「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日④

愛してる、そばにいて0214

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 「あたしが言うのも変な話だけどさ、あんたなら別にあたしじゃなくても、いくらでも綺麗な人も、お金持ちのお嬢様でも、飛び抜けた才能を持つ人でも選り取りみどり選べるよね?」
 それどころかつくしと結婚したゆえに、しなくてもいい苦労を多く背負い込むことになってしまったはずだ。
 大財閥の事情や経済界の条理など何一つ知らない、一女子高生(精神は)の彼女でさえわかることだった。
 挫折など何一つ知らなかった男が、たかが庶民と見下していた女に顧みられなかったからといって、その先の人生になんら瑕疵などつくはずがなかったし、彼女を自分の手のうちに囲い込んで壊したことで溜飲も下がったはずではないか。
 …それこそお金でも使って、あたしのことなんて捨てちゃえば楽だったでしょうに。
 「なんで…か」 
 「……………」
 「なんでなんだろうな」
 まるで彼女に表情を見られたくないかのように、片手を顔にあて…だが、そのまま前髪をかきあげ、晒した司の顔は特に何の感情も浮かべてはおらず、いつもの泰然自若とした怜悧なものだった。
 「俺にもわかんねぇ」
 「は?」
 「お前に惚れてるところならいくらでも思いつくし、お前のどこか好きなんだと聞かれたなら、全部だと言い切れる」
 「……っ!で、でも、あたしなんて…その、どこにでもいる女っていうか、美人でもないし、特に自慢できるような才能とかそういうのがあるわけでもないよ。もちろん…家柄やお金だって持ってない。あたしみたいな女なんてどこにでもいるでしょ?」
 卑下するつもりはない。
 しかし、それが現実で、夢見がちな少女の頃だってそんな自分を十分に自覚していた。
 そして、そんな自分を平凡ではあっても、嫌いではなかったし悪いことだとも思っていなかったけれど。
 「たしかに…探せば、お前みたいな女は他にもいるのかもしれねぇな」
 司になにを期待していたわけではなかったというのに、彼がつくしだけではなく他の女でも…と口にした言葉に、密かにツキンと胸の奥が痛んだ。
 …‘道明寺つくし’のせいだ。
 自分の中の別の自分。
 司を愛して、司の妻だった女の残滓が、彼を憎むつくしを勘違いさせ、絆して赦させようとする。
 「それでもやっぱり、俺にはお前しかいねぇんだ。お前だけ」
 「……………」
 「どんなに顔や体、性格のいい女がいたって、俺の目には入んねぇし、惚れるどころか興味を持つことさえもできねぇ。持ちたいとも思わない。触るのも、触られるのも虫唾が走る」
 「……………」
 「……………」
 口が乾く。 
 何かを言わなくては、と思うのに、何も言う言葉が思いつかない。
 どんなに司に求愛されようとも、微塵とも動く心などあるはずもないのに、苦しそうで切なげな彼の顔に、冷たい言葉を吐きかけ拒絶することができなかった。 
 「そろそろ、デザートにいたしましょうか?」
 沈黙し、会話が途絶えた二人の間に、シェフの声が割りいる。
 食事が一段落ついたと見て、声をかけてきたのだ。
 「…どうする?」
 「あ…うん、えっと、ご馳走様」
 配膳された料理はまだ残っていたし、もったいなくはあったが、もうとても無理をして食べる気持ちにはなれなかった。



