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愛人~2016年夏

Broken Heart~慕情~ 【あきら×つくし】

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※写真:by ulyankina
愛人

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 「寒くないか?」
 「…ん、ありがと、大丈夫」
 甘く優しい声音に振り向けば、煌びやかな夜景や星々の美しさにも負けない美貌の美男が、つくしだけを熱く見つめて艶やかに微笑んでくれる。
 思わずクスッと溢れた彼女の小さな笑い声に、目を瞬かせたあきらが、ん?と首を傾げた。
 「なに?」
 「ううん、別に…たださ、ぶっ」
 …マダムキラーっていうのも、伊達じゃないんだなって。
 言いかけたつくしの長い髪を、吹き抜けた風が煽って、髪の毛が口に入り込んで彼女を慌てさせる。
 今夜はそれほど風の強い日ではないが、遊覧船の甲鈑に吹き付ける風は、残暑の残る季節にしてもかなり冷たく勢いが強い。
 「うひっ、く、口に入った!」
 「…ぷっ、大丈夫か?」
 小さく笑いながらも、口の中に入ってしまった髪を取り除こうと四苦八苦しているつくしを助けて、あきらが優しく髪を取り除いてくれる。
 「あ、ありがと」
 「いいよ、一々礼を言ってくれなくても、そういうとこ、大人になっても相変わらずだな」
 「…だって」
 「ゴムか髪留め持ってる?」
 「あ~、持ってきてない」
 「仕方ないな」
 つくしの返事に、あきらがシュルリと自分の首に巻いていたスカーフを抜き出して、つくしの後ろへと回って髪に触れる。
 「え?なに?」
 「そのまま、夜景見てて?」
 手際よく彼女の髪を1つにまとめて、ゆったりめのシニヨンにした髪の毛の結び目にスカーフを縛り付けてしまう。
 「もう、いいよ?」
 掛け声に髪を触れば、自分でまとめるより遥かに綺麗に纏められていて、もう風にも吹き散らされない。
 「はぁ~、さすが。マダムキラーって言うのは伊達じゃ名乗ったり、呼ばれたりしないんだね」
 さっき言い切れなかった感慨を、しみじみと呟く。
 それには複雑な顔で苦笑したあきらが、つくしの額をコツンと小突いた。
 「それ…褒め言葉じゃないぞ?」
 「え~、でもさ」
 「それに今は違うから」
 「…………そうかな」
 サラリと流すつくしの顔が、複雑で自嘲的なものに変わる。
 今まさに彼女とあきらの関係がまんまそのままだからだ。
 そんな表情から、彼女の落込みかけた気分に気がついたのだろう。
 あきらはそれ以上深追いすることをせずに話題を変えた。
 「そろそろ港につくな。夕飯どうする?今日はゆっくりしていけるんだろ?」
 「あ、うん。うちには今夜はこっちに泊まるって言ってあるし」
 「へぇ?」
 美しい顔をわずかに歪ませ、眉間を潜めるあきらの気持ちはわかる。
 しかし―――。
 エスコートしてくれる彼のジャケットの裾を握り締め、つくしは緩く首を振った。
 「そんな顔しないで…。あたしだって人のこと言えない、お互い様なんだから」
 「ハァ。…だったらお前の方こそ、そんな顔するな」
 「そんな顔?」
 「思いっきり疾し気で…苦しそうな顔」
 ため息をつき、密やかな声音で呟いたあきらの言葉はつくしには届かない。
 怪訝に問い返す彼女へと、彼もまた首を横に振って下船を促した。
 「美作さん?」 
 「いや、なら今夜は遠慮することないなって思っただけ」
 「え?」
 「いつもは時間が気になって、お前を堪能しきれてないからさ」
 色を滲ませたあきらの眼差しが妖しく艶めいて、つくしを甘く誘惑する。
 柔らかな美貌が一瞬で男の色気に満ち、熱く女の官能を煽る雄に変化してつくしを赤面させた。
 「今夜はいつも以上に期待して?」
 「何言っちゃってんのよっ」
 「いてっ、抓るなよ」
 「慣れっこでしょ?」
 接岸の際のわずかな揺れにも、あきらの逞しい腕がガッチリと彼女の腰を支えてくれて、少しもつくしに不安や心配を抱かせることがない。
 …だから、美作さんに頼ったりしたらダメだって、あたしだってちゃんとわかってる。それなのに。
 ポンポンと小さく頭を撫でてくれる優しい手に絆される。
 「…今は何も考えずに、ただ俺といることを楽しんでくれよ」
 「うん、そうだね。よしっ、今日の夕食!どんな美味しいものを食べさせてくれるの?」
 「はは、俺より今日の夕食?」
 「あたしは花より団…」
 ふざけ合ってジャレ合いながら船のタラップを降りて、ふと上げたつくしの顔が一瞬で強張った。
 あきらが不審にそんな彼女の視線の先を辿る。
 「…牧野?」
 「つくし…」
 つくしの視線の先、あきらの声に被さるように声を上げた彼女の夫が、彼女ではない女と腕を組んで呆然と立っていた。
 「あなた」



