「イベント」
愛人~2016年夏

Fake Out~慕情~ 【総二郎×つくし】

 ←Let's サマー!5 →Fake Out~哀情~ 【総二郎×つくし】
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

※写真:by ulyankina
愛人

→ asuhanaさんの総二郎編【明日咲く花】 へ
→ オダワラアキさんの総二郎編【dólcevita オダワラアキ二次小説置き場】へ
→ Gipskräuterさんの総二郎編【gypsophila room】 へ
→ miumiuさんの総二郎編【おとなのおとぎばなし】へ
→ みかんさんの総二郎編【天使の羽根(みかんの箱)】 へ




 「つくしさん」
 渡り廊下の向こう、姑の呼び止める声に歩み寄れば、久方ぶりに見る義弟の姿につくしは小さく口元を綻ばせた。
 「義姉さん、久しぶり」
 「本当、ずいぶんお見限りだったんじゃないの?」
 兄嫁と夫の弟というよりも、本当の兄弟のように仲睦まじい姿に、姑も目を細めそんな二人を見守る。
 「もしかして、結婚の報告とか?」
 穿つ兄嫁に、
 「残念ながら。単純に今度の初釜に人が足りないから助っ人として呼ばれただけだよ」
 「ああ…そっかぁ。今年のインフルエンザは猛威を奮ったのよねぇ。どこもかしこも似たような状況だし、なんとか今の体制でいくようなことを家元もおっしゃってたから、まさか涼君を呼んでらしたとは知らなかったなぁ」
 「…つくしさん」
 「あ、すみません。涼三郎さんでした」
 つい懐かしさに、初めて引き合わせられた頃の呼び名で呼んでしまってつくしが謝罪する。
 しかし、姑はそれを咎めるつもりではなかったらしい。
 「違いますよ。内輪の時ですもの、私もそこまで四角四面ではありません」
 「はい」
 「そうではなくって、総二郎さんのことよ。今日は屋敷でまだ見かけないのだけど」
 いないとわかっていて、つくしがやってきた方向、離れの方へを覗き込むような姑の仕草に、つくしが苦笑して小さく首を傾げる。
 「いえ、実は昨夜は外泊したみたいでして」
 「……そう」
 つくしの方は何気なく返事を返したつもりだったのに、むしろ姑と涼三郎の方が不快げに顔を顰め、次いでつくしを痛ましげ見やった。
 その視線が居た堪れない。
 「またなの?兄貴」
 「あ~、まあ」
 事情は既に知られているだろうから、取り繕いもようもない。
 困ったように曖昧な笑みを浮かべる彼女を見る二人の様子から、自分があまり上手く笑えていないのをつくしも悟った。
 …ハァ、まあ、しょうがないか。
 昔から嘘や誤魔化しは苦手なタチだ。
 二人が思うほど悲壮感たっぷりというわけではなかったが、つくしにしてみても夫を愛人に寝取られて、ニコニコしていられるほど能天気ではないのだから仕方がないだろう。
 「…本当に、血は争えないというか」
 「昔から兄貴はそんなだったよ」
 「はは、それを言われちゃうとあの人にも立場ないですから」
 三人三様、異口同音にここにいない男への呆れと諦めを言い募る。
 「なんだよ、人がいないところで、俺の話題を肴に井戸端会議か?」



*****



 つくしが西門家に嫁いで5年になる。
 当然、それが総二郎と結婚してイコールの年月だったが、未だに子供はいない。
 次期家元夫妻の事情としては、それも西門一門の頭痛の種だったが、今ではそれも致し方がないことだと、つくしばかりではなく周囲も総二郎本人も認めるところだ。
 苦々しく思われることはあっても、家元という前例もあるので、そのことでつくしにとやかく言う人間はいなかった。
 むしろ家元夫人以下、総二郎の兄の祥一郎や弟の涼三郎も彼女の味方だったから、なおさらのこと同情されることはあっても、つくしを責める人間はいなかったのだ。
 総二郎が家に寄り付かない。
 もちろん、次期家元、若宗匠としての勤めは十分に果たしてはいるが、一家庭人、つくしの夫としては最低限公の場で顔を合わせる以外にほとんど接触がなく、二人の間柄は他人がどう見ても冷え切っていた。
 周囲から見て、これといってきっかけもなかっただろう。
 つくしにでさえ、わからないのだから他人にわかるはずもない。
 いつの間にか総二郎が変わってしまった。
 それとも気がつかなかっただけで、総二郎が疎んじるような変化が彼女にもあったのだろうか。
 以前までの二人は誰が見ても円満で、夫婦というよりは喧嘩友達のような掛け合いで周囲を和ませ、この昏く陰鬱な家に明るい爽やかな風を持ち込んだ嫁を、西門家の家族だけではなく、彼らの身近に仕える者たちも歓迎していた。
 そして時に、どの熱烈な恋人たちよりも仲睦まじい姿を垣間見せていたというのに…。
 もちろん今だとて顔を合わせれば挨拶は交わし合うし、ある程度の雑談くらいはしてもいた。
 むしろ以前のように大声をあげ、喧嘩をしてエキサイトするはなくなっていた。
 他人行儀―――まさにそれが二人にピッタリと来る表現で、つくしはともかくとして、総二郎の方はあきらかにつくしに対して余所余所しかったのだ。
 …あたしたちの今の関係って、誰が見たって、いわゆる仮面夫婦ってやつだよね?
 自嘲とともにぼんやりと、少年の日よりも遥かに美しく、妖艶さを増した夫の秀麗な横顔を仰ぎ見る。
 「なに?明日の後援会との会合のこと?」
 「…あ、ううん。そうじゃないんだけど、え…っと、そうだね、今夜は屋敷で泊まるのかな?それとも、直接、浦安の茶道会館の方で落ち合えばいい?」
 月に半分も外泊している夫の生活に、今やつくも慣れて、帰ってくるか、ではなく、まるでここが仮の宿のような尋ね方をするようになってしまっていた。
 「ん…、そうだな」



