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「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日⑤

愛してる、そばにいて0237

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 つくしの指先に抓まれユラユラ揺れる球体は、シャンデリアの明かりを反射してキラキラと輝いていた。
 「あいつ…なんで、あたしに今更こんな物くれたんだろ」
 屋敷内でこそ、高校時代の金銭感覚や経済事情そのままに、ほとんど質素なくらいのつくしだったが、そこはやはり司や戒、道明寺家の世間体というものを慮って、外出のおりにはそれなりの格好を心がけていたし、パーティでは触れるのも恐ろしいような高価な宝飾品を身につけて出席することもある。
 それらすべては司の稼ぎや道明寺家の資産から購入されたもので、つくしにとって借り物のようなものではあったが、それにしても、あらたにこうしたプレゼントをもらったところで似たようなものだ。
 そう、思うのに…それでも、それら日常の中にありふれて用意されたものとは異なる特別な感慨を、抱かざるえなかった。
 たとえ、嫌いな男からの贈り物だったとしても。
 …たしか、今のあたしには子供っぽいって、言ってたのに。
 「昔…約束してたとか言ってたけど」
 どういう経緯での約束なのかつくしは知らないし、第一彼女が司の妻だった間のことなどまったく憶えてもいないのだから、それこそ時効だろう。
 「これってやっぱりオーダーメイドだとか言ってたっけ。たくさん持ってるんだから、わざわざこんなものくれなくてもいいのに」
 金持ちのやることだ。
 深く考える必要もない。
 結局、そう結論づける。
 「はぁ~」
 溜息。
 トントン。
 「………」
 トントン。
 二度目のノックの音に、つくしもさすがに聞こえなかったフリを決め込むことができず、仕方なく入口のドアの方へと顔を向ける。
 『……まだ、起きてるんだろ?』
 案の定、司だ。
 …まあ、それ以外にないだろうけど。
 返事をするべきか、それともこのまま寝たふりを決め込むべきか。
 決めかね、迷い迷いドア口へと向かいかける。
 が――。
 …おっとっと。
 無造作に手に引っ掛け握り締めたままだったネックレスを、慌ててバックの中へと再び仕舞い込んで、バックごと手近の引き出しに突っ込む。
 司がドアをノックしてから、つくしが返事もせずに放置して、それなりの時間が経ってしまっている。
 …もう、諦めたかな。
 諦めてくれないだろうか。
 そう思いつつ、ドアノブに手をかけ、おそるおそる扉を開ける。
 「なんだ、やっぱりまだ起きてたじゃねぇか」
 つくしを見て嬉しそうに微笑む司の顔に、ドキリと胸が鳴った。
 『愛しているからといって憎まないわけではないように、憎んでいるからといって愛せないわけじゃない』
 ふいに、本当にふいに、桜子のそんな言葉がつくしの脳裏に甦る。
 「もし、まだすぐに寝ないのなら、少し付き合わねぇか?」
 「…また、天体観測?」
 「ふっ、お前がそうしたいんなら、いくらでも付き合ってやるが、今夜は無理だな」 
 つくしの背後、ベッド脇の窓の外を司に顎でしゃくられ、つくしもすぐに思い出した。
 「あ、そっか…雨」
 「だな。けっこう土砂降ってっから、星どころか闇夜だな」
 「…そうなんだ」
 まるで彼女の未来と、心の奥底…自分でさえよく見えない気持ちそのもののようだ。
 「晩酌、付き合えよ」
 「晩酌…って、あんたはまだお酒ダメでしょ?」
 いくら病院を退院したからといって、全快したわけでなく、当然酒やタバコについての制限は医師からも重々注意されていた。
 「チッ…じゃ、茶でもなんでもいいさ。とりあえず、ダイニング、来いよ」
 「え~、って、ちょっと!」
 誘っておきながらつくしを待たずに彼が踵を返すのは、おそらく無理強いではないという意味合いなのだと解釈するが、しかし、結局、つくしはその後を追う。
 気が付けば、いつの間にか、ほとんど構えずにこの男に相対するようになっていたことに気が付かされる。 
 記憶を取り戻した当初だったら、たとえ強引に誘われたとしても、強迫されでもしない限り、こうして唯々諾々と引き出されたりはしなかった。
 いや違うか。
 強引ではないからこそ、近づいてしまった。
 過去、どんな時も自分の意思を最優先した司が、常に彼女の意思を尊重しようとして、自分が一歩引くようになった。
 ただ一点、‘彼女を手放す’ということ以外は。
 …人は変わる。
 タマの言っていた言葉のすべてを受け入れるなど、つくしにはとてもできはしなかったが、それでもここにも確かな変化がある。
 司にも、そして、自分にも。
 それが良いことなのか、悪いことなのか…。
 それとも?
 「そこ、座ってろよ」
 ダイニングのテーブルのあたりを指し示され、つくしも素直にダイニングチェアに腰を下ろした。
 司の姿は帰ってきた時とは違う衣類を着てはいたが、いつものようにバスローブ姿ではなく、ラフなポロシャツとスラックスのままだったから、もしかしたら戒との夕食の後にもまた仕事をしていたのかもしれない。 
 …戒に悪かったな。
 疲れを理由に、久しぶりの家族団欒を望む子供の気持ちを無視して、一人寝室に籠ってしまった。
 キッチンに立つ司の姿をぼんやりと見るともなく見ていると、何やら一仕事済ませた司が、手に湯気のたった大きなカップとそれよりは小ぶりのカップを両手に戻ってくる。
