「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日④

愛してる、そばにいて0211

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 当初、司は現地についたらすぐに夕食に向かうつもりだったらしいが、車での移動が予定よりも時間をロスしてしまった。
 渋滞まではいかなかったが、週末の夜でもないというのに道路がかなり混んでいて、どうやら夕方にあった玉突き事故の影響が残っていたらしい。
 結果、司が買ってくれたマカロンで空腹をしのぎ、営業時間に制限がある施設を優先することにした。
 一応は、つくしも小腹が満たされていたし、不規則な生活があたりまえで食そのものに関心が薄い司の方は、特に空腹が苦にならないらしかった。
 「ディナーのお店、予約してたんじゃないの?」
 「時間ズらしたから、平気」
 「お店に迷惑かけちゃったでしょ?」
 「別に」
 司らしい言い草だが、予約していたものを変更されたら店側の方が迷惑だろう。
 「つまんねぇこといつまでも気にしてんな。どの道、もう変更しちまったんだから、グダグダ言っても同じことだろ?」
 そう言われてしまえば、たしかに大したことでもないのに、こだわっても仕方がない。
 「それより、どっちに行きたいんだ?」
 「うーん、水族館とプラネタリウムかぁ」
 時間的な関係であまりあちらこちらを周ることができず、そうでなくても防犯面からも司がそこらをおいそれと歩き回るのはよろしくなかった。
 それに、本来ならスカイツリータワーだけではなく、スカイツリータウンと言われる一帯すべてが一大レジャー&ショッピングスポットであり、いくらでも見所は尽きないのだが、さすがにこの時間帯ですべてを練り歩くのは無理な話だ。
 結局、スカイツリータワーとどこか一つ大きな施設をピンスポット的に絞って巡ることになった。
 「今から水族館だと時間的に駆け足になっちゃうし、難しいよね?」
 「…まあ、多少は駆け足になるかもしれねぇけど、大丈夫じゃね?お前、そんなにガッツリ見たいほど、魚好きなわけじゃねぇだろ?」
 「うーん」
 それはそうだが、せっかく訪れたのだ。
 楽しめるだけ、めいいっぱい満喫したいのが人情というものだろう。
 …まあ、こいつの場合違うだろうけど。 
 「それとも展望台も辞めて、今日のところは水族館だけにしとくか?」
 「え~っ!」
 それはイヤだ。
 せっかく来たのだから、やはりメインは外せない。
 「ぷっ、お前、そうしてると戒と変わんねぇな。ガキみたいにアレしたい、コレしたい、迷ってばっかじゃ、それだけで肝心の時間がなくなっちまうぞ」 
 笑われてしまった。
 しかし、司の言うことはもっともで、こうして優柔不断にあれこれ迷っている間も、刻一刻と時間は過ぎて選択肢は少なくなってしまう。
 「お前に任せてたら…結局、何もしないで終わっちまいそうだな」
 うんうん唸って首を捻っているつくしを、黙って見守っていた司だったが、腕時計を確認すると危惧していることが現実になりそうな様相だ。
 さすがに呆れて、つくしの手を取り強引に歩き出した。
 「ちょっ!」
 「いつまでも案内掲示板や地図見上げて、悩んでたって時間の無駄だ」
 「そんなこと言ったって、行き先も決まってないのに歩き出しても仕方ないでしょ!」
 「とりあえず水族館行くぞ。展望台の方の閉館ギリギリまでの間にざっと見回って、間に合わなければ間に合わないで、ま、仕方ねぇし、場合によっては今日は水族館だけでもいいじゃねぇか」
 「それはそうだけど」
 司に約束を取り付けられるまでは渋っていたつくしだったが、いざ約束をし、実際に訪れてみれば、あれやこれやと見てみたいし、遊びたい気持ちが膨れ上がってしまって、駆け足でざっと見る、などいかにも惜しくなってしまった。
 「また来ればいいさ」
 「…………」
 柔らかい声音にブツブツ言うのをやめ、顔を上げれば、今日何度も出くわした司の優しい目に出くわす。
 つくしの稚気を嘲るのではなく、素直に感情を表にだし、喜んだり拗ねたり、些細なことに悩んだりしている彼女の反応を純粋に楽しんで、彼女を楽しませたいと思っている…そんなことが容易にわかる眼差し。
 そんな視線を感じるたびに、つくしは居た堪れなかった。
 …あの頃のこいつは、いつだって蛇みたいな目をして、その目のとおりに本当にひどいヤツだったのに。
 『この男はあの道明寺なのだ』と、かつて自分を苛んで傷つけ続けてきた男なのだと、何度も何度もまるで呪文のように心の中で唱えずにはいられない自分に、つくしも気がついていた。
 「……なんて、…メ…なのに」
 「あ?」
 ポロリと溢れてしまっていた呟きの断片を、司に拾われ聞き返されたのに、つくしがなんでもないと曖昧に首を横に振る。 
 …この男と一緒にいて楽しいなんて、そんなのダメなのに。



