「だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに」
司①

72億分の1の奇跡

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~だから今日も I'm so happy~


 やっちまった。
 言った瞬間には後悔してた。
 でも、みるみる涙ぐんで潤んだ目が瞼に隠れて、俯いた次の瞬間、震える唇をキュッと噛み締め、顔を上げたあいつの顔が俺を反抗的に睨んだから、それでカッと頭に血が昇っちまった。
 …なんだよ、開き直りやがって。
 「もう少しとか言って、お前が何年も俺のプロポーズを断って結婚を引き伸ばすのも、本当は周りの男どもにチヤホヤされて、独身生活を楽しみたいからなんじゃねぇの?適当に仕事して、アフターファイブを楽しんで?そんな平凡なOL生活ってやつに憧れてるんだもんな」
 我ながらイヤミったらしい言葉だって自覚があった。
 すげぇ意地悪で愚劣な物言い。
 牧野が平凡な人生ってヤツに憧れていたのは事実だったし、たぶん、俺と出逢って俺と付き合うようなことがなければ、普通に叶えられたんだろうささやかな望み。
 いつもだったら、青ざめた牧野の顔を見ただけで、どんだけ不満を抱えていようと、理性のブレーキがかかるというのに、この時ばかりはそんな警告音にも気が付くことができなかった。
 過労していた。
 分刻みのスケジュールに悲鳴をあげていた神経が、唯一絶対の惚れてる女に会って癒されることを望んでいたのに、そんな本音をやせ我慢しすぎて、限界にきてたことに自分で気がついてなかったんだ。
 …いや、それもいいわけだな。
 俺は元からこんな男なんだ。
 ストレスに青色吐息になりながらも、見た目だけは平然としたフリをして、なんとかこなしていた接待での帰り道。
 普段は、周囲を見回したりしない。
 一つ終わればまた一つ次のことへと、移動の途中も手に持った書類やスマートフォンの間で、視線を往復させるだけで、他を見ることはめったになかった。
 なのに、ふと顔をあげた視線の先、あれほど逢いたくてしょうがなかった女が、ちょうど飲み屋らしい店から出てきて、俺じゃねぇ他の男と笑い合っていた。
 こいつが、ずっと望んでいた平凡な人生をくれるような男。
 特別な名誉も財産も、何一つもってはいなくても、ただ牧野のためだけに時間を使ってやれる男。
 気がついたら、走り出していた。
 少し冷静になって、事態の成り行き見守っていれば、それが会社の付き合いかなにか、おそらく歓送迎会や親睦会の類だってすぐにわかったはずだっただろう。
 それなのに気がつけば、俺は行動に出ちまっていた。
 社会人になって、責任ある立場になり、ここしばらく抑えられていた衝動を堪えることができなかった。
 笑い合っていた男の他に、後から出てきた数人の男女の輪の中にいた牧野の腕を掴みあげ、驚く奴らの視線も牧野の誰何も無視して連れ出す。
 いつもはちっちぇこいつの歩幅に合わせて、ゆっくり歩いてやるのに、無理矢理に引きずり抵抗する力をねじ伏せ、待たせていた車に強引に突っ込んだ。
 当然、車内は穏やかとはいいかねる状況で、だが別にそれでいつもと何が違うってわけでもなかった。
 こんなパターンはそれこそ、こいつと付き合いの浅いガキの頃から何度となくあった喧嘩にすぎなかった…はずだったんだ。
 …なんで、こんなことになったんだ。
 エキサイトする言葉が次第に刃を含むモノになって、気が付いたら、車が停車するのとほとんど同時、俺の手を振り切った牧野が車を飛び出していた。
 「わかった」
 「なにが、わかったんだよ」
 「…あんたは、あたしをそうやってずっと見下してたんだ」
 …見下していた?
 「あんたにとってあたしの仕事なんて所詮、お遊びみたいなものなんだもんね。せめて結婚する前くらいは、自分や家族の面倒を自分でみたい、そう言ったあたしの言葉を納得してたわけじゃなかったのは知ってたけど…それでも、あたしの意思を尊重してくれてる。そう思ってたのは間違い?」
 「間違いじゃねぇよ」
 牧野の言うとおりお遊び…とまでは言わないまでも、いずれ俺の家族になるんだったら、それがなんで今じゃいけねぇんだ。
 俺がいくらでも面倒見てやるし、それでお前が俺のそばにいてくれるんだったら、それくらいのことをどうして俺がしてやってはダメなんだと、不満に思っていた気がする。
 それでも、牧野がそうじゃなきゃ、自分でいられないんだと真剣な目で言うから、俺が折れた。
 お前が好きだから、お前を愛してるから、お前の望むようにしてやりたかったんだ。
 お前が本当は夢見ていた平凡な人生ってやつを、俺がいずれは取り上げちまうから、せめて今だけはって。
 けど、狭量で独占欲の強い俺は、お前が俺以外の他の物に気を取られるが、辛くて…どうしても許してやれない。
 いつもはきゃんきゃん食いついてくる牧野が、泣きそうな顔を俺から背けて、歩き出す。
 「どこ…行く気だ」
 「……………帰る」
 抱き寄せようとした手をスルリとかわして、俺の横を無言で通り過ぎる。
 「ま…」
 名前を呼んで引きとめようとしたタイミングで、胸元でなりだした携帯に呼び止められる。
 無視をして、牧野を優先しようとするけど、あいつの背中はそんな俺を拒んでいた。
 仕方なく、チッと舌打ちして携帯に手を伸ばす。
 …行くなよ。
 …行かないでくれ。
 そう言ったら、お前は立ち止まってくれるんだろうか。
 傲慢で厚顔無恥なくせに、プライドばかり高い俺は、そんな一言さえ言えずに、あいつの小さい背中を見送ることしかでなかった。
 「はい」
 携帯を片手に、ぼんやりと夜空を仰ぎ見る。
 晴れているはずの夜空のどこにも、星も月も見えず、どこかどんよりと暗く陰っている気がした。



