「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日②

愛してる、そばにいて0165

 ←愛してる、そばにいて0164 →警告
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 小刻みに震える体の震えは、いったい何によるものなのだろう。
 自分でもわからない情動に、つくしは司の首っ玉にしがみついた腕に顔を伏せ、それ以上考えることを拒む。
 あっという間に地上に降り立った司の肩から下ろされ、足がトンと地面についた。
 「…ふぅ」
 「お母さんっ、お父さんっ!!」
 「副社長っ、奥様っ!」
 「わっ」
 つくしの足が地につくかつかないうちに、戒が飛びついてきて、わずかによろめいてたたらを踏んだところを、司の腕に支えられて事なきを得る。
 「…大丈夫か?」 
 「あ、うん、ありがとう」
 助けられたから礼を言う。
 たとえそれがどんなにイヤな相手であったとしても、つくしにとっては当然のことで、それは特別なことなどではなかったが、司がつくしの言葉に驚いたように目を瞬かせ、すぐに小さな笑みを浮かべ、
 「おう」
と、頷いた。
 「お母さん~」
 よほど心配だったのだろう。
 つくしのスカートに顔を押し付けて、涙ぐむ戒をつくは抱き上げた。
 ずっしりと重い。
 命の重み。
 首に回った小さな手のぬくもりが温かかった。
 「ごめんね、戒」
 「お母さんが、落っこちちゃうかと思った」
 ポンポンと背中を優しく叩くと、ぎゅうっと痛いくらいに抱きつかれる。
 「ホント、ごめんね。あのくらいの高さなら大丈夫だと思ったんだぁ。でも、やっぱりちょっと無茶…」
 だったかなぁ、とのほほ~んと言いかけたのを遮られた。
 「このバカヤロウッ!!」
 「「「ひっ」」」
 あまりの剣幕につくしばかりか、その場にいた戒や神崎までもがビクついて、体を硬直させる。
 「つい安心して和んじまったが、お前っ、いい年した大人が木登りなんかしやがって、何考えてんだっ!!」
 「っ!」
 思わず見返した司の顔が、怒りもあらわに秀麗な美貌を歪め、額に青筋立てて、眼光鋭くつくしを睨み据えていた。
 「この前にも、階段から落ちて怪我して入院したばかりだろう!俺がたまたま気がついて、すぐに駆けつけたからいいものの、あのまま頭から落ちたら今度は怪我ですまなかったかもしれないんだぞ!やっと捻挫やら骨のヒビやら治ったと思ったら、また病院送りになりたいのかよっ!!」
 …怖い。
 いつの間にか、降りたばかりの木に追い詰められ、憤怒している司の顔を見上げたまま、震えるばかりで、つくしは言葉を返すことができずに立ち尽くてしまう。
 つくしの顔の横で、彼女にしがみつく戒もあまりの恐怖にヒクヒクと喉を引きつらせ、今にも泣き出しそうなのを堪えていた。
 誰も一言も発することのできない緊張感の中、怯えているつくしや我が子の様子に、司もやっと気がついたのか、息を2度、3度と吸って、吐いて…深呼吸を繰り返し、なんとか興奮を収めたらしい。
 「はっ…」
 肩を喘がせた司がつくしから顔を背け、頭をひと振りする。
 爛々と光る鋭い眼光から解放され、つくしもなんとか謝罪の言葉を絞り出す。
 「ご、ごめんなさい」
 小さな震え声だったが、それでも司の耳にも届いたらしい。
 戒を足に縋りつかせたまま、ズルズルと腰砕けに気が付けば、つくしは木を背もたれにして、地べたへとへたり込んでいた。
 司の怒声が、彼女を心配していたゆえのものだとはわかっている。
 それでもあまりの恐怖に耐え切れず、彼の目を真っ直ぐに見て、対峙することはできなかった。
 「ひっ、ひっ、ひっ………」
 とうとう恐怖と緊張に耐え切れなくなった戒が、つくしの首筋に顔を埋めて泣き出してしまった。
 さすがにそれで司もバツが悪くなってしまったのだろう。
