「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日④

愛してる、そばにいて0218

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 久しぶりの親子揃っての団欒。
 向かい合わせに座る司とつくしの間で、ご機嫌な戒がここのところの出来事を楽しく父親に報告する。
 「へぇ?カマキリねぇ」
 「すっごいたくさん赤ちゃん生まれるんだよ!」
 意気揚々得意げに話してはいるが、今のところ戒の話は聞きかじりで、実地の経験ではなく、まだ卵が孵化したところを見たことがあるわけではなかった。
 「虫飼うのはいいけど、寝室とか部屋の中には持ち込むなよ?」
 「ええ~?」
 「お前な、実際に見てねぇから気楽に喜んでっけど、あれは男の俺から見てもけっこう衝撃的だからな」
 「お父さん見たいことあるの?」
 『実際』のところを思い出したのか、司の顔が微妙に顰められ苦笑いだ。
 「まあ、ガキの頃だけどよ。…お前なんて、ひっくり返っちまうんじゃねぇの?」
 お前…で、司がつくしへと話をフってくる。
 「え?」
 夕食を無造作に口に運びながら、聞くともなくぼんやりと二人の会話に耳を傾けるフリで、実は内容が少しも頭に入っていなかったつくしは、二人の注視を受け、目を瞬かせて我に返った。
 「えっと?」
 「カマキリだよ、カマキリ。お前、虫ダメだろ?」
 「あ~、カマキリ?」
 そういえばそんな話だったかと、曖昧につくしが首を傾げた。
 「…まただ、お母さん、ボンヤリ!」
 「また?なんだよ、どっか具合でも悪いのか?」
 「あ…いや、そういう、わけじゃないんだけど」
 呆れ顔の戒がムッと唇を尖らせ、父親へと告げ口をする。
 「お母さん、お料理してても上の空で、俺の話にも生返事で、ずっとお昼から変なんだよぉ?」
 「昼?」
 「そっ。お昼に、バッタを獲りに中庭…」 
 「あ!そうだ。戒、お父さんにお願いしたいことがあったんじゃなかった?」
 よけいなことを戒が口走らないうちにと、つくしが慌てて口を挟んで話を反らす。
 「「お願い?」」
 異口同音、顔を見合わせる父子の顔が造りどころか表情までもあまりにそっくりで、つくしは思わず噴き出してしまいそうになった。
 ただそれだけのことで、沈んでいた気持ちが和んでわずかに浮上する。
 「ごめん、体調が悪いとかそういうんじゃないけど、ちょっと疲れてただけ」
 「…家庭教師の授業がキツイのか?」
 「それは大丈夫。むしろゆったりペースすぎて勉強にならないから、もっと厳しくしてくださいってお願いしたくらいだよ」
 「バカ、受験生じゃないんだ。がむしゃらに頑張ってどうする。ゆっくりでいいんだ。お前のペースで、お前のやりたいことを少しづつ模索してゆけばいい。無理して体壊したり、自分を追い詰めるハメになるんじゃ、元も子もねぇだろ?」
 「…そうだね」
 誰よりも無理をして、自分を追い詰めているようなハードスケジュールに日々邁進している男が、つくしに無理をするな、自分を追い詰めるなと気遣う言葉に、つくしは胸が詰まった。
 青白い顔色は依然不健康で、窶れて疲労が濃い顔にはまだ覇気があったが、それでもそんな無理をずっと続けていけばいずれは頑健な彼であってもどうなるかは目に見えていた。
 『奥様、お願いです。どうか副社長に、仕事のペースを落とすようにおっしゃってください』
 遥香の忠告の言葉が耳に蘇る。
 「あのさ」
 「で、お願いって、なんだよ?」
 司の注意が反れて、もともとの話題へと立ち戻り、ジッと良い子で二人の会話が一段落つくのを待っていた戒へと問いかける。
 戒の目がチラッとつくしへといいのか、と問いかけて、つくしも言いかけていた言葉を飲み込み、うんうんと頷いた。
 「お父さんとお母さん、この間、俺が幼稚舎のお泊りで屋敷にいなかった時に、二人でお出かけしちゃったんでしょ?俺も行きたい!水族館で魚を見て、展望台で夜景を見て、プラネタリウムに星を観に連れて行ってよ!」



*****



 「ほら!ちゃんと髪の毛乾かさないと、風邪ひいちゃうよっ」
 「…うん」
 眠気でほとんど船を漕いでしまっている戒を励まし、なんとかドライヤーで髪を乾かす。
 真っ直ぐだった髪が、乾くに連れて強い癖を取り戻して、くるくるに巻いてゆく。
 …ホント、不思議な髪質だよね。
 指先を髪にくぐらせ梳いているとわかるが、黒くて硬そうな見かけとは裏腹にすべすべと手に馴染んで柔らかい。
 「よし!いいよ、おしまい」
 膝の上に抱き上げ、胸にもたれさせて後ろ頭の髪を乾かしていたが、終わりだと声をかけても当の子供はウンでもスンでもない。
 「…ありゃりゃりゃ」
 どうやらすっかり眠ってしまったようで、ドライヤーをオフにしてみれば、スヤスヤという寝息が聞こえている。
 「まあ、しょうがないかぁ」
 抱いていた戒をそっと膝から下ろし、そのまま座っていたベッドに横たわらせ掛布をかけてあげる。
 そして、そのままベッドサイドの勉強机の椅子を引いてきて腰を下ろし、戒の寝顔をあらためてシミジミと眺めた。
 まだ幼い子供でありながらたくさんの家庭教師をつけられ、つくしよりよほど多くの課題を課せられているのだ。
 その合間に、つくしを連れ出してはあちらこちらへと出歩き、元気いっぱい遊んで、少しもジッとしていることがない。
 それでも、
 『お母さんがあまりお出かけしなくなって嬉しい!』
以前のつくしとは異なり、屋敷に閉じこもりがちな彼女を戒は歓迎していた。
 以前のつくしも子煩悩な母親ではあったらしいが、それでも道明寺若夫人としての責務を日々果たしていた為にかなり多忙で、今ほどには戒を構ってやれていなかったことが、戒自身やメイドの話から伺える。
 「こんなお母さんでいいの?」
 つい溢れてしまう…いつもの愚痴。
 戒を可愛いと思えば思うほどに、愛しいと思えば思うほどに、ちゃんと愛してあげられていない気がする。
 手探りの母親だから、至らぬ自分に気が付く度に落ち込んで、戒の子供らしい明るさや無邪気さに救われてはいるが、果たしてこんな母親でいいのだろうかといつも迷ってばかりだ。
 ガチャリ―――。
 脱衣室のドアが開いて、濡れた髪をバスタオルで拭きながらバスローブ姿の司が現れる。
 戒と同様、濡れた髪は真っ直ぐで、いまだにつくしはそんな彼の姿に戸惑ってしまう。
 「なんだよ、戒、寝ちまったの?」
 「あ…うん」
 戒の眠るベッドへと歩み寄ってくる司の姿に、慌ててつくしも椅子から立ち上がる。
 「えっと、じゃあ…あたしは、これで」
 逃げるつもりではないが、戒が眠ってしまって、司もシャワーから戻ってきたのだから、これ以上の長居は無用だ。
 背もたれにかけておいた濡れたバスタオルを手に部屋の出口へと向かう。
 そんな彼女が通り過ぎるのを黙って見送った司だったが、つくしがドアノブに手をかけたのとほとんど同時。
 「ちょっと、待てよ」




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