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「夢で逢えたら…全207話完+α」
第三章 忘れえぬ人②

夢で逢えたら121

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 「この前言った、道明寺邸の退去の件だけど」
 「……」
 無言で促してくる男の態度に力を得て、つくしは言葉を続ける。
 「いろいろあって伸びてしまったけれど、今月中にはこのお邸を出たいと思ってるの。要の主治医の件は、もし次の医師が決まっているのなら引継ぎのことも考えて時期を決定したいんだけど、私的には住み込んでまで医師をつける病状ではないと思う。でも、それは私の口を出すことじゃないから」
 「うちを辞めてどうするつもりだ?メイルズフォートに戻るには、急すぎるだろ?出向期間は1年の契約
だからな」
 「…そのことなんだけど、どの道、病院も辞めようと思っている。自分で言うのもなんだけど、手に職はあるから、それなりに再就職には困らないし、どこに行ってもそれなりに食べていけるわ」
 「例の噂か?」
 司が言っているのは、司との関係の牽制にか脅迫にだか送り付けられた送り主不明の合成アダルト写真の流出に伴う病院内での噂話のこと。
 流出とほぼ同時に、司が潜り込ませていた手の者に回収させ、目にした病院関係者たちに圧力をかけていたが、どうしても人の口には戸は立てられぬもの。
 病院関係者はともかく、一部の不特定多数の患者にはその写真の流出は洩れ、水面下では噂は生きていた。
 道明寺の威光があまねく病院内で、面と向かってつくしに攻撃をしかけてくるものなどいはしないだろうが、陰口までは規制できず、つくしにとっても居心地の良いものではないだろう。
 けれど、それに対しても、司はいくらでも対応のしようがある。
 いざとなれば、つくしの為に病院を新設するくらいのことはやってのけることも可能な男だったが、つくしが望まないいこともわかっていた。
 それに、今の問題はそんなことではない。
 「…まあ、それもないとは言えないけど、この前言ったでしょ?ランクアップを図りたいって」
 「シンガポールだっけか?俺だったら、内科医長どころか、院長だって、それこそ、お前が望むんだったらデカイ病院を新設することだってできるんだぜ?」
 相変わらずの俺様な物言いに、つくしが苦笑する。
 この男のタチの悪いところは、それが虚言などではなく、実際にできることだ。
 「…望んでないわ。別に出世に興味があるわけじゃないから。私が興味あるランクアップは、私の技量の向上ということよ。誘われている病院は、世界最高の技術を持つ医師たちが集まる病院なの。彼らの技術を学びたいし、興味がある。まあ、シンガポールの病院に行くかどうかはまだ決めてないのだけれどね。息子の進学のこともあるし…」
 実際には、シンガポールに行くつもりはほぼ100パーセントない。
 技術に興味があることは確かだったが、レンと離れてまでやりたいことなどつくしにはなかったし、ロバートについてゆくにはまだ抵抗もある。
 彼との男女関係は完全に清算できたと信じているが。
 「もう私の意志を妨げないと、あんたは約束したわよね?」
 言わずもがなな確認をとってくるつくしに、内心では思いっきりダメだしをしたいのだが、それでも司はムッと不機嫌に顔をしかめたまま、頷いた。
 「ああ、お前が本当に望んでいることなら、俺は反対しねぇし、邪魔もしねぇ。邸を出たい、要の主治医を辞めたいというのなら、不本意だがとめられねぇ。契約違反を盾にとろうにも、お前を脅して無理強いしたのは事実だからな」
 案外、スムーズに決着がつきそうな成り行きに、つくしはホッと安堵の息をつく。
 だが、
 「けど、一つだけ言っておく」
 「…え?」
 「どこへ行こうとも、何を言っても、無駄だ」
 「な、何が??」
 不穏な成り行きに、つくしが目を激しく瞬かせる。
 それにニヤリと笑い、つくしの腕に手を伸ばし、司は強引に彼女を引き寄せ、抱きしめた。
 「ちょっ!」
 抵抗するつくしの肩に顎を乗せ、耳元に囁く。
 「俺からは逃げられねぇぞ?シンガポールだろうが、アフリカの奥地だろうが、俺は追いかけて付きまとう。昔、お前に言っただろ?地獄の底までってな。ま、前回はちょっと手違いで、その約束守れなかったが、今回は安心しろよ。ちゃんと、どこまでも行ってやっからさ」
 お気楽な口調に、顔を真っ赤に紅潮させ(それは抱きしめられた羞恥か、それとも司の言葉への怒りか)、
 「バカっ!?何言ってんのよっ。私はあんたと結婚できないし、付き合うつもりもないってこの間、キッパリ断ったでしょ?!」
 「…きかねぇし」
 「はあっ!?冗談じゃないわよっ!無理強いしないって、あんた言ったじゃない?…て、いうか、離せ!」
 足を踏まれる前に、つくしの耳の下に口づけを落とし、抱きしめていた腕を解いて一歩下がる。
 司の唇が触れたところをつくしは両手で抑え、睨み付けるものの、真っ赤になっていては迫力はあまりない。
 「別に何も無理強いしてないだろ?何も制限してねぇし、止めてもいない。ただ、俺が付いていくだけ」
 「い、今だって、キス!キスしたじゃないっ!?」
 「ま、それはしょうがねぇな。俺、お前に惚れてるし」
 「なっ!?」
 堂々と言い放たれ、開き直る男の態度に、絶句して何も言えない。
 と、司の胸元の携帯電話が鳴り響いた。
 「チッ、5分どころか、15分使っちまった。やべぇな、西田のヤロウ、やると言ったらやる奴だから、SP送りこんでくるな。どっちが主人なんだかわかりゃしねぇ」
 ボヤいたと思うと、急いで司は執務机に歩み寄り、引き出しから手のひらサイズの箱を取り出した。
 「…ほれ」
 投げてよこした箱をとっさに受け取り、諦めの境地で中身を確認する。
 …どうせ、興味ないって言っても、無理やり受け取らせるんだから。
 あとで、今まで寄越したものと一緒に宅配便で返せばいいだろう。
 唯一、土星のネックレスをどうするかという問題に頭を悩ませることになるだろうけれど。
 が、
 「…これ」
 「おう。壊れた鎖も修理しておいた」
 茫然と箱の中身を見つめ、無意識に取り出して眼前に翳す。
 それは、つくしの誕生日にレンから贈られ、司によって捨てられてしまった花のネックレスだった。
 確かに、司は広大な庭のいずこかに投げ捨てたはずだ。
 わざわざ探すなとまで厳命して、つくしの手から奪い去った物。
 「…あんた、これ、どうして?」
 トントン。
 つくしの声に被さるようにして、叩かれたドアに、司は溜息を一つ落とす。
 「しゃーねぇ、時間切れだ。また、今度、弁当もって散歩にでも行こうぜ。要がお前の作った弁当を食いたいってよ」
 「…要が?」
 「おう、近いうちに俺もスケジュール調整すっから、お前も予定空けておけよ」
 「ちょっと!?」
 咎めるつくしに片手をあげ、司は仕事へと出勤していった。
 「だからっ!あんたとはもう付き合わないつーのっ!!」
 

