「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日④

愛してる、そばにいて0225

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 一同が司の病室に辿りつく前に、ちょうど担当医と出くわし、そのまま司の病状に付いて楓とつくしが説明を受けた。
 医師の説明によるとやはり司の病状は吐血という衝撃的な症状に反して、それほど深刻なものではなかった。
 もちろん、適切な治療を受けていなければ死ぬこともあったから、そう楽観視できるものではなかったけれど、それにしても癌などの不治の病などではないことに、つくしも内心ホッと息をつく。
 「では、息子の病状は、数日の入院で職場復帰も可能だということですね」
 楓の問いに医師の顔にもそれほどの深刻さはない。
 「ええ。もちろん定期的な通院と経過観察、投薬治療の必要はありますし、場合によっては慢性化することもありえますので、根治治療は必須です。また、原因となる生活習慣の見直しや改善なども合わせて試みる必要もあるでしょう」
 「…生活習慣」
 ポツリと呟いたつくしへと、医師が大きく頷く。
 「ええ。胃潰瘍の原因の一つとしてピロリ菌の感染が挙げられますが、ご主人の場合にはこのピロリ菌の存在は見受けられませんでした。またご本人や救急車に付き添ってらした方たちのお話によると、かなりストレスや過労など胃に負担がかかるような重責を担う立場にいらっしゃるとか」
 「…そうですね」
 司の職務のことなどほとんど何も知らないつくしにしてみても、司の立場がどれだけの重責を伴うものなのか想像に難くなかった。
 「どうやら日頃から不眠を患っていらっしゃたようで、3食の食事にしてもかなり不規則な生活をされていたようだ」
 「ええ…」
 顔色が悪いことは気がついていた。
 元々ハツラツとしていたことがあったわけではなかったし、心配するいわれはないとばかりにあえてそんな彼の体調の悪さを見過ごしてきた自覚がつくしにもある。
 「体調の変化にも自覚をお持ちだったようですし、今回のことはある意味起こるべくして起こった事態だとも言えるでしょう」
 「…………」
 「人間というのは案外デリケートなものですからねぇ。一見心身ともに頑健な男性が、日々ストレスや不安を感じて、それが病へと繋がることも珍しくはないのですよ」
 正直医師の言うことはつくしにはピンとこなかった。
 いや、もちろんそれがあたりまえのことで、その通りだとも納得できるのに、司に対してだけはそれが当てはまることもあるのだという認識が、今までなかったことにいまさらながらにつくしは気がついた。
 …まるで怪物のように思っていた。
 人間的な感情など何一つ持ち合わせていない怪物。
 それがどうやら違うらしいということに気がつき出しても、それでもまだ司をある意味自分たちのように些細なことで悲しんだり苦しんだり、悩みを感じることもあるただの人間であると理解できていなかったのかもしれない。
 …ううん、違う。
 たぶん、理解できていなかったのではなく、つくしが理解したくなかっただけのことなのだろう。
 もし、司もまた自分と同じ人間なのだと気がついてしまったら、彼を憎み続けて…それだけを生きる糧のようにして、恨んだままでいることができなくなっていたかもしれなかったから。
 「…なるほど、では、今回の騒ぎは結局、息子自身の不徳の致すところというわけですね」
 冷めた声音での鋭利な言葉に、つくしが顔を上げ、ぼんやりと楓の顔を伺う。
 幼い子供ではないとは言え、まがりなりにも我が子のことだというのに、楓の顔はまるで部下の失態に眉根を寄せる管理職と言った感じで、失望もあらわに呆れだけを浮かべていた。
 …大事になることもあったかもしれないのに。
 つくしにとって、司を心配して顔を青ざめさせていたタマの方が、よほど血の繋がった肉親のように見え、司によく似た容貌の目の前の女が彼の母親であることがとても信じられなかった。
 「体調管理も仕事のうちであり、たとえ経営者ではなくどのような立場の人間であっても、職務を担う以上当然のことです」
 「…でも、病気は本人の責任だけじゃ」
 あまりの楓の口調の冷たさに、つい司を庇うように意義を唱えてしまったのはつくしの本意ではなかった。
 だが、取り付く島もないとはこのことか、楓の口調にまったく変化はなく、切り捨てる言葉は氷点下に冷たく容赦がなかった。
 「不治の病だとかいうのならばともかく、日頃の不摂生やメンタル面の弱さ、過度なスケジュール管理のミスが引き起こした事態だというのだから同情の余地はありません。…失望したわ」
 ボソリと呟かれた言葉に、他人事なはずのつくしの方が実質的な痛みさえ感じて、我知らず胸をそっと抑え唇を噛んだ。



*****



 医師の説明を終え、ちょうどカンファレンスルームを出たところで、楓を待ち構えていた秘書が歩み寄ってきた。
 「…社長、申し訳ありません」
 その一言で何事か察したのか、チラリと楓の視線がつくしへと流れて、つくしも何を問うこともせずに無言で会釈してその場を離れる。
 …はぁ。
 詰めていた息を吐き、極力背後を振り返られないようにして足早に先を急ぐ。
 正直、ホッとした。
 カンファレンスルームから司の病室まで大した距離があるわけではなかったけれど、この威圧感たっぷりの姑と二人っきりで歩く道のりが憂鬱だったのだ。 
 …こんなことじゃダメなんだけど。
 以前に顔を合わせた時には、彼女こそつくしの救い主のような崇拝めいたものを感じるばかりで、気まずいとかそうした個人的感情を抱く暇や余裕がなかった。
 けれど、こうしてあらためて相対してみると、彼女にソックリな息子の司よりもさらに非人間的な楓は、酷薄さや厳格さばかりが際立ち、とても自分に力を貸してくれたり味方になってくれるような人物には思えない。
 それでも―――、
 …あの人とあたしの利害は一致している。
 それだけが唯一の救いで、今彼女が望む自由への切符を握っている人物であることは確かなのだ。
 「タマさん、どこだろ?」
 家族ではないからと司の病状説明を遠慮して、先に司に面会しているはずのタマの姿が見えない。
 つくしたちが到着したことで役割を終え、社に戻ったあきらを見送るついでに、タマも屋敷に戻るなり何か用事を果たしに席を外したのかもしれなかった。
 病室の外に立つ見慣れたSPの姿に、司の病室の場所を教えられずとも察して歩み寄る。
 「若奥様」
 「…若奥様」
 「お疲れ様です」
 つくしの姿を認め、椅子から立ち上がって会釈するSPたちへと会釈を返す。
 「あの、道明…、いえ、主人は?」 
 「まだ薬の作用で眠ってらっしゃるようで、神崎さんが付き添っておりますが」
 「神崎さんがですか?」
 「はい」
 てっきり多忙な神崎は社の方へ戻ってしまったものと思っていたが。
 …そっか。神崎さんがまだ付き添ってくれてたんだ。
 場所を空けてもらい、小さくドアをノックする。
 トントン。
 音沙汰がない。
 「…………?」
 トントン、一応もう一度ドアを叩くが応答のなさにSPを振り返ると、頷いて応諾され遠慮がちにドアをそっと開く。
 「あのぉ?」
 ソロリソロリと病室の中へと足を進める。
 「えっと、すみません、神崎さん?……………っ!?」




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楓さんと神崎さんのスパイスが、つくしに良い影響(私の願望ですが)を与えてくれそう?!
神崎さんにはもうちょい頑張ってつくしをかき回して欲しい所です笑
司が相手にしてないのが、なんとも…ですが、そこが司の醍醐味ですよね♪
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