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「夢で逢えたら…全207話完+α」
第四章 夢の続き①

夢で逢えたら129

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 十数年ぶりに乗る類の運転技術は、大学生時代の彼の運転とは雲泥の差で、彼らしいスムーズかつスマート。
 司の運転もとても上手なものだったけれど、類の場合はどこまでもマイペース。
 レンとつくしは高級車の後ろ席に並んで座った。
 「知り合いでもいたの?類」
 「ん?」
 「なんだか、厳しい顔してたけど」
 「んん~」
 「ホントはトイレに行きたかったわけでもないんでしょ?」
 「んん~、ん~」
 前に乗り出して聞くつくしの問いにも、類の答えはマイペース。
 「…あのねぇ、さっきから、ん、しか言ってないんだけど?」
 「類さん、答えたくないってことを言ってるんだと思うけど?キャシー」
 レンの方が気を利かせて、笑い含みに口を挟んだ。
 言い当てられた類も、チラリとルームミラーごしに二人に視線を合わせて、微笑を浮かべる。
 「もうっ!類ったら」
 「はは、別に隠し事ってわけでもないんだけどね。ところでさ、それ、昔、司にもらった土星のネックレスだよね?」
 薄手のスプリングコートを脱いだ中、少し襟ぐりのアンサンブルを着ていたつくしの胸元のネックレスを目ざとく見つけ、類が聞く。 
 言われて、少しだけバツが悪そうにつくしが目をキョトつかせるものの、レンにも隣で覗き込まれて、ネックレスを無意識に隠すように握り込んだ。
 「…あ~、道明寺にもらったからつけてるってわけじゃないんだけど。ほら、綺麗じゃない?昔から持ってる唯一の持ち物だっていうのもあるし。懐かしいっていうか、つけてないと落ち着かないというか」
 あまりレンに対して、昔を懐かしんでいるとは思われたくなかったが、実際、この土星のネックレスが胸元にないと落ち着かない気持ちがするのも確かだった。
 「いや、別に頑張って言い訳しなくてもいいよ。ただ、ずいぶん久しぶりに見たな…と思って。まだ、持ってたんだ?」
 「…うん、そだね。実は、日本にいた時から持ってた唯一のものかな」
 日本にいた時…つまり、彼女が『牧野つくし』だった時から持っている唯一の品。
 「キャシー、それ、またつけるようになったの?…て、いうことは、道明寺さんにもキャシーの正体バレちゃったわけ?」
 「バレちゃった…」
 なんとな~く居た堪れない気持ちになるつくしに、レンはふ~んと言ったまま、何事か考え込む様に小首を傾げた。
 一方類の方は何の反応も見せないことが不思議で、つくしが問い掛ける。
 「類はノーリアクションなんだね」
 「俺、知ってたもん」
 「えー?…って、まさか!?類、あんたが道明寺に私のことバラしたの?」
 つくしが気色ばむのに、類が肩を竦める。
 「俺があんたに口止めされたことを口走るはずがないでしょ?司から言ってきたんだよ。この間、しばらく日本に帰ってたんだけどさ、合間に道明寺との折衝があって、トンボ帰りで何度かNYの司んとこに顔出してた時、突然フラれた。なんだか、あんたにまた惚れたことを自覚しだしたら、急にあいつ、また野生のカンが戻ったらしくてね。司って昔から、あんたのことに関しては異様にカンがいいっていうか、動物並っていうか。まあ、俺が気が付いたくらいだから」
 「…まあ、なんだか知らないけど、紛失したと思ってたこのネックレスも、いつの間にかあいつが持ってたし。確かに類にもバレちゃったくらいだから、私、バレバレだったのかもねぇ」
 「だねぇ」
 納得しあう二人に、レンが苦笑する。
 …いや、普通わかんないし。
 「て、ことは、そのネックレス、いったん司の手に渡ったわけ?」
 「うん、そ。昔みたいに貰う理由がなかったから返そうか迷ったんだけど…ね」
 そうは思いつつ、実際に返してしまったら、ひどく寂しい思いをする自分がいることも、つくしは知っている。
 現に、こうして胸元に戻ってきたネックレスに、それまでの14年間のように力づけられるような、ある物があるといった安定感があった。
 「…ガーン。じゃあ、俺のあげたネックレスはお役御免か」
 黙って聞いていたレンがお道化たように、口を挟むと、つくしが慌てだす。
 「え?あ、ううん、そんなことないよっ。普段使いはこっちだけど、ほら、パーティとか気分転換したい時はレンのお花のネックレスが大活躍だもん!」
 「いや、どっちかというと、そのネックレスの方がずっと高価だし。と、いうか、別にいいよ。元々、そのネックレスのかわりにあげたもんだしね」
 拘りなく宥めてくれるレンに一安心したところを、類が突っついてくる。
 「…俺のあげたピアスはお役御免にはならなくてもいいはずだったのに」
 「ははははは」
 乾いた笑いしかでない。
 サラリと流していたようだったが、自分のプレゼントしたピアスを司に捨てられたことは今も根に持っていたらしい。
 「ま、それはともかく、そのネックレス、肌身離さず持ってた方がいいかも」
 「は?なんで??」
 「ん~、あんたのラッキーアイテムだから?」
 「何、疑問形なのよ。私が聞いてるんですけど」
 「まあ、まあ。いいから、いいから。きっと、御利益あるよ。確か、あんた、土星人だもんね?」
 相変わらずつかみどころのない類の思考回路が理解できない。
 「…まあ、あんたがよくわからないのは昔からだけど」
 「そう?まあ、俺からのプレゼントもまた、改めて贈るし。司に捨てられちゃったままじゃ、気分悪い。…ああ、ついたよ」
 類が選んだレストランは、もちろんちまたに溢れるファミレスなんかではなかったけれど、そこそこに庶民的。
 そんなには肩も凝らなそうな、オシャレな佇まいのイタリアン・レストランだった。
 

