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「夢で逢えたら…全207話完+α」
第三章 忘れえぬ人②

夢で逢えたら113

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 要と明後日にセントラルパークでのピクニックを約束してしまったつくしだったが、よくよく考えてみれば、父親である司に外出の許可をとらないわけにはいかない。
 実のところ、要と外出するのに、つくしはある程度独断で要を連れ出す権限を司から与えらえていて、要と親密な付き合いをしていた頃には、よく外へと連れ出していた。
 ただし、やはり地位ある家の御曹司。
 何事かあると責任問題になり、つくしばかりか要つきの使用人やSPにも迷惑をかける結果になるので、一応は報告程度に口利きはしていたのだ。
 …プロポーズを断り、要の主治医も辞意を表明した今この時。
 完全拒否をした身の上では、顔も合わせずらい。
 どのみち、次の医師の手配(必要ならば)や、引継ぎの問題、道明寺家退去の明確日時も決めなければならないので、顔を合わせないままというわけにはいかなかったが、どうにも気まずい。
 ましてや、司からも避けられているとあっては…。
 ところが、どうやら司はつくしを避けているわけではなかったことが判明した。
 「…お父さんに、会えないのよね。仕事が忙しいのかな?」
 「キャサリン、聞いていないの?椿おばさんの旦那さんのお母さんが亡くなって、おじい様の代理で急遽、昨日からLAに行ってるんだけど」
 「え?そうなんだ…」
 前々から具合の良くないことは伝え聞いていた椿の姑のことだったので、意外ではなかったが、いつもだったら小まめに出張の予定などを頼みもせぬのにつくしに言い置いてゆく司だ。
 というのに、今回に限り何も連絡がなかったのは、やはり、多少なりとも先日の出来事が尾を引いていることは間違いない。
 連絡を無理に取ろうと思えば取れないこともなかったが、今まで散々出かけていた近隣の散歩へゆくことの許可程度のことに、この忙しいおりに煩わせて良いものか悩む。
 「…ねえ、要?お父さんがNYに帰ってらしてから、お出かけすることにしない?」
 「やだ。明後日を逃したら、しばらく来週一杯まで雨だって天気予報で行ってたもん。その次の週になったら、メイシーズ・フラワー・ショーが終わっちゃう」
 メイシーズ・フラワー・ショーというのは、毎年3月中旬から約半月開催されるイベントで、デパートが植物園のようにかわるという春の祭典で、屋内のことなので実は雨でも問題はない。
 だが、つくしは雨の日の外出は嫌いだったし、要的にはメイシーズ・フラワー・ショーは足を伸ばしたついで、やはりメインはセントラルパーク内の大道芸を見たり、風を感じたり、自然の植物を鑑賞したりするピクニックなので、晴れた日が最適だった。
 …どうしよう。
 どのみち、つくしと要の二人っきりで出かけるわけではない。
 必ず要つきのSPは同行するし、要自身も聞き分けのない幼児などではない。
 節度を守って危険には近づかない少年であるので、今回に限って報告しなければならないというものでもないだろう。
 「じゃあ、晴れたらね。雨が降ったら、メイシーズ・フラワー・ショーだけ、別の日に設定して、お父さんに報告してからにしよう」
 とりあえず、司の留守電に伝言を残しておけばいいかと納得し、約束をした。
 それからは、嘘のように要は朗らかで、ここ二月ほどの気まずさが嘘のよう。
 あれほどつくしを拒絶し、敵対視していたというのに、午後からの診察にも素直に応じ、あまつさえ久しぶりに夕食にも誘われた。
 少し腑に落ちないところもあったが、自分の真心が通じたのかと、つくしはホッと心を和ませる。
 少年にとって司と自分が結婚するかもしれないという疑いが、それだけ脅威だったのだと改めて感じ、自分が身を引くことで彼に安寧を与えてやれるのならば、この胸の奥底に潜むわずかな痛みなど何ほどのこともないと、ホンの少しの寂しさと哀しみを感じながらも安堵した。
 

