異常なくらいだ。
 …なんだ?
 篭った熱が、普段は理性で抑えている‘女’への渇望と欲望を呼び覚ます。
 司にとって欲望とはただ一人の女へと向けられるもので、おかしいくらいに彼女に溺れて他の女に興味を抱けない。
 だというのに、彼女が望まぬなら一生涯手を触れないことさえも覚悟していた。
 それなのに、つくしがまた再び、彼との関係を変えようとしている。
 ずっと感じていた違和感が更に強まり、脳裏に点滅する危険信号がうるさいくらいに彼へと警告を発していた。
 彼の野生のカンが告げている。
 何かがおかしいと。
 それでも。
 …関係ねぇ。
 先程思ったことと同じ事を思う。
 彼女に滅ぼされるのならば本望ではないか。
 たとえこの夜限りに、もう二度と明日という日を見れないないのだとしても、それでも彼女を再びこの手に抱くことができるのなら。
 …あいつ、あんなにウソが下手くそで、保身とかできるのかよ。
 「くっ」
 笑う場面ではないと自分でも思っていたが、気が付けば笑ってしまっていた。
 もしかしたら、自分を殺そうとしている女の保身を心配してやるなんて。
 …バカじゃねぇの
 そう思うのに。
 もしも他人が自分と同じことをしていたとしたら、彼はその相手を思いっきり蔑み嘲笑ってやっていたことだろう。
 自分を愛することもなく、幸せだと笑ってくれない女に執着して、自分ばかりか、その女さえも不幸へと引きずり込んでいる。
 だが、司はそれでも幸せだった。
 愛する彼女が、たとえ彼を憎んでいても、傍にいてくれたから。
 だから、手放してやれない。
 けれど、自分が死んだ後になら、彼女を解放してやることができる。
 …本当は、俺が死んだ後にだって、誰にも渡したくねぇけどな。
 とんだ狂恋だ。
 我ながら、つくづく呆れ果てる。
 キュッとシャワーの蛇口を捻って水を止め、真っ直ぐに伸びた前髪から流れ落ちてくる水滴が、顔に落ちてくるのを鬱陶しく拭う。
 「たとえ、お前が俺を殺そうとしているのだとしても、俺はお前を愛してる」
 ただ、ただ…彼女のその後が心配なだけ。
 つくしと彼女の産んでくれた我が子が、これ以上の不幸と苦悩を背負うことがないよう、ただそれだけを司は案じていた。
 …お前を守る男でありたかった。
 憎まれる男ではなく、彼女を守って頼られる男に。
 …いつの日か、俺はあいつに殺されてやる日が来るのかもしれない。
 それが今夜ではない保証はなかったけれど。



*****



 深呼吸一つして、乱れてしまった髪を整える。
 その動作で、つくしの脳裏に先程司に触れられた感触が蘇って、ドキリと胸が音を立てたのはきっと単なる反射だったのだと自分に言い聞かせる。
 司が消えた寝室へと足音を忍ばせ近づいて、そっとドアに耳をあて室内の気配を探る。
 わずかにドアを開けてみれば、すでに司の姿はなく、微かに聞こえる水音に彼がシャワー室へと篭ったのだと知れた。
 …早く。
 これからは迅速に…そして慎重に行動しなければ。
 『お前に傍にいて欲しいだけだ。一生お前に触れられなくても耐えてみせる』
 そう言った男の苦しそうな顔が、何度も何度も脳裏に浮かび上がってはそのたびに、胸の奥にツキンと軋るような痛みが走って、つくしを呻かせた。
 これはたぶん罪悪感なのだ。
 そう自分に言い聞かせても、他人ばかりか自分にさえ嘘をつくのが下手くそな自分は、自分を誤魔化しきれずに迷ってばかりだ。
 それでも、やり遂げなければならないことはわかっている。
 一時の感傷に身を任せてしまうことはできない。
 「…新しい自分を手に入れるんだ」
 人生を生きなおすのだ、と心を戒めて。
 携帯のアドレスを探し出し、ただ一つの名前をタップする。
 『はい』
 「…あたしです。道明寺…つくしです」
 もちろん相手は、電話の相手がつくしだとわかっていた。



*****



 「ハァ、ハァ…」
 体中の熱が上がって、鋭敏になった全身の神経が僅かな刺激さえも痛いくらいに伝えて、心臓がドキドキと激しく動悸打ち、息を荒がせる。
 最初は火照ってるくらいだった皮膚の熱さが焼け付くように変わって、いまでは耐え難かった。
 「くっ、毒でも盛り上やがったか」
 なんだか奇妙に楽しい気持ちが湧き上がって、一人そんな自分を笑う。
 体調の悪さは、とてもそんな呑気な気分ではなかったけれど、妙にハイになっている自分を司は自覚していた。
 トントン。
 遠慮がちなノックの音がした時には、もしかしたら一瞬意識を飛ばしていたかもしれない。
 …来たか。
 もう一度小さくノックをして、
 「…道明寺?」
 遠慮がちにドアを開けたつくしがドアの隙間から顔を覗かせ、ベッドに横たわった司へと視線を向けているのが真っ暗な闇の中でもなぜかわかって、司が薄らと微笑む。
 司のいる寝室ばかりか、居間の電気も消しているようで、つくしの姿は単なる影のようにどこか頼りなく、不確かだった。
 ソロリソロリと、まるで怯えた仔猫のように、足音を消して歩み寄る女のシルエットと共に、ほんのりと甘く熟れた香りがシルエットの女の方からふいに濃厚に匂って、司の脳を甘く蝕む。
 …牧野、牧野……つくしぃっ。
 女のほっそりと華奢な手が、ベッドの司へと伸ばされる前に、司がその手首をり引き寄せて、一気にベッドへと押し倒す。
 「……ぁっ」




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駄目だ…
涙腺決壊です。
司の気持ちが…切なすぎる。
まだ、今ならやめられるよ!!と願わずにいられません。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

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