「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日④

愛してる、そばにいて0221

 ←愛してる、そばにいて0220 →愛してる、そばにいて0222
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 「くしゅん」
 ブルッと寒さを感じるのとほぼ同時にくしゃみが出て、再び、「くしゅん」とくしゃみをする。
 「…寒いのか?」
 薄着一枚の袖を軽く擦って、つくしは一つ頷いた。
 昼間はまだ暑い日もあるとは言え、すでに秋も半ば。
 その分夜との寒暖差は大きく、空き地の多い邸内のバルコニーは涼しく、一度自覚してしまえばかなり肌寒い。
 「もう、そろそろ日付を越えるか」
 「え?うそ、もう、そんな時間なの?」
 司が腕時計を確認して、つくしの方にも掲げて見せてくれる。
 時計の針は間もなく0時に重なろうとしていた。
 「ホントだ…もうそんな時間だなんて、全然気がつかなかった」
 信じられないことだが、それだけこの、司とのにわか天体観測会の時間が楽しく、気安かったということだろう。
 「戻るか」
 「あ…う、ん」
 踵を返した司に中へと促され、つくしも一応は返事を返すが、つい未練に空を眺め、天体望遠鏡を振り返ったまま足を止めてしまう。
 なぜかまだ離れがたい。
 この時間が終わることが惜しいのだろうか。
 …違う、星空があまりに綺麗だったから。
 けれど、それもどこか我ながら言い訳じみているのをつくしも自覚していた。
 自分の心がわからない。
 …でも。
 「なんだ?」
 「…ううん、なんでもない」
 細く小さく息を吐き出して、先に部屋に入ってしまった司の後を追う。
 スエットパンツのポケットに手を入れたまま、壁に寄りかかってつくしを待っていた司を見上げ、つくしは首を傾げた。
 「あの…今日はどうもありがとう」
 「あ?」
 「その、星を観せてもらって、凄く楽しかった、から」
 「…ああ」
 星を観せてくれとつくしが頼んだわけではないし、やや強引な誘いではあったが、それでもたしかにこのひと時は楽しい時間だったし、良い経験だったと思う。
 けれど、礼を言ってしまえば、あとはもう司といつまでもこうして一緒に過ごす理由はもうなくなってしまった。
 「えっと、あたし…もう部屋に戻っていいかな?」
 許可を取る必要などないはずだが、無言のままその場を動こうとしない司との間をとりあぐねて、とりあえず挨拶がわりに声をかける。
 が、司は何も答えようとはせず、つくしが戸惑う。
 …なんなのよ。
 「じゃ」 
 「これ」
 業を煮やしたつくしが踵を返す寸前、司がスラックスのポケットから手を出してつくしへと突き出す。
 「…は?」
 「手、出せ」
 「あの?」
 手を出せと指図されても、驚いてキョトンとしたままただその突き出された手を見ていて微動だにしない彼女の反応を待ちきれず、つくしの手を司がさっさと掴んで引き出す。
 「ちょっと!」
 ギクリと怖じけてその手を取り戻そうとつくしが手を引く前に、司がわずかに握っていた拳の力を緩め、シャランと音を立て白金の鎖をつくしの手のひらへと落とした。
 「…え?」
 掴まれていた手を離されて、すぐに引き戻した手の中に天空の惑星が煌めいていた。
 「土星?」
 「…のネックレス。探したけどねーから、ブルガリで特注した」
 「って」
 「やるよ」
 困って見上げるつくしへとほろ苦く笑う司の表情に、なおいっそう戸惑ってしまう。
 「そんな顔するなって」
 「………」
 昔、似たようなシチュエーションがなかったか。
 いや、過去何度となく繰り返された会話だっただろう。
 けれど、あの頃の司は彼女の意思など顧みることがなかった。
 自分がやりたいと思えば湯水のように彼女が必要としていない物を与え、一人悦に入り、まるで家畜かペットに鎖を付けるのも同然に、彼女の意思を確認することすらせずに自ら彼女の体にさっさとつけてしまっていた。
 さすがにピアスのような体に傷を付けるものを勝手につけられたことはないが、それでも勝手に首や指に嵌められた拘束具に、つくしの心は傷つけられ悲嘆を味わされたものだ。
 それなのに。
 「今のお前がつけるには、ちょっとガキくせぇけどな」
