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「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日②

愛してる、そばにいて0167

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 「…大丈夫か?」
 声をかけられ、ハッと顔をあげれば、心配顔の司がオレンジジュースをつくしへと差し出していた。
 先日、桜子からもかけられた第一声。
 今回のつくしの物思いは、その桜子との面談に思いを馳せていたせいだ。
 「あの…ごめんなさい。その、もう大丈夫だから、挨拶行くんだよね?」
 我ながらカタコトな物言いだったが、司は意を汲んでくれたらしい。
 パリッとノリのきいたシャツとタイの間に指を入れ、グッと隙間をあけ、わずかにタイを緩めて司が息を吐く。
 そんな些細な仕草さえ、今の彼からは大人の男の色気が滲んで、つくしはそっと目を反らせた。
 高校生だった司にはなかったそんな魅力が、つくしの目にも妙に眩しく映って、見るに耐えない。
 絶対に認めたくはなかったし、人に指摘されれば認めることもなかっただろう。
 けれど目の前の男が、誰に言われなくてもどこの誰よりも、どんな男よりも遥かに美しく…どんな女たちの目も惹きつけずにはいられないほどに、魅惑的な極上の男であることを無意識の意識でわかっていた。
 …綺麗なのは見た目だけ。中身は肥溜めの汚物よりも最低なヤツ。
 そう、何度自分の中で言い聞かせたことか。
 だが、言い聞かせなければならない自分の矛盾に、つくしは気がつきたくはなかった。
 ドサッと彼女の横に腰を下し、片腕を背もたれにかけた存外だらしが無い姿勢で、司がその場に足を投げ出す。
 「ふぅ。とりあえず、最低限回んねぇとマズいところはともかく、そうでもないところは後で神崎連れて、俺一人で回るから平気。パーティの主催者のあきらんとこにも後で挨拶するけど、そっちはそんなに緊張することもねぇだろ?とりあえずあんま無理すんな、気分まだ良くなってないんじゃねぇの?」
 チラッと視線だけでつくしを見てくる男の横顔に、心配が見える。
 その視線さえも受け止めることができずに、つくしは俯いてオレンジジュースを口に含んだ。
 それが恐怖や嫌悪が理由でなかったからこそ、よけいにつくしは居た堪れない。
 「ホント、大丈夫。その…ちょっと、人混みに酔っただけだから」
 「まあな。ここ二ヶ月、ほとんど病院や屋敷にこもって、外に出てなかったんだ。気分悪くなるのも無理もねぇよ」
 「うん。…さすが、美作商事の創立記念パーティだね。人が凄いんで、驚いた」
 「…ふっ」
 嘲りは含まれていなかった。
 司の小さな笑みは、『これくらいは大したことねぇよ』といった自負であり、つくしの無邪気さを笑ったものだっただろうか。
 「しかし、お前からパーティに同伴したいって言われるとは思ってなかったけど、どうだ、楽しいか?」
 「…うーん」
 つくしにだとて夢があった。
 もちろん、27才のつくしはこのようなパーティは何度も経験し、おそらく主催者側として女主人の役もこなしていたのだろう。
 しかし、今の彼女はまるで童話の世界に紛れ込んだ異端者のようだ。
 …綺麗なドレス。
 綺麗な人々。
 綺麗な場所。
 何もかもが煌びやかで、目に眩しく…そして虚飾に満ちて今のつくしにはあまりに遠い世界。
 …あたし、本当にこんな世界で生きてきたの?
 何度となく抱かされる違和感。
 ただ司を嫌い、憎いと彼に対して感じていた拒絶感だけでなく、胸の奥底に感じるもやもやと感じるわだかまりは、馴染むどころか時を得るごとによりいっそう大きく…強くなってゆく。
 …ここはあたしのいる場所じゃない。
 …ここにはあたしの居場所なんかない。
 「なんだよ?興味あったんだろ?」
 「…まあ、人並みにパーティとかってどんなところなのかなって、憧れてたっていうか、そういうのもあったんだけどね」
 「ふん、歯切れ悪いな。実際にはそうでもなかったって?」
 「どうだろ」
 「ま、俺にしてみても、こんなところのどこにお前が憧れる要素があるのかサッパリわからねぇけどな」
 「……………」
 誰よりもこの場に馴染み…いや、君臨しているかのように人々の目をそば立て注目され、そして堂々たる存在感で周囲を圧倒している男がそんな事を言う。
 こうして柱の影、人々の喧騒から離れて隠れるように座っていてさえ、司がいる、ただそれだけで、人々がチラチラと見ていない振りでこちらへと関心を向けているのが痛いくらいにつくしにも伝わっていた。
 「似合うな」
 「え?」
 ぼんやり周囲を見ていたつくしが、司の言葉を聞き逃してしまい聞き返す。
 振り返った司は、いつの間にか組んだ自分の長い足に肘杖をついて、つくしを甘く見つめ微笑んでいた。
 「そのドレス、お前にすげぇ似合ってる。綺麗だ」
 「…っ!」
 臆面もない褒め言葉がお世辞なんかじゃないことは、司の熱い眼差しが何よりも正直に物語っていた。
 スッと伸ばされた手が、つくしの頬を掠める。
 ひゃっと首を竦め、目を瞑ってしまった彼女の耳元へと指先が触れ…、優しい手つきで司が髪飾りを直しただけで、その手を引っ込めた。
 ドキンドキンと、まるで耳にまで心臓があるみたいだ。
 誰だっていきなり至近距離で接触されたら驚くし、動揺してしまう。
 …そうよ、びっくりしたから。
 そっとつくしが目を開けると、司がまだ彼女を見つめていて、そっと小さく…優しく微笑んでいた。
 「曲がってた」
 「そ、そう」
 「アツアツですね」
 割り入った声に顔を向ければ、寄り添いあったあきらと桜子が、つくしたちを見下ろし苦笑している。
 「あきら」
 「よ、カミさん、気分悪いんだって?」
 「大丈夫ですか?先輩」
 桜子の揶揄るような視線が言っていた。
 『イヤよ、イヤよも好きのうちですか?』




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