「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日③

愛してる、そばにいて0200

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 「嫉妬…」
 「ええ、お気づきにならないところが先輩らしいということなんでしょうかね?」
 鈍い、鈍いとは優紀にでさえ言われていることだ。
 とはいえ、だいぶ近しく付き合っているとは言え、まだ知り合ってそれほど経っていない桜子にさえ指摘されるとは。
 「他人の心持ちに疎いということは、たとえ悪意がないにしても、それだけで罪なことだと先輩は知ってらっしゃるのかしら?」
 「…桜子?」
 責める口調ではなかった。
 けれど、桜子の言葉尻にいら立ちのようなものを感じるようになったのはいつの頃からだったのか。
 もしかしたら、最初からだったのかもしれない。
 どこか苦しげで哀しげで、司を嫌いだという桜子の真実が別にあるのではないかと、時々ふいにつくしに考えさせる。
 「でもまあ、物事は双方向。案外因果応報っていうのは先達の教訓ばかりではなくって、世の中の真実というものをついていると私などは思うのですけれどね」
 「…あんたの言ってることは、あたしには難しすぎてよくわからないよ」
 「かまいませんよ、単なる私の与太のようなものなのですから、きっとね」
 「…………」
 そう言われてしまえば、もうつくしにはそれ以上、言い募るべき言葉もなかった。
 「ああ、そうだ。話は変わりますけど、先輩、例の香水はもう身につけてらっしゃらないんですか?」
 「え?あ、ああ…あれね」
 桜子の言っているのは、司の母親から贈られた香水のことだろう。
 一時期、桜子の意味深な言葉が気にかかって、身につけるのを躊躇したけれど、妙に意識したりしなければ、単純にいい匂いの香水に過ぎないと今では開き直っていた。
 「つけてるよ。今日はお茶の手習いだから、つけてこなかったけど」
 師事している以上、師匠の言うことは絶対だ。
 外れない結婚指輪に関してだけは事情を話して許してもらったが、国宝級の茶碗に傷をつけないようにカバー的なものをつけてこようとしたつくしに対して、
 『別にいいぜ?傷が付いたら、司の方に請求するから。たかだか数千万くらいの茶碗、あいつならいくらでも弁済できるから気にすんな』
 などと言われて、怖気ってしまった。
 どうやら、それは総二郎お得意のジョークだったらしいが、実際に西門流の若宗匠である総二郎が使っている茶碗ならば、それくらいの価値はありそうだ。
 「でも、もうソロソロなくなっちゃいそうなんだよね」
 そんなにバカバカつけていたわけではなかったけれど、先日、ついうっかり内蓋を開けたまま小瓶を横倒しにしてしまい、残っていた香料のほとんどを零してしまっていたのだ。
 「あら、じゃあ、タイムリーでしたわね」
 「ん?」
 桜子が膝の上に置いてあったハンドバックの中から赤い皮の手帳を取り出し、何事かのメモを見て書き写した紙片をつくしへと差し出す。
 「どうぞ?」
 「これって…」
 「楓社長御用達の香水商だそうですよ?御子息がご贔屓にされているブランドとは別ブランドだそうですから、同じものを注文しようと思ったらそちらではないと難しいそうです」
 元々、司に内緒で楓を引き合せたのは桜子だった。
 彼女が個人的に楓と繋がっていても、おかしくはないのことなのかも知れない。
 「私が楓社長と個人的なお付き合いがあるとお思いになってます?」
 「え…うん、そうなんでしょ?」
 「まさか」
 意外な答えに、つくしが目を瞬かせジッと桜子を見返す。
 「個人的にお会したのは、先輩を引き合わせたあの日が初めてです」
 「え?そうなの?てっきり」
 親しげだとは言わないが、よもや初対面だとは思いもしないでいた。
 「もちろん、社交界では何度となくお見かけしてましたし、こちらからは一方的に存じ上げてましたけどね」
 「そうなんだ」
 社交界に出入りするものたちにも格があり、また派閥や系統がある。
 元公家の旧家出身の桜子はけっして下層に位置してはいなかったが、それでもグローバル企業である道明寺家の面々に重要視される存在ではなかった。
 「あちらから近づいてきたんですよ。私の何がお目に止まったのかわかりませんけどね。伊達に‘鉄の女’と呼ばれる辣腕経営者ではないということでしょうか」 
 「…鉄の女?なんか前からあんた、あの人をそう呼んでるみたいだけど」
 「ええ、私がつけたあだ名じゃありませんよ。世間でそう呼ばれている怖い方です」
 つくしなどからすれば、一枚も二枚も上手で、その若さに似合わぬ分別を持ち合わせている桜子をして『怖い方』と言わしめる司の母。
 ‘いい人’などというカテゴリに振り分けるほどつくしも愚かではないが、それでも複雑なものを含んだ桜子の顔に、あらためて楓に対する警戒心と空恐ろしいものを感じていた。
 …たとえ我が子でも、会社を守るためなら踏みつけにできるって言ってたものね。
 その意図はどこにあるのだろう。
 桜子から香水の注文先のメモを受け取り、自分のバッグへとしまい込む。
 楓の意図がどうであろうと香水は香水だし、今のつくしにとって少なからず支えにもなっている。
 丁重な手つきで大切にメモをしまい込むつくしの手先を見守って、
 「楓社長が私にどんな役割を振り、先輩に何をさせようとしているにせよ、いまのところ私たちの利害が一致していることは確かです」
 「………」
 「そして、先の先を見通している楓社長が、いま先輩に望んでいる…というべきか、示唆していることは一つのように思えます。。
 「示唆している?」
 楓はなにもつくしには指示をしてはこなかった。
 ただ、今の自分を知れ、時期を待て、克己せよ、というごく常識的で、そして真摯なアドバイスだけ。
 「道明寺さんと友好的な関係を構築せよ、でしょうか」
 「え?」
 「もっと言えば、道明寺さんの欲求というべきか、あるいは願望と言いかえればいいのでしょうか。彼の望む妻を演じよ、ですかね?」
 「っ!?」




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