*****



 スカイツリータウン・ウェストヤードの高層階にあるこの水族館は、八景島シーパラダイスや葛西臨海水族園ほどの規模はないが、国内最大規模の屋内開放型プール水槽を要し、間近でペンギンやオットセイが見られるのが売りだ。
 「ふわぁ、可愛い」
 グッと水槽の外柵から身を乗り出して、ガラス面にとつくしが顔を近づける。
 餌をくれるとでも思っているのか、押し合いへし合いをして、ガラスの向こう側で並んで浮かんでいるペンギンはまるでぬいぐるみのようだ。
 「ここに来たのって初めてなのよね?」
 自分のことを人に聞くのも変な話だが、それもいまさらだ。
 視線は目の前のペンギンに釘付けのままだが、動物効果で気持ちも緩んでいるのか、いつの間にか、司からだけでなく、つくしからも何気ない会話を司にフるようになっていた。
 「ああ、日本に帰ってから水族館の類に来たのは初めてだし、ここ一帯の街が創業したのは、俺らが日本を出ている間だったからな」
 「へぇ?じゃあ、戒を連れてきてあげたことないんだぁ」
 「そうだな」
 「今度、連れてきてあげようよ」
 司の目が目の前のペンギンから、横に立つつくしの横顔へと移り、彼女をジッと見つめる。
 彼女の目はペンギンに注がれたまま、司を見返すことはなかった…けれど。
 司が見ていたのはずっとつくしばかりで、彼女へのお義理程度には施設の展示ケース内の生き物たちも眺めていたが、実際にはほとんど見ていなかった。
 「戒って、水族館とか動物園には行ったことあるの?」
 道明寺家のような富豪の息子が行けないところなど何一つないようだが、今のつくしはそうでないことを知っている。
 財力はあっても連れて行ってくれる親は多忙で、雨霰と降り注ぐように物を買い与えることは容易だったが、子供のために時間を割くことが何よりも容易ではないのだ。
 それでもできるだけ、わが子へと費やす時間は、親の愛情であり、子供への贈り物だった。
 「スイスでは、まあ…まともな水族館つーもんがなかったからな」
 「え?そうなの?」
 一心不乱にペンギンに見入って百面相をしていたつくしが、驚いたように司を見返す。
 「内陸の国だからな」
 「ああ、なるほど」
 「どちらにせよ、戒も俺も…あんま動物好きじゃねぇしよ」
 「ええっ。こんなに可愛いのに、嫌いなの?」
 「乗馬くらいはすっけど。動物って、くせ~し、汚ねぇじゃん。…こいつらみたいに、水にいる連中はそうでもねぇけどよ」
 「うーん、生きてるんだもん、臭いくらいは仕方がないと思うけど。そういえば、あんたって案外、小動物系が怖かったんだっけ?」
 ぷっと噴き出したつくしの言葉に、ムッと司の唇が尖ってしまう。
 大人になってからの司が見せなくなっていた、子供みたいな表情。
 その顔がつくしをまた楽しくさせ、クスクス笑う。
 「怖いわけじゃねぇよ…、嫌いなだけだ」
 ムキになって言い募る司の抗弁を、つくしが調子に乗って追い詰める。
 「そう?」
 「そうだ」
 が、調子に乗りすぎた。
 調子に乗りすぎてしまったから、よけいな言葉が飛び出してしまったのだ。
 「ええ?怖がってたじゃん。シャッツみたいな小さな犬にだって……っ!」
 自分の口から出た名前に、つくしはハッと我に返った。




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NoTitle

一日三回も更新されるなんて本当に感謝です!
デートもなかなかいい雰囲気だと思ってたら最後の最後で。。。
でも、シャツの死の真相が気になります。

揺れ動く乙女心~!!
でもやっぱりつくしちゃんが昔されたことを思えば、一回司もギャフンと言わせなきゃ気がすまない?!
私も揺れ動く乙女心~笑
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