 「ふぅ~~」 
 もう一度だけ司も大きく息を吐き出すと、完全にかどうかまでは周囲の者たちには判断つき難いが、とりあえず表面的には冷静さを取り戻したようで、すっかり腰を抜かして自分の動向を伺っている母子の眼前へとゆっくりと腰を落とす。
 「わりぃ、怒鳴っちまって」
 意識しての穏やかな声掛けに、顔を背けて司の視線を避けていたつくしも、おそるおそる顔をあげる。
 「大丈夫か?どっか怪我してねぇよな?」
 心底からの心配そうな顔。
 司のおかげで木から落ちることはなかった。
 あとはせいぜい、木登りの際に擦った頬が擦り傷になっているくらいか。
 「おい?」
 「……あ、えっと。そ、そのだいじょ…っつうっ」
 焦るあまりに言葉がどもって、そんな自分を落ち着けようと片手を口元に寄せて握りしめかけ、手のひらに走った小さな痛みにつくしは顔を顰めた。
 眉根を上げ、難しい顔をした司がそんな彼女の手を掴み寄せ開かせる。
 つくしも逆らうことなく、素直にされるがまま、彼女の手のひらをすかし見ている司と一緒に、自分の傷の具合を窺う。
 「なんか入ってんな」
 司が小さく息を吐く。
 その吐息はうんざりしているようでもあったが、それでもどちらかといえば安堵によるものらしかった。
 「けっこう中の方までトゲが入っちまってるから、手でとろうとすると、かえってちぎれて取れなくなりそうだな。とりあえず屋敷に戻るぞ」
 「あ、…うん」
 言われてみれば、手のひらの中央、黒っぽい筋が入っていて、チクチクと痛む。
 大した痛みではないが、それでも放置しておくには気になるものだ。
 「戒、立て」
 つくしの首筋に縋って、怯えていた戒がポンポンと小さく頭を叩かれ、優しい声かけをされて、おそるおそる顔をあげる。
 その仕草が意外な程につくしに瓜二つで、焦燥と心配に強張っていた司の気持ちを完全に解してくれた。
 そんな司の気持ちが伝わったのだろう。
 「ほれ、こっち来い。そのまんまじゃ、さすがにお前のお母さんだと立ち上がれねぇからな」
 「お父さん」
 素直に両腕を伸ばして、抱っこしてくれアピールをする小さな息子を抱き上げ、司が立ち上がる。
 差し出された手につくしが顔を上げると、戒を抱き上げた司が、立てとつくしへも手を差し伸べてくれているところで、躊躇していると、強引に手を取られて引き上げられ立たされてしまった。
 「歩けねぇのか?」 
 尋ねられた言葉に、とっさに首を横に振り否定する。
 「じゃ、行くぞ」
 つくしの返事に頷き、司もそれ以上は特に言い募ることはなく、戒を抱いたまま踵を返し屋敷へと歩き出す。
 「奥様、大丈夫ですか?」
 息を潜めて成り行きを見守っていた神崎が、心配そうに駆け寄ってくる。
 「だ、大丈夫です。すみません、お騒がせしてしまって」
 それどころか、子供でもあるまいに醜態を晒したものだと、つくしは恥じ入った。
 …うひぃ、とんでもないところ見られちゃったよ。
 「いえ。あの、頬のところちょっと汚れてます。よろしかったら、これお使いになってください」
 「あ…いえ」
 差し出されたハンカチをつい受け取ってしまったものの、目に痛いほどに真っ白なレースの美しさに使用を躊躇する。
 …うは、高そうなハンカチ。
 「奥様?」
 神崎に訝しげに呼びかけられ、いくらなんで高そうだからと遠慮するのも何かと、この場は好意を受け取けとることにした。
 「…素敵ですね」




web拍手 by FC2

関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0164】へ
  • 【警告】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0164】へ
  • 【警告】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク