「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日③

愛してる、そばにいて0189

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 「え?あたしが?」
 「ああ。とはいえ、直接会社に勤務して、営業部だ、企画戦略部だのに在籍していたわけじゃねぇが、俺の顔つなぎのためのパーティに参加して、要人の奥方や令嬢たちと交流を深めて交際することも仕事の一つだったし、いくつか財閥の社会貢献事業の責任者や代表を兼任している」
 「そうなんだ」
よくわからないが、皇族や宮家の子女が、親善大使として世界各国でさまざまな役割を果たすようなのかもしれない。
 もちろん、それらのことも楓のファイルには記されていた。
 それでも、漠然と眺めている事柄はあくまでも文字の羅列でしかない。
 「今のお前に前と同じことをさせようとは思わねぇし、求めていない。もちろん、完全に退くとなれば他の人間に引き継ぐ必要もあるが、それもいまのお前に課すつもりはないから安心しろ」
 だが…、
 「引き継ぎ…って、その、え~と、あたしが責任者とか代表とか務めていた社会貢献事業?とか、そういうのってどうなってるの?」
 「いろいろだな」
 「いろいろって」
 司の表情にほとんど変化はなかったが、それでも一瞬走った困惑がなんによるものかは想像に難くない。
 「いろいろだ。とりあえずは代理を立てたものや、俺が代行してるものもある。どうしても代理や代行では立ち行かないものに関しては、すでに移行も完了している」
 「…もしかして、今、すごく忙しいのって、あたしのせい?」
 「いや、俺の業務はいつもこんなもんだ。それでも、後にしてきたヨーロッパの方が一段落ついて、海外出張が下火になったからまだいい方だな」
 「そうなんだ」 
 司の現在は、まさにハードスケジュール、そうとしかいいようがない。
 昔の…授業にもロクに出ていなかった彼からは想像だにできないが、まさに今の彼は楓のいうとおり財閥の支柱であり、主柱へと成長を遂げつつあるのだろう。
 「何か、やってみるか?」
 「え?」
 物思いに耽りかけたところへの提案。
 まさに自分が言い出そうとしていたことを読んだように提案され、つくしが驚いて司を見返す。
 「俺も多少はそこんとこ考えてたし、もし良かったらだが、総二郎んとこで茶道を習わないか?」 
 「茶道?」
 「ああ。以前の…NYにいた頃のお前も一通りは習得してはいるんだが、やっぱり本場は日本だし、せっかく俺のダチにそっちの道のプロがいるんだ。落ち着いたら、こっちでもう一度一から習ってみたい的なことは元々言ってたんだ。戒も習い始めてもいい頃ではあるし、もし心当たりがあるならお前の友人にも一緒につきあってもらえばいい」
 「え?それって…」
 もちろん大人になってからの記憶がないつくしには、桜子以外の友人にあたる人物はいない。
 もし桜子のことを言っているのであれば、友人などという回りくどいことは言わないだろう。
 …SPから報告いってるんだもんね。
 そのわりに楓と会ったことに関してはまだ何も言われていない。
 楓は人目…ありていにいえば、司の目を気にして桜子を通じての接触してきたのだろうが、つくし付きの女SPの中野は知っているはずである。
 レストランの中までぴったり張り付いついて来たのだし、さすがに個室では遠慮してもらったが、いくら個室だったとは言え、その間ノーマークのままぼんやりしていたということはないだろう。
 そうであれば、先に出た楓を目撃しないとはあまり考えられない。
 が、不意に気がつく。
 いくら知己の桜子と会うことをあらかじめ報告していたとはいえ、護衛が役目であるSPが、あっさりと自分の目の届かない場所へと、つくしが一人で行くことを容認するものだろうか、と。
 …中野さんって、もしかして。
 「つく…牧野?」
 「あ…はい?」
 「どうする?今すぐに決めろとは言わないが、一応総二郎にはもう話を通してあるから、お前がその気ならいつでも師事することはできる」
 茶道。
 正直考慮外だった。
 しかし、考えてみれば、今のつくしは道明寺若夫人なのだから、おいそれとどこにでも飛び出していけるわけではないし、また今までのように屋敷で家庭教師たちに師事するにしても、あまり公然とプライバシーをあきらかにするわけにはいかないのだ。
 司側のつごうだけでなく、つくし的にも記憶喪失であることを言い回りたい気持ちには全くなれない。
 それならば、旧知の人間でありながら、おそらくほとんど事情のすべてを知っているだろう総二郎ならば気安いといえば気安いか。
 また、習い事を理由に外出できるのは悪くない気がした。
 …優紀ともっと気軽に会えるようになるかも?
 「えっと、その友人って、誰でもっていうか、あたしの心当たりの人でもいいのかな?」 
 「ああ。あんまり妙なヤツはマズいが、お前の高校時代のマブダチくらいならいいだろ」
 「………」
 やはり知られていた。
 そして、紹介した覚えもないのに親友と言い当ててくるところからして、通り一遍のことは調べられてしまっているのだ。
 いい気持ちはしない。
 いや、司を信じることのできない彼女にとって、脅威でもあった。
 …やっぱり優紀に迷惑かけられない。
 となれば、一番適任なのは桜子だろう。
 「えっとさ、聞いてみないとわからないし、もしかしたら桜子の方に頼むかも」
 器用に片眉をあげ揶揄るような感じの表情だったが、司は特にはそのことに関しては何も言わなかった。
 「まあ、いい。好きにしろ」
 気が付けば、さかんに髪をかきあげ、顔を撫でている司の顔は、どうやら耐え難い眠気に襲われているようで、それでもつくしとの会話を継続すべく、眠気と戦っていた。
 「あ、…ごめん。疲れてるところを、呼び止めちゃって」
 「いや、いい」
 「えっと、明日って、そのあんたは仕事なんだよね?」
 「…だな」
 顰めた顔はうんざりしていることをあからさまにしていて、感情のまま。
 …仕事人間ってわけでもないのか。
 それはそうだろう。
 あるいは仕事に生きがいを感じているのかもしれなかったが、司の場合はその忙しさは尋常ではない。
 前々から見ないようにはしていたが、現在の彼は日に日に窶れているようであまり顔色も良くないように思える。
 「あの…さ、もう寝た方がいいよ」
 「…………」
 「あ…いや、指図するつもりじゃないんだけど」
 「ああ、俺も寝ようと思ってたとこだから」
 「……うん」
 司の浮かべた…嬉しそうな柔らかな顔を見ているのが居た堪れない。
 この男がつくしの苦悩と不幸のすべての元凶、諸悪の根源であって、何も罪悪感など感じる必要などないはずなのに、常には居丈高な男がつくしだけに見せる弱った顔がチクリと胸を痛ませる。
 今の自分の気持ちを深く掘り下げるのがイヤで、つくしは会話を切り上げ司から顔を背ける。
 「そろそろ寝るよ」
 「あぁ…そう……っ!?きゃあっ」




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