「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日③

愛してる、そばにいて0197

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 「ね、ねぇ、どこ行くのよ?」
 機密性の高い書類だからと、タマの代理で訪れただけの道明寺ホールディングス。
 なまじかな人間には渡せないからと…渋々腰を痛めたタマを見かねて買って出た役目だったが、書類を司に届ければそれでもうお役御免のはずだった。
 それがなにを思ったのか、
 『お前、もう昼飯食った?』
 昼飯もなにも、時刻はまだ11時半を回ったばかり。
 たしかにそろそろ昼食時だが、頼まれてわざわざ世田谷から訪問してきたつくしが昼食を食べる暇もあったはずがない。
 『……食べてないけど』
 『よし』
 …なにが、よしなのよ。
 満足そうな笑みを一つ浮かべ、
 『移動まで40分あるって言ってたよな?』
 『え?あ、…はい』
 問いかけられた神崎の方はそのあまりの変わり身の見事さに呆然と見守って、一瞬言葉に詰まっていた。
 そして、現在に至る。
 つくしの手を握ってひたすら先を急いでいた司だったが、彼女の問いかけでふいに我に返ったように腕時計を確認。
 「チッ、40分じゃ、あんまゆっくりできねぇ」
 顔を顰めている。
 一応は、役員専用エレベーターを使って階下まで降りてきたので、道中はそれほど目立っていなかったが、さすがにエントランスホールに現れた彼の姿に、社員たちがざわめき視線が集まる。
 「もうこの時間なら、社員食堂も空いてるんじゃないの?そこじゃダメなの?」
 部外者のつくしが入り込めるのかは別問題だったが。
 「は?社員食堂?それこそありえねぇだろ」
 あっさり却下。
 「なんでよ?これだけ大きな企業なら食堂くらいあるんでしょ?」
 「俺がそこらの平社員どもが犇めいてるようなところで、メシ食うと思うか?」
 「うーん」
 たしかに想像がつかない。
 エントランスに現れただけでも珍獣扱いなのだ。
 学生時代もたいがい見世物状態だったが、今も同様かそれ以上なのは想像に難くない。
 「仕方ねぇ」
 さっさと懐から携帯電話を取り出し、
 「俺だ。ああ、さっきお前、俺にメシに行けって言ってたよな?あ~」
 電話をかけながら、
 「お前、何食いたい?」
 つくしへと問いかけてくる。
 「…あ、いや、別になんでも」
 そもそも司をランチを一緒にするつもりもなかったのだ。
 希望を聞かれても即座には思いつかない。
 「どこでもいい。ああ、それでかまわない。頼む」
 どこに電話しているのか、話しながら再びつくしの手を掴んだまま歩き出す。
 …どうでもいいけど、手を掴んでなくても別に逃げないのにな。
 学生でもあるまいに、いかにもただ者ではないスーツ姿の司と手繋ぎよろしく歩いていると、よけいに目立っている気がする。
 とはいえ、どのみち司の存在自体が目立っているし、その前後左右にはゾロゾロと黒服の集団が追従しているのだから、いまさらだと諦めた方がよさそうではあった。
 「車、回させたから行くぞ」
 「遠出はできないんでしょ?」
 「裏に、それなりに食えるイタリアンの店あるから、そこで飯」
 「裏って…」
 「2、3分?」
 「…………」
 それは歩いたほうが早いのではないだろうか。
 が、学生時代の司も、たとえ徒歩5分の道のりでもめったに歩こうとしなかったから、今ならなおのことだと思い当たる。
 「時間ねぇし、先に注文させておいたから」
 「あ、そうなの?」
 特に希望もなければ、ほとんど偏食もないから、つくしとしても否やはない。
 「あのさ、目立つし、手を離してくれない?わざわざ掴まれてなくても、ちゃんとついて行くからさ」
 「…………」
 無言の司が、つくしをジッと見下ろす。
 睨むでもなく、特な訴えかけるようでもない静かな表情だったが、そんな風に見つめられると視線のやり場に困るし、どうにも居た堪れない気がした。
 「えっと?」
 「ダメか?」
 「え?」
 「手を握ってたら、ダメか?」
 …ダメっていうか。
 握られたいか、握られたくないかと言われれば、別に握って欲しいわけではなかったけれど、以前のように強い反発や嫌悪感を感じているというわけではなかった…不思議なことに。
 拒絶することに疲れて、やっととでもいうべきか、慣れてしまったのかもしれない。
 ある意味、諦めもあったかもしれない。
 …手くらい、いまさらだし。
 それに、楓との約束というか、彼女の忠告もあった。
 『むやみやたらに反発しても仕方がない』
 『学び、謀って、機会を待て』
 いまだ『謀る』の意味合いはつくしにはわからなかったけれど、司や楓の言うとおり、現在のつくしが司の妻であることは変わらない事実であり、些細なことにこだわって反発し続けても司を意固地にさせてしまって、話し合いの余地さえなくなってしまうことはつくしにもわかる。
 『ミイラとりが、ミイラにならないでくださいね』
 ふいに桜子の言葉が耳に蘇り、ドキリと胸が音を立てる。
 …ありえない。
 「おい?」
 「え?」
 「乗れよ」
 いつの間にか車の前に来ていたようだ。
 つくしがここへと来社した時に降り立ったロータリー。
 「えっとさ、あたし、お屋敷から車で来て、運転手さんに下の駐車場で待っててもらってるんだけど?」
 「ああ、どうせ、飯食ったらこっちに戻ってくるし、問題ねぇだろ」




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