「だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに」
類
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~だから今日も I'm so happy~
「あれ?珍しいな。一人か?」
ボンヤリと外を眺めていたカフェ・テラス。
後ろから西門さんに声をかけられて、ふっと我に返った。
あたしの他に誰もいないのに、自然な仕草で席を一個開けたのが妙にカンに触って、ムッと口がへの字に曲がってしまう。
「…類は?」
「知らない」
「知らない?」
ちょっとイヤミっぽいかな、って思ったけど、他にいいようがないし、もう一度、
「知らない」
って、短く返事を返す。
「喧嘩したのか?」
「そういうわけじゃないけど」
喧嘩っていうのかな、アレ。
あれほどチャランポランにやっていたF4だったけど、大学も4回生になって、学業と仕事の比重が逆転して、以前はここにくればいつも揃っていた彼らも、今は一人でも滅多に見ることがなくなった。
かくいう類も、先週までお父さんについてあっちこち出張だったけど、久しぶりに今日は一日オフだって言うから、出かける約束をしていたんだよね。
あたしは大学の授業もバイトもあるし、ただでさえいつも過労気味な彼をあたしのために無理に引っ張りだすのも申し訳なくって、
『またでいいよ』
って遠慮した。
でも、
『俺がデートしたいんだ』
って、類の方が言ってくれたから、嬉しくて嬉しくて、本当に嬉しくて。
本当はたまの休日くらいは、ゆっくり眠りたいんだろう類の本音を見なかったフリして喜んじゃった。
前から一緒に映画を見たがってたあたしに合わせてランチを食べて、映画を見て、どこか適当にぶらぶらと散歩しようか、なんてそんなプランを電話で立てたのが一昨日前のこと。
今日は朝から嬉しくて、楽しみでしょうがなかった。
いつもはささっと簡単にしかしないメイクを頑張って、前から類とのデートで着ようって思ってとっておいたおニューの洋服を卸してウキウキして…まるで遠足前の小学生?
それでもあんまり早い時間じゃ可哀想だと、『目が覚めたら電話ちょうだい』って、大学で待つことにした。
そんなに早い時間に連絡なんか来るはずがないと気を引き締めた1時限目。
ウキウキ、ソワソワ、そろそろかななんて、ちっとも集中できなかった2限目。
ランチの時間を大幅に過ぎて…、4時限目もそろそろ終わろうかというこんな時間帯に、あたしは一人紅茶を飲みながら、外を眺めている。
わかっていたけどさ。
でもね、本当に楽しみにしてたんだよ。
来ない電話を待って、ため息をついて…、どうせ集中できない授業を抜け出して、こんなところでバカみたい。
できるだけ寝かせておいてあげよう、って、あたしだって思ってたじゃない。
それなのに、痺れを切らせて送ってしまったメール。
電話でだったけど、返信が来たのも、それから1時間も後とか笑っちゃう。
『ごめん…すっかり…』
…忘れてた?
いかにも寝起きですって感じの寝ぼけ声。
わかってるよ。
人間誰にだってうっかり忘れちゃうことってあるよね。
忙しくて大変な人だってわかっいて付き合ってて、その約束の確認をちゃんとしなかったあたしも悪いんだってね。
『今からおうちデートしよっか?牧野が観たいって言ってた映画もあるし、最新の奴もだいたい揃ってるから好きなの観れるよ』
って。
でもさ、そう言うんじゃないんだよね。
じゃあ、どんなんだ、って聞かれたらそれも困っちゃうけど。
『いいよ、今日はもうゆっくりしてなよ。明日も仕事なんでしょ?映画も自分のうちにあるなら、もう見たんだろうし、一度でいいじゃん?』
そう言って電話を切った。
何度か折り返し電話が入ったし、なんかLINEも入ってたけど、電源をオフに。
怒ってるわけじゃない。
たぶんね。
でも、ちょっとだけ拗ねてるのかもしれない。
ただ…少しだけ、寂しいっていうか哀しかった。
…あ~あ、今から勉強する気分じゃないしな。
バイトも休んじゃってるから、もう帰っちゃおうか。
いつもだったら、たとえ1時限だってサボったりしないのに。
黙々と紅茶を口に含んで、特に会話に応じるでもないあたしの正面で座っていた西門さんが、おっ、て感じで携帯をスラックスのポケットから取り出す。
結局、ランチもスキップしちゃったけど、いまさらランチって時間でもないし、食欲もない。
こういう日は、さっさっと帰って寝ちゃうにかぎるよね。
最後の一滴を飲み干して、
「あたし、そろそろ行くね」
「ん?おう」
素っ気ないことこの上ないけど、あたしたちもそれなりに長い付き合いだから、慣れたもので特に気を使うこともない。
「お前、あんまり心配かけんなよ」
「なによ、それ」
椅子から立ち上がりざま、思わず睨みつけると、まだ携帯の画面を見たままの西門さん。
「お前は我慢しすぎてガス抜きが下手クソだから、いきなり爆発するんだよ」
なんにも知らないくせに、見透かしたような態度が気に入らなくって、八つ当たりだと思いながらも言い返してしまう。
「あんたに関係ないでしょ?」
「ま、そうだけど」
あっさり引くところが、美作さんとは違うところだよね。
