「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日②

愛してる、そばにいて0166

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 「え?」
 思わぬ呟きにつくしが顔を上げれば、先ほどまで心配そうに顔を緊張させていた神崎が、わずかに頬を紅潮させ、どこかうっとりした顔を横向けていた。
 神崎の視線の先、戒を抱いたまま立ち止まって、わずかにつくしたちを振り返っている司の姿が…。
 つくしと神崎が自分たちを見ていることに戒も気がついたのだろう。
 小さく手を振り、愛想を振りまいている。
 それに神崎も手を振り返し…。
 「奥様が木の上にいらっしゃるのに気がついた時の副社長、凄い焦ってらしたんです。もう顔なんて真っ青になられて、さっき怒鳴られた時も本当に怖かったけど、それだけ心配されたんだって、その裏返しなんだなって、私、とても奥様が羨ましくなってしまいました。普段は冷静沈着で、どんな時にも泰然としていらっしゃる方なのに」
 「…………」
 神崎の言葉の向かう先がわからなくて、いや、たとえつくしにわかったとしても何を言えただろうか。
 「本当に奥様のこと、愛して大切に思っていらっしゃるんだなあって。…私も、いつか奥様のように愛されたい。愛してくれる人と出逢って、大切にしてあげたい」
 夢見る乙女の言葉。
 ポワッとした顔は本当にそう思っているようで、かつてのつくしならおそらくそんな言葉に共感して、一緒にきゃあきゃあとはしゃぎ立てることができたかもしれない。
 けれど…。
 「本当に奥様が羨ましいです。副社長ほどの方と出逢われて、相思相愛になられたともそうですが、それ以上に、これほど愛されて大切にされて…必要にされることって、女冥利に尽きるというか…その、上手く言えないんですけど」 
 真摯な言葉。
 神崎が真実そう思っていることがわかる。
 「そんな…いいものじゃありませんよ」
 「いえ!素晴らしいですっ」
 あまりの勢いに、逆につくしの方がびっくり眼で見返してしまう。
 「…あ、すみません。私ったら」
 今度は羞恥で顔を真っ赤に赤らめて、申し訳ないと頭を下げ、口元を手で覆って恐縮してしまった神崎は、つくしの目から見ても可愛らしかった。
 いつもはいかにもデキる秘書然としているというのに、こういうところはむしろ年相応よりも若々しく微笑ましい。
 高校生の意識でいるつくしから見てもそうなのだから、タマなどが『可愛い娘』と称するのも当然のことだろう。
 ふいに、思い当たる。
 「あの、もしかして、神崎さん、道明寺のこと…」
 「えっ!?」
 ギョッとした神崎が、一瞬ポカンとつくしを見返し、ついでブンブンと首を振りまくる。
 「奥様っ、ち、違いますっ!とんでもないっ。そんな、恐れ多い。いえっ、奥様、誤解されないでくださいっ!!」
 テンパって『奥様』を連呼する神崎の焦りように、自分の立場をあらためて認識させられ、内心でつくしは顔を顰めた。
 「あのっ、気を悪くされたでしょうか?私、本当に副社長に何か邪な気持ちを抱いているとかじゃなくって…そのぉ」
 おそるおそる聞いてくる神崎の様子に、つくしも慌てて彼女の心配を払拭するべく小さく手を振り、神崎の謝罪を退ける。
 「あ、いえ。大丈夫です。えっと、その、誤解したわけじゃなくって」
 何と言ったらいいのだろうか。
 困ったようなつくしの態度に、神崎も誤解されたわけではないと安心したのだろう。
 小さくホッと息を吐き、照れたように小首を傾げた。
 「…その、また誤解されては難なのですか、ただ憧れっていうか。いえ、副社長のことだけじゃなくって」
 「………」
 また、どんな言葉が飛び出すのだろうか。
 恥じらう神崎をよそに、憧れのアイドルを見る目で司を見る少女じみた女の顔を、つくしは戦々恐々と見守った。
 「子供の頃も、副社長と奥様のシンデレラストーリーを素敵だなって憧れたものなんですけれど、こうして恐れ多くも身近にお仕えするようになって、もっと憧れが強くなったというか、現実的になったというか」
 「おいっ!お前ら、何してんだっ」
 いつまでもグズグズしているつくしと神崎に痺れを切らしたのだろう。
 少し先に行ったものの、戒を振り回して機嫌をとりつつ二人を待っていた司が、怒鳴り声を上げた。
 「あ、奥様、申し訳ありません。すっかり引き止めてしまってっ!」
 慌ててつくしを促す神崎に、
 「…え?あ…いえ」
 つくしも気持ちを切り替え、促されるままに歩き出す。
 正直、ホッとしていたかもしれない。
 「うちの両親も仲が良い方だとは思いますし、仲の良いご夫婦は他にも存じています。でも、副社長ほど奥様を…一人の女性を一途に想うことができる男性はそうはいません。特に副社長のような地位や立場にいられて、ご本人もあれほど素敵な方で…、私もいつかそんな風に私を想ってくれる男性に出逢えるのかなって思うと、奥様が本当に羨ましいですし、憧れずにはいられないんです」




