「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日③

愛してる、そばにいて0181

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 『そうですか。残念でしたね』
 「ん…」
 残念だったかといえば、疎まれているということがわかっている相手に会うことは、心理的プレッシャーでもあったから、今のつくし的には複雑だ。
 しかも10年前にあれほど会いたいと願って、結局果たせず、そして今現在のこの状況からして、当時たとえ楓に会えていたとしても、それで状況が変わっていたかというとかなり微妙な気もする。
 もちろん常識的に考えれば、息子の犯罪行為をわかっていて、あえてそれを無視することなどできようはずもないとは思うのだが、こうして数々の強大な権力と、そうした理不尽な力の前に踏み潰された数々の人々の悲喜交々に出会ってしまうと、なおさら自分の自由への希求は単なる無謀であって、司に逆らった時同様身の程知らずな願いなのではないかとさえ思ってしまう。
 今は司に肉体関係を強要されているわけでもなく、また望まれているのかもしれなかったが、『愛すること』を強いられてもいない。
 ある意味、平穏な毎日に妥協してしまいそうな自分を、つくしは感じていた。
 …そうだよ、どうせ、道明寺の意思に逆らう事なんて、あたしには出来っこないんだ。
 そんな卑屈な思い。
 『先輩?』
 電話の向こうの桜子にも、つくしのネガティブな思考が伝わってしまったのか、怪訝に呼びかけられた。
 「あ、ううん、なんでもない。えっと、こっちもうすぐ着くけど、桜子はもうレストランに着いてるんだよね?」
 楓が日本に一時帰国し、当初の予定を変更して屋敷によることもなく、慌ただしくNYへ帰ってしまって3日。
 気落ちしているつくしを気遣ったのか、桜子がオススメのイタリアンをご馳走したいとかで、行きつけのレストランへと招待してくれたのだ。
 著名人もよく訪れるというそのレストランは、本場イタリアで修行したシェフが腕を奮う本格的なリストランテ(※高級イタリア料理店)で、どちらかといえばつくしには敷居が高く、堅苦しいところは苦手なのだが、フレンチに比べれば遥かにカジュアルだし、日頃フレンチが主体の道明寺家とは趣向が変わって良いだろうという桜子の気遣いを断れなかった。
 …ま、桜子もなんだかんだ言って、いいところのお嬢さんなわけだしね。
 ほどなくして、車の運転手がレストランへの到着を告げ、いつものようにドアを開けてもらい、外へと足を踏み出す。
 ピカピカの高級靴は足にしっくりと馴染み、少女の日のようにカポカポと靴底が壊れるまで履くということがない。
 「…なんだかなぁ」
 「はい?」
 声を出していたつもりはなかったが、運転手に聞き返されて、自分が声に出していたことに気が付く。
 「あ、なんでもないです。ありがとうございました」
 いつものように送迎の礼を言うと、初老の運転手が柔和に笑んで頷いてくれる。
 「いえ、どういたしまして。では、帰りもお待ちしておりますので、ごゆっくりお楽しみください」
 「…はい、いつもすみません」
 つい謝ってしまう。
 本当なら、送迎もそうだが、自分たちが食事をしている間、無為に運転手を待たせてしまうことはつくしの性分ではなかった。
 けれど、いかに自由にさせてくれているとはいえ、送迎なくして外出は許されなかったし、どちらにせよSPが常時追従してきているのだ。
 さすがに司のようには、常に近くで張り付かれているということもないのだが、それでも以前…暴漢事件前に比べて、警備を厳重にされ息苦しいことは否めなかった。
 「お気になさらないでください。これが私の仕事ですので」
 「はい。えっと行ってきます」
 「いってらっしゃい」
 つくしが歩き出すと、すでに助手席から降りてきた中野も一歩下がってついてくる。
 他にも数人のSPたちが後続の車でついてきているのだが、さすがに直接会社とは関わりがないからと、つくしのストレスを勘案し、中野以外のSPは同じ車に同乗していなかった。
 中野はニコリともしない愛想のない女だが、不思議につくしは彼女が嫌いではなかった。
 以前のつくし…‘道明寺つくし’は、この女性を苦手にしていたらしく、司などは不思議がっているが、英徳の女狐たちのように、腹に一物を持って阿って、その裏で悪意の爪を隠して近づいてくる連中などよりよほど好ましいと思う。
 もちろん彼女だって、無愛想な相手よりも愛想の良い人間の方がいいに決まってる。
 しかし、特に中野のような人間は珍しいわけではないと、気にもならなかったのだ。
 そんな風に同じ人間なのに、‘道明寺つくし’と‘牧野つくし’では若干嗜好や考え方の違いがままあった。
 …まあ、別人みたいなものか。
 あの司さえも愛していた女と、自分がまったく同じ人間であるはずもない。
 レストランにつくと、すでに話は通っているのだろう、すぐに桜子が待っているという個室へと案内される。
 中野も店内をサッと見回し観察して、つくしとは別の、一般席へと案内されていく。
 見回した店内はさすがに桜子のオススメというだけあって、まだ料理の味の方はわからないが、店内の雰囲気もいかにもセンス良くおしゃれで、それでいて過剰に高級感を主張していない居心地が良さそうな内装だった。
 …雰囲気だけで美味しそう。
 特に全面掃き出し窓になっている席から覗く中庭は種々様々な花が咲き乱れ美しく、もう少し涼しい季節になったら、テラス席でお茶をしてみたいと思えるほどだ。
 「ふわぁ、素敵」
 思わず零してしまったつくしのそんな素直な感嘆に、案内役の紳士が振り返り、目が合ってニッコリ微笑みかけられた。
 「ありがとうございます」
 「…いえ」
 …ここなら、優紀とまた来てみたいかも。
 そんなことを思いながら、桜子が待っているという個室へと通される。
 トントン。
 「お連れ様がいらっしゃいました」
 『どうぞ』
 中から桜子の返答が返る。
 促されて、つくしは中へと入室した。
 「桜子?」 
 「先輩」 
 「えっとぉ?」
 だが、つくしの予想に反して、桜子は一人ではなかった。
 中年女性が一人に、男性が三人。
 女性の方は桜子と同席して席に着席していたが、なぜか男性三人はその背後に控えている。
 しかし、それがいかにもつくしにも見慣れた人々で、即座につくしも彼らの正体を察する。
 …SPとか秘書?
 着席した中年女性は、つくしや桜子の母親くらいの年代の女性だろうか。
 わずかに白いものが混じった髪をきっちりと結い上げ、怜悧な美貌を傲然とあげて、つくしを真っ直ぐに見据えていた。
 「そんなところで、いつまでも突っ立ってらっしゃらないで、お座りになったらいかが?」 
 「え?あ…はい」
 ビシリとかけられた言葉は、けっして大きくもなく激しくもないのに威厳に満ちて、まるで見知らぬ女性だというのに、思わず従わずにはいられない力を持っていた。
 「お久しぶりね、つくしさん」
 冷ややかな笑みは、温かみのないアルカイックスマイル。
 つくしは戸惑って、横に座る桜子へと目で問いかけるが、女性の隣に座っている桜子も困った顔で小首を傾げるばかり。
 「あの、すみません、どちら様でしょうか?えっと、…実はその、あたし、事故で最近の記憶が曖昧で」
 「そうね、そうだったわね。では、初めましてと言い換えた方がよろしいのかしら?私は…道明寺楓です」
 「え?」
 「あなたの今現在の夫・道明寺司の母親よ」




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