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「中・短編」
拍手小話*①

誰にでも昔々がある(あきら初恋物語)

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 初めてその女を見た時に思ったことは、「不器用な女」だった。
 実際には、仕事は早いし、やることに卒はない。
 華やかさには欠けるが、キリリとした美人で身だしなみもキッチリしていて、一見しては誰も不器用な女だなんて思わないだろう。
 「坊ちゃま、おはようございます」
 「「「 おはようございます 」」」
 「うん、おはよう」
 若いメイドたちが、明るく声をかけてくるのに、鷹揚に答えてさりげなく周囲を見回す。
 いたっ!
 少女趣味なお袋の傍らで、いやな顔一つ見せずに、お袋の愛犬フランソワーズとポピーにドレスを着せている。
 傍らには、愛犬たち以上にフリフリドレスの妹たちがにこにこと、花に埋もれて花輪を製作中。
 はた目にはメルヘンを地でゆく少女たちのロマンそのものだろうが、こっちにしてみればこれが日常。
 長年働くメイドたちも最初こそは夢見がちに眺めていたが、いまや食傷気味で苦笑している人間がほとんどだろう。
 そんなお袋の趣味の為に、実生活に被害を被っている俺にしてみれば言わずもがな、って奴だ。 「淳子ちゃんはぁ、もうちょっと可愛らしくしてもいいと思うわぁ」
 「…そうですか?」
 「うんうん、まだ若いんだから、ちょっと弾けちゃっても平気。私ももうちょっと若かったら頑張っちゃうんだけど、もっと可愛らしいお洋服とかでも似合うと思うの!」
 「奥様もとってもお似合いですよ」
 如才なく振る舞うその女はお袋のお気に入りのようで、始終傍にいるのを最近よく見かけていた。
 そういえば、この女がウチで働くようになって、ちょうど半年かあ。
 普通はそれ相応な紹介所から派遣されてきた人間じゃないと雇わないんだけど、その女は長年仕えてくれ、先月退職した運転手のの姪だとかで、その縁で我が家に来たんだった。
 で、なんで俺が、その女を不器用だと思ったかというと。
 この女は、そりゃあ人間関係に真面目で、融通がきかない!
 女が来た当初、古参の高橋さんや長浜さん、江上さんを除いて、女と同世代の使用人は5人いた。
 だいたいが、みんなそこそこ真面目で、そこそこ不真面目。
 お袋がああいう性格なこともあってあまり堅苦しくもなく、わりとみんなキャピキャピしていた。
 お袋も言うときはビシッというところはあるんだが、それはよほど目に余るほどの時で、たいてい影で見ていて
その人間の本質を見て、にこやかな笑顔の裏で冷静に観察している。
 結果、長く残るのは高橋さんたちみたいな生え抜きの使用人で、後はだいたい3か月を待たずに首を切られることとなっていた。
 もちろん、うちの家に来たばかりの女がそんなお袋の怖さを知っていたはずもなく、だが、遊び半分な他の若い使用人たちとは一線を画していた。
 人が見ていようと見ていまいとやることはやる。
 それが自分だけコツコツとやっていれば、俺もそんなに気にも留めなかったんだけど、女は自分にも厳しいだけに他人にも辛かった。
 「あんたたち、お金もらって働いているんだからやることやって、言いたいこと言えば?」
 立ち聞きをしたつもりはなかったが、俺が通りかかった時、出くわしたのはそんな場面だった。
 どうやら、いい年してフワフワ、ポワポワしているお袋のことを調子に乗ったメイドたちが噂話に乗せていたらしく、
それを聞きとがめた女がズバリ!と切り捨てたらしかった。
