「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日④

愛してる、そばにいて0220

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 「いや」
 「え?違うの?」
 てっきりそうだと思っていたのに、あっさりと否定されて期待してしまった分肩透かしを食らってしまった。
 …いやいやいや、期待とかしてないから。
 「オリオン座流星群」
 「へ?」
 なんだか凄そうな名称が、司の口からポンと飛び出して驚く。
 「秋の星空に昇る星とかなんとか言って、実は明け方がいいらしいな。土星とかの惑星を見る場合は…だが」
 「え?そうなの?」
 「ああ、さすがに、夜明けとかじゃ、今の俺の状況ではとても見るのは無理だ」
 「…まあ、そりゃそうだよね」
 つくしにしてみれば、秋の星空も夏の星空も大した差がないし、 夜明かしをしてまで星を見たいほどの情熱があるわけではない。
 言われてみれば、そういえば冬の星座等々、季節ごとに見える星座が違うんだったかとか、なんとなく思い当たる程度なものだ。
 組み立てた望遠鏡を覗いては、角度を調整している司の横に立ち、その作業を見守っていたけれど、つくしも彼の言葉にわりに晴れている夜空を眺め、遠く星を透かし見る。
 「じゃあ、今は土星とか、木星とか、惑星は空には昇っていないんだぁ?」
 「そうだな。惑星をガッツリ見るなら、夏…7月頃か。ま、それはまたの機会だな。むしろ今の時期…というか、ちょうど明後日を挟んでここ数日、オリオン座流星群が見えるつーからよ」
 「へぇ?オリオン座流星群ねぇ。流星群っていうからには、獅子座流星群みたいに凄い数の流れ星が流れるってこと?」
 獅子座流星群。
 これまで星座占いくらいなもので、ほとんど天文には興味がなかったつくしでさえ知っている唯一の有名どころだ。
 11月に現れるこの流星群は、獅子座流星群の母天体である彗星の回帰に大きく影響され、年によっては流星雨や流星嵐とも呼ばれる程の流れ星を見せてくれる。
 最大で1時間に数千個から数十万個もの流れ星が出現するという。
 「さすがにそこまではな。が、それでも一時間に10個くらいの流れ星は見えるらしいぜ」
 「10個!それ、凄いじゃないっ」
 普段は見ようと思っても中々見れるものじゃないだけに、10個の数は驚ける。
 「って!そんなこと言ってる間に、今一個流れなかった!?」
 あっと目を見張っているうちに、さああっと光が走ってあっという間に流れ落ちてしまった。
 「わっ!願い事する暇なかった!」
 と、いうか、
 「え~、これ見せてくれるために望遠鏡セットしてたんでしょ?」
 …間に合ってないじゃん。
 どうやら司の方のセッティングも終わったようだが、寸前ですでに星が流れ落ちてしまっている。
 「いや、流れ星自体は、肉眼で見た方がいい」
 「はあ?」
 この立派な望遠鏡は一体なんなんだ…と、つくしの頭に疑問符が浮かぶ。
 呆れ顔で見上げてくるつくしの正直さを苦笑しつつ、司がつくしを手招き望遠鏡を覗かせる。
 とたん、広がる肉眼とはまったくの別世界。
 「ふわぁ~、凄い、月のデコボコまで見える」
 「ぷっ、デコボコ…クレーターって言えよ」
 「はは、デコボコで通じるんだから、いいでしょ」
 「あっちが三角座。そんなに派手なもんでもねぇけど、大した星座でもないわりに見つけやすいし、あんまりその手の知識に詳しくないお前でもわかりやすいはずだ」
 「あ、ホントだ、見える見える。あれなら一人でも簡単にみつけられるかも!」
 試し眇めつ望遠鏡を覗いてみたり、望遠鏡から顔を離して、肉眼で月や星を眺めたり。
 「本当は夏に惑星を見る方がよほど見応えがあっておもしれぇんだけどよ、まあ、これはこれで悪くねぇだろ?」
 「そうだね。天体望遠鏡を覗くなんて初めてだから、なんだか感動っていうか、凄いなあって思ったよ」
 「そうか」
 まんざら社交辞令でもなく、天体望遠鏡を覗くつくしの顔がキラキラと好奇心に煌めいている。
 その顔に、司の顔も自然綻んで、我知らずつくしを赤面させた。
 「なに?」
 「なにが?」
 「変なヤツだな。何赤くなってるんだよ」
 「だって…」