 相変わらずの人の話を聞かない司との不毛な会話に疲労を覚えつつ、本日のご機嫌伺い=診察の為に要の部屋を訪れると、予想通り、恭子も同席していた。
 昨日は、なんだかんだとつくしへの態度もぎこちない要だったが、先日の狂言迷子?から2日たち、どうやら気持ちも落ち着いたらしかった。
 「…キャサリン、お父さんから聞いた?」
 「え?なにを?」
 要の診察記録をとりながらつくしが聞き返すと、照れているのかつくしから視線を外してぶっきらぼうに答えを返す。
 頬の辺りをかすかに染めているのは、彼の心情を簡単に周囲に知らせている。
 「お弁当。俺も、庶民弁当ってやつ食べてみたい。また今度、お父さんと俺と…一緒に散歩いくだろ?」
 言い方が生意気なのは照れ隠しだというのはバレバレで、どうやらつくしが要の主治医を辞めるつもりなのは聞いてないらしい。
 けれど、以前のようなよそよそしさや、トゲトゲしさはすっかり払拭され、チラリチラリとつくしの反応を伺う少年の健気さが、つくしの心に染み、微笑みを誘った。
 「…あんたが、また迷子にならないならね」
 「ぶー、なんだよ。根にもってんの?年増女は本当に執念深いよな」
 憎まれ口にコツンと軽く頭を小突き、手荒く脈をとるつくしの心も軽かった。
 小突かれてぶーたれるふりをする少年の表情も柔らかい。
 和やかなで気の置けない空気がまた再び戻ったのを、つくしと要は口に出さずとも互いに喜んだ。
 だが、その横で、ひっそりとその様子を見守る恭子の眼差しはどこまでも冷ややかで、唇に浮かぶ上品な笑みは生温い。
 事の顛末は聞いているのだろう、つくしが危惧したように出合い頭にビンタを張ってくるようなことはなく、逆に息子が迷惑をかけたことを謝罪してきたが、恭子の内心は穏やかざるものだった。
 時間をかけて要の不安を煽り、つくしとの間に亀裂を生んだ。
 実際に、大概の親の恋愛問題に子供の存在は不和を呼びやすく、生さぬ仲の子が阻害されることも少なくはない。
 聡明な要はそれがよくわかっていたからこそ、必要以上に敏感に拒絶反応を起こしたのだし、好意をもっていたはずのつくしにさえ反発した。
 そうとなれば、恭子から見ても人の良いつくしが悩まないはずがなく、要を無視してまでおいそれと司と再婚することなど思いもよらないだろう。
 そして、見るからにつくしに執着している司の様子からして、いくらここ最近愛着を憶えてきているとはいえ、要の為に愛する女を諦めるような男ではなかった。
 二者一択しなければならない事態となれば、司が要を放逐し、女を取ることは自明の理。
 また、疎まれれば要だとて、父親よりも自分を求めてくれる母親に寄るのは当然に思えた。
 実際、その目論見は見当外れではなかったはずだ。
 そうなれば、いくら元姑の楓が強固に要を手放すことを拒もうと、実の父や本人の意向を無視してまで押し通すことができず、結局恭子へと託すしか方法はないはずだった。
 そして、先日の事件…ついには、要が狂言迷子だか、誘拐だかを演じ、親子の断絶とつくしとの確執があらわになった。
 ところが、事態を聞いて、内心王手をかけた余裕で道明寺邸を訪れた恭子だったが、180度変わっていた状況に腹立たしい思いを堪えざる得なかった。
 要の診察が一通り終わり、かつてのように気安い雑談を交わすと、傍についている恭子に気兼ねしてつくしは早々に要の私室を退出しようと立ち上がった。
 そのつくしを部屋の外まで見送るように後をついて出た恭子だったが、会釈して立ち去ろうとしたつくしを引き留める。
 「…先生。少し、お時間をいただけないかしら?」
 ニッコリ微笑む恭子の顔にはどこか冷たい何かが含まれていて、有無を言わせぬ力が滲む。
 「では、どちらへ?」
 「良かったら、わたくしが滞在している客室へ足を運んでいただければありがたいわ」




