「だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに」
司②

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~だから今日も I'm so happy~


 …やっちゃった。
 ヒビが入ってギブスで固めた腕に激痛が走った瞬間、そんなふうに思った。
 「だ、大丈夫、牧野さんっ!?」
 腕を庇って蹲ったあたしの横に、同僚の神崎君も慌ててしゃがみこんで、顔を覗き込んでくる。
 「…っ、だ、大丈夫」
 咄嗟に、返事を返したけど、痛む腕を抑えた手を離す勇気がどうしても湧いこない。
 「どうしたの?神崎君」
 「牧野?」
 どうした、どうした、と他の同僚たちも集まって来て、声をかけてくれる。
 「俺が牧野にぶつけちゃって」
 「ええ?牧野さん、先々週怪我をして、利き腕にヒビが入ってるんじゃなかったっけ?」
 身動きした拍子に、ここ最近では治まっていたはずの痛みが蘇って、ズキンズキンと腕が脈打っている気さえした。
 「まさか、また骨折?」
 「大変だ」
 痛み自体よりも、『骨折』っていうその言葉に恐怖しちゃって、ブワッと頭の芯が熱くなって、すぐにスーッと血の気が引いて冷や汗が流れた。
 「とりあえず、医務室行ったほうがいいよ。牧野さん、立てる?」
 「…うん」



*****



 「じゃ、無理しないようにね」
 「…はい、ありがとうございました」
 先輩に病院の駐車場まで見送られて、一礼して車に乗り込む。
 先に車に乗り込んで待ち構えていたSPの尾上さんが、到れりつくせりでシートベルトを締めてくれるのを恐縮しつつ任せた。
 「では、牧野様。マンションの方にお送りします」
 「よろしくお願いします」
 「もし、痛むようでしたらシートを倒しますので、到着するまで眠られたらどうでしょうか?」
 「…あ~、どうしようかな。鎮痛剤のおかげで大丈夫ですけど」
 そうですか…と、尾上さんは引き下がってくれたけど、その後も何くれとなく気を使ってくれる。
 もしかしたら道明寺がSPをつけてるかも、とは何度か思ったことはあった。
 でも、この尾上さんとは、先日骨折をして、その時が初めての顔合わせ。
 お屋敷でも見かけたことがない人だったから、あたしも気が付かなかったんだけど、そうと言われてみれば、何度か通勤途中とかに見かけたことがあって、家が近くの人なのかな、とか、通勤が一緒の方向なんだ、とかそんなふうになんとはなしに覚えていたのは、今となっては笑い話かもしれない。
 前回は会社の医務室から、病院へと移動して、治療の後、会社の人が送ってくれるというのをどうやって断ろうかと頭を悩ましている時に、この尾上さんが現れた。
 どうしてあたしが怪我をしたことを知っているのか、とか、なんでジャストなタイミングで病院に現れたのか、とか、そんなものはこの人が名乗った時に全部腑に落ちたし、まあ、道明寺のことだから、あたしにSPをつけているのもありえない話ではなかったからあまり驚かなかったんだよね。
 あの時は実家の両親や進に連絡がつかなくって、会社の人にあの!億ションを知られたくないあたしとしてはまあ、たしかに助かった。
 尾上さんも、従兄弟の嫁の叔母の夫だとかなんとか、よくわからない親戚を装ってくれたし。
 そんなこんなで、SPの件に関しては、道明寺に苦情を言えなかった。
 それ以前に、ああまで尽くされちゃったらねぇ。
 とてもじゃないけど、あたしのことを心配してのことだとわかっていて、文句を言ったりなんかできるはずがない。
 …いやあ、しかし痛かったな。
 むしろ、ヒビが入ったあの時より、今回怪我をした同じヶ所をブツけられたことの方が尚更痛かったように思う。
 たぶん痛みよりも恐怖?
 今度こそ骨が粉々になっちゃたんじゃないかってくらいに、疑心暗鬼になっちゃって、それでよけいに怖さや痛みが増してしまった気がする。
 …まったく、怪我させられることが日常茶飯事だった高校時代のあたしって、もしかして凄い強かった?
 肋骨折ってても平然と歩き回れちゃう化物じみた男のことは別として、人間って痛みに弱い生き物なんだなってあらためて実感しちゃったよ。
 結論からすれば、幸い、今回はヒビがひどくなることもなく、どこか他のところの骨を折ったとかそういうことにもならずにすんだ。
 そこは、大きくホッ。
 もちろんお医者さんには重々気をつけるようにと注意されちゃったし、怪我をしたところをまた打ち付けたわけだから、治まっていた痛みもまたぶり返す結果となっちゃったけど。
 …ハァ~、道明寺が出張中で良かったぁ。
 運が良かったというか、どういう偶然か、あたしが怪我をしてから早帰りを繰り返して出張を避けていたあいつだけど、さすがに今回ばかりは…って、西田さんからのヘルプが入ってしまって、いつだか言ってたとおり無視しようとしていた道明寺を宥めすかして今朝、出張に向かわせてたんだよね。
 もしこんな話がリアルタイムにあいつの耳に入ったりしてたら、…同僚の神崎君の進退は、なんて。
 とはいえ、明日の夜には帰って来る予定だし、国内だから、下手な連絡が入ると戻ってきちゃうから、そこのところは尾上さんに拝み倒して道明寺には知らせないでもらっている。
 …こっちに戻ってきた時に、尾上さんに八つ当たりさせないようにしなきゃ。
 まあそこは、あたしに無断でSPをつけてたことを引き合いに出すつもりだし、あたしの痛みが落ち着いて、平気だって分かれば瞬間湯沸かし器のあいつだって、そこまで怒り狂うようなことはないだろうし、ね。
 寝るつもりはなかったのに、いつの間にか寝てしまい、気が付けばマンションの車寄せの前まで到着していた。