 「じゃあ、明日の朝も、また顔を出すから、診察に応じてね」
 今日一日で、かつてのような気の置けない親密さを取り戻し、つくしは笑顔で要の部屋を退出した。
 満面とは言い難いが、親しみのこもった微笑みを浮かべてつくしを見送った要だったが、バタン、と音を立ててつくしが部屋を退出すると、途端に無表情が彼の愛らしい顔を覆う。
 そうしていると、彼の父親になんと似ていることか。
 少し寝るからと、ドイツ語の教師が来るまでの時間、要はシュナイダー夫人ら自分つきの使用人たちを
追い払った。
 ベッドわきのサイドテーブルの引き出しには、要の携帯電話が入っている。
 もちろん、彼の母親にも、他の誰にも自由に電話を掛けることを許されていたが、要からは滅多に人に電話はかけなかった。
 自分から相手にかけて、相手から迷惑そうな声を聞かされたら嫌だったし、相手の貴重な時間を知らぬうちに消耗してしまうことを厭ったからだ。
 だが、今からかける相手は、自分を歓迎してくれるだろう。
 彼の父親におもねって、自分に媚びへつらう者たちとすんぷ変わらぬ顔で自分を見つめた、美しい女の顔を思い出す。
 彼女の中で、自分の存在などきっと道明寺司の付属品ほどの価値しかないだろう。
 それでもきっと、彼の頼みは彼女の望みと一致している。
 要を通じて司に取り入り、また、自らの意趣返しにもなるという。
 司は母や父の名前を軽くスクロールし、その名を表示させる。
 トゥルルルルルルル、トゥルルルルルルル、トゥルルルルルルル。
 3度目の呼び出し音の後、女の甘い声音が応対する。
 「こんばんは。道明寺要です。先日はありがとうございました」
 『…お久しぶりね。お父様はお元気かしら?』
 華やかなで上品な声が、母と同じ階級の女であることを表している。
 だが、要はこの女がちっとも綺麗だとは思わなかった。
 「お願いがあるのですが…」
 それでも、彼の望みさえ叶えてくれれば、女が何を彼に期待していようとまったくかまわなかった。


 要と約束した日は、つくしの密かな願いもむなしく、このNYには珍しいくらいにハッキリとした快晴だった。
 春とはいえ、NYでは冬の寒さを引きずることも多く、まだ肌寒い。
 これだけ天気であっても、天候が変わりやすいので注意が必要だった。
 それでも、せっかくのお天気を楽しまないと損!
 つくしと要は連れ立って、セントラルパークの春の気配を楽しんだ。
 やはり要の体調を慮って、朝は遅めに邸を出て、運転手つきのリムジンで下ろしてもらったところから歩いて散歩をする。
 いつもは子ども扱いを嫌がって手など繋がせない要だったが、今日に限って不思議に甘えがちだった。
 …お母さんがドイツに帰っていて寂しいのかな。
 さっきもレンの話から、母親としての心境などを語らされた。
 面と向かってレンへの愛情を語るのは気恥ずかしく、だが、自慢の息子なだけに彼について聞かれるのは嬉しかった。
 「レンはお弁当を作るのも上手なのよ」
 「お弁当?キャサリンは作ったりしないの?」
 「…私もレンの小さな頃はちゃんと作ってたんだけどねぇ。仕事柄家にいないことも多くて、いつの間にかレンの方が私のお弁当を作ってくれたり、夜勤明けの朝ごはんをつくってくれるようになったかな」
 「うわあ、ダメママだ」
 一時期は他人行儀になっていた言葉づかいも、すっかり元に戻っている。
 お邸で持たされたお弁当に舌鼓を打ち、レジャーシートの上で足を伸ばすとなんとも心地が良い。
 温かな陽光にすっかり眠くなって、しきりに欠伸をもらすつくしを要は不思議に透明な目で見つめ、立ち上がった。
 「要?」
 「…俺、ちょっとトイレ行ってくる。この後、メイシーズに行くだろ?」
 「ちょっと、早くない?」
 「いいよ、このままここにいたら、あんた寝ちゃいそうだもん。寄る年波には勝てないよな」
 久しぶりな悪態が嬉しいなんて、つくしは自分が可笑しくて笑ってしまった。
 「…ホント、生意気なんだから。ジョーさんとミックさんにも一緒に来てもらいなさいよ?」
 「ジョーだけで平気」
 少し離れたところで待機していた黒人のSPに合図を送って、トイレへと踵を返す。
 「…キャサリン?」
 「なあに?」
 問い返したつくしをジッと見て、だが、要は何も言わないまま首を振った。
 「なんでもない。じゃ、行ってくるから」
 さんさんと降り注ぐ日の光がほっこりと温かく、ここのところのストレスで凝り固まっていた体を柔らかく解き解してくれる。
 こうして自然の癒しに包まれていると、日頃のツマラナイ悩みが本当にちっぽけで大したことのないように思える。
 たてた膝に突っ伏しながら、うとうとしていると、いつの間にか傍に寄ってきた要のSPが声をかけてきた。
 「遅いですね?」
 振り仰いだ先、白人のSP・ミックが時計を見ながら、要が行ったはずのトイレの方向にも目をむけている。
 つくしも腕時計で確認すると、彼此30分は経過していた。
 確かに、遅い…。
 木々の陰に隠れているが、トイレの場所はそう遠くないはずだ。
 よしんば混んでいたにしろ、30分は長くないだろうか?
 「…ジョーさんに連絡取れますよね?」
 「ええ、先ほどから呼び出しているのですが…」
 胸騒ぎがしてつくしも携帯電話を取り出し、要を呼び出す。
 だが、留守番電話が出るばかりで、要からの応答がない。
 要?
 メールを打ってる途中、噂のSPジョーが向こうから走り寄ってきた。
 「ジョー!」
 「ミック!Dr.マーベルっ!」
 ジョーの大柄な背後を見るも、要の影も形もない。
 「…っすいません!」
 突然の謝罪に、ジョーとつくしが顔を見合わせる。
 「油断しているうちに、要さまが姿を隠されました」 
 つくしの心臓が大きくドクンと音を立てた。