 メイドたちの取りまとめ役をしている高橋さんに後で言うなり、お袋に陰で訴えるなりすればいいものを、自分でズバリと言い捨てるものだから、あっという間に反感を買ってしまう。
 それがまた、人一倍仕事をこなし、お袋のお気に入りだった女が言うものだから、余計に反感を買ってしまうことになってしまった。
 結果…女は何かと嫌がらせを受けていたらしい。
 それはそんなに長く続かなかったようだけど、嫌がらせを仕掛けていた数人をお袋が辞めさせるまでの1か月半ほど、さすがの女も生気を失い元気がなかった。
 だから、愛想はいいものの、いつもは見て見ぬふりの俺がつい声をかけてしまったのかもしれない。
 普段は、使用人間の揉め事なんて、使用人頭や執事に任せてしまって、口出しするような煩い雇い主のマネごとなんて絶対にやらないんだけどな。
 「山本さん、なんで嫌がらせされていること、高橋さんやお袋に言わないの?」
 山本淳子というごく平凡な名前が、女の名前だった。 
 涙ぐんでいたのかちょっと俯きがちだった女は、俺の視線を気にして涙を急いで指先で拭い、頭を下げてその場を去ろうとしていた。
 俺はその手を掴んで止め、ポケットから彼女らがアイロンをかけた真っ白なハンカチを差し出した。 
 女はそれをジッと見ていたけど手を出そうとしないので、俺は許可もとらずに女の涙に濡れた顔をハンカチで丁寧に拭ってやった。
 「…誰にも言わないでください」
 「なんで?嫌がらせされているんだろ?」
 俺はできる限り優しい声でそう言ったが、女は緩く首を振った。
 「坊ちゃんの言いつけで、あの人たちが叱られたりしたら、私が言いつけたことと同じことになります」
 「別に本当のことだと思うけど…?」
 怪訝に聞き返すと、決然とした眼差しで俺を見返してきた。
 「それだと、私があの人たちに負けたことになります。私は間違ったことは言ってないし、していません。だから、そのうちあの人たちもわかってくれます」
 真っ直ぐなのか馬鹿なのか、結局、仕事への熱意不足を理由に、その使用人たちが自主解雇させられるまで嫌がらせは続いた。
 お袋や高橋さんはもちろん、女への嫌がらせに気が付いていて様子を見ていたのだとは思うけれど、孤立無援だった女はかなり辛かっただろうと思う。
 それでいつの間にか俺は、女のことが気にかかるようになってしまっていた。
 女の方も最初は雇人の跡取り息子ということで、俺に対して距離をあからさまにとっていたけど、それにもめげず、そもそも元々社交的な俺に慣れてゆくのはそんなに時間はいらなかった。
 だから俺と女の距離が近すぎるほどに近づいたのも、それほど可笑しいことではなかったのかもしれない。
 目と目が瞬きする睫毛が触れ合うほどに近づいて、気が付けば瞼を閉じて、唇に感じた柔らかい感触はとても甘かった。
 触れる吐息がいい匂いで、俺は何も考えられずに温かな唇に吸い付いていた。
 今思うと、俺もえらく性急だったな、とは思うけど、当時の俺は14才。
 性への目覚めもめざましく、マグマの噴火のような欲望が体内を荒れ狂っていた。
 これがそこらのガキだったら妄想したり、それこそグラビアのアイドルたちなんかで満足しちまうんだろうけど、俺の体は当時にしてすでに170cmを超えていて、司や総二郎たちには及ばないにしろ、同年代のガキどもより、遥かに成長は早かった。
 気が付けば、お袋の庭のバラ園の物陰、家の物置、使われていない客間のカーテンの影などに彼女を引っ張り込んでキスして、その柔らかな胸元に触れ、同じ人間だなんて信じられない触れると壊れそうな華奢な体を抱きしめたりしていた。
 「…ませガキ」
 俺の掌にやわやわと胸を触られ、唇を甘噛みされ、絡みついた舌に息を乱していた女が、俺を潤んだ目でジッと睨み付けた。