 ジッと手の中のネックレスに見入るつくしの頭をポンポンと小さく撫で、今度こそ司が踵を返す。
 しかし、その腕を今度はつくしがとっさに掴んで引き止める。
 「…どうして?」
 おそらくペンダントヘッドの土星にあしらわれているキラキラと光る宝石は、イミテーションや安価な輝石などではなく、本物のダイヤやルビーなのだろう。
 ひと目で高価なものだと知れる。
 ただ街角に貼られていたプラネタリウムのポスターを見ていただけで、もの欲しげだと思われていたのだろうか。
 いつかのように、『お前が欲しがっていたから』だと?
 何かを…こうしたものを彼にねだるための前振りだったのだと思われることは、彼女にとって堪らなく屈辱だった。
 「いらな…」
 「昔…約束してただろ?」
 「………え?」
 目を瞬かせ怪訝に司の顔に見入る。
 つくしからフッと視線を反らせ、だが一瞬の後には司が強い光を目に宿してつくしの目をジッと見返し、彼女を見つめ掻き口説く。
 まるで10年前の…自らの暴挙をやり直すかのように。
 ただ真摯な想いを伝えるためだけに。
 「お前が好きだ、お前に惚れてる、お前だけを愛してる。どんなお前でも、たとえこの先一生お前がこの10年間のことを思い出さず、俺を愛さず…どんなに俺を嫌って疎んじたとしても、俺はお前を愛してる」
 「…道明寺」
 「愛してる、愛してる。お前を愛してる」
 繰り返される愛の言葉。
 司からの情熱的な求愛に、つくしの頭がボウッと熱を帯びて、体の芯が甘く痺れて動かない。
 そんな彼女に甘く切なく微笑んで、司の手がそっと上がってつくしの頬へと伸びた。
 だがその手に、ビクリと体を震わせるつくしの怯えを敏感に感じ取ったのか、司の手が彼女の頬に触れる寸前、わずかな間を残してピタリと触れずに止まる。
 「けど、俺はもうけっしてお前の意思を無視してお前に触れたりしねぇ」
 …傷つけたりしない。
 頬に触れるはずだった手が下がって柔らかく、服越しの彼女の体を抱き寄せ抱擁した。
 司がホンのもう少しだけ力を込めれば、それだけで簡単につくしの息は詰まってしまう。
 彼の腕のひとふり、気持ち次第で脆弱な女の力しかない彼女など、司の好きに引き裂かれ再び従わされてしまうのだろう。 
 かつてさんざん思い知らされ、絶望の淵へと突き落とされた圧倒的な腕力の差。
 それなのに、今の司はなんと柔らかく彼女を抱きしめるのか。
 腕の力に彼女が逃られる余地を残して…、まるで壊れやすいガラス細工を腕に抱いているかのように。
 そっと優しく…柔らかく、大切に包み込んで、言葉だけではなく全身で彼女を愛していると司は叫んでいた。
 「…待つから」
 「あたし…」 
 「いつまでも、お前が俺を受け入れてくれるまで、たとえ一生でも俺はお前を待ち続ける」
 「…あたしは」
 司の熱い視線を受け止めきれない。
 そっと目を瞑ったのは…けっしてこの目の前にいる男を受け入れたからなどではないはずなのに、それなのに。
 …あたしは、たぶん逃げようと思えば逃げられた。
 それなのに、逃げることではなくつくしはそっと目を閉じ…降りてくる司の柔らかなキスを受け入れてしまっていた。




web拍手 by FC2

関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0220】へ
  • 【愛してる、そばにいて0222】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

えっ、えっ、えーーーっ!!!
つくしちゃん、陥落!?とはいきませんよね…
でも良い雰囲気になって、楽しかったのは自覚してる感じですね!
愛してる3回効きますねー!
最近3回繰り返すの流行りですか?笑
でも素敵すぎます!

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0220】へ
  • 【愛してる、そばにいて0222】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘
女性に大人気!ビジネスから恋愛相談まで全部500円~!  
価格満足度97%、日本最大級のココナラに今すぐ登録!!

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