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「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日③

愛してる、そばにいて0173

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 「じゃあ、桜子も美作さんとはお見合いなんだ?」
 完全に信用できる…というほどではなかったが、年が近いことや桜子自身のお嬢様らしからぬざっくばらんな性格もあり、つくしもだいぶ桜子に打ち解けていた。
 おそらくそこには高校時代の一時、知り合いではなかったとはいえ、同じ学園内に在学していたという親しみもあるのだろうし、桜子の『先輩』とつくしを呼ぶ呼び名が影響していたのかもしれない。
 「ええ。親戚筋の大叔母から持ち込まれた話で、本来なら私のように両親もなく有力な後見を持たない家では、家格的につり合わないお話なんですけどね」
 「…家格」
 まるで時代劇か何かの世界の話のようだ。
 タマではないが、それこそ顔を合わせた時にはもう結婚が決まっている、そんな話もあるのかもしれない。
 まるでつくしの考えを読んだかのように、桜子がそれを肯定する。
 「本来なら、道明寺さんこそ一番、そうした話に厳しいお家柄のはずなんですけれどね」
 「道明寺が?」
 話題に司の名前が出て、自然、つくしの眉根が寄る。
 すでにつくしにとって習い性のようなものだ。
 「生まれた時から許嫁がいらしてもおかしくないくらいですよ。たしかお姉様の椿さんも、ご両親の決められた縁談に従われた結婚だったはずですよ。アメリカのホテル王と言われている方に嫁がれて、現在、ロスアンゼルスにお住まいでしたよね?」
 聞かれても、つくしが答えられるものではない。
 「そうなんだ。でも、最近ではけっこう恋愛結婚も増えてきた…とか、神崎さんが言ってたけど」
 「神崎?」
 「えっと、道明寺の秘書の人」
 それで桜子もすぐに思い当たったのか、皮肉な笑みを浮かべてクスクスと笑い出す。
 「桜子?」
 「いかにも…って感じですよね」
 「いかにも?」
 つくしには、桜子の言いたいことも意味もわからない。
 ただ彼女の言う『いかにも』の意味合いが、あまり良いものではないことだけは、そうした機微に聡くないつくしにも容易に感じ取れた。
 「道明寺さんの結婚相手としては、今ひとつ物足りない家門出身の方だとは思いますが、まるでありえないというわけでもない方ですよね?」
 「え?それって…」
 「道明寺さんのお母様の道明寺楓社長が、ご子息の伴侶をお気に召していないのは社交界でも周知のことです」
 「…………」
 言わずと知れたつくしのことだ。
 欠片とも司の嫁などと認められたいとは思えないが、それでも知らない人間からいわれなき悪意をブツけられるのは、つくし的にもあまり嬉しいことではない。
 「何度となくそうした話を、ご両親から持ち込まれているはずですよ」
 「道明寺が?」
 「ええ、道明寺さんが」
 それだけで今のつくしの立場が垣間見える。
 独身の息子のことならばまだわかりもするが、曲りなりにとも司には妻も子もいるのだ。
 「でも、これまでは道明寺さんご自身がそうした話も…女性も近づけようとはなさらなかったらしいですわね」
 「…そう」
 なんといっていいのかわからない。
 「嬉しいですか?」
 「は?」
 思わぬことを言われて、つくしが目に険を浮かべて桜子を睨む。
 しかし、あっさりと桜子はその矛先を収めて謝罪する。
 「すみません、冗談です」
 「…冗談じゃないわよ」
 鼻の頭にシワを寄せ、顔を顰める。
 しかし、つくしは内心動揺していた。
 …絶対に嬉しいわけじゃない。
 それは確かなのに、だが、それならばこの安堵ともつかぬ心もちはなんなのだろう。
 司に女の影がチラつこうと、つくしが気にする必要などないはずなのに。
 「だから、ああいう女性なんでしょうね」
 「え?」 
 「どんなに見目麗しい絶世の美女もダメ」
 「…………」
 「豊満な女性も、名だたる才媛にも見向きもされない。道明寺さんの愛妻家…というか奥様への溺愛ぶりは、ヨーロッパのみならずここ日本でも有名でしたよ」
 「…何が言いたいのよ?神崎さんの話じゃなかったの?」
 どうして司の愛妻家ぶりを聞かなければならないのだろうか。
 司に悪意がある、だから、つくしに協力するという桜子が、わざわざ司のつくしへの執着ぶりを言い連ねるその意図がわからず困惑する。
 「神崎さん、誰かに似ていませんか?」
 「誰か?」
 「似てる…というのともちょっと違うかもしれませんが、タイプ的に近いですよ、先輩に」
 驚くつくしに対して、桜子は確信的だった。
 「道明寺楓氏は、先輩に似たタイプの女性を御子息にあてがって、あなたから引き剥がしたいのでしょうね」