*****




 「あちっ」
 「…大丈夫ですか?」
 「え?あ…。こんにちは、三条さん」
 「ご無沙汰ですね、先輩」
 ニッコリ微笑んだ桜子がサングラスを外して、つくしの座っていた対面側の席へと腰を下ろす。
 すっかり考え事に夢中になっていて、待ち合わせていた相手の到着にもつくしは気がつかないでいたらしい。
 熱い紅茶を不用意に口に含んで火傷した舌先が、ピリピリと痛む。
 「すみません、ずいぶんお待たせしてしまいましたでしょうか?」
 先ほど飲み干したアイスティのストローの包装と、テーブルに見開いたまま投げ出された単行本をチラッと見て、桜子が頭を下げた。
 …目敏いな。
 そそくさと本をたたんで、つくしはソファの上のハンドバックにしまい込む。
 「いえ、あたしが早く来すぎただけですから」
 実はもうこの場にいるのは1時間近くにもなるだろうか。
 もちろん桜子が遅れたわけでもなければ、つくしが時間を勘違いしたわけでもなかった。
 ただ…。
 …居場所がない。
 今週…週末ではなかったものの、司が一日とはいえオフが取れたことから、当然のように夏休み中の戒に親子のお出かけを望まれたが、司の疲労が色濃く、さすがにそれが叶わなかったのだ。
 折も悪くというべきか、タイムリーだったと言えばいいのか、ちょうどつくしも桜子と会う約束をしていて口実ができた。
 司がいる屋敷につくしの居場所はない。
 夜の短い間、あるいは休日でも司が邸内での仕事を余儀なくされている時はまだいい。
 せいぜい食事時やわずかな時間、顔を合わせる程度で済ませることができるのだから。
 だが、がっつり休みを取られた日にはどうしたらいいのか。
 夏休みが終わり、戒が幼稚舎に通い出せば、邸内で行方を晦ますこともできたかもしれないが、夏休み中とあればそうもいかない。
 つくしあるところ、戒あり。
 戒がいる場所であからさまに司を避けることなどできないし、司自身も当然のように二人がいる場所に居座る。
 …約束しておいて良かった。
 「戒君は連れてらっしゃらなかったんですね?」 
 「…ええ、まあ」
 もちろん戒は来たがったが、司が引き受けてくれた。
 以前…高校生の頃のように、司はつくしを束縛しようとはしない。
 もちろんSPや運転手がついた上なので、まったくの自由とも言い難かったが。
 ウェイトレスに注文を告げ、
 「でもまあ、その方が良かったかもしれませんね。小さなお子さんとはいえ、憚る話題になってしまうかもしれませんしね」
 柔らかな桜子の口調にわずかな含みを感じて、つくしの胸がドキッと音を立てた。




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