*****



 「牧野様、本当によろしいんですか?」 
 尾上さんにマンションの部屋の前まで送ってもらったあたしを、出迎えたメイドさん達が口々に心配してくれる。
 「はい、大丈夫です。痛み止めを飲んで、安静にしてれば、明日には痛みも治まるそうですから、気にせず戻られてください」
 いつもは、お夕飯の支度をしてもらった後は、あたしが帰宅して、特に異常がないことを確認したらみんな道明寺邸に戻ることになっていた。
 でも、今日は道明寺が帰宅しないことや、送ってくれた尾上さんから事情を聞いた皆さんが心配しちゃって、なかなか帰ることを納得してくれない。
 「せめてお風呂のお手伝いを」
 「いっ!いえいえいえ、大丈夫です!平気、平気っ、ほらっ…っぅ」
 調子に乗って、吊っていた腕を振ってみせた瞬間、走った痛みに顔を顰めかけた。
 が…ここはぐっと我慢だと、たぶん引き攣っていたとは思うけど、かろうじて平気さをアピール。
 「だ、大丈夫ですよね?」
 「…………」
 「ね?」
 「……では、私どもは帰らせてもらいますけど」
 「はい、ありがとうございました」
 「もし何かあれば、お屋敷の方にご連絡ください」
 「はい!その時はよろしくお願いしますっ!」
 まだ何か言いたそうなメイドさんたちに愛想笑いをしながら、場合によっては実家のママを呼ぶからと、なんとか納得してもらう。
 …ハァ。
 道明寺にお風呂やら食事の介助をさせちゃってるあたしだけど、いくら同性で仲が良いとはいえ、赤の他人にお風呂に入らせてもらうほどには、まだ図太さが追いついていない。
 不思議だよね。
 看護師さんだと、全く平気ってことはなくても、そこまで意識しないんだけどね。
 やっぱり病院って環境が特殊空間なんだなぁ、とかどうでもいいことに感心する。
 皆さんに帰ってもらい、一人寂しく食卓についた。
 いつもは道明寺が帰ってくるのを待って、それからあれこれと二人で配膳するんだけど、今日はあいつが帰宅しないということと、あたしの腕のこともあって、意地を張らずに配膳もお願いしていたから、すでにホカホカと湯気のたつご飯が用意されていて、ホント、ありがたいかぎり。
 …なんだけどねぇ。
 はぁ~。
 いけない、いけない。
 油断すると、すぐに溜息ついちゃって…。
 溜息つくたびに幸せが逃げるっていうのに。
 「いただきます」
 シーン。
 ………。 
 「食べよ、ハァ」



*****



 食事をして、洗い物は食洗機があるから、食べ終わった食器の汚れをササッと落とすだけで、片手でもそんなに苦労せずに片付けはできた。
 それでもあらためて思うのが、利き手を怪我するのって本当に大変ってこと。
 もちろん、会社にいる時は、それなりに考慮してもらっているとはいえ、自分ひとりその不便さをこなしているわけだから、家に帰ったからといって急に不便を感じるのは変な話なんだけどさ。
 …でも、いつもは、うちに帰ると間を置かずしてあいつが帰ってきてくれて、あれやこれやと、こっちが頼まなくても、…むしろここまでやってくれなくってもってくらいに気遣ってくれて、先回りしてくれるから、申し訳ないとか恥ずかしいとかはあっても、それほど大変さを感じずに済んでたんだよね。
 それになによりも、不安に感じることがない。
 不慣れな状態で、不便さをカバーするからどうしてもうっかりして、怪我をしている部分をぶつけそうになってしまったり、無理をしてしまって痛みが走ったりしてしまう。
 それらのことをずっと道明寺がカバーしてくれてたんだって、いまさらながらに強く実感して、あいつのやってくれてることに頭が下がった。
 わかってるつもりで、わかっていなかったのかもしれない。
 あいつのあたしへの気遣いや優しさ…そして愛情。
 あいつが出張や連日の残業なんかで夜遅い時はいつも寂しいって思うものだけど、今はいつも以上に寂しくて、…あいつに逢いたいって思ってしまう。
 「電話くらいしなさいよ」
 ポケットにいれた携帯を確認して、小さくボヤいた。
 我ながら子供が拗ねてるみたいで、不安そうな声音に笑ってしまう。
 「…お風呂入っちゃお」
 いつもだったら意地を張って平気なフリをできるのに、今日はどうしてもダメで、あいつはなにも悪くないのに、連絡をくれないことを恨んでしまいそうで、さっさと今日という日…あいつがいない今日を終えてしまおうとお風呂に向かう。
 …はぁ~、お風呂、どうしよう。
 今日くらいはやめちゃおうかな。
 いやいや、けっこう今日は風が強くって埃ぽかったし、冷や汗をかいたりで自分が汗臭い気がする。
 片手でブラウスのボタンを外して、キャミソールを脱いで、パンツやスカートを下ろして…。
 あ、その前に肩から吊ってる布を外して、包帯やギブスが濡れないようにビニールを被せないといけないんだ。
 もうお風呂に入る前段階からしてかなりハードルが高い。
 トイレに行くことさえ億劫なのに、あまりに果てしない手順に、それだけでドッと疲れた。
 実家に帰ろうかなぁ。
 でも…、実家に帰っても、そこには道明寺がいない。
 …逢いたい。

あなたがいてくれるから…

 「道明寺に逢いたいよう」
 ついポロリと溢れた本音。
 あたしったら、何言っちゃってんだろ、たった一日のことで。
 「明日には、帰ってくるんだもん」
 そうだよ、本当はずっと一人で頑張らなきゃならなかったことなんだから!
 自分を鼓舞して浴室へと向かう。
 ブー、ブー、ブ―――ッ!
 ポケットの中の携帯電話のバイブが震えた。
 「ど、道明寺っ!?あたしね…」



~FIN~



シオン:追憶、君を忘れない、遠方にある人を思う
シオン

【幸せになることに躊躇してはいけない。】
~ジョン・レノン(英国のミュージシャン、ビートルズのリーダー / 1940~1980) 参照 名言+Quotes

熊本(大分・宮崎)支援情報まとめ→http://www.aratana.jp/pray_for_kumamoto/




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ちょっと名前に反応してしまいました笑
いやいや、ベタ甘な生活につくしちゃんもすっかり毒されてますねー!
これぞ司が仕掛けた罠!?笑
電話の後、司はすっ飛んで帰ってくるのかな…
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

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