「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日④

愛してる、そばにいて0230

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 「は?え?」
 思いもしない不意打ちに、つくしの頭は真っ白で、とっさに有益な言い訳も思いつけずに言葉に詰まってしまう。
 「何を言われた?俺と離婚させてやるとでも言われたか?」
 司のズバリと的を得た予測に、つくしが顔色を青ざめさせ、震える手を唇にあてた。
 それだけで、もう答えてしまったようなものだろう。
 「なるほどな。目の上のたん瘤で、さんざん俺と別れさせようとしていた嫁が、今度は見事に利害一致して、今日の味方になったってわけだ。…そりゃ、あの女も喜び勇んでこんなところまで出張ってくるはずだよな?」
 自分の母親の話をするにしては冷ややかな言葉。
 「だが生憎だったな。俺たちはガキじゃない。息子の離婚問題に、親がしゃしゃり出てくる筋合いじゃねぇぞ」
 「…わかってるよ。それはあんたのお母さんも言ってた」
 「ふん?」
 「ただ…」
 ただ、なんと言えばいいのだろうか。
 楓は確かに、つくしと司を直接的に別れさせることはできないと、そう言っていた。
 だからと言って、楓の意思が二人の‘離婚’ではないと言えなかったし、おそらく誤魔化したところでこの目の前の男には通じないだろう。
 第一、つくしに誤魔化せるとも思えない
 室温が数度下がってしまったかのような錯覚に、喉や口が渇いた。
 緊張に我知らず、つくしは唾を飲み込んでいた。
 「ただ…あたしの気持ちは伝えた」
 10年前に伝えたかった叫びを、救いを、彼女の救世主になるはずだった存在へと。
 ジッと視線を反らさず、つくしを見ていた司が小さく息を吐き、顔を俯ける。
 「………お前にとって、俺は永遠に憎くて赦せない男以外の何者にもなれないのか?」
 「っ」
 「たとえお前に一生触れるな、と言われたとしても俺は許容する。ただお前の傍にいて、こうしてお前を見つめて、お前と話して、お前の笑う顔が見たい…それだけが望みだと言っても、俺の傍にいるのはイヤか?」
 一生、自分の妻に触れない。
 そんなことが果たして、できるものなのだろうか。
 司がどうのという話ではなく、人間として…雌雄別個の存在としてある生物の本来あるべき自然の欲求、そんなものを堪えて、ただそばにいるだけ、そんなことを許容できる人間がいるとは、つくしにも到底思えなかった。
 しかし、ふいに、つくしの脳裏に一つの光景が浮かび上がる。
 司の手を握り締め、彼を守るようにその腕を抱え込んで眠っていた神崎の顔が。
 たとえつくしに触れることができずとも、司がそうした欲求を満たすことができないとは限らないことに思い至った。
 おそらく司が望めば、手に入らぬ女などそういないだろう。
 むしろ数多の美女たちの方こそが、まるでその長く美しい尾羽に魅せられる雌孔雀のように、常に司の周囲に群がり、纏わりつきたがった。
 …そうだよ。自分のことを恨んで、まともな夫婦関係でさえないあたしだけに執着する理由なんかない。
 もしかしたら…いや、おそらく司が彼女を『愛してる』というのも、ある意味本当のことなのだろう。
 それがどれだけつくしの思い描く『愛』とはかけ離れたものであろうとも、それもまた多種多様、数ある『愛』の一つのカタチで、司にとっての真実なのには違いなかった。
 けれど、だからと言って、それが彼女の許容できるものであるとは限らない。
 ―――過去、つくしに『惚れてる』からと言って、彼女の意思を無視して、強引に彼女の肉体を奪い、彼女の人権を踏み躙り、司が彼女の心を壊してしまった時のように。
 そして今なお、つくしを目に見えない囲いの中に閉じ込めたまま、その囲いの中から出ること以外のすべてを与えてやると嘯いているのと同じようにだ。
 「あたしには…わからない」
 ボロリと口から零れた言葉は、つくしの本音。
 「あんたという人が理解できない」
 けれど、ザラリとした舌触りの悪いその言葉の真意は、自分でもよくわからなかった。
 なぜ、そんなことを問いかけてしまったのか。
 どうせ、この男と分かり合えないことなどわかりきっているのに、どうしてそれでもあえてその言葉の意味を知りたいなどと思ってしまったのか。
 「あんたはあたしが好きだという。惚れてる、愛してるって言ったよね?」
 「ああ」
 「だけど、あたしにはあんたの愛がわからないの」
 「…………」
 「あたしにも夢があった。いつか好きな人ができて、その人と一緒に歩いたり、見つめあったり、微笑みあって、手を繋いで…。お互いに労りあって少しづつ、お互いへの気持ちを深めてゆく、そんな夢」
 ごく平凡な少女の夢。
 いや、当時…高校生の少女の夢としても、あまりに純朴でささやかな恋への憧れ。
 「それが一瞬で粉々に壊された。いきなり嵐のように襲い掛かられて、踏み躙られて、気が付いたらボロボロにされてた…昔、あんたがあたしをあの放課後の校舎の廊下で、レ、レイプした時に言ったセリフ、そのままにめちゃくちゃにされた」
 「…………」
 「あたしの何が悪かったの?」
 指先が、手が、体が震えて、喉の奥に熱い塊が込み上げる。
 ツーンと鼻の奥の痛みとともに、盛り上がった涙を、それでも震える指先で抑えて堪えた。
 …もう過去の事。
 すでに過ぎ去った…遠い昔の傷跡。 
 それなのに、あの時の恐怖と哀しみが、いつまでも生々しく甦って、この目の前にいる男への憎しみを忘れれさせてくれない。
 …もう誰も憎みたくないのに。
 憎めば憎むほど心が寒くなるばかりで、つくし自身の心も荒んだ。
 昏い闇に囚われる錯覚に、何度夜中に飛び起きて、一人悲嘆にくれたことか。
 …忘れたい。
 すべてを。
 かつて願って叶った望みの結果が、今ここにいるつくしと司の現在だ。
 「…お前は、何も悪くなかったさ」
 「………っ」
 「ただ…」
 司がそこで言葉を切る。
 けっして司の顔は泣いてなどいなかった。
 涙など欠片とも零れてはいなかったけれど…。
 「ただ、俺がお前を欲しかった」
 …誰にも渡したくなかった。
 類を見つめるつくしの顔が、あまりにも輝いて眩しかったから。
 自分の中の影に囚われ、見失ってしまった…本当の気持ち。
 ただ、彼女に好かれたかった…そして、愛されたかった。
 それだけだったのに。
 「あんたがあたしを解放してくれないかぎり、あたしの悪夢は終わらないのよ」




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いつも楽しみに読んでいます

今日の記事グッときました。
前にブログで書かれてた通り、このあと滋にいっちゃうんですかね?
悲しいよー!

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あぁぁぁ…
ついに別離する日が…?!
司がすんなり手放すとは思えないけれど、真摯なお願いが通じるのでしょうか…
また、続きを楽しみにしています。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

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