 そんな物欲しそうな顔して俺を睨んだって、何の説得力もないよ。
 だから、そのまんま言ってやった。
 「じゃあ、淳子さんはHなの?どっちかというと、淳子さんもマセガキの部類だと思うけど」
 悪戯っぽく笑って首筋に吸い付いてやると、女は甘い吐息をもらして俺にもたれかかった。
 女は意外なことに、俺とそんなに年が変わらなかった。
 女は高校を中退し、東京に出てきていたから、俺とは3才違い、まだ17才の少女に過ぎなかった。
 その落ち着いた佇まいから、てっきり俺は、女が20才くらいなのだと思っていただけに肩すかしを食らった感じだったけど、早くから両親を亡くしていたこと。
 本来なら学生のうちから住み込みで働いて、他人の中で暮らしてきた女は年よりずっと大人びていた。
 そして、女は堅そうな見た目とは裏腹に、情事に慣れていた。
 もちろん、誰にでも体を開くといった尻軽な女じゃなかったが、以前にも男がいたことはまだ初心だった俺にも容易に知れた。
 初めて触れる女の唇。
 初めて交わす深い口づけ。
 そして、初めての情交。
 温かく、ぬめった様な女の躰は俺を虜にするのに十分で。
 体に溺れていたのではないとは言い切れなかったけれど、女を『不器用な女』だと思った瞬間からたぶん惹かれていたのだと思う。
 そんな時間が、しばらくの間続いた。
 総二郎や司たちとのクラブ遊びも楽しかったが、女と関係を持つようになって、他の遊びにはそれほど熱中できず、どこか上の空なのを総二郎には気取られたりもした。
 まあ、俺たちの付き合いはどこまでもドライで、ガキの頃からの仲間とはいえ、お互いの私生活に干渉するようなことはなかったから、別段、総二郎もそれを口に出したりはしなかった。
 実際、総二郎自身も当時、本命の女がいたらしくイロイロあったようだったが、俺には直接言ってこなかった。
 だから、気になりはしたものの、特に俺からは何も言わなかったし、奴も何食わぬ顔でやり過ごしたのだ。



 「俺たちって、すっごい体の相性いいよね」
 クスクス笑う半裸の女を抱きしめて、うなじにキスを落としながら、スカートの中の太腿の柔らかい内側を撫でる。
 それをくすぐったがって体を捩る女を抱きしめ、今度は反対の手をブラウスの襟元に侵入させて胸元の頂を下着の上から軽くつまんだ。
 「あっ」
 甘い吐息が俺の興奮を否応なく煽る。
 「ダメよ、もうすぐお夕飯の時間だから、それまでに私、やらなければならないことがあるもの」
 「少しくらい大丈夫だよ、俺も手伝うし?」
 「もうっ。お邸の坊ちゃんにそんなことさせられるはずないでしょ?」
 上気した頬が、ちっとも嫌そうでなくて、色っぽい。
 その顔を愛でながら、身動きした拍子に、シャリンと小さな金属の音が俺の懐から鳴った。
 「あ、そうだ」
 俺は女の胸元に潜り込ませていた手を抜き取り、ポケットに忍ばせていたそれを女に差し出す。
 「なあに?これ」
 それは、宝石の屑をビーズにして作ったブレスレットだった。
 それほど値の張るものじゃないが、安物というほどでもない。
 編み込みの間々にある大き目の石は指輪の台座に乗せ換えても可笑しくはない。
 「俺が作ったんだ」
 「…え?」
 女は俺がお袋や妹たちにつき合わされて、よくこういったアクセサリーを作らされているのを知っていた。
 だから、特に見栄を張る必要もない。
 わりに細々した性格をしているせいか、趣味というほど好きでもなかったが、苦というほどでもなく、お袋と作業台を囲みながらふと思いついて作った一品だった。
 「けっこう、イイ出来だろ?淳子さんにやるよ」
 「でも…」
 「固く考えなくてもいいよ。ほら、淳子さん、あんまり飾り物つけてないじゃん?だから、俺からのプレゼント。俺の女って印かな」
