「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日⑤

愛してる、そばにいて0233

 ←愛してる、そばにいて0232 →愛してる、そばにいて0234
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 「タマ…行っちゃうの?」
 「……戒坊っちゃん」
 戒の顔は引き止めたいと言っていたが、我儘に見えて、物わかりのいい子だ。
 つくしの顔色を窺って、そして何を思いついたのか、すぐに顔を輝かせる。
 「お母さん!俺たちも、椿おばさんのところに行こうよ!」
 「ええ?」
 「ね?いいでしょ?」
 さもいいことを思いついたと、戒はご機嫌だ。
 「それもいいね」
 どう宥めるかと困ってしまったつくしをよそに、タマまでもがそんなことを言い出す。
 「どうだろうかね?」
 「…どうだろうかね、って」
 …タ、タマさんったら、まさか本気なの?
 タマの様子は大真面目…というほどではなかったが、さりとて口調は冗談とも思えない。
 「そんなの無理に決まってます」
 「そうかい?」
 「…ええ。第一、道明寺が入院していて、それってありなことですか?」
 つくしの自覚はともかくとして、今の彼女は司の妻なのだ。
 世間体的にもそうだろうが、周囲も許してはくれまい。
 「まあ、…司坊っちゃんには酷なことになってしまうとは思うけど、たぶん反対されないよ」
 「…ええ?」
 「別にロスアンゼルスと東京での別居になるにしても、永遠の別れというわけでもない」
 「…………」
 「むしろ、あんたにはその方が都合がいいんじゃないかい?」
 「…でも」
 チラリと戒を伺う。
 案の定戒は眉根を寄せ、顔を顰めていた。
 「なんで!?俺たちが伯母さんのとこにいくなら、お父さんも一緒だよ!」
 「さすがに、それは無理ですよ。お父さんにはお仕事がありますからね」
 「…じゃ、行かない」
 お父さん子の戒が同意するはずがなかった。
 「それは困ったねぇ。あたしはいい考えだと思うんだけどね」
 「うーん」
 さすがに言葉に困って、首を捻る。
 飛びつくには突拍子がなさ過ぎたし、第一話に聞くばかりで、つくし自身『椿』という人物のことをまったく知らないのだ。
 …あたしたちの事情の事知ってるのよね。
 それにしても、だ。
 「椿様ならあんたたちを守ってくれるよ」
 ハッとつくしが老婆を振り返る。
 タマの顔は至極真剣だった。



*****



 楓のスケジュールは司以上にタイトだからと、慌ただしくタマもまた世田谷の屋敷を出立して行った。
 「か~い、寝たのぉ?」
 さっきまでもう一冊本を読んでくれるまで寝ないと息巻いていた戒が、いつの間にかすやすやと寝息を立てて寝入ってしまっている。
 傍らに寝ている幼子のぷくぷくの頬っぺたをツンツンと突っつくと、「むにゃむにゃ」と不機嫌に顔を顰めて、添い寝しているつくしから背を向けて横を向いてしまった。
 「ふふふ」
 自然に笑みが零れた。
 優しい時間。
 小さな幸せがそこにあると、今のつくしにもたしかに感じることができた。
 もそもそと戒を起こさないようにベッドを抜けだして、肌蹴けてしまっている掛布をかけてやり、部屋を出る。
 スイスでは一人寝をしていたというだけあって、戒は司やつくしと一緒でなくても一人で眠ることができる子供だったからそこは楽だ。
 …ちょっとは惜しい気がするけどね。
 完全空調に整えられた室内は少しも寒さを感じることはなかったけれど、それでも子供の体温の高い人肌は存外に心地いいもので、時々添い寝している間に、つくしまでもが眠ってしまいそうになることがたびたびあったくらいだ。
 寝室に戻るために、家族の居間を通る。
 センサーが働いて、彼女の動きに合わせて明かりがついてゆくが、誰もいない無人の居間はなぜかガラーンとして、暗く殺風景な気がした。
 有名インテリアデザイナーの整えた部屋は、一家の主婦である以前のつくしの趣味も加味してセンスが良く、インテリア雑誌のごとく煌びやかで美しい。
 それでいて明るく居心地のよい部屋だったから、贅沢好みではないつくしにしても居心地が悪いなどと感じたこともなかったというのに…。
 …どうして?
 もともと、戒が寝てしまった後は、誰もいないことがほどんどなのだ。
 むしろ一人でいることを好んで、司の帰ってきた気配に慌てて寝室にこもったことなど数数えきれないほど。
 それなのに、なぜか今この場に一人でいることをひどく寂しく感じて、つくしは動揺した。
 「お酒、飲もうかな」
 悪いことではないはずだ。
 記憶の中の自分とは異なり、今の彼女は立派に成人した大人なのだから。
 しかし、口に出してはみたものの、それもなかなか食指が伸びない。
 …あのピンクのお酒、あれは美味しかったな。
 司と飲んだワインの匂いがふいに鼻先に香った気がして、ブンブンと首を振る。
 「はぁ、さすがに寝るにはまだ早いよね」
 仕方なくテレビでも見るかと、手持無沙汰にテレビの前のソファに腰を下ろす。
 両足を子供のように体育座りに抱え込んで、リモコンを手に取り、あまり見るつもりもないテレビのスイッチを入れた。
 だが、やはり見たいものなどなく、2,3お義理程度にチャンネルを回し、すぐにその気も失せて、たまたまついたテレビ番組を見るともなく見てボンヤリと画面に見入る。
 『つくし様…いや、つくしさん。今のあたしにはあんたに言ってやれるべき言葉がない。でも、これだけは言っておくよ。…むやみやたらに依怙地になるんじゃないよ』
 屋敷を出しなのタマと交わした会話が甦って、つくしは広げた両手の中に顔を埋め目を瞑る。
 「…………」
 『憎しみや恨み…過去に囚われて、目を曇らせたまま、自分の心から目を背けるんじゃなく、自分の心を真っ直ぐに覗いてごらん?』
 『…タマさん?』
 『あたしはあんたにも幸せになって欲しんだ。我慢したり、耐えることが幸せに繋がるとはあたしも思わない。でもね、人は変わる生き物だってことを知っておいておくれ』
 …人は変わる。
 『そうだよ、人は誰しもまったく変わらないでいることなんてできないんだ。たとえ望んだとしてもだよ。誰かと関わること、何かを感じること、そうした些細なこと一つ一つで人は絶えず変わってゆく。もちろん変わらないものもあるだろうけど、一見変わらないでいるようなところも、変わらないなりに成長しているんだ』




web拍手 by FC2

関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0232】へ
  • 【愛してる、そばにいて0234】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0232】へ
  • 【愛してる、そばにいて0234】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘
女性に大人気!ビジネスから恋愛相談まで全部500円~!  
価格満足度97%、日本最大級のココナラに今すぐ登録!!

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