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~ Comment ~

恭子サン!
キャサリンに何を話すの?

明日が気になる~~

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Re:

司くんとつくしちゃんの片付け方の違い…。フフフ…。

それにしても恭子さん…。エゴ丸出しで来ましたね。
恭子さんもまた、子を愛しながらも自分を愛する人。
目的のためなら子を不安に陥れても平気という…。
要くん、そこに気づいて恭子さんを止めてくれるかな…?

大好きなセリフ

「俺からは逃げられねぇぞ、俺は追いかけて付きまとう。」
つくしに対する司の一途なセリフ(≧∇≦)
司はこうでなくっちゃ〜💟
まだまだ、素直にはなれないつくしでしょうか?^^;

りひと様^^

返信が遅れてしまった間も、たくさんのコメントありがとうございますm_ _m
その間も、楽しく拝見させていただいてました。

要君にはここのところ辛い展開が続き、おそらく賛否両論だろう決意をつけたところです。
まだまだ、お父さんとして未熟な司君。そんな父を慕う要君ですけれど、
やはりまだお父さんには要君は荷が重いかなあと。
これが、つくしちゃんとよりを戻して、彼女の助けを得られればまだまだ司君にも見所があるとは
思うのですが、今はつくしちゃんもレン君でてい一杯。司君の存在自体がキャパを
大幅に超えてよけいに負担になってるところ?ですからねぇ。
彼女の性格ももっとサバけていれば、司に頼ったりして荷も軽くなるのでしょうけれど。
何気に、身勝手な大人たちに振り回され、結局は子供の寛容さを求め、大人になれと求められて
しまった要君。彼の成長の方が父より目覚ましいかもしれません。

まずはジェーンを片付け、今度はロバートを。そして、恭子さんは手ごわかったです。
要君なりに恭子さんを止めたというか、結局、要君の中で一番愛しているのはたぶん恭子さん。
つくしちゃんのことも好きだろうけれど、やはり実母が生きていて、一度は裏切ったとはいえ、
愛されてきて、今も愛されているのがわかっているので、嫌うことは難しいと思います。
お父さんへはたぶん、愛情より憧れが強いかな。なので、司君が父親として飛躍的成長を
遂げないと、要君を受け止めるのは難しいかなあと。
楓さんも鋭い人ですが、つくしちゃんに気が付いてますかねぇ~。
それより、日本に帰った桜子ちゃんが気になるぞ!(いえ、私が書かないと、どうにもならないんですがw)

娘さん三人なんですかあ。いいですねぇ。
うちは男二人、女一人。
息子も可愛くないことはないというか、育ててる上では娘より可愛いですが(←えっw)、
大きくなるとあんまりかまってくれなくなるというのが定説ですし、やっぱ、嫁をもらうと
寄り付かなくなりそうですしねぇ(実際、自分もそうですが、友人たちも嫁の実家に
偏りがち)。
ふざけてシナをつくって、「いやん」という小1の息子に○子!と三文芝居で、その口惜しさ?wを日々
はらしております。
ちなみに、息子たちはダダさえこねなければ割合柔和で可愛いですが、娘はメチャメチャ気が強くて、
私に蹴りをかましまくりますTT息子たちも生傷絶えないし…。
私はわりと温厚な方だと思うのですが、私の母がまたメチャきつい。祖母と孫の性格の相似性に、自分の将来
を悲観する今日この頃です。キツイ母親とキツイ娘に囲まれて~(涙)。

HN様^^

こんばんは^^
返信が遅れてしまいすいません。

恭子さん、バリバリ、攻めに転じてきました。
(私なんですけどねw)
はは、いつもながら、過分な褒め言葉ありがとうございますm_ _m
HNさんに褒めていただくたびに、照れながらも喜んじゃって、ついついノせられて?しまいますわ~。
のほほほ。

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