 冗談めかしてウィンクした俺が掌に落とすと、女はギュウっと握りしめて胸に抱き込んだ。
 仕事中はもちろん、そんなものをつけてよいはずはなかったが、女はプライベートでも最低限の身だしなみを整える程度で、極めて質素だった。
 他のメイドたちがオフの日や、時間外には楽しむオシャレも、女は飾り物など一切身に着けていなかった。
 以前に、俺やお袋が作った作品を見て、目を輝かせている姿から、けっして興味がないわけではないことはわかっていたので、軽い気持ちのプレゼントだった。
 でも、こんな風に喜んでくれるんだったら、悪くないよな。
 本当に嬉しそうに頬を染め、わずかに潤んでいる目元に、俺は正直、感動していた。
 女に溺れていたとはいえ、実際のところ、女自身というより当時は女の体に溺れていたのではないかと思いつつ、それでも俺の周囲の女たちにはないそんな純な反応が嬉しかった。
 「ほら、つけてみなよ?」
 「…ううん、今は仕事中だから。お休みの日につけるね」
 「仕事中にこんなことしちゃってるけどね。あれ?これももしかして、仕事のうち?」
 意地悪ね!と、俺の頬を軽く抓る女に、いてっ、と痛がるふりをして、俺たちは笑いあった。
 「ありがとう、本当に。大切にするね」
 女のその時の言葉はいまでも、俺の心に残っている。
 結局、女がそのブレスレットをする姿を見ることがなかったにしても。



 女が暗い顔をするようになったのは、女に嫌がらせをしていた他の使用人たちが辞めて以来、なかったことだ。
 「どうしたの?」
 と聞いてみても、
 「ううん、ちょっと、最近疲れが落ちないのかな。誰かさんが、疲れることばっかさせるから」
 軽くねめつける目に、俺は笑ってあまり深く考えることをしなかった。
 そんなある日、使用人のほとんどの者たちを連れてお袋が花見に繰り出した午後。
 いつものように女を連れ込んで、俺の自室のベッドで戯れて、熱い一時を過ごした後。
 どこか鬱屈を抱えた顔をしていた女の様子に、俺はしつこく問いただした。
 「何をそんなに悩んでるわけ?いいなよ?俺がガキだから言えないの?」
 「ううん、そんなことないよ」
 「もしかして、お袋になんか言われた?」
 お袋の様子から俺たちの関係がバレたようには思えなかったが、おそらくバレたとしてもお袋は何も言わないだろう。
 結婚すること、跡継ぎを作ること、俺がそれらをしっかりと認識している限り、お袋は俺を自由にしていたし、それだけの信頼もしていた。
 「あ、ううん、そんなことないよ。第一、奥様は何も知ってらっしゃらない、よね?」
 「ああ、そうだね」
 内心ではどうだか、と思いながらも安心させるように頷く。
 しばらく待って見て何も言わないようなら、また、様子を見たほうがいいのかと溜息をつきかけた頃…、
 「実は、叔父が急に入院して…」
 「それって、久住さん?」
 うちで運転手をしていた男の温和な顔を思い浮かべた。
 「あ、ううん。幸三叔父さんじゃなくって、私を育ててくれた父の実家の叔父」
 女は両親を亡くして小学校以来、父親の田舎の叔父の家で育てられたと、俺に話していた。
 叔父とは折り合いが悪く、結果、母方の伯父の久住を頼って、この家へと流れ着いたわけだが。
 「いろいろと物入りらしくって」
 小さく呟く女の様子に思い当たって、俺は引き出しから封筒を出した。
 うちはカードも持ち歩くけど、親父の主義で現金もある程度持ち歩いている。
 ちょうど、先日、今月分の小遣いを執事に引き落としてもらって、サイドテーブルの引き出しに入れっぱなしだったのを思い出した。
 確か、来月行く中等部の修学旅行の小遣いも先渡しされてたから、合わせれば50万くらいあるよな?
