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「夢で逢えたら…全207話完+α」
第四章 夢の続き①

夢で逢えたら128

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 「初めましてだね、レン君」
 にっこり微笑む類の顔は、つくしに見せる王子様スマイルとはまた異なり、この年頃の男性としての落ち着きと頼もしさ、大人の男の威厳に満ちている。
 大学内でも優秀な生徒として多くの教授連に目をかけられ、数々の研究機関の勧誘受けて様々な業種の大人たちに対峙することの多いレンにしても、類の類まれな器の大きさが伺いしれた。
 …キャサリンの初恋の王子様。
 類のつくしを見守るような柔らかい慈愛に満ちた視線も、つくしの類への信頼のこもった親愛の眼差しも、こんな男性がつくしを愛し守る男として横に並んでくれれば、自分にはもう出る幕もなく、心配することもなくなるのかもしれない。
 一抹の寂しさを感じながら、そんな目でいつの間にか初対面の花沢類に向い合っていたレンだったが、いつの間にか類の方も穏やかな眼差しの中で、自分を観察していたことに気が付く。
 「こんにちは、初めまして。花沢さんですね?お噂はかねがね、キャサリン…つくしから伺ってます」
 「…レンっ」
 周囲を慮って、つくしは彼女の本名を口にするレンを小さな声でたしなめる。
 「いいよ、レン君、キャサリンで。詳細な事情までは知らないけど、俺もある程度は察してるから。それにしても、よく名乗らないのに、俺の名前がわかったね?Dr.、あらかじめ、俺のこと話してた?」
 「あ~、ううん。私の他に、人が来ることも、今、話したところだから」
 「すぐわかりましたよ。花沢さんのことは、俺が子供の頃から、わりと頻繁にキャサリンの口から聞いてましたし、キャサリンが友人になって連れてくる男友達って、決まって花沢さんとタイプが良く似てますしね」
 チラッとつくしを見下ろし、類は肩を竦めた。
 「…結局、友達なんだ?俺に似たタイプって」
 「何、言ってんのよっ」
 つま先で軽く類を蹴飛ばす真似をし、つくしは焦ってレンと類、二人の大男の背中を押して、歩くように促す。
 「もう!とりあえず、移動しよう。類、車で来てくれてるんだよね?確か」
 「うん、あっちに、停めてるから案内するよ。久しぶりに、運転したから、ちょっと疲れた」 
 類の言葉に、つくしの動きが活人画化する。
 「…え?もしかして、類、自分で運転してきた?」 
 「そ、どうせだからドライブしようよ。運転手付きでもいいけど、いきなりガチで俺と向き合うっていうのも、レン君的に気を遣うでしょ?」
 「…いや、レンは子供の頃から人見知りはしないタチだけど」
 若干青ざめているつくしの顔を、体を折って覗き込み、例の純真無垢な眼差し(中年に近い男の純粋無垢っていったい…)で見つめてくる。
 「俺の運転じゃダメ?」 
 「うっ。ダ、ダ、ダメなんてことないけど、いや、ちょっと、怖いけど…まあ、うん。類が免許をとってからもう、ずいぶんたってるんだもんね」
 わずかに頬を紅潮させて目をキョトキョトさせている母の顔を面白そうに眺め、レンがクスリと笑う。
 「…花沢さん、もしかして、けっこう根性悪いです?」
 「レ、レンっ!」
 ズバリと何気に失礼なレンの物言い、つくしの方がギョッとして声を上げる。
 類は一瞬、キョトンとして、次いで笑い出した。
 その笑い方は余所行きのものではなく、つくしにも見せる彼の素の顔。
 「アハハハハ!さすが、Dr.の息子。俺にそんなこと言う人、他にいないよっ!」
 「…あのねぇ、何よ、その『さすがは私の息子』って表現。あんたの本性知ってる人は誰だって思うわよ」
 憮然とするつくしを優しい目で見返していた類が、ふと、人混みの一点を見つめて、表情を戻した。
