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「中・短編」
拍手小話*①

密やかなジェラシー

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 「やだ!頬なんて染めちゃってますよ~」
 桜子のヒソヒソ声に、滋さんの声が被る。
 「なによあれ~、司の奴、鼻の下伸ばしてんじゃないの?あの子のブリッブリッな甘え声、ありえなさすぎ~」
 まあ、ちょっと可愛らしさ全開すぎるとは思うけど、そんなにわざとらしさは感じないけどなあ。
 評価の辛い二人は、座席の後ろに設置された観葉植物の陰から、3~4席離れた後方を齧り付きで覗き込んでいる。
 正直、周囲の目が気になる私は、「やめて~」と首根っこ捕まえて店から出ていきたい気分だったけど、実際にそんなことをすればなおさら騒ぎが起こって、周囲どころか当の監視対象様カップルから気が付かれてしまうこと間違いない。
 まあ、相手の女の子はともかく、道明寺の方はとっくにこちらに気が付いてないわけがない。
 その証拠に、チラリチラリと相手のスキを狙って寄越してくる視線が悪戯っぽく瞬いてて、たまに起こる小さな接触がわざとらしくて、ちゃんちゃら可笑しい。
 「どうだ、妬けるだろう?」と言わんばかりの唇の端の薄ら笑いが、小憎らしくて人の目がなかったら抓り上げてやりたい気持ちが上昇中。
 なんなのよ、いったい…。
 「あ!なにあれ!!小指が触れた!?」
 「絶対、わざとですよ、わざと!おとなしそうな顔して大したタマですよねっ」
 大人しいそうって、学内の噂を聞くかぎり、本当に大人しい人みたいなんだけど、当事者であるはずのあたしを差し置いて、目の前の二人の方がエキサイトしてしまっている。
 「あああっ!もうっ。こんな距離じゃあ、何言ってんだか内容まではわかりゃしないっ」
 「先輩!隣まで移動しましょうっ」
 グルッと振り返った二人の顔に、アイスティーのストローを咥えていたあたしはビクついてしまった。
 「ちょっ。勘弁してよ~。さすがに隣なんかに行ったら相手にだって気が付かれるでしょ?同じ英徳の学生なんだから。もう帰ろうよ~」
 半分泣きが入っているあたしに、二人の意気込みようは留まることを知らず。
 「何言ってんよっ!つくしは悔しくないの?つくしという列記とした彼女がいるのに、会社の付き合いだかなんだか知らないけど、司の奴!嬉々として他の女と浮気してんのよっ」
 いえ、嬉々としてないし、そもそも滋さんの言う通り、会社の付き合いでしかないんだし…。
 いまいちテンションの上がらないあたしに、桜子の方も歯痒いのか、バンッ!とそれほど大きい音ではなかったけれど、机を叩く。
 「な、なによ」
 「部外者の私たちがこんなに心配してるっていうのに!なんなんですか、先輩のその余裕はっ!?」
 「そうよっ、つくしったら寛容すぎるよ」
 迫ってくる滋さんの顔も怖い。
 「いえ、先輩の場合、寛容というより油断しすぎているんです。道明寺さんが先輩一筋で、他の女なんか眼中にないと思っているから、そうやって余裕でいられるんですよ」
 事実なところが大いにムカつきますけど、と憎々しげな一言は、やっぱり…あんたの本音?
 ちょっと怖いものを感じて、桜子から身を引いて、のけ反る。
 「ん~、それを言ったら、やっぱり、私たちがやっていることって、単なるムダ?」
 「「 う~ん 」」
 やっと自分たちのやっていることのバカバカしさに気が付いたようで、二人揃って腕を脇に組んで悩んでいる。
 こ、これであたし、解放されるかな…?
 「ま、道明寺さんや先輩がどうあれ、あの子の気持ちは別ですからね。それに、これで帰っちゃったりしたら、私たちの貴重な時間は本当に無駄だったことになってしまいますよ」
 「だよね~、なんか面白いネタの一つや二つ持って帰らないと、つまらないよ」
 いつの間にか面白いネタ探しに目的は変わっていたようで、再び二人は後ろの席へと向き直った。
 なんだかなあ。
 向かい合わせの席で、普通片側一方に全員で座って?いる人たちなんていないよ。
 さすがに私が向かい側に座るわけにもいかないし。
 今年、1年生に入学してきた帰国子女の彼女に、あたしの顔が知れているとも思えないけど、やっぱり気まずいものがあるよね。
 デートの相手の彼女がデバガメしてるんじゃ。
 「あっ!キ、キスしてるっ!!」
 えっ?
 「手まで添えてるっ!?」
 ザッシュッ。
 意識して背後を振り返らないようにしていたあたしだったけど、気が付いたら二人の頭越しに後ろを覗き込んでいた。
 な、なんだ、彼女の目にゴミでも入ったのか、覗き込んでるだけじゃない。
 道明寺にしたら、驚異の行動と言えるかもしれないけど、一応本日のデートの相手。
 大事な共同プロジェクトの取引相手のご令嬢だものね。
 と、頭の下からいやあな視線。 
 ニヤニヤニヤ。
 ニマニマニマ。
 「…」
 無視して座りなおそうと向きを変えるも、ニヤニヤ笑いのままあたしにジッと据えられる二組の目。
 「な、なによ」
 「やっぱ、気になるんじゃん?」
 「すっごい、速さのかぶりつきようでしたよね」
 今日は妙に汗が出る。
 熱いな~、そろそろ夏だもんねぇ~。
 まだ、みんな薄手とはいえ長袖だけど。
 「先輩~?」「つ・く・し?」
 「あ、あたしちょっと、トイレ」
 よけいなことを言われていじられまくる前にと、あたしは席を立ちあがってさっさと退散することにする。
 まあ、トイレに行って、戻ってくる頃には二人の関心もまた後ろのカップルにだか、他のことにだかに移っていることでしょ。



