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「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日②

愛してる、そばにいて0169

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 気がついたら、つくしは桜子を注視してしまっていた。
 意識してのことではなかった…たぶん。
 一瞬、空気が凍りついたように感じたのは、おそらく気のせいではなかっただろう。
 「…類、来るのか?」
 その緊張を破ったのは、司だった。
 表面的には、司にはなんの動揺も見られない。
 むしろ、狼狽しているのはあきらの方で、飛び出してしまった名前に息を飲んで、ゴクリと唾を飲み込む。
 「どうなんだ?あきら」
 「あ~、いや。類は…来ねぇよ」
 「…………」
 わあっ!
 ドッと湧き上がった背後の喧騒に、どうやら桜子の言うとおり、誰かしら有名人が会場に到着したことだけは確かなようだった。
 「あいつ…今、マチュ・ピチュだかワイナのあたりだったか、新しく発見された鉱脈の採掘権巡って、在米企業との折衝が佳境に入ってるからあっち動けねぇらしいしよ」
 「…総二郎でもないみたいだな」
 あきらの母親が向かった先、人々の合間に禿頭がわずかに覗く。
 自分が引き起こした波風を、微かな笑を浮かべた桜子が一言で収拾した。
 「お引き止めしてしまってすみません。あきらさん…おばさまが」
 「あ、ああ。そうだな」
 あからさまではなかったが、あきらかに息子を呼び寄せようとしている彼の母親のブロックサインに、活人画のようになってしまっていたあきらが再び動き始める。
 やはりつくしを見つめたまま、ジッと動かず…いや動けずにいる司の腕を、あきらが宥めるように軽く叩く。
 「行こうぜ、司。ありゃあ、マルコーの親父だ。お前もまだ直接顔合わせたことねぇだろ?紹介してやるから来いよ」
 「……ああ」
 促され、司も歩き出す。 
 通りすがりざま、桜子を一べつした司の目は刃のように鋭く…冷たかった。
 だが、それさえも本当に一瞬のことで、すぐに目の色を無関心な鉛色に変え、あっという間に彼女への興味を失って冷静なものへ。
 司にとってここは戦場だ。
 今はまだプライベートの有象無象に気を取られ、足を掬われるわけにはいかないのだから。
 今度こそ、立ち去る男たちの背を見送り、桜子が小さく鼻を鳴らす。
 淑女らしからぬ仕草だったが、そんな蓮っ葉な仕草が不思議に板について、彼女が見た目通りのただ従順で大人しいだけの令嬢などではない本性を垣間見せていた。
 「やはり、いまだに気にされてるんですね。道明寺さん」
 そして…、 
 「それに先輩も」 
 小さく何度か息を吐き、なんとか動揺を収めたつくしが俯けていた顔を上げる。
 「…どういうこと?」
 「なにがです?」
 わかっていて惚ける桜子を、つくしはキッと睨んだ。
 自分は味方だと、桜子はつくしに告げた。
 しかし、未だつくしはこの新しい友人を名乗る美女を信用していいのか断じかねていた。
 当然だろう。
 いかにお人好しのつくしだとて、ただの同情で、司を敵に回しかねない行動を他人のためにおいそれととれるわけがないことは重々承知だった。
 …道明寺に恨みがあるようなことを言ってたけど。
 だが、その恨みがどのようなものであるのか、桜子は言葉を濁してまだつくしに明かしてはいない。
 誰もがおもねり、その機嫌をとろうとする司に反感を抱き、それゆえにつくしの味方であると自らうそぶく女の意図はなんなのだ。
 実際、たとえ司に怨恨があるのだとしても、それでつくしに味方するメリットとは?
 つくしに何を求め、どんな役割を果たさせようとしているのだろう。
 打算に満ちた友情には、必ずギブ&テイクが成り立たなければ、継続させることすら不可能だ。 
 「花沢類のことを持ち出すなんて」
 「別に?単純に美作さんがいらして、道明寺さんがいて、そこへ西門さんがいらっしゃるなら、今一人のF4メンバーである花沢さんはどうされたのかと、聞きたくなるのが人情というものでしょう?」
 それはその通りなのかもしれない。
 今日のパーティは規模といい事情といい、あきらたちが親友同士ということを除いても、著名人である彼らが一堂に会してもなんらおかしくはなかった。
 けれど…それでも。
 「あんたは知ってたんでしょ?」
 類がここに訪れるのか、否か。
 そんなつくしの疑いに軽く肩を竦めて、あっさりと桜子が否定する。
 「まさか。知っていたなら、わざわざ聞いたりしませんよ」
 「でも…」
 「今日は500人からの規模で、招待客がいるんです。ホステス役の美作さんのお母様ならともかくとして、一招待客でしかない私が把握できるはずもありません。第一…、私にそんなことを教えてくださるくらいなら、最初から美作さんは私に口止めをしたと思いませんか?」
 「…なにを?」
 揶揄る視線はそれこそ、わかっているだろうと言っていたが、素直に答えてくれた。
 あるいはそれさえ皮肉だったのかもしれない。
 「先輩の前で、花沢さんのことを話題に出さないように、ということですよ」
 「なによ、それ」
 「さらに言えば、道明寺さんの前で、でしょうか。ふふ、美作さんには申し訳ないことをしてしまいましたわね、私。さぞ肝を冷やされたことでしょうから」
 「………………意味わかんないし」
 嬲るような物言いの桜子にうんざりとして、つくしがソファから立ち上がる。
 「おや、ご気分はもうよろしいのですか?」
 「…おかげさまで」
 実際、慣れぬ場の雰囲気に悪酔いしてしまったような感じだったが、なんだかんだと違うことに気が削がれ、むしろ気分の悪さは拭われたようだ。
 ただし、その代わりと言ってはなんだが、じんわりとした不快感を感じ始めていた。
 「やっぱりあんたが味方だなんて、あたしには信じきれない。もしかしたら…本当にあんたは道明寺のことを嫌っていて、あいつに何か嫌がらせをしたいと思っているのかもしれないけど、だからって、それがイコールであたしの味方ってことにはならないんじゃないの?」
 桜子がおや、と眉根をあげた。
 いかにも侮っていた相手が、意外にも鋭いところを見せた、といったような失礼な感心もあらわな態度に、つくしもムッと顔を顰め、桜子に背を向けその場を立ち去ろうとする。
 が、
 「すみません、嫌味な態度は私のデフォなもので」
 「………」
 率直な物言いに驚いて振り向けば、言葉尻のとおりに桜子が苦笑していた。
 「先輩の味方…かどうかは、たしかに互いの見方によっては意見の分かれるところかもしれません。でも、私は先輩のことは嫌いじゃないし…むしろ本当にお気の毒には思っているんです」
 「桜子」
 「ただ…そうですね。先輩への同情からというよりは、利害の一致が私たちの間で互いを結びつける絆になるでしょう」
 「…利害の一致?」
 怪訝に問い返すつくしに見せた桜子の複雑な顔は、…初めて彼女に見せた本心のようにも見える。
 「道明寺さんから逃れたい先輩。その先輩を道明寺さんの元から解放することで、昔道明寺さんから受けた仕打ちへの、私の復讐は完成する。そんなところでしょうか」




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