 「…なにそれ」
 「オニオングラタンスープ」
 配膳されたおおぶりのカップからは、ぷぅんと美味しそうなチーズとコンソメの匂いがした。
 「え?まさか、あんたが作ったの?」
 「それこそ、まさかだな。俺は温めただけ」
 「はは、だよね」
 つくしの向かい側に座った司が手に持っているのは、自分用のコーヒーらしい。
 …コーヒーも胃にはあんまりよくないんじゃないかな。
 だが、よくよく見てみれば、いつもはブラックのはずの司のコーヒーが、焦げ茶色からキャラメル色に変じてしまっている。
 「ミルク入れたんだ」
 「……うるせぇからな」
 …誰がよ。
 そう思ったとたん、神崎の顔が思い浮かんだ。
 「なに、鼻にシワ寄せてやがんだ?」
 「…別に」
 指摘されて始めて、自分がどんな顔をしていたかを知り動揺する。
 それを誤魔化すために、つくしは話題を反らせた。
 「えっと、お茶飲むんじゃなかったの?」
 別にお茶が飲みたかったわけではなかったが、思わぬものが出てきたものだ。
 司の方も、特にこだわることがなかったのか、あっさりつくしが話題を変えたのに異を唱えることなく、肩を竦めて頷く。
 「飲みたいなら、淹れてやってもいいけど、それよりお前、さっき疲れたとか言って晩飯スキップしただろ?腹減ってんじゃねぇの?」
 「あ~」
 言われてみればそんな気がする。
 そう思ったとたん、ジャストなタイミングでお腹が自己主張。 
 ぐう~。
 「…………」
 「…………」
 気まずい沈黙につくしが顔を引き攣らせる。
 「……ぷっ」
 …めっちゃ、恥ずかしい。
 「すげぇタイミングだな、おい?」
 「う、うるさいわね」
 恥じ入るつくしを面白いと笑う司の顔は子供のようだった。
 …こんな顔するんだ。
 意外な発見。
 高校生の頃の司でさえ、こんなにも無防備な顔をしているのを見たことがない気がする。
 「いつまで笑ってんのよ」
 「ふっ、そんなに腹減ってんなら、飯持ってこさせるか?」
 「いいわよ、これで」
 食べようと思えば食べられるが、時間も時間だ、勝手に夕食を抜いて置いて、いまさら何かを用意させるなど迷惑もいいところだろう。
 「今日はこれで済ませて、明日ガッツリ食べる」
 「ああ、冷めないうちに食えよ。人間の基本は三食の食事からなんだろ?だいぶ回復してはいるけど、お前また一時期体重減らしたよな?少しでも食えるなら食え」
 「…うん」
 ズズッと、口に入れたスープはほんのりと甘く優しい味わいで、思わず、
 「おいしい」
 呟かせた。
 「良かったな」
 「…人間の基本は三食の食事だとか、あんたが言うなんて意外通り越して、なんか変だよ」
 「そうか?」
 しかも、三食どころか毎日の食事さえ抜いたりする不規則な生活を平然と送り、つい今朝まで入院していた人間の言うセリフだ。
 「わかってんなら、自分の生活の方をもっと気をつけなさいよ」
 「…そうだな」
 司も自覚があるのだろう、苦笑いだ。
 「お前が言ってたんだよ」
 「あたし?」
 もちろん、今のつくしではなく、以前の、司の妻だった女のことだと、つくしにもわかっている。
 「俺が忙しくて飯抜くたびに、俺の頭叩いて飯食え、コーヒーにはミルク入れろ、無茶すんな。それで体壊して倒れたら、結局本末転倒で、周囲にも迷惑かかるんだって説教垂れてた。すぐに殴んだよな」
 文句を言う声音には愛しさと懐かしさ。
 優しい顔がさらに柔らかく微笑んで、見惚れるほどに美しい。
 …こいつってこんなに綺麗な顔をしてたんだ。
 そんなことを驚きとともに発見する。
 整った顔はただ整っているだけで、客観的な事実として認めてはいたけれど、それでもこれまでつくしは彼の美しさを、むしろその性情に見合って、非人間的で不気味だと嫌悪することはあっても、綺麗だなんて思ったことは一度たりともなかったのに。
 司は魅力的な男だった。
 美しくて魅惑的で…憎んであまりあるつくしでさえもが囚われかねない。
 …本当だね、ミイラ取りがミイラになるって、桜子あんたの言葉もまんざら与太じゃなかったんだ。
 そんなことを自嘲と共に思って、涙が出そうになった。
 でも…あたしはっ。
 「ね、離婚するのがダメなら、別居するのはどう?タマさんに誘われたの。あたしと戒もロスアンゼルスに…あんたのお姉さんのところでお世話になるのはどうかって」




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がーん。
まさかの遠距離に(遠距離って言葉もつくしちゃんとしては違うかもしれないけど)?!
お姉さんは好きですが、つかつくの絡みがなくなるのは寂しい…
司、頑張って引き留めて!!と願いますが、どうなることやら…
また楽しみにしています。

ところで実生活において、別居してみた結果うまくいくようになった、という割合はどれくらいなんでしょうね?笑
なんとなく別居したらそのまま必要ない存在になって離婚する方が多いイメージが…

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ふにゃろば様

こんばんは^^お久しぶりです!
あまりにドンピシャな先読みに、たくさんの方々のコメント返信を溜め込んでいるにも関わらず、ついコメ返してしまいましたm_ _m
99点です!
100点かも?w

でも、内緒にしてくださいね^^(誰にいうやねんw)
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