「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日④

愛してる、そばにいて0206

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 意味…。
 あらためて問いかけられると、つくしにもしかと答えられる答えを用意していなかったことに気がつかされる。
 学校に行くことの意味もなにも、それらすべてはその親…周囲からの『当たり前』という名の常識によって押し付けられたお仕着せであって、彼女もまたそれらに従う子供でしかなかったからだ。
 それどころか、高校入学という初めて与えられた選択権でさえ、母親の見栄と勝手、期待のまま、唯々諾々と従って分に合わない学校へと進学した。
 その結果が、今の自分の事態を招いているのだから、皮肉なもので、ある意味それもまた因果応報、自らの選択権を親とはいえ他者に任せたゆえの自業自得だとも言えただろう。
 しかし、だからと言って、それを戒に当てはめることなどできようはずもない。
 たとえ、学力の育成を目的とする必要がないにしても、学校へ通うことさえなく狭い世界の中でだけに閉じこもっていればいいというものではないはずなのだ。
 「俺たちに求められるのはリーダーとしての指導力と帝王学であって、社会に適応するための協調性でもない」
 「………でも」
 何かあるはずなのだ。
 そうでなければ、司の親、類の親、あきらや総二郎の親たちが、子供たちを英徳学園に通わせていた意味がない。
 彼らとて、もちろん学校の授業が我が子に不必要なものだとわかっていなかったはずがなかった。
 たとえ特権階級の箱庭であっても、わざわざ学校に通わせ、英才教育に費やすべき時間を消費させていた理由。
 …そうだ、F4。
 そこに答えがある。
 「でも、友達は?…それにリーダーとその他の人たちとでは求められているものが違うのだとしても、同じ人間として、協調性とか集団としてのルールを学ばなくてもいいなんてことは絶対にないはずだよ」
 「……そういうことだな」
 怜悧な眼差しでつくしが自分の問いに返答を返すことを待っていた司の口角が、クイッと上がる。
 それはかつてのように嘲るものではなく、大人の余裕と包容力からの是認の笑みだった。
 「社会のルールや仕組みってやつは、イヤでもビジネスの世界に放り込まれてしごかれりゃ自覚することになる。よほどのバカでも、ガキの頃からそれなりの素養は与えられてるから、自分の立場だけは理解してるもんだ」
 司の横顔に、歳月が見える。
 ガキで馬鹿で、無法者だった裸の王様ではなく、自分の手と足と能力で架せられた宿命と責任を背負い、役割を果たし続けてきた男のたしかな自信と自負。
 「が、人間を知ることはできねぇ」
 「…人間?」
 「そうだ、人間だ。俺たちが生まれながらの歯車としての立場に適合すればするだけ、個としての人間と接する機会は失われて、ごく身近な人間以外はほとんどデータと変わらない存在になる」
 あまりに世界の違う話につくしにはピンとこない。
 「…データって、意味、わからないんですけど」
 「その是非や、意味に関しては、今のお前が理解する必要はない。実際、そうした立場のヤツってやつも、俺たちの世界でもごくひと握りの話だ。ただ、俺たちが曲りなりにとも、他人と対等に付き合ったり、口を利く機会つーのは、学生時代を除いては失われる。たとえ同じ境遇に生まれたヤツとでも、対企業としての相対しかしねぇから、食うか食われるか、あるいは敵か利害が一致しての一時的な味方かの区別しかなくなってくるんだ」
 「……………」
 グラスの中の酒を飲み干して、司自らウィスキーのおかわりを作ろうとか、テーブルの上に置いてあったアイスペールに手を伸ばす。
 「あ、あたしが作るよ」
 「……作れんのかよ?」
 「あ~」
 一杯目にしても司が自分で作っていたから、つくしも見よう見まねで自信がなかった。
 それにさっきまで飲んでいた酒には氷を入れず、そのまま口にしていたように思う。
 …パパはビールばっかりだったし。
 「冗談だ、ただ氷入れて、酒入れるだけだから、誰でも作れるさ」
 「………」
 クツクツ笑う司にカラかわれただけだと知り、つくしの唇がムッと尖る。
 だが、アイスペールの中の氷を覗き込んで首を傾げた。
 「なんか、ずいぶん大きな氷しか入ってないんだね。砕くの?」
 「バカ、それじゃ、水割りになっちまうだろ。じゃなくって、なるべくデカイ氷を一個入れて酒を注げばいいだけなんだが、とりあえずは適当な氷入れてそっちの水を入れてくれ」
 「お水?」
 ウィスキーの瓶の横に並べられているのは、もしかして水なのではないかと思っていたら、どうやらそのとおりだったらしい。
 「チェイサー」
 「は?」
 「口なおし」
 「ふぅん?」
 指示された通りに氷と水をグラスに注いで差し出すと、「サンキュー」と礼を返された。
 思わず驚いて顔を見てしまって、逆に怪訝に見返される。
 「なんだ?」
 「…あ、なんでもない」
 しかし…、
 …お礼を言ったよ。
 些細なことだけに、むしろつくしの驚きは大きい。
 「えっと、お酒…もういいの?」
 「明日も仕事だし」
 「…あ、そっか」
 学生時代とは違うのだ。
 いくら酒に強くとも、過労している体には毒だろう。
 …ちゃんと自分でセーブして、自己管理してるんだね。
 『意外』というのは、おそらくもはや今更なのだろう。
 やはり、別人なのだ。
 目の前にいる司は、司であって司ではない…少なくても、今のつくしと同じ程度には違うのだ。
 「俺がヤツらと…あきらや総二郎、類と知り合ったのも学校でだった。それに」
 「それに?」
 言葉を切った司の顔をつくしが見返すと、司が彼女をジッと見つめていた。
 「お前と出会ったのも…英徳でだ」




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※チェイサー=バー用語で強い酒をストレートで飲む場合、続けて口直しに飲む水、炭酸水や軽い酒のこと
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学校って良いとこだよ、うんうん。
司も学校に行ってよかった…と思ってくれてそうで、嬉しいです。
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