気楽といえば気楽だけど、その分辛辣だったりもするから、今こんな気分の時にはその辛辣さを向けられたくない。
…さっさと退散しよ。
「お前って、なぜか類が相手だと遠慮して、妙に乙女チックだからな」
「…………じゃあね」
どうせ、あーいえばこういうって感じで、この人には何を言っても勝てないんだからと、さっさとカフェを後にする。
…類には遠慮して乙女チックかぁ。
だって、しょうがないじゃない。
やっぱり初恋スタートだからなのかもしれない。
類から好きだと告白されて、付き合い始めたけど、それでもあたしの中ではたぶん今でも高校生の時の初恋の王子様が生きている。
憧れて、憧れて、本当に好きで。
友達にも落ち着いたことがあるけど、でも、不思議な縁で、こんなふうにカレカノっていう関係に変わって…。
今度は類の方があたしを好きになってくれたはずなのに、彼を知れば知るだけ、もっと、もっとって、ドンドン好きになって、昔は少しでも一緒にいられればって、それだけで幸せになれたはずなのに、今じゃ、ずっとそばにいたい、そんな風に欲張りになって。
どれだけ好きになれば、この気持ちも落ち着くんだろう。
カフェを出たとたん、ぐうぅぅっと鳴ったお腹の音に空腹を思い出した。
「うう、やっぱお腹空いたかも」
こういう時はヤケ食い?
なんか食べて帰ろうかな…そんなことを考えてぼんやり空を見上げたとたん―――トン。
…え?
背中から抱きしめられた。
「ハァハァハァ、毎日…ハァ、ひぃひぃ…ハァ、言って、体力の限界まで頑張っている俺に…ふぅ、どんだけ無理させるつもり?」
「…………」
「着信拒否とか勘弁して?」
恐る恐る振り返った視線の先、汗まみれの類が泣きそうな顔で立っていた。
「類」
「ホント、ごめん、待たせて。忘れてたわけじゃないんだ」
「……うん」
なんだか、類らしくないそんなテンパった姿を見ていたら、それだけで胸の奥でモヤモヤしていた悲しい気持ちとか、寂しさとか、そんなものがあっという間に晴れて、ただこの人に会えて嬉しいって、それだけになる。
ああ、あたしやっぱりこの人のこと凄い好きなんだなって。
そんなあたしの気持ちが伝わったのかな。
心配げにあたしを見下ろしていた類の顔が和らぐ。
「牧野」
「ん?」
「お腹すいた」
「……………」
「……………」
「ぷっ、あたしも」
ランチがディナーになっちゃったけどね。
~FIN~
ネモフィラ:どこでも成功、あなたを許す
【過去のことを思っちゃダメだよ。何であんなことしたんだろ…って怒りに変わってくるから。未来のことも思っちゃダメ。大丈夫かな、あはぁ~ん。不安になってくるでしょ?ならば、一所懸命、一つの所に命を懸ける!そうだ!今ここを生きていけば、みんなイキイキするぞ!! 】
~松岡修造(日本の元プロテニスプレーヤー、スポーツキャスター / 1967~) 参照 名言+Quotes
熊本(大分・宮崎)支援情報まとめ→http://www.aratana.jp/pray_for_kumamoto/
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~ Comment ~
小説でちょっと泣きそうになって、最後の修造さんの名言に笑ってしまいました!
類が全力疾走って似合わないけど、似合わないからこそカッコいいですよね!
バスケの時然り、キュンポイントついてくるな~策士類君笑
- #9256 もっち★
- URL
- 2016.05/06 21:09
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「知らない」
「知らない?」
ちょっとイヤミっぽいかな、って思ったけど、他にいいようがないし、もう一度、
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って、短く返事を返す。
「喧嘩したのか?」
「そういうわけじゃないけど」
喧嘩っていうのかな、アレ。
あれほどチャランポランにやっていたF4だったけど、大学も4回生になって、学業と仕事の比重が逆転して、以前はここにくればいつも揃っていた彼らも、今は一人でも滅多に見ることがなくなった。
かくいう類も、先週までお父さんについてあっちこち出張だったけど、久しぶりに今日は一日オフだって言うから、出かける約束をしていたんだよね。
あたしは大学の授業もバイトもあるし、ただでさえいつも過労気味な彼をあたしのために無理に引っ張りだすのも申し訳なくって、
『またでいいよ』
って遠慮した。
でも、
『俺がデートしたいんだ』
って、類の方が言ってくれたから、嬉しくて嬉しくて、本当に嬉しくて。
本当はたまの休日くらいは、ゆっくり眠りたいんだろう類の本音を見なかったフリして喜んじゃった。
前から一緒に映画を見たがってたあたしに合わせてランチを食べて、映画を見て、どこか適当にぶらぶらと散歩しようか、なんてそんなプランを電話で立てたのが一昨日前のこと。
今日は朝から嬉しくて、楽しみでしょうがなかった。
いつもはささっと簡単にしかしないメイクを頑張って、前から類とのデートで着ようって思ってとっておいたおニューの洋服を卸してウキウキして…まるで遠足前の小学生?