*****



 「向こうに車、回させるから」 
 店を出ると、すでにビル内の施設の大半は閉店してしまっていたが、一歩ビルを出れば、街は夜の街へと変貌し、まだまだ不夜城の本領を発揮するのだろう。
 司がSPたちと連絡を取る間、ビルとビルを繋ぐプロムナード内に貼られたポスターを手持ち無沙汰に見る。
 電話を終え、片手につくしのハンドバックやら土産の紙袋をぶら下げた司もまた横に並び、彼女が見ているのと同じポスターを見上げた。
 それは今日行くことのできなかったプラネタリウムのスケジュールを掲載した広告ポスターで、秋の夜空に昇る惑星として土星と木星がメインに描かれていた。
 「へぇ、土星とか木星って肉眼で見えるんだね」
 「興味あるのか?」
 「ん~、そうでもないけど。星座とか星とかってさ、これっくらいの米粒より小さな点みたいになってる遠い星を見るイメージがあったから」
 これっくらい…で、米粒幅に指と指の間に隙間を空けた手を掲げ、横に立つ司の方を向いて、つくしが片目を瞑って見せる。
 「ふっ、見えるって言っても、土星や木星にしても、それくらいの米粒サイズにしか見えねぇんだけどな」
 「え?そうなの」
 「当然だろ?」
 当然、と言われて見ればそのとおりで、よくよく考えてみなくてもわかるような自分の勘違いに恥ずかしさがこみ上げた。
 「まさか、土星の輪っかや木星の模様まで、肉眼で見えるって思ってたわけじゃねぇよな?」
 「はははは」
 笑って誤魔化すが、どうやら誤魔化しきれなかったようで呆れられてしまった。
 「…まあ、そうだよね」
 「地球から遥か何万光年も離れた星が見えるくらいだから、それらよりよほど近場の太陽系の惑星が見えないわけがないってことだな」
 「なるほど」
 意外に詳しそうな司の説明に、つくしも違う意味で感心してしまう。
 「企業経営者って、星のことまで詳しくないとダメだってわけじゃないよね?」
 バカか、みたいな目をされてしまった。
 「冗談に決まってるでしょ」
 「ホントか?お前、ガッコの成績はそれなりに良かったし、なんか学ばせればかなり優秀だったが、けっこう変なところでボケた女だからな。普通に勘違いしてても、俺はまったく驚かねぇな」
 言い切られてしまった。
 「…ぶぅ、だって、妙に詳しいんだもん」
 「昔…ちょっと、調べたことがあんだよ」
 「へぇ」
 さすがに司も大人だ。
 いつまでもからかい続けて、完全につくしのへそを曲げさせることまでせずに、話題を変えてしまう。
 「あんたと星…とか、意外すぎて笑え…いやいや、ちょっと驚くけど、興味あったんだ?」
 「興味は…ないな」
 「はあ?」
 あっさり一刀両断されてしまい、なんなんだと今度はつくしの方が呆れてしまう。
 「ただ…」
 「ただ?」
 「いや、ここのプラネタリウム…は、当分俺は付き合えそうもねぇけど、もしまた観たいのなら、うちのシアターにもこういうの入れるか?」
 「…は?入れるって」
 「機材だけ入れてもいいし、なんだったら庭の空いてるところにそれ専用の小型施設作ってもいいぜ?」
 「…………」
 あまりのスケールの大きな話にあんぐり、つくしは咄嗟に返事ができなかったが、ほうって置けば、その気になった司が、本当に庭にプラネタリウムを増設しかねない。
 …自宅にプラネタリウムとかありえないでしょ!?
 「いや、いいよ、そこまでしてくれなくって」
 「遠慮すんな」
 「いや、遠慮とかじゃなくってね。そこまで星が好きなわけじゃないし、観たいと思えば、ここよりもっとお屋敷に近いところがあるよね?プラネタリウム」
 それほどつくしも興味がある方ではないので詳しくは知らないが、屋敷があるのは都内のど真ん中なのだ。
 「でも、そうだね。今度、戒も連れてどこかに観に行ってみようかなぁ」
 キラキラした目で喜んでくれる子供の顔を思い浮かべて、ぜひ連れてきたい、そうつくしは思った。




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自分であって自分じゃない…
つくしちゃんが、自分と向き合い、これからの人生を考えなきゃ、先にすすめそうにないですね~。。。
これじゃどんな感情も、もう1人の私のせいって思っちゃいそうで。
今後も楽しみにしています!

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