*****



 …くだらねぇ。
 冷静になってみれば、やっぱり騒ぎ立てて牧野を責めるほどのことではなくって、どう考えても疲労とストレスに煮詰まっていた脳みその作り出した世迷いごとにすぎなかった。
 何も悪くないあいつの気持ちを、無意味に詰って傷つけて、やつあたって…愛想尽かされてりゃ世話ねぇよな。
 手に持った琥珀色の酒の入ったグラスをグイッと一呑みで飲み干す。
 ザルの俺にしてみりゃ、こんなもので酔えるはずもなく、ただ鬱々とした時間を過ごすだけ。
 何度か手にとった携帯には当然のことながら、牧野からの着信なんて入ってなくって…、携帯の液晶に指先を伸ばしては逡巡してやめることを繰り返している。
 昔の俺だったら迷ったりしなかった。
 けど、今、あいつに連絡して、それでどうすんだよ。
 明日も明後日も、…明明後日も俺の状況は変わらない。
 結局忙しい毎日に埋もれて過ぎるのを待つのか。
 あるいは…、
 …もうとっくに、俺のことなんて、あいつは愛想尽かして、別れたいって思ってるかもしれねぇよな。
 そんな妙な弱気になってるのは、この酒のせいなのか。
 顔に当てた両手をゆっくりと撫でるようにして、擦り下ろして…開いた目に愛しい女の姿。
 さっき別れたばかりで、もう逢いたくて仕方がない女だ。
 「おま…」
 「…なんて顔してるのよ」
 不貞腐れたような憮然としたままの牧野が、俺の目の前まで歩み寄って、だらしなくソファに腰掛けた俺の足の間に立つ。
 「帰らなかったのか?」
 「帰って欲しかったの?」
 「…まさか」
 茫洋と牧野を見上げる俺の両頬に、手を伸ばして…、
 「いでっ!」
ぎゅう~ぅぅッっと俺の両頬を抓って、引き伸ばしやがった!?
 「なにしやがるこの凶暴女ッ!」
 「……寝ぼけた顔してるからでしょ」
 言うに事欠いて、この俺様に向かって寝惚けてるとかいうのかよ。
 呆れた顔をした牧野の顔は、もうさっきみたいに泣きそうでも、怒りに青ざめた顔でもなく、ただ仕方なさそうに苦笑していた。
 「情けない顔しないでよ。人一倍俺様のくせに、こう言う時だけズルいんだから」
 「うるせぇ」
 お前にだけだ。
 俺が情けない男になるのも、迷って弱気になるのも。
 「あんたみたいに、やたらめったら嫉妬深くて、しょうもなく面倒臭い男、さっさと見限ってやろうとしたんだけどさ」
 不安そうな顔した俺の顔が、牧野の目の中に映り込む。
 …なんだよ、俺、こいつの前では、こんな顔してんのかよ。
 誰よりも守ってやりたい女なのに、俺の方が頼りないガキみたいじゃねぇか。
 俺の頬を抓っていた手が、今度は優しく俺の頬をそっと撫ぜて包み込む。
 目と目を合わせて、そっと降りてきた唇に目を閉じた。
 「…でも、しょうがないよね。あたしもあんたのことがどうしようもなく好きなんだもん」
 「牧野」
 「別れるなんて、とてもできないよ」
 「………」
 何度も何度も落とされるキスが想いを伝えてくる。
 やがて、今度は俺がその主導権を奪い、この俺の熱く切ない思いを込めて深いキスで返す。
 …愛してる。
 …この世の何にも代えがたくお前を愛してるから。
 「あのね、…あたし、来月で会社を辞めようと思うの」
 「…それって」
 「あんたがこんなあたしでも必要だと言ってくれるなら」
 「…必要だ」
 間髪入れずに返事を返してやる。
 それは10年も前、お前と出逢ったあの時からずっと、俺にとって疑うべくもない真実。
 「あんたを支えたいの。…あんたの奥さんとしてずっとあんたを…司を支えてゆきたい」



*****



 「俺と結婚して?牧野」
 「………はい」
 それは10年目にして叶った俺の唯一絶対の望み。
 「そうだ、あんた知ってる?」
 「あ?」
 「この世の中で、ただ一人の人と出逢う確率は72億分の一。つまり、この地球上の人口の中で、たった一人。その中でも、両想いになれる確率は1/400の確率なんですって。それを思えば、あんたとあたし、大好きな人とこうして一緒にいれることって、すごい奇跡だと思わない?」
 何言ってんだよ、そんなこと、お前と出逢った17才のあの時から、俺は知っていたに決まってんだろ。

2人が出逢う確率は、“72億分の1”。



~FIN~



バラ:夢かなう、奇跡
青いバラ

【あなたはたった一つの尊い命をもってこの世に生まれた、大切な存在です。】
~瀬戸内寂聴(日本の女性小説家、天台宗の尼僧 / 1922~) 参照 名言+Quotes

熊本(大分・宮崎)支援情報まとめ→http://www.aratana.jp/pray_for_kumamoto/




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うるっときましたー!
こういう喧嘩からのプロポーズって、何度読んでも泣けてしまいます。
そんな奇跡を忘れがちですが、こ茶子様の文章で頭の片隅にまた蘇ってきたので、また改めて優しくしてあげようと思いました(日々悔い改める反省の毎日…笑
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

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