「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日③

愛してる、そばにいて0172

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 「副社長」
 神崎の呼びかけに、あきらとの会話を一旦切り上げる。
 あきらに会釈をしつつ、チラッと一瞬だけ彼を見た目がどうしようかと言っていて、気遣いのあきらの方が気を効かせ退出を告げようとするが、司があっさりと口火を切った。
 「富士松製鋼の件か?」
 「え、ええ…はい。先ほど、私の携帯の方に連絡が入りまして」
 言葉を濁している。
 「司」
 だが、当の司は片手を上げ、あきらを制した。
 「緊急か?」
 「いえ、そうではありませんが」
 「じゃあ、後でいい。…チェックしとけって言っておいた連中は?」 
 「あ、はい。だいたいは」
 「じゃあ、それも後でまとめて聞くから、とりあえずお前はつくしの様子を見といてくれ」
 「奥様ですか?」
 元々、富士松製鋼の動向について気にしていたのは司の方で、できるだけ早く対応したい案件が絡んでいたから、今回純粋に秘書として同行していた神崎が報告に上がったのだが、当の司が良いというのだから神崎にも否やはない。
 が、それよりも今日は久しぶりに司と同伴しているはずのつくしの姿が彼の隣にないことに、神崎もやっといまさらながらに気がつついた。
 怪訝に周囲を見回し首を傾げる。
 「あのぉ、奥様は?」
 「久しぶりのパーティだからな、人酔いしたらしい」
 懇意にしているつくしの体調不良を聞き、神崎の顔に心配が浮かんだ。
 「お屋敷にお連れしましょうか?」
 「いや、今はこっちの美作副社長の婚約者がついていてくれてるし、とりあえずは多少気分も好転したみたいだったからな。けどまあ、どうしても無理そうなら適当に切り上げて連れて帰るつもりだ。いいよな?あきら」 
 「ああ、もちろん」
 あきらも頷く。
 「て、ことで、少し様子みてやっててくれ」
 「かしこまりました」
 神崎が素直に頷き、二人に一礼してその場を立ち去りかけ、両手に抱えていた多少大ぶりのハンドバックの隙間から、ポロリとタッチペンが転がり落ちた。
 「あ…」
 慌てて神崎が拾い上げようとするも、間近に立っていた司の方が一瞬早くペンを拾い上げ、一瞬だが、手を伸ばした神崎の手が司の手の甲に触れてしまい、まるで熱い鉄にでも触れたかのように、神崎がバッとその手を慌てて胸元に引き寄せる。
 「す、すみません」
 「…………」
 もちろん司には動揺どころか、まったくの変化もなく、ただ無言で拾ったペンを神崎に差し出すのみだ。
 「あ、あり、ありがとうございます」
 さっきまでの有能な秘書はどこにいったかというようなテンパりようで、真っ赤になった顔をキョドらせ、神崎が何度も頭を下げる。
 すでに姿勢を戻した司の目はもう神崎を映していない。
 それがわかっている神崎も、
 「で、では」
一声だけで慌てて踵を返した。
 今日の神崎は司のパートナーではなかったから、カッチリとしたビジネススーツ着用。
 だが、小柄で華奢な体が学生じみていて、とても音に聞こえた大企業の役員秘書などには見えない。
 「大河原と縁続きの企業の令嬢なんだろ?」
 見るともなく見送りながら、あきらが記憶の中から神崎の出自を引っ張り出す。
 「ああ、らしいな」
 「…おばさんか?」
 司は肩を竦めることで肯定に変え、胸元のチーフを取り出し、手の甲を拭う。
 もちろん、そのシミ一つない美麗な手には汚れなどまったく見当たらない。
 ゴシゴシ拭うその仕草は、いかにも汚いものを拭うかのようだが、事情を知るあきらにしてみれば呆れるだけだ。
 「相変わらずだな。カミさん以外の女に素肌に触られたら、蕁麻疹が出るってか?お前は鋼鉄の処女か」
 「…………」
 「昔から潔癖なとこあったけどよ、そりゃあいくらなんでも失礼つーか、あの子が可哀想なんじゃねぇの?最近はあの子が牧野のかわりにパートナーを務めてるんだろ?よくなんとかなってるよな」