 久しぶりの日本は、中東の空の色からしてまるで違う気がする。
 滋の住むオマーンではすでに4月にして夏季に入り、酷暑への前段階の暑さが訪れていたが、日本の気候は風さえも優しく、久しぶりに見る桜も美しい花の盛りを迎えているだろう。
 そうと思えば、空気さえも甘く優しい気がした。
 「滋さん!」
 SPたちに囲まれ、ゲートをくぐったところで、懐かしい女性の声があげられ、滋はサングラスを外し周囲を見回した。
 そして、すぐに一際きわだつ美貌の女を認め、満面の笑みで駆け寄る。
 「やっぽー、桜子!」
 両肩に手を置き、抱き寄せてくる滋の熱烈歓迎に、桜子は苦笑を浮かべつつ、旧交を喜び合う。
 「滋さん、本当にお久しぶりで、オマーンはどうですか?」
 「もう、暑い暑い。旦那の仕事の都合さえなければ、夏は毎年日本で過ごしたいくらいよ~。たまにはあんたも遊びに来てよ。夏はともかく、冬はけっこう過ごしやすいし」
 「はは。数年前、ドバイで豪遊させていただきましたからね。また、充電させていただきたくなったら、伺いますよ」
 「ドバイかあ。あたしも実は好きだけど、旦那に言ったら殺されるね。けっこう最近ではオマーンも観光に力を入れてるし、ドバイは強大なライバルだよ」
 気さくな会話を交し合いながら、コンコースの真ん中を陣取っていることに気が付き、どちらともなく歩き出す。
 「でも、滋さんも日本に帰ってらっしゃるの、ずいぶん久しぶりですよね」
 「まあねぇ。パパの体調が思わしくなければ、もう数年は戻ってこれなかったかな。いま、ちょうど、いくつか油田開発で忙しいし。親日だ親日だって言ってても、日本とばかりビジネスの重点を置くわけにもいかないしね」
 「アメリカはどうです?」
 「アメリカか~。まあ、重要な取引相手として外すわけにはいかない相手だけど、そっちは旦那が主に担当してるから、あたしはあんまり…って、そういえば、NYの司。なんだか、ずいぶん様子が変わったんだって?」
 滋がパンと両手を打って、桜子を見る。
 「ああ、様子が変わったって言うか。ニュースソースはどなたです?」
 「あきら君。イギリス支社の時には、けっこう会ってたし、先日も娘さん生まれたんだって?脂下がってたよね。あんたも会った?」
 「ええ、パーティで何度か。新しい大型物件が日本を中心に展開するものらしくって、しばらく日本に腰を落ち着けるみたいですね。まあ、奥様やお子様たちにとっては、とても嬉しいことだと思います」
 「あきら君もでしょ?子煩悩だもんね、彼。…と、司だっけ?あの能面外れたわけ?」
 滋の面白そうな顔のどこかに、司を心配する友人の顔が見え隠れする。
 かつては愛したことある男だった…桜子と同じく。
 そして、誰よりも愛した親友の恋人。
 「…道明寺さんは、変わったというより、戻った、でしょうかね。お好きな女性がいらっしゃるようですよ」
 「司がっ!?」




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