 トイレを出ると、男性用トイレとの中間に、ちょっと大きめの観賞魚の水槽が設置されている。
 それなりに高級感溢れるカフェの一角とはいえ、かなり豪華で珍しい光景だ。
 魚もそうだけど、色とりどりのサンゴが照らされるライトに煌びやかな光沢を帯び、漂う水草の間から時々姿を現す小さな魚が、ネオンのような蛍光色をまとって優雅に泳いでいた。
 綺麗だな~。
 その幻想的な景色に思わずジッと見入っていると、後ろから他のお客さんがやってきたらしい気配が近づいてくる。
 ああ、ここに突っ立ってると邪魔かな。
 ドアが真横にあるわけではなかったけれど、用がない人間がいつまでもトイレの入り口に立っているというのも違和感があって、嫌なものだよね。
 と、トイレのドアにではなく、こちらに近づいてきた影が、水槽のガラスに映り込んだ。
 「…ど」
 屈みこんできた長身の男の唇が、あたしのほっぺに軽く触れた。
 チュッ。
 とっさに頬に手をあて、振り向こうとするけど、腰に回った男の手がガッシリとあたしの体を拘束していて、動くことを許してくれない。
 力で叶うはずのないあたしを抑え込んだまま、調子に乗った男は片手であたしの顎を抑え、蟀谷や耳たぶに口づけを落としてくる。
 「な、な、な、なにすんのよっ!あんた、手を放せっ!!?」
 大きい声で叫ぶわけにもいかず、声を抑えた抗議は迫力ないことこの上ない。
 冗談じゃないっ!こんなところで誰かが来たら…そう思うと、羞恥にクラクラするほどの熱が頭に上ってくる。
 「ん~、何って、消毒」
 消毒!?
 この男は普段から嫉妬深く、自分以外の男が少しでもあたしに触れると消毒と称して…その、人には間違っても公言できないような破廉恥な行為を仕掛けてくる。
 く、首筋に潜り込んできた男の唇に…な、舐めるな、ごらあああっ!
 ゴスッ、とちょっと無理な態勢ではあったけど、自由な手でふざけた真似をしてくる男の頭にゲンコツを見舞ってやった。
 「いてぇなあ」
 やはり態勢が態勢だったから、大したダメージは与えられなかったようで、笑った目のまま、唇だけは拗ねた形にとがらせてくる。
 それもやっぱりポーズだけで、すぐにあたしの耳の下、柔らかい部分をきゅううっと吸い込んで、舌先で舐めたり、吸ったりを繰り返す。
 あ、痕つけたなあああっ!!!
 「ちょっとお!何するのよっ、てさっきから言ってるじゃん。放しなさいよ」
 「嫌だね」
 「嫌だねって、あんた、まだデート中なんでしょ?」
 て、いうか、ここ外!!
 「だから、消毒なんじゃん」
 「はあ?あたし、今日まだ、あんた以外の男性となんの接触もしてないんですけど?」
 まあ、今日も何も、いつだってコイツと同程度の接触なんてありえないんだけど。
 せいぜい、後ろから来たF3あたりに肩を叩かれたり、物の貸し借りをした同級生の手先が触れた、可愛がってくれている教授(※推定年齢70うん才)に頭をポンポンされた、そんな理由でバカバカしいヤキモチを妬いてくる。
 「誰が、お前の消毒だっつうた。俺だよ、俺の消毒」
 「はああ?」
 「チッ、いくら仕事のためとはいえ、お前以外の女に触られるなんて、キモイんだよ。ベタベタしやがって」
 ベタベタって、そんな大した接触してないだろ。
 それこそ、躓いて転ばないように、こいつの体にしがみついて態勢を整えたり、隣を歩いていたんだから肩先が触れたり、後は精々、さきほどの目にゴミが入ったのか見てもらっていたくらいで、目を覗き込むのに顔に手を添えてたのはあんたの方だろうがっ!と思い出して、ちょっとムカムカしたりした。
 「…少しはお前にもヤキモチ妬かせてやろうかと思ったけど、俺の方がダメだわ。もう、俺帰りてぇ」
 ガクッ~と、力を抜いて頭をあたしの肩に押し付けてくる。
 抱きしめられた腕が、ほんわかと温かく、なんだか安心する。
 …本当のところ、あたしだって、こいつがあたし以外の女の子とデートするのなんて、嬉しいはずがない。
 気になるし、ムカつくし、触らないでっ!と所有宣言したくだってなる。
 でも、こいつがどんなに真剣に仕事に取り組んでいるか知っているし、あたしにどんなにか真摯な愛情を注いでくれているかも知っている。
 取引相手の関係者のご令嬢たちとの付き合いだって、好んでやっているわけではないことだって理解しているのだ。
 だから、我儘なんて言えない。
 できるだけ軽く笑い飛ばして、
 「まあ、一日くらい気楽~な気分でデートしてきなよ。彼女公認のデートなんてできるのあんたくらいなものだよ?」
 なんて理解あるふりして、ブルーなこいつのオシリを叩いて送り出す。
 でも、こんな風に抱きしめられると、「消毒」なんて言われて愛情を注ぎこまれると、あたしの小さく震えていた虚勢がとたんに溶かされて、本当はこいつを独り占めしたいだけの我儘で甘えん坊の女の子が飛び出す。
 やんわり拘束されたまま、自分の肩先に埋まった男のつむじを見ながら、チュッとクルクルの巻き毛にキスを落とした。
 最初、気が付かなかったのか、ピクリとも動かなかった男の頭が、私が蟀谷にキスを落としたあたりで上向いた。
 「…牧野?」
 「消毒」
 目を瞬かせていた男の顔がわずかに紅潮して、嬉しそうに微笑みを浮かべる。
 その無邪気な、本当に幸せそうな綺麗な微笑みに、見ているのが眩しすぎて、目を開けていられない。
 ギュウッと目を閉じた瞬間、チュッと唇に落とされた軽いキスに目を開け、視線の先には愛情とか、優しさとか、欲望とか、いろいろなモノを含んだ男の潤んだ眼。
 自然に閉じた男の瞼を合図に、あたしの唇をその甘い唇に押し付け、あたしにだけ許された甘美な美酒に酔う。
 『好き』
 とか、
 『愛している』
 とか、
 『あたしだけのものだよ』
 なんて、言葉に出さなくても伝わる何か。



