「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日③

愛してる、そばにいて0194

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 「それにしても、どうして急にお茶を?」
 桜子の疑問も当然のことだろう。
 少し前までのつくしは今の状況や自分の現状を拒絶するばかりで、うちに篭って完全に蹲ってしまっていた。
 ‘今’が辛いのに戦おうともせずに、どうせ司に勝てるはずもないのだからと、すべてを諦めていたのだ。
 『むやみやたらに反発して、目を塞ぎ、耳を塞いで沈黙してなんになるというの?状況が周囲からあなたの都合の良い方に変わってゆくとでも?』
 まさに楓の言うとおりだ。
 なにかを成し遂げないのなら、立ち向かわなくては…。
 「自分を知りたいと思ったの」
 「…自分を?」
 「そう。今のあたしは、自分の記憶の中の自分とは違う。かといって、この10年間を生きてきた‘道明寺つくし’という人物でもない」
 「……………」
 司の妻だった。
 その一点だけでも許容しがたいことではあるが、そうして生きてきた自分も否定することができない事実なのだ
 それならばその事実を見据え、自分の成すこと成せること、そしてどうしたいのかを自ら選択してゆかなければならないのだ。
 自由とは、自分にとって都合のよいことばかりではない。
 自由でいるためには、自分に責任を持つことも含まれているのだ。
 「だったら、今の自分はなんなんだろう。それを知るためには、まず自分を知ることが必要なんだなって。それに、あんたにも言われたけど、逃げているだけじゃどうしようもないなって。それに道明寺のお母さんに言われたんだよね」
 自分の心のうちのすべてを語り尽くそうといたら、一晩や二晩で語り尽くせるものでもない。
 たとえそうしたとしても、わかってもらえるとは限らないのだ。
 だからどうしても、抽象的な表現に終始してしまって、果たしてこんな説明で桜子に通じるものかと案じながらも、楓に言われた言葉、これから司に対してどう対峙すべきか自分なりに考えたことを話す。
 「…今までのあたしを一番よく知ってる人といえば、道明寺なのよね」
 どんなに憤しくても、認め難くても、それが真実なのだ。
 つくしの夫としてこの10年間もっとも近くで彼女を見て、彼女と接してきた人物。
 「それで手始めに、先輩の過去を知り、現在もある程度把握してくれている西門さんのところでお茶でも習ってみてはどうかと勧められたってことですか?」
 「…まあ。たぶんお茶云々っていうのは、本当はどうでもいいことで、いろいろなことに触れてみて、今の自分を知ってみろってことなんだと思う。そういう意味では西門さんには、申し訳ないことだと思うけどさ」
 茶道を習いに通って、茶道などどうでもいいとはとてもではないが、総二郎には失礼すぎて言える話ではなかった。
 「なるほどねぇ」
 黙ってつくしの話を聞いていた桜子だったが、その声音には皮肉なものが含まれていた。
 そして…、
 「もしかして、宗旨替えですか?」
 思わぬ問いかけ。
 わずかに視線を鋭くしたつくしに、桜子が肩を竦めて、その矛先を交わす。
 「いえ、先輩が…というよりも、道明寺社長がですかねぇ」
 そうはいうものの、桜子の物言いにはつくしへもなじる響きがあった。
 「……どういう意味?」
 しかし、そんなつくしの問い返しには特には答えず、桜子はいきなり話を変えてしまう。
 「そういえば、先輩。私、先輩に物を差し上げた覚え、ないんですけど」
 「…え?」
 「香水ですよ。戒くんにはたしかにキーホルダーを差し上げましたけどね」
 まだ怪訝な顔のつくしに、今度は詳細を語ってくれた。
 「美作さん経由で、道明寺さんからお礼にと、友禅の着物をいただいたんですよ。今身につけているこれがそうです」
 「……そうなんだ」 
 そういえば、香水を購入したのかと聞かれて、入手先を誤魔化した覚えがある。
 カード類は司の管理化にあるから、下手な嘘をついて、万が一にも楓に接触したことを知られたくなかったのだ。
 正直、ウソが上手い自信はなかったが、とっさ桜子の名前を出したことは今にして思えば上出来だったと思う。
 「まあ、それだけでなく、今回お茶のお供をさせていただくことになってましたから、そのこともよろしく、という意味合いもあったんだと思いますけどね」
 「…えっと、言わないでくれた?」
 「香水を差し上げたのは、私ではなくって、道明寺さんのお母様だということをですか?」
 特に桜子には楓から香水を贈られたことを話してはいなかったが、その入手先は容易に察せられたのだろう。
 「もちろん、お話するわけがありません」
 「そっか、ありがとう」
 ホッと安堵の息を零す。
 「どおりでずいぶんセクシーな香りを身につけてらっしゃるなとは、思いましたけどね」
 「セクシー?」
 「ええ、今、お体から香ってらっしゃるその香りが、そうなんでしょう?」
 「え、ああ。うん」
 たしかに自分的にも、大人っぽい香りで、イヤな匂いではなかったがあまり自分に合ってるとも思えなかったが、桜子に指摘されてしまうと、どうにも困惑してしまう。
 とはいえ、香水の香りは身に纏う人間によって変化する。
 濃い匂い付をしていないこともあって、体臭の薄いつくしが身に付ける分にはあまりあくどい感じの匂いには感じなかった。
 「ふふふ、なるほどねぇ」
 「…桜子?」
 その声音はわずかにひび割れて、忌々しげに、あるいは憎々しげにも聞こえた。
 これまでさんざん皮肉めいたことや辛辣なことを言われても、不思議なことにつくしは、桜子から悪意を感じたことがなかったのに、なぜか今、桜子が自分を憎んでいる気がした。
 あるいは楓のことを恨んでいるようにも思える。
 …道明寺のことを嫌いって言ってたけど?
 もしかして、道明寺個人をというよりも、いつかの暴漢たちのように道明寺家への遺恨なのだろうか。
 そうだとすれば、つくしもまた道明寺家の人間として疎ましく感じているのか。
 それにしては、好意を感じることも少なくはなかったのに。
 「あまたの美女では効果がないと見て、見直されたってことなんでしょうか」
 「…なに?どういうこと?あんた、いったい…」
 「ご自分の息子に、嫁を使ってハニートラップですか。さすがに鉄の女は普通の女性とは違いますね」
 問いかけるつくしをよそに、桜子の言葉はまるで独り言のようにひっそりとした呟きだった。




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NoTitle

更新ありがとうございます。道明寺、西門、桜子の反応といい、そんなに誘惑の香り??のする香水なんでしょうか。詳細がきになるーー。

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