「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日②

愛してる、そばにいて0145

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 遠く防災行政無線のチャイムの音が耳に入って、話に夢中になっていたつくしがハッと我に返って周囲を見回す。
 目に入った壁掛時計の針は、案の定17時を回っていて、彼此3時間は話し込んでしまっていただろうか。
 「…時間?」
 「うん」
 「語学の授業があるんだっけ?それともお茶だった?」
 「は?」
 優紀の思いがけない言葉に驚いて、つくしがキョトンと彼女の顔を見返す。
 「あ、いや、前…記憶が戻る前のあんたに車で送ってもらった時に、ちょっとだけ雑談して、その時にたしかそう言ってたからさ」
 「そ、うなんだ」
 現在のつくしは、特に何かを架されているということもなくって、よもやそんな習い事をしていたとは知らなかった。
 …そりゃそうだよね。道明寺家の若奥様なんて、きっといろんなことを知ってたり、習ってたりしないとやっていけないか。
 学生時代、ロクに授業も受けていなかった司にしても、英語はともかくとして、ドイツ語など何ヶ国語も駆使しているさまを見たことがあるし、まだ4才の戒でさえ英才教育を受けているくらいだ。
 元々そのような素養がないつくしが、今もって習い事に忙しくしくていてもまったく不思議ではなかった。
 それどころか、おそらく道明寺夫人として某かの役割を担っていたのではないだろうか。
 司やタマは元より、他の使用人たちもあえてつくしには何も言ってこない。
 もちろん、こちらから聞いたことに関しては、どうやら特に何かを口止めされているというわけでもないようで、問われるままに教えてはくれる。
 司はいったいどういうつもりなのだろう。
 あらためて、そのことが気にかかってくる。
 …あたしをどうするつもりなの?
 妻であって妻ではない女。
 司への愛情の喪失や憎悪、現状に対する自覚のなさ以外にも、遥かに多くの問題が横たわっているのではないだろうか。
 「…つくし?」
 「あ、ごめん。…その、そろそろ夕飯だから」
 「ああ、そうだね。お子さんが待ってるものね」
 旦那様と…とは言わないでくれる。
 だが、優紀も言っていたように、彼女やつくしの年代になると結婚していたり、子供がいる友人たちもいるのだろう、あっさりと察してくれた。
 立ち上がりざま、伝票を手にとろうとして逡巡する。
 すると横合いから、逆に優紀に伝票を取り上げられてしまう。
 顔を見ると柔らかく優紀が微笑んでいた。 
 「今日は、あたしの奢り」
 「え、でも…」
 経済的に見れば、優紀より遥かにつくしの方が豊かなのは誰の目から見ても明らかだろう。
 それでも同性の友人の間なら、割り勘が普通だったかもしれなかったが、二人の場合はあまりに格差があって、つくしにしても迷ったのだ。
 だが――、
 「久しぶりだし、今は療養中のつくしより、仕事してるあたしの方が収入あるじゃない?」
 そんな風に茶化してくれた。
 …優紀、あたしの気持ちわかってくれたんだ。
 今現在、つくしが持たされているカードや現金は彼女が稼いだものではない。
 もっと言えばすべて司のもので、何一つ自分のものなのどないに等しいのだ。
 結局は何を言おうと、いま身につけているものも住まいも、口にするものさえ、道明寺家ひいては司のもので、つくしは憎んで嫌っているはずの男に養われている。
 …これじゃあ、寄生してるのと変わらない。それとも飼われているだけ?
 卑屈におもねっていた両親の顔が脳裏に浮かんだ。
 「…ごめん、ありがとう」
 「いいって。ここだと気兼ねして、思う存分話せなかったから、今度はあたしのところへ遊びに来て?」
 「いいの?」
 「もちろん」
 次回の約束もし合って、笑顔で「またね」と言い合う。
 10年前には、普通にあった日常の一コマだった。




*****




 家まで車で送るとつくしは申し出たのだが、この時間帯なら地下鉄の方が早いと言って、優紀はお茶代と同様遠慮して帰っていった。
 持たされているスマートフォンで車を呼び出すと、それほど間を置かずして、送迎を担っている運転手が車を回してくれる。
 「どうぞ」
 「ありがとうございます」
 司が愛用しているリムジンではなく、見た目的にはわりと普通サイズの車ではあるのだが、見る人が見れば容易にわかる名の知れた高級車。
 しかも恭しくドアを開ける運転手付きなだけに、どうしても耳目を集めて視線が痛い。
 …うう、だからイヤなのに。
 だがおそらく、この送迎を受け入れなければ、出かけることさえ禁じられてしまうのだろう。
 SPの時同様、つくし自身ある程度、司やタマの言い分は正当だと認めざるえないだけにそこは難しい。
 「優紀、黙って聞いてくれたなぁ」
 喫茶店での3時間は本当にあっという間に過ぎた時間だった。
 つくしにしてみても、いくら人気がないとは言え、人目もある公共の場所で、お涙頂戴よろしく詳しくは話せなかった。
 だが、かえってそれの方が良かった。
 冷静に話せたと思う。
 10年の昔のことだとはいえ、今のつくしにとってはそれほど昔のことなどではなく…いまだ生々しい記憶だ。
 記憶を辿れば…案外あやふやなのかもしれない。
 それでもつくしには、いまさらその悍ましい記憶を掘り起こして、あえて反芻したいとは思えなかった。
 だから優紀に伝えたのは、最後に彼女と別れた日の次の日の放課後、司に乱暴されて拉致され、そこで半ば監禁状態の日々を過ごしたこと。
 実際には鍵をかけて閉じ込めらていたわけでもなければ、檻に入れられていたり、縛られていたわけでもない。
 だが、心理的に逃げられない状況に追い込まれていたのだから、監禁されていたにも等しかっただろう。
 司という名の檻に押し込めれ、失意と絶望の日々を過ごした。
 合間の詳細は省いて、淡々と事実だけを語った。
 そのおかげでか、優紀も冷静に聞いて受け止めてくれたようだ。
 ただ一言―――、
 『何も力になってあげられなかった。あの日のあんたにごめんね』
 そう言ってくれた時には、危うく涙が溢れてしまいそうになったけれど。
 そのあとは、優紀が知る限りのことを教えてくれた。
 『…2ヶ月前のあんたにも言ってあったんだけどね』
 ―――唐突に連絡ができなくなったつくしを当時、心配していたこと。
 バイト先だった団子屋にしばらく無断欠勤が続いて、のちにつくしの母から一方的に辞めることが伝えられたことなど。
 そして、流産して記憶を失ったつくしのもとへと、優紀も一度だけだが、千恵子に同伴して道明寺邸を訪ねたことがあったのだという。
 もちろん、その経緯ーーー司とはまったく無関係だったはずのつくしが、道明寺邸に居住するようになった経緯までは、優紀も知らされてはいなかったのだが。
 …流産。
 やはりあのこと…つくしが階段から飛び降りたことが原因で流産していたのだ。
 …あたしが、あの時の赤ちゃんを殺した。




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