 「ちょっとぉ、ダメだよ。まだ、デート終わってないんでしょ?」
 あたしの手を握って上機嫌に歩く男に引っ張られるようについて行きながら、言葉とは裏腹に逆らうどころか嬉々として寄り添っている。
 「大丈夫だろ、総二郎、呼んでおいた」
 「へ?西門さん?」
 「年代物の古伊万里だかなんだかと引き換えだとか抜かしてやがったけど、そんなん安いもんだ。あの女も別に俺じゃなくっても、F4のファンだとか言ってたから平気だろ?」
 そうなんだ?
 いいのかな、でも、そんなんで。
 「つうことで、これからお前とオレでデートだ。久しぶりだし、ちょっと買い物でもして、メシでも喰って、デザートにお前を食うか」
 「ばっ!」
 何言っちゃってんのっ!?こんなところで。
 恥知らずな男の背中をバシバシ叩いて、いってぇと痛がる男と笑いあう。
 甘い言葉でキスをして。
 やさしい温もりで抱きしめて。
 あ、なんか忘れているような。



 「つくし遅いねぇ~」
 「うーん、色気のない先輩のことですから、お腹でもこわしてトイレにこもってるとか?」
 「そういえば、つくしの後を追うように携帯片手に席外した司も遅いよね…」
 「「 あっ!? 」」
 互いを指さしあい、二人の応援団員兼野次馬お祭りレディースは、にんまり微笑んで次のお茶菓子をオーダーする。
 「「先輩・つくし、私たちを置いてけぼりにした貸しは高いからねっ!」」



(~Fin~)




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~ Comment ~

もうっ、ハッピーすぎです\(//∇//)\
幸せな気持ちにさせてもらいました!
ありがとうございます〜〜
たまに素直になる可愛いつくしと、いつもストレートな司。本当に素敵なカップルがこ茶子さんのお陰で輝いてます( ´ ▽ ` )
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

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