 …あんたがあんまりに綺麗に笑うから。
 昔から彼は人並み外れた美貌の少年だった。
 つくしもそれは承知していたけれど、しかし、一度だってそんな司を彼女が素敵ともイイとも思ったことはなかったのだ。
 それなのに…、かつて蛇のようだと嫌った、そして今も嫌い抜いているはずの男の顔に見惚れてしまうことがあるなんて。
 「ゴホンッ。それよりどうせなら、今の時期の星座を他にももっと教えてよ」
 どうせなら、今度戒とプラネタリウムに行く前に、前知識を仕入れておきたい。
 あるいは、望遠鏡を組み立てたままにしておいてもらって、角度の押さえ方さえ教えてもらえれば、次回は戒と二人で星の観測会というのも楽しそうだ。
 「……リサーチしとく」
 「ぷぷ、リサーチいるんだ?」
 どうやら詳しそうに見えた司の知識も、実は付け焼刃らしいと見当をつけてつくしが忍び笑う。
 それでも一応は、ある程度見やすい星座の位置は押さえてくれていたから、月だけはなく、わりに明るい星がいくつも容易に望遠鏡で覗くことができて、つくし的には満足だ。
 「戒にも見せてやるつもりだったんだけどな」
 「そうだね、きっと喜んだと思うよ。…眠っちゃって残念だったね」
 「まあ、仕方ないさ」
 今日の司の予定も急な変更だったのだ。
 本来ならこの時間でもまだ帰宅していないのが日常茶飯事。
 そして、いざ司に時間ができても、まだ幼児でありながら日々忙しく教育を施されている戒が遅くまで起きているのは至難の技だった。
 「秋の星座、秋の星座かぁ~。昔なんか習った気もするんだけどな」
 ブツブツと独り言を言いながら望遠鏡を覗き込んでは、
 「あ!今、流れ星流れなかった?!」
慌てて望遠鏡から顔を離し、騒ぎ立て肩透かしを食って、
 「ありゃ?」
 「…いくらなんでも、そう頻繁に流れるわけないだろ?」
と、司に苦笑されてしまう。
 「ああ~、もうっ!今度こそちゃんと流れ星が落ちちゃう前に、お願い事したいのに!」
 両手を組んで夜空を前にスタンバイするつくしの様子がおかしいと、司がクスリと笑んだ。
 「…なによ?」
 司にしてみれば、星になど願うよりも自分に願えば、この世に叶わぬ願いなどほとんどないだろうにと可笑しかった。
 けれど、それをしないのがつくしで…そして、この世のどんなに願いも叶えることができる彼の、ただ一つの願いを叶えることができるのは、この目の前のちっぽけな女だけなのだ。
 「いや、願い事って、お前はなにを願うつもりなんだ?」
 「…ん~なんだろ」
 なにを…と具体的に問われてしまうと、それはそれで悩んでしまう。
 昔だったら、残り二年が無事に過ぎて早く英徳から抜け出したい、そればかりだっただろうけれど。
 「ただ…」
 「ただ?」
 …自由に。
 自分の足で自分の人生を生きたい。
 もしかしたら、それは彼女にとって唯一無二の信仰のようなもので、実は実態などない単なる夢物語にすぎないのかもしれなかったが、無理矢理に摘み取られてしまった過去の自分が歩んでいたはずの未来が無性に懐かしく…恋しかった。
 ジッと自分を見つめ、彼女の答えを待つ司に、だがつくしは軽く首を振り小さく笑むに留める。
 それらすべてを摘み取った元凶…そして、今なお彼女を束縛し、けして離してはくれないこの目の前の男に言えるべき願いではなかったからだ。
 かつての…牧野つくし、ちっぽけで取るにたらない少女にすぎなかった、けれどそれだけに『いつか』を信じることができた彼女がけっして浮かべることのなかった儚げな笑みで言葉を濁し、別の願いを告げる。
 今の彼女に赦された彼女らしい願いを。
 「戒に友達ができますように、かな」
 「……そうか」
 司は何か言いたげだったが、つくしの横顔に浮かぶ拒絶に、結局は何も言い募ることはせずにただ小さく頷いた。




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良い雰囲気なのに、んー、やっぱり駄目かぁ…
と、いつのまにやら?!司の肩を持つ自分もいます汗
いつか土星を見る日がくるのかな…
その時は3人で幸せに観てもらいたいものです。

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