「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日③

愛してる、そばにいて0171

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 「司…大丈夫か?」
 「あ?」
 一瞬、意識を散らしてしまっていたのをあきらに悟られていたのかと、司は顔を引き締め何食わぬ風を装う。
 が、
 「ずいぶん顔色悪ぃぞ。むしろ牧野より、お前の方が具合悪いんじゃねぇの?」
 「…………」 
 無言でスルーする自体が答えみたいなものだが、そうである以上あきらが何を言っても、聞く耳を持たないのはこの男のデフォルトで、長年の付き合いのあきらも慣れたものだ。
 ため息一つ。
 「お前、見るたびに幽鬼みたいになっちまってるっていうのは、俺の気のせいか?」
 「気のせいだ」
 言い切るものの、自分でも自覚がないわけではない。
 つくしが…彼との10年間を忘れ、彼を拒絶するようになってのたったの2ヶ月で体重が5kg落ちた。
 元々身長のわりに痩せ型で、少しでも油断すると生きる気力さえも失いがちな司だ。
 眠れない。
 食欲がない。
 過度のストレス。
 思い当たるフシなど、自分でもいくらでもある。
 だが自覚していたからといって、司自身にもどうできるものでもなかった。
 …それでも、あいつがまだ手元にいる。
 それだけが唯一の心の支え。
 一応はつくしがいなくても非礼にならない程度の相手には司が挨拶を終え、彼女の元へと戻ろうとしたタイミングで、母親と有力者たちへの歓待を済ませたあきらが再び顔を見せたところだった。
 …牧野を連れて、こいつのお袋のところにも挨拶いかねぇとな。
 親しき仲にも礼儀ありだ。
 すでに挨拶は交わしているとは言え、正式にパーティの主催者であるあきら親子のもとへ、こちらから挨拶に出向くことは謝辞として必要な手順であり礼儀でもある。
 しかし、接待で忙しいはずだというのに、その合間を縫って、気遣わしげに出向いてくれる友のその友情が嬉しい半分、その甲斐甲斐しいまでの気遣いに司も苦笑させられてしまう。
 あきらの心配顔が、今の自分の状態の鏡のようなものだ。
 だが、
 「桜子のこと、悪かったな」
 真顔の謝罪に、司はその微かな笑みを即座に引っ込めた。
 「…………」
 「悪気はない…と言いたいところだが、大いに含みがあるのはお前にもバレバレだろ?」
 「あの女、俺に何か恨みでもあんのか?」
 眼光を鋭くした司から視線を外し、わずかにあきらが顔を俯かせる。
 「悪い女じゃない」
 「…ふん?」
 「お前はたぶん覚えていないことだが、あいつにとってはそうじゃないってことだな」
 「なんだそりゃ?」
 あきらの女でなければ、とっくに叩き潰していた。
 そして、おそらくあきらもそれがよくわかっているのだろう。
 「正直、俺にもあいつの闇をどうやったら祓ってやれるのか、検討もつかねぇんだよな」
 「…………」
 「あいつの恨み言、お前、聞いてやってくれるか?」
 「…ごめんだな」
 憎しみも恨みも…愛情も、彼が受け止めてやれるのはただ一人の女のものだけ。
 どんな感情であろうと、向き合うつもりもなければ気にかけることさえありえない。
 …憎みたければ憎め。恨みたければ恨めばいい。
 歯向かうものは叩き潰す、ただそれだけだ。
 友への遠慮があるのは確かだったが、公然と歯向かわれ、害になる存在だとわかれば容赦するつもりはなかった。
 「まあ、お前ならそう言うと思ったよ」
 「…つくしに何かしやがるつもりなら、たとえお前の女でも俺は容赦するつもりはねぇぜ?」
 キッパリと言い切る。
 だが、それにはあきらも首を振り、大きく息を吐き出す。
 「いや、たぶん牧野の害になることはねぇと思うぞ。むしろ、牧野を焚きつけて、お前に立ち塞がろうとするかもしれねぇが、それにしても揺さぶってくることはあっても、今のあいつが大それたことをすることはねぇはずだし、もしそうしようとするなら必ず俺が阻止する。だから、もうしばらく大目に見てやって欲しい」
 「あきら」 
 「頼む。お前には小煩い蠅みてぇなもんだろ?」 
 「…あまりに煩いようなら叩き潰すぜ?」
 本心だ。
 しかし、それには複雑な顔だったあきらも、困り顔ながら首を横に振る。
 「それはさせられねぇな。あいつは俺の女だ。お前が叩き潰そうとするなら、たとえお前と対立することになっても、俺が全力で守ってやる」
 「…マジか?」
 「ああ」
 柔和なあきらの顔が引き締まり、司を見返す目に強い光が浮かぶ。
 一瞬、ぶつかりあったように見えた火花だったが、意外にも先に視線を反らせたのは司の方だった。
 「しっかり轡締めとけよ」
 「ああ、わかってる」
 ふっと笑いあった互いの顔には、先ほど一瞬走った緊張感や敵意はあっという間に霧散し、ただ幼き頃からの友愛と信頼だけがある。
 「…類のヤツ、日本に帰る話はまったくねぇのかよ」
 ついでのように司の口から溢れた話題だったが、実は司が本当に気にしていたのはそれだったことはあきらにもお見通しだった。
 けれど、そのことに関しては特になにも突っ込むことはせずに、何食わぬ顔のまま、見て見ぬふりをする。
 「ああ。…花沢的にはいろいろあるんだろうが、あいつ、日本どころか先進国はここ数年まったく寄り付こうとはしねぇ。それなりに成果は上げてるから、親も困った顔をしつつも許容してるんだろうが、今いる南米を転々と6年、カリブ、一時期は西アフリカのセネガルにも赴任してたことがあったな」
 「……はっ、花沢の後継がか?」
 「花沢の後継がだな」
 先日の真っ黒に日焼けしていた幼馴染みの顔を思い出し、二人大きく息をつく。
 「静は?」
 「司、お前聞いてないのか?」 
 あきらが意外そうに眉根をあげた。
 「俺はここんとこヨーロッパ各地をドサ回りで、それこそ人のことどころじゃなかったんだよ」
 「…相変わらず薄情なヤツだな」
 「お前が面倒見が良すぎるんだろ」
 鼻で笑われてしまった。
 あきらも十分に自覚があるだけに、しかたないと笑うしかない。
 「とっくに何年も前に結婚したよ。相手はフランスで勤めていた弁護士事務所の同僚だか、先輩だとかで、今は二人で独立して新しい弁護士事務所を設立してるはずだぜ」
 「ああ…そうか、そう言えばそうだったな」




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