「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日④

愛してる、そばにいて0205

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 「制服デートとか、お揃いのグッズとか、そういうの凄い憧れたかな」
 雲の上の存在であるセレブの奥方の小市民的な望みに、メイドたちの顔にあきらかな意外さが現れていた。
 「若奥様…つくし様も、若旦那様と同じ、英徳学園が母校でらっしゃるんですよね」
 「…あ、ああ、うん、そうだね」
 追憶に耽ってしまっていたつくしが、絵里の問いかけに小さく首を傾げる。
 「やっぱり、上流階級の方たちは制服でデートしたり、あたしたちがするようなデートってなさらないんでしょうか?」
 「えっとぉ」
 道明寺家の使用人すべてかまではつくしにもわからないが、少なくても若夫婦の身近に仕える使用人たちは彼女の出身を心得ているはずで、絵里の質問はつくしが『あたしたちがするようなデート』で通じることを前提としていたし、自分たちが普段接してはいても垣間見ることができない『上流階級』という世界への憧れや興味を顕にしていた。
 「学生でも高級車でドライブしたり、高級ホテルのレストランでディナーとか、有名ブランド店でショッピングしたりもするんですよね?」
 つくしにしてみれば、司に連れられて出かけたそうした場所での出来事は苦い思い出ばかりで、『デート』という認識はなかったが、一般的に見れば女の子たちの憧れるデートというものなのだろう。
 「若旦那様なら、きっと凄いたくさんの高価なプレゼントとかしてくださったんでしょうねぇ」
 「…………」
 絵里やメイドたちの顔には憧憬と羨望が浮かんでいる。
 たわいない小物を彼氏とおそろいで買ったのだと目を輝かせ、あるいはそのことを羨みつつも祝福していた素朴な女たちの喜びはどこにもなかった。
 居た堪れない思いに、つくしは彼女たちから視線を反らして、小さく息をつく。
 さっきまでの楽しい気持ちは、いつの間にか失われていた。
 「…でも、あたしはどんなに高価な衣服やアクセサリーを貰ったり、凄いレストランで食事をしてホテルに泊まることより、絵里ちゃんみたいにスカイツリーとか、そういうごく普通のところでデートしてみたかったな」
 好きな人と、手を繋いで微笑みあって…、そんなたわいない夢を見たこともあったと、つくしは淡くほろ苦い笑みを浮かべた。
 PiPiPi、PiPiPi
 ふいに鳴り響いた甲高い電子音に我に返れば、メイドの一人が慌てポケットを探って携帯電話を取り出し、目覚ましを停止させる。
 「す、すみません、携帯の音消しするのを忘れてました」
 「ううん、大丈夫。それより、ごめんなさい。あたしったら、ずいぶんみんなを引き止めちゃったよね」
 腕時計を確認してみれば、とうに21時を過ぎ、4交代で動いている絵里たちの交代時間を大幅にオーバーしていた。
 「あ、いいえ」
 「あたしたちこそ、若奥様にツマラナイ話ばかり」
 「ううん、楽しかった」
 「あたしたちも、若奥様とお話できて、とても楽しかったです。良かったらまたお話させてください!」
 「…ありがと」
 社交辞令だろうが、つくしとの時間を惜しんでくれているようなメイドたちの態度に嬉しく頷いて踵を返す。
 立場が立場だ。
 親しくするにも限界があり、司やタマもいい顔をしないだろう。
 …ハァ、もう、今からじゃさすがにタマさんのところには行けないか。
 諦めて家族の私室へと戻るべく廊下を引き返しかけ、すぐ角を曲がったところで見慣れた長身の影に気がついた。
 「あ……」
 大柄な男だというのに、そうして柱の影に佇み、身を潜めているとまるで影そのもののように溶け込んで、ほとんど気配を感じさせない。
 「…帰ってたの?」
 「今、帰った」
 「そう、なんだ」
 つくしが歩き出せば、寄りかかっていた壁から体を起こして、司もその後に続く。
 「その…何をしてたの?」
 よもやつくしたちの四方山話を立ち聞きしていたとは思わないが、思わぬところで出くわした理由を怪訝に思う。
 「…タマのところに行こうとしたら、お前たちに出くわした」
 「ああ」
 とりあえず和気藹々というわけではないが、ここのところ司との関係はそれなりに小康状態、友好的ともいえる関係を保っていてる。
 つくしの態度の軟化が大きな理由であり、その影には楓の助言が常にチラついていた。
 もちろん、司が知りようがないことではあったが。
 「えっとさ、実は、あたしもタマさんのところに行こうと思っててね」
 「…こんな時間に?」
 そういう司も人のことは言えなかったが、朝も夜もなくで、まともな時間帯に帰宅することも難しい司と、現在屋敷内に引きこもっているつくしとでは立場も状況も違うのだ。
 けれど、どうにものんきに明日を待つつもりになれず、闇雲に部屋を出てきてしまったつくしだったが…、こうして偶然とはいえ司と話す機会を持ってしまった以上、彼を飛び越してタマに…と黙っているわけにもいかない。
 …道明寺にも相談した方がいいよね?
 そもそも戒は、この目の前にいる男の息子なのだ。
 「あのね、疲れてるところ悪いんだけど、少しだけ時間をくれるかな?」
 司は頷く代わりに、器用に片眉を上げることでつくしの要請に応諾の意思を示した。



