「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日②

愛してる、そばにいて0163

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 「明日は夕方から、相良物産の60周年記念パーティの参加予定となっております」
 「パーティ?またかよ。こっちは土日の今日も、屋敷で仕事してるっつーのに。いくら顔繋ぎにしても、ここのところありすぎだろ」
 ついボヤきたくなるのも仕方がない。
 前任者の不始末の奔走に明け暮れ、挙句の果てに司的にはくだらない社交辞令の付き合いなど疲れる以外の何ものでもなかった。
 しかも、いまだに不安定なつくしの立場を軽んじてか、堂々と既婚者の彼に娘をあてがおうとしてくる厚顔な連中が後を絶たない。
 特に、妻であるつくしを同伴しないとなれば、その傾向は顕著だった。
 …ババアがどうせ、裏で糸引いてんのもあんだろうしな。
 「…ふぅ、しょうがねぇな。ツマンネー雑事でも、仕事には違いねぇ。暇見てあっちから連絡いれるから、神崎、お前は本社の方に待機してろ。パーティには山田を連れてくから、それで多少はこなせるもんもあるだろ」
 「それが…」
 顔もあげずにパソコンの画面と手元の資料に集中している司へと、神崎が言いがたそうに、だが、それでもあえて…と口を挟む。
 「…なんだ?」
 「申し訳ありません。今回は、パートナー同伴が必須ということで招待を受けておりまして…」
 「は?あそこは、新社長になってからわりにリベラルで、去年もそんな堅いこと言わなかったんだろ?」
 「それが…、今年は記念すべき60周年ということもありまして、療養中の会長自らが主催者として開催されるそうで」
 「は、マジかよ」
 基本、司はパーティにはつくしを同伴して参加していた。
 なるべく彼女に負担はかけたくなかったが、つくし自身が司の力になりたがり、できる限りの努力を払ってくれていたのだ。
 まさに良妻賢母。
 一部の古い特権階級層には軽んじられることも多い庶民出身のつくしだったが、わかってくれる人間には彼女の飾らない人柄が好かれて、力になってくれる人間も多かった。
 日本に帰国してからはまだ日が浅く、それほど付き合いも広がっていないが、在米中や欧州での日々では、つくしが顔を繋いでくれることも多く、そうしたことが重要な社交界で、司の仕事に大きく貢献していたのだ。
 司の業績の影には必ず、つくしの内助の功があって、それを彼もよく理解していた。
 …会長か。
 つくしが16才当時の記憶へと退行してしまって以来、司は何事も彼女に強要したり望んだりすることはしていなかった。
 ただ一つだけ。
 どんなに望まれても、つくしとは離婚しない、その一点以外は司はすべてつくしの意思を尊重するつもりだったのだ。
 …離婚しないことに意味があるのか、俺にもわかんねぇけどな。
 つくしは戒を介してなら、会話にも応じてくれるし、そうでなくてもあからさまに司に憎悪をブツけて詰ってくるようなことはなかった。
 だが、いっそのこと、その方が良かった。
 憎んでる、恨んでる、それらを顕らになじってくれれば、少しは彼女の気持ちも晴れるのではないか、そんな甘いことを期待している自分に自嘲する。
 結局のところ。
 なんだかんだと人に言いながら、自分は彼女に赦されるのを期待しているのだ。
 いつかは自分のこの気持ちをわかって欲しい、彼女を愛している自分を受け入れて欲しいと、身勝手な願いをなくすことができずに、今も彼女を束縛して、苦しめ続けている自分を司は十分に自覚していた。
 …それでも、離してやれねぇ。
 彼女を失うこと…、それは、自分自身の人生を失うことと同義であったから。
 つくしと出会って、初めて彼は愛を知り、幸福を知り、生きるということを知り、その喜びを感じることができるようになったのだ。
 まさしく彼を一人の人間として、生み直して育んでくれたも同然だった。
 司は苦渋に満ちた顔をゆっくりと撫で、そのまま片手に埋め、長く小さく息を吐きだす。
 「…副社長?」
 「わかった。とりあえず、お前にパーティの同伴は頼む」
 「私がですか?」 
 たしかに、妻子のいない者などは、秘書を代打に立てることも珍しくはなかったが、これまで司は必ずパートナーの同伴が必要なパーティには、妻のつくしを同伴していたし、そうでないパーティには男性の第二秘書である山田を補佐に連れてた。
 神崎を含め、つくし以外の女性を伴うことは、ほとんどなかったのだ。
 どうしてもつくしの都合が付かない場合には、仕方なく女秘書をパートナーとして同伴することも稀にはあったようだが、ここのところ屋敷で見かけるつくしは元気そうで、特に体調不良であるように神崎の目には見えなかった。
 …事故の怪我が元で、多少混乱されてるとは伺っているけど。
 プライベートのことにまで踏み込んでの事情は、さすがに秘書とはいえ、神崎にも明かされていなかったので、道明寺夫妻のおしどり夫婦ぶりをアメリカでも聞いていた彼女にすれば戸惑わずにはいられない。
 「なんだ、何かまずいのか?」
 「あ、いえ」
 「もし都合がつかないようなら、他のヤツでもいい」
 「いえっ!同伴させていただきますっ」
 気が付けば、まるで叫ぶように返答を返していた。
 そのせいか、いつもは冷静沈着を勤めている神崎の声音が裏返ってしまい、司が怪訝に顔をあげる。
 その視線に思わず赤面してしまい、自分でもあがり症な自覚のある神崎は、ますますテンパってしまった。
 …わぁ、どうしようぉ。
 自分のそんな性質をわかっているからこそ、神崎は普段から冷静沈着を心がけ、常にイメージトレーニングを欠かさないようにしていたというのに、だ。
 「ぷっ、変なヤツ」
 「…………」
 本当に…それは本当に小さな笑みだった。
 まるで薄暗い曇り空の雲の合間から覗いた晴れ間のように、鮮烈に神崎の心に差し込み焼き付いた司の笑顔。
 しかし、すぐにその笑顔は引っ込められ、再びパソコンに向き合ったその横顔は、いつも怜悧でクールなものへと戻ってしまっていた。
 けれど、一瞬の笑顔が神崎に勇気を生んでしまったのかもしれない。
 そうでなければ、いつもは飲み込んでしまう言葉を言うことなどできなかっただろう。
 「あの、副社長」
 「………」
 今度は視線もくれず、もちろん返事をしてくれることもない。
 だが、聞いてはくれているだろう。
 カタカタと規則正しいキーボードの音の間、唇を舐め、神崎が言葉を続ける。
 「お顔の色があまり優れないようです。あまり無理をなさらない方が」
 「………」
 カタカタカタ、カタカタカタカタカタ、カタカタカタ。
 無言が続いたことで、それ以上司が神崎に立ち入らせるつもりがないのは明らかで、神崎も出過ぎた自分を自覚して、それ以上は言葉を継ぐことは諦める。
 「わああ、おかあさ~ん!」
 窓の外から聞こえた戒の悲鳴に、ハッと司が顔を上げた。




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