「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日②

愛してる、そばにいて0152

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 まるで氷を押し当てられたような冷気が、小さな衝撃と共にいきなり首筋を冷やして、つくしが甲高い悲鳴をあげて首を竦める。
 「若奥様っ!?」
 雑踏の中でもSPのそんな声は不思議に通ったが、目の前のポップコーンに意識が向いていた司が、つくしの異常に気がついたのは一拍おいてからのことだった。
 「…つくしっ?!」
 それでもとっさに彼女を抱え込んで庇ったのは、無意識の行動だ。
 「思い知れっ!」
 「副社長っ、若奥様」
 …なに?何が起こったの?
 司の大きな体に抱き込まれ、しゃがみ込んだまま息を潜める。
 ポタリボタリと首筋から甘い匂いのドロっとした液体が、彼女のワンピースや司のスラックスを汚し、べちゃりと地面に落ちて白い小山を作った。 
 …これって、もしかして。
 パレードの雑踏で周囲の者たちの大半は騒ぎに気がついていないようだったけれど、司のSPたちが騒ぎ立てる男を拘束して、それでやっとチラホラと衆目が集まり始めた。
 「立てるか?」
 「…う、うん」
 しかし、差し出された司の手に取りすがって立ち上がろうとしたものの、驚いて腰が抜けてしまったのか、つくしは足元がおぼつかずに倒れ掛かかってしまう。
 「おいっ!?」
 「ご、ごめん、驚いちゃって」
 「はあぁ」
 司が支えていなかったら、不本意にもアスファルトに熱烈キッスをするハメになってしまっていたことだろう。
 「仕方ねぇ、お前、もうちょっとそこで座ってろ」
 「うん」
 青ざめてフラついているつくしの様子に、司も彼女を無理矢理に立たせるのは諦めたようで、そのまましゃがみこませてSPたちへと向き直った。
 つくしも司と同じ方向へと顔を向けながら、さきほど衝撃を受けた首筋をそっと探る。
 特に怪我をしたようではなかった。
 それはそうだろう。
 ベタつき始めたソフトクリームの残骸に顔を顰める。
 …なんで、こんなものなんか。
 やられた当初はショックで他を見る余裕などなかったが、どうやら投石されたソフトクリームは一つではなかったようで、自分の足元やら、少し離れた場所に計3つのコーンが転がっていた。
 間抜に放置されたソフトクリームの残骸に埋もれたコーンを、通り過ぎた人がグシャリと踏み潰しては、小さく悲鳴をあげているのが妙に胸に迫る。
 ジーンと不快な耳鳴りが耳から頭全体に広がって、どこか目の前が歪んで見えた。
 貧血を起こし始めているのかもしれない。
 目と鼻の先で会話されているはずなのに、雑踏のざわめきを除いても、どこか夢の世界の出来事のように遠く、話し声が不明瞭にしかつくしの耳に届かない。
 「……か、…ああ、……わかった。任せる」
 「涼しい顔…がってっ。お前ら道明寺財閥…せいで…だっ!血も涙もない……悪魔めっ…地獄に…ろっ!!」
 途切れ途切れに聞こえてくる非難は、つくしたちへといきなりの暴行を加えてきた男から発せられ、恨みに軋んだ唸り声や嗚咽に混じってまるで獣の咆哮のようだ。
 そうでなくても貧血症状で耳が遠くなっている彼女には、そんな男の言葉は聞きとり難くなにを言っているのかよくわからなかったが、それでも彼女にもこれだけはわかった。
 目の前で男泣きをしながら、延々と怨嗟のおめきをあげている男が、司を激しく憎んで恨んでいるのだと。
 かつて自分が抱いた想い。
 火を吹かんばかりの怒りと哀しみ…憤りに燃えた眼差し。
 …気持ち悪い。
 一段落つけたのか、司がつくしのもとへと戻ってきた。
 「大丈夫か?」
 口元を押さえたまま首を横に振る。
 少しでも身動きしてしまえば、今にも胃の中のものをぶちまけてしまいそうだ。
 ふわっとした浮遊感。
 「えっ?!」
 すぐに横抱きに抱き上げられたのだと気がついて、慌てて司の顔を見上げれば、厳しい表情のままSPたちの方を振り返っている。
 「戒のことを頼む」
 男を抑えたままの数人のSPたちを残して、司が歩き出す。
 つい先ほどまではまばらだった野次馬が、遠巻きに男と男を取り抑えるSPたち、そして司とつくしを遠巻きに取り囲み、コソコソと何事か噂し合っていた。
 「ね、恥ずかしいよ。自分で歩くから、下ろして?」
 「なにが恥ずかしいんだ。バカいってんじゃねぇよ、立つこともできなかっただろーが」
 「…でも」
 「いいからお前は黙って目でも瞑ってろ」
 司が言いだしたら聞かないのは昔と同様のようで、つくしも無駄な努力は諦める。
 …勘弁してよ。
 ただでさえ人目を引く男だというのに、いったいなんの撮影だと事情を知らないはずのエリアの人々にまで、行く先々で注目をされてしまう。
 …最悪。
 だが、そうこうしているうちについウトウトしてしまっていたらしい。
 なんだかんだと見栄を張ってはいても、やはり司の言うとおり、衝撃を受けた心が体にまで影響を及ぼして、無理をすることはできなかったようだ。
 しかし、ふいに目が覚めて目を開けてみても、まだ彼女は司に抱き上げられたまま。
 「目が覚めたのか」
 「え?ここ」
 しかし、いつの間にか園内を通り抜け、遥か入退場門の外にまで出ていた。
 「あたし、寝ちゃってた?」
 「まあ、少しだけな」
 …ここのところよく眠れなかったから。
 不覚。
 わりに出入り口付近のエリアにいたとは言え、司はかなりの距離、彼女を抱き上げたまま移動したらしい。
 …うわ、さすがにこいつでも重かっただろうな。
 そんな事を思う。
 だが、司の方は平然とした顔だ。
 「気分どうだ?」
 「…あ、うん」
 貧血の方は大したことがなかったのだろう、すでにほとんど回復していた。
 だが、病み上がり、不安やストレスによる不眠等々のところに、はしゃぎすぎていたようだ。
 夏の日の暑さも意外なほどに堪えて、体が鈍く重く感じる。
 それでも余計な気遣いをされたくなくって、つくしはやせ我慢をして何食わぬ顔を装う。
 「えっと、大丈夫、みたい」
 「少し歩けそうか?」
 「それは全然平気」
 まるで繊細なガラス細工でも下ろすかのように、そっと地面に下ろされる。
 が、いきなりの高低差にバランスを崩して、少しだけフらついてしまった。
 別段貧血のせいではないと思うのに、司の眉根がムッと寄って心配されてしまう。
 …これってやっぱり、心配してるんだよね?あたしのこと。
 それが何とも言えぬ奇妙なような、不思議な感覚。
 思えば、あの非道の限りに彼女を苛んだ若き日の司でさえ、つくしを気遣うことがあったというのに、それでもこんな些細なことで司が不安そうに顔を歪めて自分を伺うのがなんとも意外で、彼女は戸惑わずにはいられなかった。
 「えっと、ホントに大丈夫だから。ちょっと、疲れただけ…だと思う」
 司はそれでやっとホッとしたのか、わずかに険しい顔を緩めて無言で頷き、背後にそびえたつ建築物を指し示す。
 「とりあえず、入ろうぜ」




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