 あきらの説教に司はチラリとも関心を示さず、手を拭ったチーフをさっさと近場のダストボックスに投げ入れている。
 「おばさんも実の息子にするにしては、たいがいエグい策略仕掛けてくるとは思うけどよ。見た感じ、あの子そんなに悪質そうな子に見えねぇけど?」 
 「牧野や戒とはけっこう上手くやってんな」
 「ああ、なるほど」
 これまで司はつくし以外のどんな女も近づけてこなかった。
 本来なら女秘書など言語道断な話だったのだろうが、司の置かれている立場や状況が一々少年の日のようなワガママを振りかざせるほど甘いものではなく、あえて罠だとわかっていても受け入れざるえないことも多々あった。
 その一つが実の母による種々様々な陰謀で、もちろん楓は司を名実ともに財閥総帥として一人だちさせるのが第一の目的であって、彼を失脚させるような策略を巡らすはずもなかったが、それだけに司ではなく、彼の妻であるつくしの最大の敵だった。
 当時、司が強硬な姿勢でつくしの立場を認めさせることのできた背景には、つくしの妊娠が大きな理由の一つではあったが、それ以外にも司自身の尋常ではない彼女への執着がもっとも大きな理由であっただろう。
 そしてそのこと自体を司が切り札に使った。
 自分の価値を知っている。
 七光りのボンクラ御曹司と言われた司が、最初に成功させた取引が、自分の進退とつくしの立場の確保だったのだ。
 そんな司が、楓の繰り出した刺客であろう女を曲がりなりとも身近に置いたままでいる。
 「どうせ、神崎を更迭したところで、別のヤツが送られてくるだけだろ」
 「まあな」
 人事権は司も持っているが、さらに上層の楓に抗うのは至難の技だ。
 「下手なヤツをよこされるよりはまあ、マシだからな」
 過去、中には司のベッドに潜り込もうとした猛者もいたらしいというのは、おそらく噂だけではないのだろう。
 「仕事もできる」
 「へぇ?単なる腰掛けお嬢様ってわけじゃないのか」
 キビキビと立ち働く様子は、たしかにビジネスライクで、司やあきらなどのセレブゲットに血道をあげる女狐たちとは一線を画しているようには見受けられた。
 だが…、
 「やっぱ可哀想さ倍増だよな」
 「………」
 目線だけで、問い返す司にあきらが苦笑を返す。
 …こいつってホント、冷血漢だよな。
 「お前、あの子の気持ち、わかってんだろ?」
 一目見ただけであきらにさえわかったくらいだ。
 四六時中、一緒にいる司が気がつかないはずがなかった。
 「さあな、俺には関係ない」
 「司…」
 「公私をわけられないというのなら、次がどんなヤツが送りつけられてくるにしろ、即刻更迭するだけだ。が、今のところあの女は、ごく優秀で使える人材だ。俺にとって大事なことはそれだけで、誰が何をどう思ってるか、そんなことは俺にはまったく関わりねぇことだしな」
 司にとって、気にする価値がある存在、いやすべてであるのはつくしと戒だけであって、それ以外の人間の思惑など気にする余地もない。 
 何より、自分の預かり知らないところで、他人の愛憎が自分に向けられるのは司や、彼らF4にとって常のことで、神崎に限らず多くの人間たちが司に憧憬し、あるいは嫉妬し、さまざまな感情を向けてくるのはごく珍しいことではなかったのだ。
 「お、マルコーのオヤジやっと空いたみたいだな。こっち来るぜ」
 「ああ」
 「まったく、天下の道明寺財閥の次期総帥のお前とパーティ主催者の俺を待たせるなんて、大したオヤジだよな」




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NoTitle

毎日更新ありがとうございます。
鋼鉄の処女、、w.
個人的には桜子vs道明寺の駆け引き、是非桜子さんに出し抜いて貰いたいですw.
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

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