「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日⑤

愛してる、そばにいて0242

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 「お綺麗ですわ、奥様」
 鏡に映る自分は、いつもながら別人のようで、それはただ単純に記憶の中の高校生だったつくしよりも、はるかに大人になった姿だからというだけではなかった。
 そしてたぶん変わってしまったのは姿だけではない。
 ‘道明寺司’という悪魔を生み育てた道明寺家という強大な力によって、きっと彼女自身も染め変えられてしまったのだろう。
 「あ…ちょっと待って」
 仕上げにパフュームを吹きかけようとするメイクアップアーティストを制止して、つくしはバッグの中から持参のコロンを取り出してもらう。
 「まあ、素敵な香り」
 「そうですか?」
 「ええ、ほんのりと甘くて、セクシーで」
 その評価に以前は戸惑うばかりだったけれど、楓がこの香水をくれた意味をもう彼女は知ってしまったから。
 薄らと笑んだつくしの顔はきっとよほど寒々しいものだったのだろう。
 鼻白む相手から視線を反らし、耳の後ろや手首の内側、うなじ、いつもは強く香るのを危惧して、あまりつけない部位に順に指先を滑らせてゆく。
 「支度できたか?」
 鏡の向こうに、司が現れて、化粧の乗り具合を確認しているつくしの視線と鏡越しに交じり合う。
 「道明寺様。奥様は本当にとてもお美しくて…。道明寺様と並んで立たれる姿に、会場中の注目をさらってしまうこと間違いなしですよ」
 「そうか」
 ほんのりと頬を染めて、自分に見惚れているメイクアップアーティストのおべんちゃらを、司は適当に聞き流す。
 だが、つくしを映すその目にはたしかな賞賛を浮かべ、ドレッサーの前に座る彼女の真横へと歩み寄り優しく微笑んだ。
 「……綺麗だ」
 秀麗な美貌に浮かんだ笑みは蕩けるように甘く、つくしを熱の篭った眼差しで見つめてくる。
 「ドレスも宝石も、その髪型も全部似合ってる」
 「ありがとう」
 素直に礼を言うつくしへと、満足げに一つ頷き、腕時計を確認する。
 「そろそろ時間だ。行くぞ」
 「はい」
 差し出された手に手を乗せ、つくしも素直に司のエスコートに付き従う。
 メイクアップアーティストの賞賛の言葉は、まんざらお世辞でもなく、燕尾服に身を包んだ正装の司と、イブニング姿のつくしが通る先々で、ホテルの従業員ばかりでなく無関係の一般客もが、二人の姿に足を止め視線を交わし合い、小さな歓声をあげた。
 「あたし…やっぱり、どこかおかしいのかな?」
 不安そうに周囲を伺って、腕を組んだ司へとヒソヒソ声で耳打ちするつくしの顔は大真面目だ。
 「ぷっ、なんで、そうなるんだよ?」
 「だって、すごいガン見されてる」
 「お前がすげぇ美人で光ってるからだろ?なんで、そう思えねぇんだ?」
 「そりゃあ、あんたくらいの美形なら、まあ…ムカつくけど、そういう自信持ってても納得できるんだけどね。あたしは自分が十人並みなのは自覚してるし」
 多少化粧で誤魔化すことができたとしても、ベースがベースなのだ。
 それでも堪えた声音で、きゃあきゃあと歓声をあげている周囲の人々の声音には、ネガティブな感情は見受けられない。
 ところどころで『道明寺司』と言っている声も聞こえるから、単純に著名人の司が連れている女性という理由で注目を浴びてもいたのだろう。
 「お前は、俺が選んだ女だ。世界中で一番綺麗なのも、魅力的なのも当たり前なんだ。俺にしてみれば、世界中どこを探したって、お前以上にイイ女も、見る価値がある女もいない。この俺様にそんなことを言わせるお前が、人目なんて気にする必要なんてねぇだろ。俺のこと以外無視して堂々としていろ」
 「………っ」