*****




 「ふぅ~」
 傍らに置いたポーチから、脂とり紙を取り出し、洗面台の鏡を見ながら軽く額にあてる。
 気持ちのアップダウンはともかくとして、身体的にはだいぶつくしの気分は好転していた。
 別に虚弱というわけではない。
 しかし、やはり何かとここのところ心労が重なり、打たれ弱くなっていたのだろう。
 桜子に勧められて参加したパーティだったが、つくし的には気疲ればかりで意味があったこととは思えない。
 ただ…、
 …セレブとか上流階級とかなんとかいっても、やっぱり綺麗なばかりのところでもないんだな。
 それが素直な感想で、司やあきらたちと一緒の時には聞こえてこない噂話というやつも、一歩裏に回ればかなり悪辣なものだった。
 桜子も言っていたことだが、日本ではまだまだつくしの知名度は低い。
 大半は日本に帰国して日が浅いうちに事件に巻き込まれ、‘道明寺つくし’としての記憶と自覚を失ってしまったことが原因で、それまで勤しんでいた道明寺家の奥方としての責務を放棄してしまっていたからなのだが、それだけにまだ付き合いのある夫人方も少なく、新参者のつくしは面が割れてなかった。
 幸か不幸か、おかげで赤裸々な陰口や綺羅な人々の見かけによらない悪意も目の当たりにする結果となっている。
 『奥様、ご覧になりました?』
 『ええ、○○重工の折澄専務の新しい奥様でしょ?元々は男性に従事するお店にお勤めだった方だとか。さすがにそうしたお商売をされていた方は恥というものを知らなくて、困ったものでわ』
 『本当、よくも平気な顔をして、こうした晴れやかな場に顔を出せたものだこと。私などではとてもとても、いっそ感心してしまいましたわよ。この間の、江端興産のパーティでは新旧会して、中々見ごたえのある一幕もありましたけれど、さすがに美作商事ではそのような面白い…いえ、ありえざる采配にはならなかったのは良かったことですわ』
 『そうですわね、さすがは美作夫人。でも、そういえば美作夫人といえば…』
等々。
 主催者であるあきらの母親やあきらのことにまで、声を潜めながらも、聞くに耐えない陰口を小耳に挟むことになってしまった。
 立ち聞きしていたわけではなかったが、ちょっと横を通り過ぎただけで、そんな陰口にはいくらでも出くわす
 また他人の噂話をしていたご婦人が、人変わりところ変われば、その噂話をしていた当の相方のことを平然とこき下ろしているのもごく珍しくないことで。
 …社宅とかと全然変わらないじゃない。
 庶民庶民と見下す一般家庭の人々とその内実に大した差異はなく、むしろ打算や嫉妬はさらに強化されているようにもつくしには見えた。
 もしかしなくても、そうしてつくしや司のことも公然と噂され、悪意ある誹謗中傷が囁かれ続けてきたのだろう。
 いまさら噂話や陰口がどうだというほどつくしも幼くはない。
 学生時代も普通にあったことだし、第一そんなことを言ったら、イジメの対象だったつくしなどどれだけ酷い言いがかりをつけられ、誹謗中傷どころか侮辱されたかわからないほどだった。
 …ま、英徳の規模が大きくなった版ってとこだよね。
 「はぁ~」
 ため息が溢れる。
 …早く帰りたい。
 もうそんなことを思ってしまう。
 …パーティなんて、やっぱり来るんじゃなかった。
 「あら、もしかして、道明寺家の若奥様じゃありませんか?」




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