 それほど冷たいと言った顔ではなかったけれど、さきほどまでのリラックスして緩んだ表情とは一転し、つくしとレンが顔を見合わせる。
 「俺、トイレ。悪いけど、ちょっとここで待ってて?夕飯時までまだ時間がちょっとあるけど、レン君は旅行帰りで、さっさと帰って休みたいでしょ?早めの夕食にしよう。その後、マンションまで送ってゆくよ」
 「あ、うん、ありがとう。よろしく」
 「よろしくお願いします、花沢さん」
 「類でいいよ」
 「じゃあ、俺もレンで…類さん」
 洗練された仕草で二人に合図を送って、類が踵を返す。
 その後ろ姿を見送って、つくしが小さく嘆息し、熱くなった頬に手を当てる。
 「キャシー、類さんと再会して、惚れ直した?」
 「…惚れって、別に私と類は元からそういう関係じゃないってば」
 「まあ、キャシーはね。でも、俺、道明寺さんと寄りを戻すくらいなら、花沢さんの方がいい感じ。今の時点では…だけど」 
 つくしが唇を尖らせて、レンを見上げる。
 「何よそれ。道明寺とだって、今更どうだとか、そんな関係じゃないわよ」
 「そう?」
 「そうよ」
 レンの真っ直ぐな眼差しを受け止めきれず、つくしが視線を反らした。
 「まあ、いいけど。親の恋愛に一々口出すほど、俺もガキじゃないからさ。だけど、ボブ・ハーマンやその前の彼氏みたいなタイプは俺的には嫌だな。どうしても、ってキャシーが言うなら、俺も反対しないよ、そりゃあね」
 レンがロバートやその前の彼氏…俺様傲慢男にあまり良い感情を持っていなかったことは知っていた。
 つくしにしても、別に付き合う=結婚という意識はなかったので、一々レンに紹介していたわけではなかったけれど、
母子家庭の常で、レンとの間に隠し事はほとんどなかったし、やむない事情でそれなりに面識もあった。
 「…そんなんじゃないって言ってるのに。でも、レンがロバートのこと嫌ってるなんて思ってなかったな」
 誰にでも人当たりがよく、幼い頃からいろいろな人間と接触してきたレンが他人を嫌うことは珍しい。
 それで意外に思って問い掛けると、レンは困った顔で首を傾げた。
 「別にさ、俺は、ボブ・ハーマンの傍若無人な態度や野心家なところは嫌いじゃなかった。研究者にああいう人間はよくいるし、たぶん、他の業種だって同じだよね。でも、キャシーの恋人としての行動は最低。あの人はあの人なりにキャシーを愛していたのかもしれないけど、それとこれとは別だよ。他に女がいるのも言語道断なら、あの人にとって最優先は自分でしょ?キャシーを心から大切にできる男じゃないなら、本当の意味で任せることはできないよ」
 「……」
 ホンのわずかな接触でレンはロバートの本質を見破っていたらしい。
 そのレンからして司への印象もあまり芳しいものではなかったのだろう。
 …まあ、そりゃそうだよね。レンのことをネタに私を脅して肉体関係を迫っていたような男なんだから。
 女性関係も派手だったし。
 レンに詳細を語っていたわけではなかったが、司は直接レンにも接触していたようだったし、カンが良いレンにつくしの屈託がわからなかったはずがない。
 その上で、レンがつくしの元を離れていたのは、つくしのレンには知られたくない、見て見ぬふりをして欲しいという心情がよくわかっていたからだろう。
 「キャシーが要君の主治医を辞めたって話、驚いたけど、俺は良かったと思うよ。要君には、悪いけど、正直、ホッしてる。なんだか、あの頃とは違ってスッキリした顔してるし、キャシーの思い悩んでたことって解消されたんだよね?」
 見透かされていたことにバツの悪さを感じながら、つくしは両頬に手を当て、俯いた。
 「…うん、大丈夫、だと思う。ごめん、心配させて」
 小さく頷くつくしに柔らかく微笑んで、レンは腹をさすった。
 「あー、なんだか、腹減ってきた。類さん、まだかな?」