 こういう時、司だったら100万単位でも用意できるんだけど、さすがに現金だとこれくらいが俺には限度だった。
 「これ?」
 「それ、使えよ」
 「え、でも、こんな大金もらえないよ」
 青ざめた顔で俺を見返して、女は力なく首を振った。
 「いるんだろ?いいよ。俺の金だから、気にしないで」
 両手にねじまれた封筒をジッと見つめる固い女の顔が、何を考えていたかなんて俺にはわからなかったけれど、少しでも好きな女の役に立てることに俺は浮かれていた。
 今思えば、親の金を恵んでやって、自己満足に浸る単なるガキだってことだけど。
 小さく礼を言って俯く女の姿が、俺が見た女の…山本淳子との逢瀬の最後になった。



 たまたま引き出しの奥から飛び出してきた手作りのブレスレットが、俺のそんな記憶を掘り起こさせた。
 手に取って、顔の前に翳してみると、いつの間にか女の顔もあまりハッキリとは思い出せないことに気が付く。
 信念を固く目に宿した女の強い眼差しばかりが、脳裏に浮かぶ。
 でも、嫌がらせされて簡単に泣いちまう、弱いところもある女だったな、と苦笑気味な感慨もある。
 山本淳子は、結局、50万円とお袋から100万円の小切手をせしめて消えた。
 俺とのスキャンダルをネタに揺すり取られたのだ。
 その後、姪の不祥事の謝罪にきた元運転手から事の次第を聞くことになる。
 女には幼馴染みの男がいて、世話になっていた家と折り合いの悪かった女は、男にそそのかされるように東京に出てきた。
 半ば男はヒモのような状態だったが、女は男に尽くし続け、何が気に入らなかったのか男が女を捨て、身一つになってしまった女が東京にいる叔父を頼ってきた。
 それが、つい先ごろ、女を捨てたはずの男が女を頼ってきた。
 思ってみれば、女の顔が暗く、沈んだようになってきた頃に重なる。
 本当か嘘かは知らないが、男は身内が事故にあい、入院費その他もろもろの諸経費に金が必要だと縋り付いた。
 女が男の言葉を信じたのかどうかは知れない。
 けれど、結局女は堅実で安定した生活を捨て、男についていった。
 だが、本当にそれだけが原因だったのか?
 女の堅実で安定した人生を、そうでもないものにしていた男は、果たしてその同郷の男だけのことだったのか。
 俺の家格からいえば、100万円ぽっちではなく、もっと多額の金だとて脅し取ることは可能だったのに、どうしてそんなはした金ですべてを捨てて去って行ったのか。
 お袋はため息を一つ落として、「これも一つの教訓でしょ?」と親父には報告せずに、軽い説教をするに留めてくれたが、
お袋に頭が上がらない弱みを一つ握られてしまったのは痛い失敗だった。
 それからの俺が、付き合いには十分に気を付け、俺を脅せる理由を相手に持たせるにしても、俺からも脅せるだけの立場を持つ不倫相手を物色させる理由づけにもなった。
 でも、ふと思う。
 なんで、あの女はこのブレスレッドを置いていったんだ?
 なんで、あの女は一度もこのブレスレッドに腕を通さず、わざわざ俺の部屋のサイドテーブルの奥にしまい込んでいったんだろう。
 これだって、売ればそれなりの金額にはなるものだったのに。



 見るともなしに廊下の窓から外を見ていると、司と牧野がぎゃあぎゃあ騒いでいるのが見える。
 寄ると触ると騒いで喧嘩して、手が出る足が出る、頭まで出て。
 それでも次の瞬間には、一緒に笑って歩いている。
 仲がいいんだか悪いんだか。
 それでも、奴らの互いを見る、こっちが照れ臭くなるような視線が、眩しくて正直羨ましい。
 今の自分には持ち合わせていない純粋さ。
 あれが、本当の恋って奴なんだろうな。
 甘酸っぱくて、ほろ苦くて、初々しい。
 なんにせよ、あの14才の日の鈍い苦さを伴ったあの女との思い出が、俺の初恋だったのだと今の俺は思う。 
 そのまま付き合い続けていたとしても、俺と山本淳子に未来ある関係が待っていたとは思わない。
 でも、あの一瞬、お互いに交わした眼差しや熱い口づけは本物だったのだと、俺は思った。



(~Fin~)




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