*****



 できるだけ戒の心情を汲んで、子供ながらに真剣に悩んでいることを司へと伝えるべく、つくしは話を切り出した。
 「…難しい問題だとは思うんだ。たぶん、単純に先生に相手の子に注意をしてもらうとか、親御さんに頼むとかそういうことじゃないし、その子達に限ったことじゃなくって、たぶんこの先も何度となくありえる状況なんだと思う」
 家族の部屋に帰り、晩酌に付き合えと、司に手渡されたワインのグラスを両手に包み込んで酒を揺らせながらの会話だ。
 「でもだからといって、学校に行きたくないっていう戒の逃げを許していいのか、それがわからないの」
 「………」
 彼女の対面側の椅子に座り、組んだ長い足を投げ出した司は、つくしの言葉に無言で耳を傾けるばかりで、自分の考えをまだ口にしていなかった。
 「道明寺?」
 手の中のピンク色の酒から視線を上げ、司へと伺うような顔を向けるつくしに、司もチラッとそんな彼女の顔を見返しただけで、ウィスキーのグラスを煽って飲み下す。
 「…で?お前はどうしたいんだ?」
 「は?あたし?」
 意外な問い返しにつくしが眉根を潜める。
 「あたしがどうしたいか、じゃないでしょ?」
 戒がどうしたいのか。
 だが、まだ年端の行かない戒にその判断を任せられるはずもないから、つくしが悩んでいるのだ。
 「あいつの気持ちはいまさら考えるまでもなく、自分でハッキリ意思表示してるんだろ?」
 「…………」
 「嫌がってんものを無理して学校に行かせなきゃなんねぇっつー理由はなんだ?」
 「理由はなんだって…意味がわからないんですけど」
 つくしにとって、『学校』とは行く行かないの選択肢を迫られるものではなかった。
 少なくても最低限義務教育以下はそうでなければならないはずなのだ。
 …まだ幼稚舎だからって、むやみやたらに休んでいいはずがないでしょ。
 「学力向上という意味合いでは、俺らにとって学校ほど無意味な場所はない。必要な教育や教養は個々の家庭内で英才教育を通じて得るわけだし、実際、俺らがまともに授業に出てたのなんか小学校の低学年までだ」
 「それって…」
 「戒にしても同じことだ。学力に関して言えば、むしろ屋敷にこもらせて家庭教師に教えさせてれば十分。それなのに、あえて義務教育でもない幼稚舎に子供を通わせる意味合いはなんなんだよ?」




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~ Comment ~

おっとーーー!
さすがの考えに脱帽です笑
司ならそう考えそうですよね…
でもつくしちゃんの考えも理解できるように、彼女に影響を受けてなってそう。
難しい問題ですよね。
確かに司の言う通り学力は問題ない。
でも集団でしか学べない人間関係や処世術はある。
友達も作って欲しい。
切磋琢磨して相手を思いやる心を育てて欲しい。
逃げることを簡単に覚えて欲しくない。
でもこの場合はまだ違うと思いますが、激しい虐めを受けてまで無理に通わせなくても良いとは思ってます。
学校だけが世界の全てではないので…
あら、方向性がズレちゃいましたね。
つくしちゃん司の話を楽しみにしてます!

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NoTitle

連日更新ありがとうございます!!ずっと、愛してる、そばにいての禁断症状がでて、今までの分を何度も繰り返し読み直して耐え忍んでいたので、更新再開は本当にありがたいです。
幼稚舎のお友達問題は親として二人の価値観の違いが如実に現れていますね。両親として絆を深めるのかその逆なのか、、、。

あと、忠犬ハチ公、司としては、デートネタに無反応とも思い難くw、、本当に次回どうなるやら。。wで、とっても次回更新が楽しみです。

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