*****



 つくしがあきらと再会したのは本当に偶然だった。
 熱く激しく、…まるで一瞬の花火かジェットコースターみたいだった司との恋が、彼の記憶喪失によって突然途切れて15年。
 まさか再び当時の彼女を知る人間と出くわすことがあるなんて、そんな偶然をつくしは夢にも思っていなかったというのに。
 おそらく、あきらにしても同様だっただろう。
 それだけの歳月が互いの間に流れていたし、一度袂を分かってしまえばもう二度と会うことがなくてもおかしくないほど、互いの世界は隔たっていたから…それなのに、だ。
 「大丈夫か?」
 どこをどう歩いてきたのか、夫とその情人と出くわした桟橋から数時間の後。
 二人は当初の予定を変更して、あきらがつくしと過ごす時にだけ利用している彼所有のマンションにいた。
 心配そうな声音につくしが顔を上げれば、声音の通りに心配そうな顔をしたあきらが、酒のグラスを差し出して、彼女の様子を伺っていた。
 「さっきから表情が、優れないぞ?」
 「はは、そうかな。ん…たぶん大丈夫。心配してくれて、ありがと」
 無理に笑むつくしに、あきらの顔も曇る。
 それがいやで、つくしが強引に話を変えてしまう。
 「美味しそう。これって、カクテル?美作さんが作ってくれたの?」
 グラスを受け取ると、彼女が腰掛けていたソファの横に腰を下ろして、あきらが優しく肩を抱いてくれる。
 …ホッとする。
 柔らかな温もりに癒され、素直に彼に凭れて身を任せた。
 「いや、これは違う。先日、取引先の人に教えられたやつなんだけど、お前が好きそうだと思って取り寄せておいたフルーツワインなんだ。だけど、カクテルの方が良かったかな?」
 口元に運ぶと、桃の香りだろうか、甘く円やかな匂いが香って、刺々しくささくれだって乾いていた彼女の心を甘く潤す。
 まるでこの酒は、今、目の前にいるこの美しい男性のようだ。
 「凄く美味しい。でも…美作さんのカクテルが飲みたいってあたしが言ったら、今からでも作ってくれるの?」
 コクリコクリと口に含んだワインは、たしかに彼の言うとおり彼女好みの柔らかい甘さの酒で、あまりアルコールに強くない彼女に合わせてチョイスしてくれた、彼の心遣いなのだろう。
 …さすがだな。
 いつも思う感慨。
 皮肉でなく思う。
 彼といたがるマダムたちの気持ちが、と。
 大して度がなく、だがそれでいてジュースではない優しい甘さのワインが、気持ちの良い酩酊をくれる。
 今感じてる心の憂いを柔らかく包み込む、麻酔のように。
 「いいよ、俺のお姫様がお望みなら、いくらでもお作りしましょう」
 あえておどけるあきらは、けっして彼女を否定しないし、傷つけない。
 どんな時も…どんな場面に出くわしても、彼はあくまでも優しく、彼女の味方だった。
 かつて、つくしが破れた恋の辛さに、自分を思ってくれる友人たちを振り捨てた時もそうだったのだ。
 不義理なやり方で、彼らの前から逃げ出してしまったというのに、彼女を赦してくれた。
 「冗談、嘘だよ。美作さんの作ってくれるカクテル、大好きだけど、このワインも美味しいからさ」
 「…いいんだよ」
 「えっ?」
 「俺の前では何1つ我慢しなくて、気を使わなくていい。我儘になれ」
 「……っ」
 少女の頃から我慢することが普通だった。
 家族のためがむしゃらに頑張っていた時も、司に置き捨てられ一人取り残された時も。
 そして、いま夫に顧みられることなく、あきらの優しさに甘え溺れている自分。
 そんな彼女に、唯一あきらだけが赦してくれる。
 甘えていいのだ、一人で耐えなくてもいいのだと。
 突然溢れ出した自分の涙に自分で驚いて、とっさに嗚咽を飲みんで、つくしは口元を抑えた。
 そんな彼女の肩を抱き寄せ、あきらが髪に口づけてくれる。
 「馬鹿だな、だから我慢しなくていいって、言っただろ?」
 「…っ、み、まさか、さん」
 彼の優しさに溺れていたい。
 つくしはあきらの言葉どおり、我慢すること辞め、衝動のままに彼の首に両腕をまわして、口づけを強請る。
 煌めく雫を振りまいて、つくしの手から滑り落ちたグラスの酒が甘い芳香を放つ。
 「お願い、美作さんを感じたいの」
 「牧野」
 熱い口づけが降り注ぐ。
 彼女の憂いも…寂しさも哀しみもすべて飲み込んで。
 「…ぁあ」
 甘い官能の疼きにつくしが呻いた。




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