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~ Comment ~

この女は誰??

わからない~~

要クン。。墓穴ほらなきゃいいけど。。

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くろうさ様^^

要君にとって、今回の小さな反抗は、本当に追い詰められてのもの。
たとえ、つくしちゃんが身を引こうとしても、父が本気ならば
意味のない事であり、結局、つくしちゃんにかかりっきりになれば、
自分への関心が薄れるのは必定であることを悟った上での行動でした。
実際、司君、つくしちゃんと天秤にかけたら要君のことというか、
自分の命さえも捨てちゃいそうですしね…。
司君にしてみれば、つくしちゃん>自分も含めた全世界。
まあ、それをつくしちゃんが許すかは別ですし、親のこととは違い、自分の子供という存在
を認識した司君ですから、そう簡単にはしてはいけない、できないことだとは
わかっているとは思いますが、司君自身が親からロクに愛情をかけてもらっていない、
いわゆる愛の欠落者ですから。愛情を教えてくれたつくしちゃんがいなければ、
愛とは何かという基本命題さえわからなくなってしまう人なので、何でもありというところはあります。
そもそも、つくしちゃんは司君の命、心、魂そのものなので、つくしちゃんを失えば、もう生きてはいけません。
そして、長年父親を見続けてきて、体が弱い分だけ人の内面を見てきただけに、要君もそんな父親を
よく理解している。
ただ、そんな司君も少しづつ変わってきていて、つくしちゃんへの絶対的愛を
除けば、自分への愛情が確かに根付いていることには気が付けないんですけどね。
けっこう司君の中の位置づけでは、つくしちゃん>要君・椿さん?>自分>その他かもしれません。
でも、つくしちゃんの為や、要君の為につくしちゃんを諦めることはないという^^;;;
そこのところを要君が妥協してくれれば…(結局、子供に妥協を迫るという)、要君なりの
幸せもつかめると思うのですが。
ちなみに、恭子さんの優先順位。自分>要君>その他、みたいな?
困った両親です…。
ついでにつくしちゃん。
愛する人たち(司以外)>司>自分≧周囲の人たちかな?

いよ様^^

すっかり返信が遅れてしまってすいませんm_ _m
先日はお邪魔しました。
すっかりハマってしまって、毎日伺っております。
こちらこそ、過分なお言葉をもらって感謝感激です。
どうぞ、これからもよろしくお願いしたいますm_ _m
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