「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日③

愛してる、そばにいて0193

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 「ああ、それは当たり前ですよ。先輩が悪い。西門さんに注意されてしまっても仕方がないことです」
 桜子の顔はどこまでも優しげだったが、やんわり嗜める言葉には皮肉がって、可憐な美貌とは裏腹にかなり小面憎い。
 「ま、せっかく10年間で磨かれていたというのに、すっかりド庶民の雑草女に戻っちゃってますからねぇ」
 「…ねえ?もしかして、あんたってあたしのこと嫌いなの?」
 司のことを嫌いなのだとハッキリいうような女なのだ。
 つくしを嫌っていてもおかしくはないと、今更ながらに気がつき、顔を引き攣らせつつ問いかける。
 小首を傾げて目を瞬かせた桜子の顔はいかにも意外そうだ。
 「あら、なにをおっしゃるんですか。私、いくら腹黒くても、信頼も好意も感じない方にお付き合いするほど暇じゃありませんよ」
 「………」
 …信頼されてたのか。
 好意がある、と言われてこれほど疑わしい相手も珍しい。
 両手を小さくパンと重ね合わせて、
 「ついでに言えば、猫を被らず本性をお見せしたのも、先輩が初めてかも」 
 「……さようですか」
 できることなら、本性はあまり見たくなかったかもしれない。
 物言いにもっと歯に衣着せてくれるなら、それに越したことはないと、ここのところ彼女のキツさに抉られるたびに強く思う。
 「私、こう見えても先輩のこと好きですから」
 たしかに本人の言うとおり、単純に猫を被ってないだけで、英徳での同級生たちのように彼女に対する悪意はなさそうだった。
 「つまりですね。茶席は、茶の香りやお香の香りを楽しむ場所なわけですよ。お茶を点てることもそうですけれど、茶事を催す上で、亭主はあらゆるもてなしを用意し、客を催す。抹茶の香り、お香の匂い、茶室にかけられた掛け軸や生けられた花、お茶碗の一つ一つに至るまですべてです。香料類を茶席に持ち込むことで、それらが台無しになってしまうってことなんです」
 「ああ、あたし、すごく失礼なことしちゃった?」
 つくしの無知を突っ込み皮肉を言いつつも、ちゃんと桜子は正しい知識を噛み砕いて教えてくれる。
 容易なようでいて、他人に物を教えるという行為は向き不向きもあるが、基本嫌いな相手のために時間を裂いて、相手の身や血にする手間をかけることを惜しまぬはずなかった。
 「そうですねぇ。それに指輪やネックレス、腕時計などの貴金属もNG」
 「……ああ」
 それはつくしも気がついていた。
 総二郎は片眉をはね上げただけで、何も言わなかったが、目の前に出された茶器に手を伸ばして、繊細な文様を持つ高価な茶器に傷がつく可能性に気がつき、緊張して茶器を持つ手に気をつけた。
 「結婚指輪くらいは大丈夫ですよ」
 思わず左手にハマった指輪に反対側の手で弄っていたつくしに、桜子が気がついて訂正してくれる。
 「まあ、それも先生によりますが、西門流の若宗匠である西門さんはそういう些細なことに目くじら立てるような方ではありませんし、そうでなくても、よもや天下の道明寺財閥の時期総帥の奥方にそんなことを言える方はいらっしゃいません」
 「……ん、これはさ。外し忘れたっていうより、外せないから助かるかも」
 「外せないんですか?」
 百聞は一見に如かず。
 同乗したリムジンの向かいのシートに座っている桜子へと、指輪のハマった左手を突き出す。 
 「外れないの」
 どれどれとばかりに、桜子がつくしの手を手に取り指輪を抜きにかかるが…。
 「んん、少しひっかりますね」
 「うん。ちょっと痩せて指も細くなったから、節のところで引っかからなくなれば抜けそうなんだけどね」
 「まあ、本当に外すつもりなら、どうとでもできますけどね」
 「…うん」
 外すつもりというか、外せる状況であれば、それこそしかる場所へ持ち込んで、リングごと切ってもらうという手段もあった。
 それはともかく…、
 「お化粧は…先輩は元々薄化粧ですからね。特に問題はないか」
 「他にも気をつけなければならないことってある?」
 「そうですね。今日の先輩はお着物ですけれど、それは道明寺さんからのご指示で?」 
 「あ~、いやお茶とかお花を習うっていうと着物ってイメージかなって」
 「ああ、なるほど。まあ、今の先輩なら毎回着てゆくお着物も洋服並に揃ってらっしゃるでしょうからね」
 「えっと、洋服でも構わないの?」
 おそらく気を使われたのだろう。
 つくし以外の手習いの弟子には出くわさなかった。
 しかし邸内のそこかしこで立ち働く使用人たちは、和風の屋敷に相応如く男女とも着物姿の者が多かったように思う。
 …西門さん自体も着物だったし。
 「フォーマルというか、一般常識内で相応しいと思われる格好であれば問題はありません。でもまあ、先輩の場合は立場もありますし、西門さんはともかく家元や一門の方々への体面もありますから、お着物の方がベストだとは思います」
 「そっか」
 そういう桜子も、裾元に華やかな牡丹が描かれた可憐な彼女のよく似合う着物姿だった。
 「他にはなんかある?」
 問われて、少し考える素振りだったが、
 「まあ、細かく言い立てれば一朝一夕では言い尽くせぬほどのお作法がありますが、とりあえず西門さんも、先輩のことは初心者として見てくれていたと思いますから」
 「そうだね」
 総二郎も今のつくしが16歳当時に戻ってしまって、対人関係だけでなく知識や教養的にも不安を感じていることは知られているのだ。
 いきなりハイレベルなことは求められていないだろう。
 「でも…、むしろそれほど気にされなくても大丈夫だと思いますよ」
 曖昧な笑みは、どこかで見たようなアルカイックスマイル。
 複雑なその顔は、単純に揶揄っているようにも、良かったと言ってくれているようにも…あるいは憐れんでいるようにも見える。
 「大丈夫って…」
 「お茶をいただく時にも思ったのですが、先輩、基本的な所作や段取りを無意識でやってらっしゃいますよ。とても初心者の所作には見せませんでした。手間取ったり、戸惑ったりされてませんでしたよね?」




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