 恥ずかしげもなく雨霰と傲慢に与えられる賞賛の言葉や、その言葉に違わぬ態度に、司の彼女へと寄せる熱い恋心が激しく迫って居た堪れない気持ちにさせる。
 「そんな困った顔すんな」
 「だって…」
 不快なのではない。
 けれど、恋愛経験など無きに等しく、経験値の低い彼女には、司のイタリア男ばりのあからさまな愛情表現に中々馴染めないし、戸惑いもある。
 そんなつくしの複雑な顔に苦笑して、彼女の頭を撫でようとして、綺麗に結い上げられ整えられた髪型に思いとどまったのだろう。
 手の行き先を変え、自分の腕に絡ませたつくしの手の甲をポンポンと小さく叩いて彼女を宥めた。
 チン。
 呼び出したエレベーターには、珍しいことに他に人影もなく、乗り込もうと待っていたのも司とつくし、彼らに付き従うSPたちだけだ。
 「お前たちは、次に来るやつで来い」
 「…道明寺?」
 不審に見上げるつくしへはチラりと視線を一瞬走らせたのみで、司はかまわず彼女の手を引き、彼の命令を受け待機するSPたちの間を通り抜けて、無人のエレベーターへと乗り込む。
 ホンのわずかにできた二人っきりの時間。
 何を言われるのかと戦々恐々、エレベーターのドアが閉じるか閉じないかのタイミングで、つくしが口を開きかけるのを司が先制する。
 「どういう心境の変化なんだ?」
 「……え?」 
 下昇してゆく階数表示を眺める司の横顔は、手持ち無沙汰にしているようにしか見えない。
 しかし、何食わぬ会話を続けているふうを装っているだけで、実際には彼が何も感じていない…緊張していないわけではないことは、今のつくしにはなぜか察することができた。
 それは、彼らしくない弱々しいくらいのひっそりとした小さな声音ゆえだったのかもしれないし、もしかしたら、ただつくしが勝手にそう思い込んでいるだけのことなのかもしれなかったけれど。
 ぼんやりと司の横顔を眺めてつくしが返答を返しあぐねているうちに、当然のことだがエレベーターはあっという間にパーティ会場のあるフロアへと辿り着いてしまう。
 エレベーターを降りてしまえば、再び衆人の視線に晒されるのはあきらかで、こうした話題をあえて掘り下げたくないつくしにとって、あとで再び司に同じ質問をされたくないと、急いであたりさわりのない返事を選んで返す。
 「言ったでしょ?あんたと向き合いたいって。…根負けしたのよ。どうせ、一生このままでいなければならないなら、与えられた環境の中で自分のできることを探したいの」
 「………」
 「お屋敷にこもってただ机に齧りついて、ただ漫然と時が過ぎるのを待っていても、何一つ変わることなんてないでしょ?だから…あ、着いたよ」
 チンと音を立てて開いたドアの向こうの人影に、つくしは軽く手を置いた司の腕に軽く触れ、顔を見上げてエレベーターを降りるように促す。
 「これまで戒の父親のあんたは見せてもらった。今度は…一人の男としてのあんた、今の道明寺司を見極めてみようって、そう思ったのよ」
 「………」
 「………」
 いつの間にか一般人も通りすがる廊下を通り抜け、今夜のパーティの招待客たちの集うパーティ会場のある一角に辿り着くと、さすがにあからさまな歓声や無遠慮な視線は途絶え、かわりに彼を彼と知り、嫉妬や羨望、彼の隙を虎視眈々と狙う視線に、隣に立つ司の雰囲気や表情が一瞬で変わる。
 「見せてやるよ、この俺の全部をお前に」
 …だから。




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余談ですが、イタリア男ばりにつくしを誉めちぎる司大好きです!
香水の意味が気になりますね…
やっぱり嫌な予感しかないですが笑
司も牽制しつつ、でもやっぱり…ってとこでしょうか、、、
幸せな気分にしておいて落とすのはツラいですね。。 。
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