 道明寺ホールディングスNY本社・副社長室。
 一際豪奢な執務椅子に身を埋もれさせ、長い脚を磨きこまれた執務机に投げ出していた司は、目の前に画面にリアルタイムで映し出される光景に一喜一憂していた。
 「…あれが、あの女の息子か」
 つくしの肩を叩く少年の顔は、大人と子供の境目あたり。
 背の高さからすると司にはまだ多少及ばないだろうが、すでに若者の伸びやかさと強靭さを備えていた。
 振り向いたつくしが、背の高い少年の首に両腕を回し、恋人よろしく熱烈に抱擁する。
 ガタンッ!
 青ざめた司が立ち上がり、バンッと両手を執務机に叩きつけ、パソコンの前に乗り出した。
 「な、な、何してやがんだ!あの女っ。そいつは、てめぇの息子じゃなくって若いツバメかっ!?恥ずかしかいもなく、公衆の面前で何いちゃついてやがるっ!!」
 額に浮かぶ青筋はすでに何重にもなり、もはや青筋というよりは蚯蚓腫れ。
 司が怒りに任せて、ガンガンテーブルを叩くたびに、執務室のドアがそうっと開けられ、秘書課の女性たちが呼ばれたのかと恐る恐る覗き込んでくるのを、西田が片手で押しとどめた。
 その無表情な顔には若干の呆れがある。
 「…司さま」
 「こ、こ、こ、このエロクソガキっーーーーー!いやっ、この淫乱女めっがっ~~~~っ!!俺というものがありながらっ!!!!」
 ガゴンッ!ガッ。ガッシャン。ガガガガガガッ…。 
 どうやらつくしとレンが熱烈に頬擦りしあったあたりで司の堪忍袋の緒が切れたらしく、司の暴力に晒された気の毒な…パソコンが破片を飛び散らせ、モニターに真っ黒な斜線を生み出し続けながら無残な音を立てて横たわっていた。
 「西田っ!盗聴器のスイッチ入れろ。あと、ノートパソコンだせ。もう一台、中継できるように設定してあっただろ?」
 西田は溜息をつきながら、壁際に置いてあるノートパソコンを司の執務机に移動し、セッティングする。
 「…司さま、これはハッキリプライバシーの侵害です。非常時でもないにかかわらず、このような行動をとられるのは
ストーカー行為とみなされても致し方ないかと」
 「うっ。お、俺は別に。ス、ストーカーとはなんだっ!俺はただ、またいつかのようにこの女に何か危害を加えられるようなことがあっては申し訳ないと、SPつけて、見守ってやってるだけだろっ!?」
 「それならば、SPに隠しカメラを持たせるのはともかく、盗聴器の方はいまはおやめください。いくらなんでもやりすぎです」
 司が反論しようとしたところで、パソコンのセッティングが完了し、モニター一杯に、見慣れた顔が映し出された。
 「……」
 『やっほ~、司。見てる?ちょっと、わかりすぎない?この後は、俺がDr.とレン君の面倒は見るから、もう今日は、彼らに帰ってもらっていいよ。うちのSPも何人か隠れてついてきてるしね。て、いうか、ウザイから引き取って?』
 にっこり笑って、類の顔がモニターから消えた。
 と、モニターの画面が暗転し…。
 RRRRRRRRRRRRRRRR、RRRRRRRRRRRRRRRR。
 西田がチラリと司を確認する。
 司が頷き、目の前の固定電話の受話器を取り上げ、スピーカーに切り替える。
 「…副社長室」
 「ウィンザーです。花沢家SPに拿捕されました。危害は加えないので、私とロッド、高島に帰るようにと通達されたのですが?」
 司の顔から表情が消える。 
 「帰ってよし。後は花沢専務が引き受けてくださるだろう。明日から通常任務に戻ってくれ」
 ガッシャンッ!!ガツッ、ドカッ!ガアアアンッ!!
 今度は床に転がったノートパソコンが小さな火花を散らした。
 「うちのSP軍団はどうなってんだよっ!!!花沢のSPなんかに後れをとるとはどういうこったああああぁっ。戻ってきた奴らシメてやれっ!ざけんな、類っ」
 …道明寺本社ビルに猛獣の怒声が響き渡った。




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待ってましたぁ四章

いよいよ最終章ですね

どんな結末になるのか楽しみにしてます

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