*****



 何が悪かったのかと思う。
 総二郎との始まりは、他のカップルのようにありきたりな出会いや、逆に司との恋愛のような熱烈なスタートではなかったけれど、それでも友人から恋人へ、そして夫婦へと変わった時には、彼女だけではなく総二郎の気持ちも同じ方向を向いていたはずだ。
 それなのに―――。
 離れの縁側から、こぢんまりとしてはいても、四季折々美しい様相で彼女の目を慰めてきた中庭の景色をぼんやりと眺める。
 「…今にも消え失せてしまいそうな風情ですね」
 物思いに耽っていたつくしの背後からかかった艶やかな声に、ビクッと体を揺らす。
 「あなたみたいな溌剌として明るさを持った人が、憂いを囲ってそうして庭を眺めているのを見ると、あらためて若宗匠が憎らしくなってしまう」
 すぐ背後に立たれてしまった気配に、意をけっして振り返れば、予想とはまるで違う人物で―――総二郎によく似た美貌が、はんなりと微笑んで彼女の横に並ぶ。
 「………慶次さん」
 「春は石楠花、夏は芙蓉、秋は紅葉とここの庭は季節折々、さまざまに美しい顔を見せてくれる」
 まさか走って逃げるわけにも行くまい。
 正直、この男とここで呑気に立ち話などしていたい気持ちにはなれなかったけれど。
 「冬の、今の季節には見るものはないんですか?冬枯れた庭も、それはそれで風情があると思いますけど」
 つくしの社交辞令の返しに、慶次が柔和に目元を和ませ、ニッコリとつくしへと微笑んだ。
 「もちろん、冬枯れの風情も好きですよ。でも、そうした自然物よりも、僕の目を奪う花がここにあるというだけで」
 「………」
 口がひん曲がってしまいそうなキザなセリフも、この美しい顔から出ていると思えば、それほど鼻につかないから不思議なものだと冷静に思う。
 …ここらへんは、総や涼ちゃんにはないところよね。
 いや、もしかしたらつくしにだけは違うだけで、あのいつまでもオイタを繰り返す困った男は、他の女たちにはそんなおべんちゃらを平気で言うのかもしれなかった。
 そう自虐的に思って、つくしはふっとそんな自分の浅ましい嫉妬を鼻で笑う。
 「子供の頃はよくここに来て、祥一郎兄さんや総二郎たちと遊んだものだけれど、大人になると違う目的でついここを訪れてしまう」
 ゾワリとした悪寒に背筋を泡立たせ、つくしは慌てて慶次から離れて踵を返す。
 「待ってください」
 「…離して」
 素早い動きで手を取られ、逃げる動きを阻まれてしまう。
 そしてそのまま、素早い動きで体ごと壁へと押し付けられ、覆い被さられた。
 「ちょっ!こんなところで、いったい何をっ」
 「冷たくしないでください」
 振り払おうとした手の力は、やわやわとした優男の外見に反して存外に強く、振り払えない。 
 「やめて!あんただって、こんなところを見られたらシャレにならないでしょ?」
 つい焦りのあまり、地金が飛び出してしまう。
 「僕はかまわない。あなたのためなら、醜聞の一つや二つ、耐えてみせる」
 …冗談じゃないわよ。あんたは良くっても、あたしは困るっ。
 うっとりと目を潤ませ自分に酔った男の顔が、つくしの抵抗を男の力でなんなく押さえ込んで、顔を傾けてくる。
 「ちょっ!やだって」
 「あの日、二人で過ごした熱い夜のことを忘れたんですか?」
 「………っ」
 「何を誰に知られたとしても僕は困らない。きっと、若宗匠も気にはしないでしょうが、貞淑な妻として家元御夫妻ばかりか、周囲のものたちの人望もあるあなたとしては困るのでは?」
 サアッとつくしの顔色が青ざめる。
 押さえ込まれた手の力よりも、その言葉の拘束力に抵抗を抑えられ、暴れていた体が凍りついたように身動きがとれなくなってしまった。
 「なにが醜聞の一つや二つだよ。人払いしておいて、耐えるもクソもねぇだろ」
 背後から割り入った不機嫌な声に、揉み合っていた二人が同時に背後を振り返った。
 「まったく、どいつもこいつも人のいないところで…」




web拍手 by FC2




→ asuhanaさんの総二郎編【明日咲く花】 へ
→ オダワラアキさんの総二郎編【dólcevita オダワラアキ二次小説置き場】へ
→ Gipskräuterさんの総二郎編【gypsophila room】 へ
→ miumiuさんの総二郎編【おとなのおとぎばなし】へ
→ みかんさんの総二郎編【天使の羽根(みかんの箱)】 へ
関連記事
総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【Let's サマー!5】へ
  • 【Fake Out~哀情~ 【総二郎×つくし】】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

てっきり、総ちゃんの愛人(不倫相手?)がつくしっていう設定かとばかり思っていたのですが、なるほど、こういう設定とは斬新?!驚きでした。
愛人にも色んな意味があると思い出しましたよ。
総ちゃんとつくしに何があったのか…
今後を楽しみにしています。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【Let's サマー!5】へ
  • 【Fake Out~哀情~ 【総二郎×つくし】】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク