「だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに」
総二郎

恋愛前夜

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~だから今日も I'm so happy~


 「え?ホテルの部屋から観るとかじゃなく、歩いて花火大会に行くの?」
 例により、いつものごとく、突然あたしのバイト先にやって来て、
 『支部会の会合が中止になったから、これからでかけようぜ』
あたしの言い分も聞かずに連れ出された夕方。
 まあ、こっちも本来あったはずの夜からの家庭教師のバイトがキャンセルになってて、時間が空いてたから良かったものの、そうじゃなかったら西門さんの誘いなんて断ってた。
 第一…あたしにはこの人がよくわからない。
 今までのように、綺麗でスタイルが良くって…この人が好んできた大人の割り切った付き合いができる女の人じゃなくって、あたしなんかをなぜ誘うんだろう。
 濃厚な色気を含んだ美貌が、あたしの視線を受けてニヤリと笑う。
 「ホテルの方が良かったか?」
 「…え?」
 一瞬、動揺してしまったのを、悟られてしまった?
 …百戦錬磨の男だもん。たぶん、わかっちゃったよね。
 でも、だからといってその戸惑いをあからさまにして、あたしが彼を必要以上に意識してしまっていることを知られたくなかった。
 たとえそれが、単なる形式的なものにすぎなくて、この人にしてみればしょせん恋愛初心者みたいなあたしなんて、簡単に見透かせる程度の見栄だったのだとしても、そのフリさえやめてしまえば、今この中途半端で…だけど、ぬるま湯のような居心地のよい関係が崩れてしまいそうで怖かったのかもしれない。
 クシャッと髪を撫でられ、手を引かれる。
 「冗談だよ。お前の場合、しっとり大人デートより、ガヤガヤ賑やかな方が性にあってんだろ?」
 「…デートって」
 ふっと笑った顔が肯定も否定もせずに、言葉ではなく、握られた手がギュッと力を込められる。
 この人とあたしの関係ってなんなのかな。
 もちろん、ホンの半年前までは容易に…迷うことなく答えることができた。
 高校時代の先輩後輩で、今は気のおけない男友達。
 だけど、いつからだろう。
 この人のあたしを見る熱っぽい眼差しや、触れてくる手の優しさ…そこに特別な何かを探している自分に気がついたのは。
 …西門さんにとったら、あたしなんてどうせ『女』のうちにも入ってないんだから、と自分を誤魔化して、むしろそんな目で見られない方が清々すると意地を張っていた。
 「好きだぜ」
 「…っ」
 唐突に呟かれた言葉に、弾かれたように顔を上げれば、甘く見つめる彼の顔…。
 スッと伸びてきた手が、ふいに耳元にかかる。
 思わず怖じけて、後退りかけてしまったのに気がつかれ苦笑されてしまった。
 「口んとこに、髪、かかってた」
 「あ、ありがと」
 結い上げた髪から溢れた後れ毛が、唇の端にかかっていたのを耳にかけてくれたらしい。
 意識すまいと思えば思うほどに、意識してしまっている自分を自覚して、カッと顔に血が上った。
 …いま、絶対、あたし真っ赤になってる。
 「女の子の浴衣姿って、萌える」
 「……あ」 
 それがさっきの『好きだぜ』にかかっている言葉だとわかって、唇を噛み締め、余裕たっぷりにあたしの心に揺さぶりをかけてはあっさりと引いて、まるでこれまでこの人がしてきた恋愛遊戯のような駆け引きをしかけてくるズルい男を睨めつけた。
 「あたしで遊ぶのはやめてよ」
 「遊んでなんかいねぇだろ?」
 「………なんで、あたしを誘うの?」
 これまでのように、一期一会だとうそぶいてあたしのことなんか放っておけばいい。
 『友達』という枠の中で、互いに一定の距離を保って踏む込まずにいてくれれば、あたしも気が付くことなく、青春時代の一時の気の迷いだときっと忘れることができたはずなのに。
 …あんただって、そう。
 あんたにはあんたの相応しい相手がいて、今は自由勝手気ままに風の吹くまま気の向くままと放蕩の夢を見ていても、いずれは生まれながらに定められた既定路線の中へと戻ってゆくつもりなんでしょ?
 シュ~ンと、甲高い音が響き、ついでドーンと轟音が鳴って、空に炎の花が咲き乱れた。

恋愛前夜

 「お、始まっちまったな」
 「………綺麗」
 現実の憂さも苦悩も…今はすべてを後送りにして見惚れた。
 「せっかく絶好の観覧場所に席を用意したのに、無駄になっちまう」
 「まさか、西門さんが席とりをしたわけ?」
 「俺が…というか、毎年うちも文化貢献の一貫として、毎年各地の花火大会や自治体の催し物には協賛金を寄付してるから、何かと融通きかせてもらったりすることも多いんだよな」
 …まっ、ホテルで観る方がよほど楽だから、めったに利用しないけどな、と言う西門さんの言葉からして、あたしが意味する席とりと西門さんの言う席とりでは若干意味合いが違うのがわかった。
 ようは有料席が用意されているってことなんだろうな。
 さすがに混雑の中、土部や地べたに座り込んで花火鑑賞なんて、この人がするわけないっか。
 あたしはそれはそれで楽しいと思うけど、それを西門さんに強いて我慢させてまで我を通しても楽しいとは思えない。
 あたしにしてみても、あたしたち二人とも西門さんが用意してくれた浴衣を着ていたから、もし汚れでもしたらと気が気じゃなくって楽しめないだろう。
 「あ…っ」
 足元の石につまずきかけて、西門さんの腕に縋って踏ん張った拍子に、鼻緒を挟んだ指の股にキリリとした痛みが走った。
 …やば。
 「…どうした?」
 ホンの少しだけ顔を歪めただけだったのに、すぐに西門さんが気がついて、怪訝にあたしの顔を伺ってくる。
 「えっとぉ」
 「鼻緒ズレか?」
 「あ~、まだ大丈夫だよ」
 愛想笑いをして見せたのに、わずかに顔を顰めた西門さんが小さく吐息をもらして、人波を避けた道脇へとあたしの手を引き導く。
 「ちょっと、そこ座れ。草履、見せてみろ」
 …え?そこって、ここ?
 雑草の下生えがあるとはいえ、真新しい借り物の浴衣で腰を下ろすには…と躊躇していると、西門さんが袖の袂から大ぶりのハンカチを出して草地の上に広げてくれる。
 たしかに今はまだ大丈夫だとは思うけど、少し指の股間が痛い気がするから下手に意地を貫いても迷惑をかけるだけだろうと、おそるおそる高そうなハンカチの上に腰を下ろして、あたしの足元にしゃがみ込んだ西門さんの指示に従う。
 「本当なら、オーダーメイドで作るもんなんだよな」
 「え?草履?」
 「そう。靴と同じで足に合わせるからこそ足を痛めたりしないもんなんだか…。なんせ急だったからな」
 言いながら、あたしの足から草履を取り上げて、鼻緒の部分に手を入れてぐっぐっと広げたり、ぐにぐにと揉んだりしてくれる。
 「一応、緒は太めのものにさせたから、これでとりあえずはしばらく持つだろ」
 「あ、うん、ありがと」
 「お前、いつもカットバンとか持ち歩いてたよな?」 
 「え?うん」
 出せと手を差し出されて、着物と同じ柄の巾着袋の中から絆創膏を取り出して、西門さんの手に渡した。
 それを器用な手つきで、鼻緒のあたる足の甲や指の股に貼ってくれる。
 男の人に素足を見せたり触らせたりするなんて、かなり気恥しかったけど、この人にしては珍しい生真面目な表情に気持ちを引き締め、そんな気持ちを振り払った。
 「一応予防にな」
 「……ありがとう」
 この人って、それほどマメな印象はないんだけど、やっぱり気遣いの次男のせいか、傍若無人に見えて気がきいてかなり気遣いの人だよね。
 …そりゃそうか。
 たくさんの女の人と付き合うのに、マメじゃなかったら同時並行で複数人と付き合ったり、とてもじゃないけどスケコマシなんてやってられるはずがない。
 「…今は違うから」
 「えっ!?」 
 苦笑して、立ち上がった西門さんに、ピシッと額をデコピンされてしまった。
 「痛ったぁい!何するのよっ」
 「親切にしてやった俺に、ずいぶん失礼な独り言呟いてやがるからさ」
 内心をまた口にしちゃってたか、ってことはともかくとして、
 「…だって、本当のことじゃん」
 「お前が好きだって言っただろ?」
 「………」
 たしかに、何度か好きだとは言われていた。
 でもそれって告白なの?とあたしが悩んでしまうくらいに、いつもサラリとしていて、いつもの冗談やからかうネタなんじゃないかと半信半疑にならざる得ないようなものだったのだ。
 「今はまだ、曖昧でいいんだ」
 「……それってどういうこと?」
 「俺はお前に好きだとは告白したけど、お前に俺を好きになってくれとも付き合ってくれとも言わないから、半信半疑なんだろ?」
 「………」
 そのとおりだった。
 でも、それならこの人の言う『好き』っていったいどういう意味なの?
 「遊び…とか、そういうのなら」
 「バーカ」
 心底呆れたように言われてしまって、ムッとする。
 「バカって」
 「…バカだろ?いまさら俺がお前みたいな面倒臭い女となんか遊ぼうとするか。何年ダチしてるんだよ」
 「あんたは…複雑っていうか、一癖も二癖もありすぎんのよ」
 どこまでが本音で嘘で…冗談なのかと、恋愛経験の浅いあたしではこの人に太刀打ちなんてできるはずもなくって…でも、だからといって…もう昔のようには、この人を一刀両断で拒んだりすることは、今のあたしにはとてもできない。
 小さく笑んだ西門さんの横顔はどこかほろ苦くて、ナイーブだった。
 「お前の気持ちはまだ、俺ほどには追いついていないからな。…下手に付き合ってくれとか、返事を求めて追い詰めたら、お前は逃げちまうだろ?司との恋に傷ついて臆病になっちまったお前には、まだリハビリが必要なんだろうよ」
 …そうなのかもしれない。
 流れゆく日常に痛みを誤魔化して、ちゃんと泣いてこなかったから、ふと時々遅効性の毒のように無性にやるせなく悲しくなってしまう瞬間がたしかにあった。
 でも、それさえも…今は。
 「だから、今はまだいい、曖昧のままで」
 「…西門さん」
 「ま、ちゃんと付き合った状態じゃねぇと、この俺様の超絶テクとフェロモンを有効活用できないのが辛いところだが、お前にはその方がいいだろ。俺がちょっと肩抱き寄せたり、キスしようとしたりするだけでガチガチになって、固まるくらいだからな」
 いきなり変わってしまった空気に、ゲッと仰け反った。
 「キ、キスなんてしないでよ!」
 「ぷっ、挨拶だろ」
 ひとしきりゲラゲラ笑う西門さんの背後で、ぱぁっと華やかな花火の光が瞬き、彼の艶やかな美貌を明るく照らした。 
 「さ、もう行くか」
 「………うん」
 再び差し出された手に手を乗せて、握られた手に引かれて歩き出す。
 「…ただ、もうすぐ類も日本に戻ってきちまうからな」
 見上げた西門さんの顔はまっすぐ前を向いていて、何食わぬ顔をしていたけど、花火の明かりに照らされた頬はわずかにほんのりと赤い気がした。 
 「たぶん俺も焦ったのさ。…お前に天下のカサノバの本気見せてやるよ」



~FIN~



イベリス:心をひきつける、初恋の思い出、甘い誘惑
イベリス

【失敗したからって何なのだ?失敗から学びを得て、また挑戦すればいいじゃないか。】
~ウォルト・ディズニー(米国のエンターテイナー、実業家 / 1901~1966) 参照 名言+Quotes

熊本(大分・宮崎)支援情報まとめ→http://www.aratana.jp/pray_for_kumamoto/




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~ Comment ~

カサノバの本気、見てみたいですー笑
付き合う前の妙な駆け引きちっくな会話がドキドキでした!
総ちゃんは付き合うまでもっていくのに、一番時間がかかりそうなイメージがあります(つくしちゃん限定で)

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