「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日③

愛してる、そばにいて0178

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 「うおおおおおぉぉぉぉっ!死ね、死ねっ、死ねぇっ!!」
 おそらくつくしが警告の悲鳴を上げるのとほぼ同時だった。
 背後から迫る殺気に司が咄嗟に体をひねり、襲撃者の第一撃から身を庇う。
 夜の闇の合間にギラリと光るそれは、冷たい刃の鋼の輝きだったのか。
 「きゃあ、きゃあああっ!!」 
 …道明寺が刺されるっ。
 両手で顔を覆い、思わず目を背けるつくしの耳に、男たちの怒号と肉と肉がブツかり合う音、ドサッ、ビチャッ、という人が雨に濡れた地面に倒れる音が届く。
 「あぁ……ぁ……ああ………ぁ」
 自分が細く小さく悲鳴をあげ続けている自覚のないままに、つくしの脳裏は、
 …怖い。
 …道明寺が刺される。
その二つだけで占められていた。
 「おいっ、しっかりしろっ」
 両肩を掴まれ激しく揺さぶられて、おそるおそる顔をあげれば、濡れ鼠の…だが、先ほどと寸分たがわないままの司が心配そうに彼女を覗き込んでいた。
 「ど、どう…みょうじ?」
 「ああ、そうだ」
 恐怖と衝撃…その他さまざまな感情の揺れで震えている片手で、つくしは自分の口を抑え、体を丸めて蹲る。
 「大丈夫だ。もうなにも怖いことなんかねぇから」
 ふわりと抱きしめられる
 落ち着いた声音で、ショックに打ち震えるつくしの心を慰撫するべく、何度も何度も囁かれる司の言葉。
 …温かい。
 「だから、安心しろ」
 ただ震えて司の胸に抱きしめられたままでいることしかできないでいるつくしの髪を撫で、小さくポンポンと背中を叩き、司が再び車のシートから退いて立ち上がった。
 「貴様のせいだっ!!」 
 その瞬間上がった怒声に、ハッとつくしが司の体の合間、彼の背後へと顔を向けると、いつの間に駆けつけたのか司のSPたちに伸し掛られ、羽交い締められた男が、猛烈に暴れながらも司へと憎悪を叫んでいた。
 「貴様の、貴様ら道明寺財閥のせいで―――ッ!!殺してやるっ、殺してやるっ、絶対にお前らに思い知らせやる。俺たちを虫けらみたいに切り捨てて、のうのうと贅沢してやがるお前らに復讐してやるからなっ!」
 「……っ」
 あまりに激しい言葉に、つくしは男から目を反らすことができない。
 司かSPたちに殴られたのだろう鼻血に塗れた悲惨な顔は、雨の中でさえ男が男泣きに泣いているとわからずにはいられないほどに悲痛なもので、その顔に少し前、遊園地で彼らにソフトクリームを投げつけてきた中年男と同じ顔をしていた。
 もちろん、今外で憎悪の叫びをあげている男は、その時の男とは似ても似つかぬもっとずっと若い男だ。
 だが、その燠火のように昏く燃える眼差しと、司への憎悪、そして絶望に病み疲れた表情が、遊園地での暴漢とよく似ていた。
 外に出た司が車のドアを閉めるのと同時に、運転手が車に戻る。
 「若奥様、先にお屋敷にお送りします」
 「え?でも…」 
 「若旦那様のご指示です。おつきのSPたちがおりますし、彼らがすでに警察に連絡を入れておりますので、まもなくこちらに到着すると思いますのでご安心ください」
 発進した車の窓越し、司を憎悪する男の顔がいつまでもいつまでもつくしの脳裏に焼き付いた。




*****




 後日、道明寺邸の門前で司を襲撃した男が、道明寺ホールディングスの強引な契約解消が原因で倒産した会社の関係企業の経営者一族で、親会社の倒産の煽りをくった連鎖倒産の被害者だったことがわかった。
 上層部が倒産にまで発展すれば、末端も大きな被害を被るのは必然のこと。
 遊園地でソフトクリームを投げつけてきた男や、遡ればつくしと戒を営利誘拐しようとした洋子一家の事件も根は同じ。
 司個人が行ったことではなく、道明寺財閥という巨大企業全体の体質と経営手法が成した社会悪の一つだったが、外から見れば道明寺一族と財閥は一心同体であり、たとえ司が現在の旧体制と対立していて、一連の連鎖倒産の件とは無関係だったのだとしても、世間はそうは見ないという実例のような事件でもあった。
 そうした憎悪や怨嗟、そして非難は、会社の関係者だけではなく、えてしてその家族にも向けられるものなのだ。
 幸いのことに、襲撃された司や運転手、男を取り押さえていたSPたちにも怪我はなく、唯一当の襲撃者が司の反撃を受けて肋骨にヒビが入るという顛末だったが、一つ間違えればつくしにもその狂刃は向けられたのかもしれない。
 「道明寺邸の門前で襲撃ねぇ。なるほど、それでこの物々しい警備なわけですか」
 配膳された紅茶を優雅な仕草で啜って、桜子が呆れたように小さく肩を竦めた。
 「やっぱり凄いんだ?」
 「ええ、先輩はほとんどお屋敷から外出なさらないからご存知ないでしょうけど、あらかじめ連絡してあって、素性も知れている私でさえ、敷地内に入る時と、玄関に到着した時の二回、職質を受けましたよ。ボディチェックまではさすがにされませんでしたけれどね」
 だがそれも、桜子があきらの婚約者であり、名だたる名家の令嬢だったからで、そうでなければ、もっと厳重なチェックを受けなければ門前に近くことさえも許されなかっただろう。
 「で、そうしたことの裏事情というか、殺されかけるほど恨まれるに至った経緯について、道明寺さんから先輩も詳しく伺ってるんですか?」




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