それでもあんまり早い時間じゃ可哀想だと、『目が覚めたら電話ちょうだい』って、大学で待つことにした。
そんなに早い時間に連絡なんか来るはずがないと気を引き締めた1時限目。
ウキウキ、ソワソワ、そろそろかななんて、ちっとも集中できなかった2限目。
ランチの時間を大幅に過ぎて…、4時限目もそろそろ終わろうかというこんな時間帯に、あたしは一人紅茶を飲みながら、外を眺めている。
わかっていたけどさ。
でもね、本当に楽しみにしてたんだよ。
来ない電話を待って、ため息をついて…、どうせ集中できない授業を抜け出して、こんなところでバカみたい。
できるだけ寝かせておいてあげよう、って、あたしだって思ってたじゃない。
それなのに、痺れを切らせて送ってしまったメール。
電話でだったけど、返信が来たのも、それから1時間も後とか笑っちゃう。
『ごめん…すっかり…』
…忘れてた?
いかにも寝起きですって感じの寝ぼけ声。
わかってるよ。
人間誰にだってうっかり忘れちゃうことってあるよね。
忙しくて大変な人だってわかっいて付き合ってて、その約束の確認をちゃんとしなかったあたしも悪いんだってね。
『今からおうちデートしよっか?牧野が観たいって言ってた映画もあるし、最新の奴もだいたい揃ってるから好きなの観れるよ』
って。
でもさ、そう言うんじゃないんだよね。
じゃあ、どんなんだ、って聞かれたらそれも困っちゃうけど。
『いいよ、今日はもうゆっくりしてなよ。明日も仕事なんでしょ?映画も自分のうちにあるなら、もう見たんだろうし、一度でいいじゃん?』
そう言って電話を切った。
何度か折り返し電話が入ったし、なんかLINEも入ってたけど、電源をオフに。
怒ってるわけじゃない。
たぶんね。
でも、ちょっとだけ拗ねてるのかもしれない。
ただ…少しだけ、寂しいっていうか哀しかった。
…あ~あ、今から勉強する気分じゃないしな。
バイトも休んじゃってるから、もう帰っちゃおうか。
いつもだったら、たとえ1時限だってサボったりしないのに。
黙々と紅茶を口に含んで、特に会話に応じるでもないあたしの正面で座っていた西門さんが、おっ、て感じで携帯をスラックスのポケットから取り出す。
結局、ランチもスキップしちゃったけど、いまさらランチって時間でもないし、食欲もない。
こういう日は、さっさっと帰って寝ちゃうにかぎるよね。
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「あたし、そろそろ行くね」
「ん?おう」
素っ気ないことこの上ないけど、あたしたちもそれなりに長い付き合いだから、慣れたもので特に気を使うこともない。
「お前、あんまり心配かけんなよ」
「なによ、それ」
椅子から立ち上がりざま、思わず睨みつけると、まだ携帯の画面を見たままの西門さん。
「お前は我慢しすぎてガス抜きが下手クソだから、いきなり爆発するんだよ」
なんにも知らないくせに、見透かしたような態度が気に入らなくって、八つ当たりだと思いながらも言い返してしまう。
「あんたに関係ないでしょ?」
「ま、そうだけど」
あっさり引くところが、美作さんとは違うところだよね。
気楽といえば気楽だけど、その分辛辣だったりもするから、今こんな気分の時にはその辛辣さを向けられたくない。
…さっさと退散しよ。
「お前って、なぜか類が相手だと遠慮して、妙に乙女チックだからな」
「…………じゃあね」
どうせ、あーいえばこういうって感じで、この人には何を言っても勝てないんだからと、さっさとカフェを後にする。
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だって、しょうがないじゃない。
やっぱり初恋スタートだからなのかもしれない。
類から好きだと告白されて、付き合い始めたけど、それでもあたしの中ではたぶん今でも高校生の時の初恋の王子様が生きている。
憧れて、憧れて、本当に好きで。
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「…………」
「着信拒否とか勘弁して?」
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「類」
「ホント、ごめん、待たせて。忘れてたわけじゃないんだ」
「……うん」
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ああ、あたしやっぱりこの人のこと凄い好きなんだなって。
そんなあたしの気持ちが伝わったのかな。
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- ┣ 第7章 光と影①
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- ┣ 第9章 闇に下る太陽①
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総もくじ ******【類×つくし】******
- ┗ 【類×つくし】
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総もくじ 中・短編-
総もくじ ****【あきら×つくし】****
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~ Comment ~
小説でちょっと泣きそうになって、最後の修造さんの名言に笑ってしまいました!
類が全力疾走って似合わないけど、似合わないからこそカッコいいですよね!
バスケの時然り、キュンポイントついてくるな~策士類君笑
類が全力疾走って似合わないけど、似合わないからこそカッコいいですよね!
バスケの時然り、キュンポイントついてくるな~策士類君笑
- #9256 もっち★
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- 2016.05/06 21:09
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