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「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日④

愛してる、そばにいて0217

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 「ふ、副社長っ!きゃっ」
 倒れ掛かってきた司を抱きとめたものの、小柄な神崎が司を支えきれるずはもなく、そのまま吹っ飛びかける。
 だが、一瞬の目眩に足元をフラつかせた司だったが、女の小さな悲鳴に、とっさに神崎の小柄な体を抱き込んで庇う。
 そのまま体を捻って壁に背をつけ、いきなり倒れこむのを防いでなんとか踏みとどまった。
 しかし、ス――ッと頭のてっぺんから引いてゆく血の気に、そのままズルズルと背中を壁につけた状態で、神崎を抱きとめたまま腰砕けに座り込んでしまう。
 「副社長っ!?」
 動揺している神崎が甲高い悲鳴をあげながら、司の両腕を小さく揺すぶり、彼の覚醒を図るが、真っ青な顔で目を瞑って返事を返さない司は意識があるのか、ないのか。
 「そ、そうだ、きゅ、救急車!誰か呼ばないとっ」
 さすがは俊英のエリート秘書、わずかな間に冷静な思考を取り戻したのか、我に返ってなすべきことをなすためにと立ち上がりかける。
 が、立ち上がろうとした神崎の腕を、司が掴んで引き止めた。
 「待て」
 「副社長っ!?」
 どうやら意識を失ってはいないらしい司の様子に、神崎が慌てて体勢を戻し、顔を覗き込んで様子を伺う。
 額に手をあて、顔を歪めている司の額には冷や汗が浮かび、顔色もいまだ真っ青で血の気がない。
 口調こそはしっかりとしていたが、目を瞑ったまま項垂れ頭を揺らしているところからして、まだ目眩が続いていることはあきらかだ。
 心配した神崎が脈を測ろうとして、首筋に手を伸ばす。
 ーーーが。
 パシッ。
 「あっ」
 「触るな」
 特に他意なくしてした行動ではあったが、他人に素肌に触れられることを、極端に嫌う司が拒絶する。
 身近に仕える神崎も重々承知していたことだったが、司の苛烈な拒絶に、いつもながらに密かなショックを受けて俯き、それでもそんな自分を堪えて謝罪した。
 「も、申し訳ありません。今、人を」
 掴まれていたスーツ越しの腕を再び強く掴まれ、中腰になりかけていたところを神崎は司に引き戻される。
 「大丈夫だ、騒ぐな」
 「しかしっ!」
 「…っ、頭に響く、でけぇ声出すんじゃねぇよ」
 「申し訳ありません」
 神崎の手を離し、司が立てた片膝に顔を埋め沈黙する。
 一分、十分?
 どれくらいの時が流れたのか。
 息を詰め司を見守る神崎を前に…、
 「ハァ―――ッ」
 大きく息を吐き出した司が顔を上げ、ゆっくりと体を起こす。
 サポートしようする神崎をやはり寄せ付けず、立ち上がった時には、真っ青だった顔色もだいぶ色を取り戻し、髪をかきあげ顔をあげた時には、もういつもの司だった。
 「今日は社に戻るのは辞めておく。残りの書類、片付けちまうから、ドンドン寄越せ」


*****



 シュシュ、シュッ、シュルシュル、シュシュッ。
 手馴れた手順でジャガイモの皮を向き、クルクルの渦巻きを作ってゆく。
 つくしの横で皮むき器を片手に、戒もお手伝いするのはもう見慣れた毎日の日課だ。
 道明寺家の御曹司が…と、意外な気もするが、若奥様をしていたつくしもやはり似たような価値観も持っていたのか、男の子だからといってそういう意味では戒を甘やかしてはいなかった。
 …進だって、けっこう料理できるものね。
 実家では主に母の千恵子とつくしが家事を担っていたが、両親は夫婦共働きで、牧野家の姉弟も幼い頃からなにかと家事を手伝ってきている。
 もっとも戒にとっては、つくしの手伝いも一つの遊びのようなものだっただろうが。
 「…さん、お母さんっ!!」
 そんなことをツラツラと考えていて、戒に呼びかけられているのに気が付くのが遅れた。
 「お母さんっ!!」
 「ん?」
 「もうっ、何度も呼んでるのにっ!!」
 ぶうっと膨れた可愛い顔を見下ろして、あっと我に返る。
 「え、もしかして、どっか切った?」
 セラミック製の皮むき器は切れ味の割に、安全性は高い。
 「違うよ、切ってるのはお母さんでしょっ!?」
 「…はい?」
 これこれっと、指さされて自分が桂剥き状態にしているじゃがいもに行き当たる。
 桂剥きどころか単に皮を剥いていただけだったはずなのに…、
 「わっ、なにこれっ!?」
 「…なにこれって、お母さんがやったんじゃん?」
 見事に出来上がった桂剥きの残り…親指ほどのサイズになってしまったジャガイモの状態に我ながら目を剥いた。
 「変なお母さん。なんか、今日はさっきからずっと何か考えごとばかりして、ドジばかりしてる」
 「ははは…はぁ~」
 「で、これって何に入れるの?」
 「え~、カ、カレー?」
 「カレー?」
 キョトンと桂剥きのじゃがいもとつくしの顔を交互に眺める戒の顔が、呆れているように思えるのは彼女の気のせいだろうか。
 「カ、カレーチャーハンにしようと思って…」
 「カレーチャーハンってどんなの?」
 「えっとねぇ」
 「ドライカレーと違うの?」
 「あ、それ、ドライカレー」
 若奥様のつくしも自前で料理をしていたらしいが、やはりそこは多少作るものに違いがあって、かなり本格的というか一時期は専門家にも習っていたこともあるらしい。
 超庶民的な料理のレパートリーしかないつくしの家庭料理は、戒にも珍しいものもあるらしく、また呼び名一つでも微妙に違うものもあった。
 とはいえ、
 …つくろうと思えば、カレールーも作れそうな気はするんだけどね。
 語学と同様、今のつくしは自分に何ができるか、できないかの自覚がないだけで、いざ作ろうとすれば自然にあれこれと作り方や調味の見当がつくことも珍しくなく、高校時代の味付けとも違っている気がする。
 最初は気がついていなかったけれど、進の寮を訪問して料理を振舞った時にそう指摘されて、初めて気がついた。
 そして、いざ意識してみれば、そうしたことが実に多かったのだ。
 …ドライカレーかぁ。
 苦しい言い訳だったが、いざ思いついてみればそれも悪くない。
 「そうそう、こうするとみじん切りにしやすいんだよ」
 ドライカレーでみじん切りにまで細かくする必要があるかはともかくとして。
 「オリーブオイルをフライパンに引いて~、生姜パッパ、ニンニクパッパ、弱火でじっくり炒めま~す」
 目をキラキラさせている戒から、具材を受け取り調理してゆく。
 戒も立派な戦力だ。
 「わぁ、いい匂い~」
 「ホント、いい匂いだよねぇ」
 母子揃ってフライパンを覗き込み、顔を合わせてニマ~。 
 「なんか美味そうな匂いすんな?」
 背後からかかった声にビクリとつくしの肩が揺れた。
 「お父さんっ!」

 


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つくしちゃんの目には、ただ抱き締めたように見えたのかな…
ちょっと嫉妬?!自分の気持ちがわからずモヤモヤ…かしら。
うーん、頑張って向き合って、つくしちゃん!

こ茶子様も良い週末を!
あ、もう夏休み?!
恐怖…らしいですね苦笑

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